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提言と新書

新書ご紹介

四千年のパワースポット 霊峰大山

日本遺産に登録された「大山詣り」。
大山の石尊信仰と大山寺の不動信仰が江戸時代に流行し
富士山と大山登山が時代最高の信仰と遊学旅行となりました。
関東一円の歴史と地域文化にスポットをあてた、地元で育った著者の熱い歴史地理エッセイです。

著者: 石井政夫(会員番号5071)
発行: 2016年12月25日
価格: 2,000円(税別)

 

これだけは知っておきたい 環境用語ハンドブック

年々高まる世界的な環境意識の高まり、それにともないビジネスにおいても環境との相関を的確に説明できる人材の育成が欠かせないものとなっています。
 本書は複雑化する環境用語を50音順、アルファベット順に解説。タイムリーに調べられる環境用語ハンドブックです。
 eco検定試験 の受験にも有用で、出題頻度が表記されているので効率的に勉強ができます。eco検定試験 受験者や環境関係に携わっている担当者必携の一冊!

著者: 一般社団法人日本経営士会 中部支部ECO 研究会 有志【編】
発行: 2016年5月26日
価格: 2,000円(税別)

 

フランツ・カフカ探索

フランツ・カフカの著作は、今日では全世界で読まれ、その不思議な世界で人々を魅了し、20世紀のドイツ文学で最も有名な文学作品とみなされています。
 カフカの作品は難解であると言われ、実存主義文学のさきがけをなすものと評価されています。それらの作品を理解するためには、彼が生まれ育った生地、そして家族、友人、恋人等の様々な交信記録(日記、手紙、記事等)を読み解くことが重要です。
 本書では、カフカを取り巻く環境・人間関係などを通して、カフカの作品に対する理解を深める役割を果たしています。
 またカフカ自身が覚書のために記された多くの日記、断想、警句等によってカフカがたどった人生の軌跡を提供しています。

著者: 近藤 肇
発行: 2016年9月4日
価格: 1,500円(税別)

 

製造業R&Dマネジメントの鉄則 - 成功・失敗事例で見極める成否の分かれ目!

本書はR&D(研究・開発)部門の改革を成功させるための戦略など、
開発設計のキーとなるマネジメントの勘所を押さえ、各項目毎に、失敗事例と成功事例を並べて提示。
そこから成否の分かれ目を解説し、具体的に分かりやすく製造業のR&Dマネジメント改革の実践ノウハウが学べる。

著者: 岡部 仁志、新井本 昌宏、渡辺 智宏
発行: 2015年10月15日
価格: 2,000円(税別)

これこそ!社長の哲学

『これぞ!社長の哲学』
会社を繁栄させるのも「人」ならば、衰退させるのも「人」である。その中でも経営者の役割は最大で、極言すれば「会社は経営者の芸術品である」と断言できる。
 創造も開発もなく、従業員の活力もなく、行動も鈍い。このような会社は日常業務でさえも中途半端となり、言い訳ばかりがまかり通る。すべて他責で済ます頽廃ムードの会社の行く着く先は、倒産ということになる。
会社の業績の差の第一は「社長の質」にある。経営者が経営者として「夢」と「情熱」を持ち相応しい「哲学」を身につけているかで運命が決まる。
経営者は如何なる時でも、しっかりと行く先を見定める哲学と眼力が必要である。
「先憂後楽」で日夜苦労している経営者の一助になる経営書である。

著者: 荒田 英路(会員番号543)
単庫本: 214ページ
出版社: すばる舎リンケージ
発行: 平成26年6月22日
価格: 1,500円(税抜き)

経営者は昇進・昇格する人材をどのように見分けているのか

人事は実に戦略的な経営計画である。
この書は、いわゆる流行りのノウハウ本ではなく、斜め読みして明日から使える仕事のちょとしたコツを具体的に知りたいという期待には応えることができない。そのかわり、日ごろから人事・組織コンサルタントとして筆者が経営者とともに「戦略的な評価や昇進・昇格はどうあるべきか」考えている立場で学んだ「経営者的視点を紹介」してくれる。人事がいかに戦略的な経営企画であり、組織の可能性を最大にする昇進・昇格について教えてくれる。

もくじ:
1.経営者が期待する昇進・昇格要件と社員の認識とはどうすれ違っているのか
2.経営者は昇進・昇格人事で何を実現したいのか
3.経営者等級制度を利用してどのような人材を昇格させるのか
4.経営者はどのような人材を昇進させるのか
5.「あとがきに代えて」
昇進・昇格に相応しい人材として認められるにはどうすれば良いのか

著者: (株)日本経営システム研究所 
代表取締役社長 中村 壽伸(1401)
単庫本: 192ページ
出版社: 日本生産性本部
発行: 2014年6月
価格: 1,620円(消費税込

寝たきりだけど社長やってます
ー19歳で社長になった寝たきり障がい者の起業物語ー

動くのは左手の親指が数ミリと右手の親指が1センチだけ
著者は生後10ヶ月で10万人に1人の難病といわれる脊髄性筋萎縮症だと診断された。
この病気は、筋肉を動かす神経に問題があり、徐々に筋肉が萎縮し、体が動かなくなってしまうものである。
著者に出来ることは、指先をわずかに動かすことと、「話す」こと、だけである。
著者は小さな頃から社会の一員として働きたいと思っていたが、高校卒業後の就職活動で、重度障がい者をしっかりと受け入れてくれる場所がないことに気づき、深い挫折を味わう。
しかし、それでも著者は自らの中にある「僕だって働きたい」という気持ちを捨てることはなかった。そこで著者は、養護学校時代からの幼馴染みである松元さんを誘い、2人で起業することを思いつく。松元さんも、著者と同じく10万人に1人の難病である脊髄性筋萎縮症を患っている。
「2人で会社を作ることは決まった。でも、何から始めればいいんだろう・・・」
18歳の著者と、松元さんが奮闘し、ウェブサイト制作会社を設立し、その会社を運営していく物語。障がい者にも健常者にも読んでもらいたい、胸が熱くなる1冊。

著者: 佐藤仙努(105特別会員)
単庫本: 192ページ
出版社: 彩図社
価格: 590円

起業いろは塾
ー新しい自分への形 独立・起業への挑戦ー

永年、東京都の外郭団体で「起業塾」「創業セミナー」の主催者サイドの責任者として実務をなさり、本年3月末で定年退職した方からの読後のコメントです。
 
全体としての感想
 起業に関する本の中で、ここまで書いてある本はなかったと感じています。まずは、自分の体験談から書かれていますので、著書の思いが読む方に伝わるものであり、人柄が見てとれます。
起業するに当っての考え方と心の部分が大変良く書かれている内容なので、読む方が参考になるところが多くあります。
 考え方にしても、なかなか、経験がなければ書けない内容ですし、著書の人間性が全面出ていて、誰しも納得されるでしょう。ます。
一般的な本では、心の部分があまり書いてないので、心の部分が書かれていることは、大変良かったと思います。巻末の先輩起業家15名からのメッセージは、これから起業しようとする方々にとって心強い内容になっていると思います。

著者: 塩原勝美(2123)
単庫本: 251ページ
出版社: 法令出版
発売日: 2013/7/21
価格: 1,600円(税別)

誰にもすぐ役に立つ
ビジネス日本語・文書の本

ビジネスシーンにおける円滑なコミュニケーション能力は、社内社外を問わず、あらゆる業務の基礎のまた基礎ですが、書くのは苦手、書くのは嫌いというひとは意外に多く、「ビジネス文書の書き方」や模範文例集が多数出版されています。
本書は、<聴く・話す・読む・書く>スキルを巡る実績多数のセミナー講師経験を集大成した<ビジネス文書の書き方トレーニング・ブック>として書きました。
新入社員はもちろん、「書くのが苦手」なすべてのビジネスマンのための研修テキストとして、また独習本として、ぜひ本書をご活用ください。(会員No.2440神谷洋平)

著者: 神谷 洋平(2440)
単庫本: 247ページ
出版社: さくら舎
発売日: 2014/3/16
価格: 1,400円(税別)

日本流・『おもてなし』文化は世界的資産
~ビジネスを成功に導く秘訣がここにある!~

 商品・サービスの何れもがコモディティ化し、過去から継続している単一業種は衰退化しています。だから価格競争に陥り値引き合戦が繰り広げられコストダウンが日本の得意分野の品質管理・品質保証・魅力品質をも蔑ろにしているのです。
 世界一古い、そしてどの国でも簡単に真似が出来ない「日本流おもてなし文化」はこうしてあらゆる場面で競争激化の土俵に登り、定量志向、デジタル分野で苦戦を強いられているのです。ここでは表題に関し、歴史的考察ならびに高付加価値創造の「日本流・おもてなし文化」という資産が実際にどのように導入され「業績=顧客の支持率」を達成しているのかを『人的要素』を基盤に事例でご紹介しています。

著者: 武田 哲男(株式会社武田マネジメントシステムス・代表取締役)
単行本: 241ページ
出版社: 産業能率大学出版部
発売日: 2013/12/27
価格: 本体1,800円(税別)

はいしゃさんの仕事 段取り術

私どもは、歯科学と経営学を融合させようと言い続けてきています。
そのため、「仕事の視える化シリーズ」として2009年から『歯科医院の活性化』(変革プロセス)、『マニュアル作りで仕事を視える化』(マニュアル作成)、『5Sで仕事を視える化』(5S活動)『人財として人を育てる』(人材育成)『ホンマモンの歯科医療スタッフ』(組織文化)、『歯科医院経営の心得』(歯科学と経営学の融合)に関する本を、医歯薬出版から出して頂きました。
どの本も、現在変革をされている歯科医院の方々が、本当に大変なときからどのように組織を作って来たのかを赤裸々に書いて頂いています。
私どもは、その真摯な姿勢に感謝するとともに、一緒に変革を行ってきた同志として、今よりさらに地域に密着した質の高い歯科医療サービスを提供できるように、歯科医院を後方から支援していきたいと考えています。
しかし、スタッフ一丸で歯科医療に取り組みたいと考えている歯科医院に対して、まずは何から行えばいいのかという写真事例集の必要性を考えるようになりました。この度は、組織の文化をお届けします。きっと、仕事の本のおもしろさを感じて頂けるでしょう。

編著者: 小原啓子・河野佳苗
縦型A4判: 104ページ/カラー
出版社: 医歯薬出版株式会社
発売日: 2014/1/10
価格: 3,800円+税5% (税込3,990円)

経営課題をブレークダウンする 適正在庫のノウハウ

『品切れと在庫を減らす』
相反する両者をどのように一体化し、実現させるのか、それが分かるのが本書です。

1、 大事なのは、品切れが発生するから在庫を置く増やすではなく、品切れが発生するプロセスや原因について解明し、「仕事の仕組みを変える」などの対策をとることにより、強い基盤を作らねばなりません。それが結果的に平準化につながります。グラグラの基盤の上にどんなシステムを作っても絵に描いたモチになります。 
2、そのうえで、経営層からの在庫目標としての金額的トップダウンと、現場からの数量的ボトムアップと整合性をとって一体化し「適正在庫」としています。
3、在庫目標⇒在庫計画⇒部品レベルの基準設定や調達方法まで、著者独自の複合ABC分析や、統計的安全在庫の手法などの理論的裏付けと、展開の手順について実データを示しながら分かり易く説明していますので、実務に応用できます。

著者: 中村謙治
単行本: 231ページ
出版社: 秀和システム
発売日: 2011/4/5
価格: ¥2310

企業向けマーケティングと組織購買行動

日本の「企業向けマーケティング」に関する研究と教育は、消費者向けマーケティングのそれと比較すると、非常に遅れていると言われています。事実、日本語で作成された企業向けマーケティングの論文の数は極めて少ない。また、大学のマーケティング関連の科目を見ると、消費者マーケティング関連の講義は多く見られますが、企業向けマーケティング関連の講義はほとんど見受けられません。しかし、消費者マーケティングと企業向けマーケティングの重要性にそれほど大きな差異はありません。経済的視点から見ても企業向けマーケティングがもっと重視されるべきなのです。
本書は、「売り手企業が効率的に受注確率を向上させるためにはどのように営業活動をすべきか」というテーマを「組織購買行動論」からアプローチし、面談調査やアンケート調査を実施して検証し、これらの研究成果をまとめたものです。

著者: 黒川和夫
単行本: 234ページ
出版社: 五絃舎
発売日: 2013/9/15
価格: ¥2,940(税込)

グローバルに伸びる製造業 3D活用でプロセス改革 
開発設計マネジメントの理想と13の成功事例

日本製造業の海外展開は販売、製造の進出から始まり、現在は海外売上拡大の方針や顧客の海外進出に伴い、開発設計領域でも拡大傾向にあります。
海外展開には海外拠点の役割明確化は当然のこと、海外の業務レベル向上を国内側で支援しなければなりません。また国内外の連携も3Dなど様々なデータの活用が必要です。
これら様々な開発業務の改革が必須ですが、改革推進中に不十分になりがちな点が2点あります。1つは経営や事業の目標・方針と結びついた開発部門全体の目標と方針策定、もう1つは創造的な開発業務へのIT活用(登録や管理など作業業務ではなく、設計課題解決に直結する業務への活用)です。
本書ではグローバル開発を行う際の単なる3D活用だけでなく、経営や事業の目標からの活用方針の検討、実現までの総合的ソリューションを述べています。
開発の海外進出や強化を推進されている方、開発業務の改革を推進されている方に、すぐに活用いただける内容です。

著者: 岡部仁志、新井本昌宏、渡辺智宏、鳥谷浩志
単行本: 252ページ
出版社: 日経BP社
発売日: 2013/5/27
価格: ¥2,940
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改正高年齢者雇用安定法対応 
高年齢者雇用時代における人事・賃金管理

本年4月1日より高年齢者雇用安定法が改正施行され、65歳まで希望者全員の継続雇用が義務化されました。
最近のコンサルティングにおいても、50歳台、40歳台からの賃金カーブの是正、昇給制度や役職定年制度、脱年功型の役割と成果型の人事賃金制度への見直しなどの相談が実際に増えてきています。
本書は、65歳完全雇用から70歳雇用、ひいては定年なき時代までも見すえて広くトータル人事制度のリニューアルの必要性について提唱しました。
実践的な人事労務コンサルタントの立場から、法改正への現実的な対応策及び中期的な視野での人事賃金制度改革の進め方について、できるだけわかりやすい言葉に置き換えて解説してみたものです。

著者: 二宮孝
単行本: 237ページ
出版社: 経営書院(産労総合研究所)
発行: 2013年4月30日
価格: ¥1,890
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提言ご紹介

アートスタイル経営㊤

老舗の温泉旅館が展開/驚異的なリピート率実現

山本英夫(南関東支部)

栃木県の板室温泉に大黒屋旅館という創業460年を迎えた温泉旅館がある。栃木県では最も長く続いている会社であり、現代アートを経営に取り入れて、独自の経営展開をしているということで、業界ではよく知られているユニークな旅館だ。2005年に、企業メセナ協議会から「アートスタイル経営賞」という賞を授与されてから俄然注目を集めるようになったと言う。
以来、大黒屋の経営を「アートスタイル経営」と言うようになり、10には『ちっちゃいけど、世界一誇りにしたい会社』(坂本光司著、ダイヤモンド社刊)の中でも取り上げられた。慢性的不況の温泉・ホテル業界にあって70数%のリピート率は驚異的な数字である。
 この16代当主の室井俊二社長とご縁をいただくことになり、その経営の本質についてお聞きすることができた。聞けば、現代アート、とりわけ「もの派」と言われる現代アートのパイオニア的存在である「菅木志雄氏」の作品の収集をしており、同氏の作品と対話しながら経営感性を磨くとともに、感性論哲学という哲学をベースにした経営を展開してきたと言う。
 私は、その感性論哲学を創始者である哲学者・芳村思風氏を師事し、同哲学を経営に落とし込んだ「山本英夫の感性経営」を構築してきた。感性論哲学という哲学を共通項として、より深く関わることができたのである。
 実際のところ、室井社長も「アートスタイル経営」という経営の体系化を進めており、パートナーを求めていたところだということで、大いに話は盛り上がり、共著でその内容を本にしようということにもなった。主として、実践は室井氏、理論は私、ということで2人の共同編集作業によって「アートスタイル経営」の体系化が強力に進められていった。現代アートは時代を映す鏡であり、哲学は時代を興す学問である。それをもって、新しい経営を創造しているのが室井社長。
昨年末には、室井俊二という経営者、菅木志雄という現代アーティスト、芳村思風という哲学者、この3者で奏でられる「アートスタイル経営」について浮き彫りにした『感性論哲学からのアプローチ・進化するアートスタイル経営』(室井俊二監修 山本英夫編著 静岡学術出版)が出版された。21世紀を拓く新しい経営のホイッスルが鳴ったような気がした。
(平成23年2月16日 日刊工業新聞掲載)

アートスタイル経営㊥

現代アートを経営資源に/ベースに「感性論哲学」

山本英夫(南神奈川)

板室温泉大黒屋の経営理念資料には以下のように「アートスタイル経営」が定義されている。「アートスタイル経営」とは、広義には、現代アート、またはアート的要素を経営資源の一つとして経営に取り入れ、経営に生かして進める経営のことを言う。狭義には、つまり「大黒屋・アートスタイル経営」という場合には、次のように定義する。
根底に「感性論哲学」という哲学を据え、「感性」を原理として経営を展開する上で、現代アート、とりわけ菅木志雄氏の「もの派・現代アート」の思想と作品を見る者をして、自らの感性を成長させるものとして活用し、そこから醸し出されるビジネス空間そのものを経営資源化して進める経営のことを言う。
また、その時に「〇△□の経営」という視点と「禅的経営」という視点も加味された独自の経営の総体を言う。
感性論哲学という哲学をベースとしているという点では、「アートスタイル経営」は理念経営そのものである。経営は「3つのおもい(念い・想い・思い)」から始まるとする「"おもい"の経営」である、としている。
その上で「〇△□の経営」と「禅的経営」について言及しておきたい。つまり、「アートスタイル経営」を形や構造として見た場合に「〇△□」で説明できるのである。「〇=目標、△=行動、□=基本」とするのが基本だが、室井氏は「〇=発見、△=ゆらぎ、□=志」と展開していく。禅的には「〇=悟った自分、△=修行している自分、□=修行に入る前の自分」ということを江戸時代の禅僧・仙崖は「〇△□乃書」に表している。
ちなみに、「〇△□の美しさって何?」というサブタイトルの『中・高校生のための現代美術入門』があり、〇△□で見事に現代美術を解説している名著もある。
また、「〇=調和作用・善、△=統一作用・美、□=合理作用・真」ということもでき、真善美を追求する経営でもあり、「経済」「道徳」に「文化」を加え、「経済・道徳・文化、三位一体の経営」という面もあると言う。
まさに、大黒屋ならではの「アートスタイル経営」という独自の世界が展開されている。「21世紀の経営を拓く」可能性を感じさせる新しい経営の実験である。
(平成23年2月23日 日刊工業新聞掲載)

アートスタイル経営㊦

継続の中に本質がある/ワークショップで体感を

山本英夫(南関東)

3回にわたり、「アートスタイル経営」について語ってきた。しかし、語っても語っても言い尽くせない。かえって、語るほどに現実と離れていく感じがして仕方ない。「感性、感性。アート、アート」と言うほどに陳腐に聞こえてきてしまう。理性的で観念的な言葉の限界がそこにある。
それでも何とかして「アートスタイル経営」を伝えたいと思い、室井社長に「実感!アートスタイル経営」というワークショップ型の経営セミナーを企画提案した。
板室温泉・大黒屋に来てもらい、そこに展開されている理念空間に身を置いていただき五感六感・全身全霊で感じてもらう。菅木志雄という「もの派・現代アーティスト」の作品世界に身をおいてもらう。もちろん基本的なガイドはさせていただくが、主役は参加された方であり、その人の感性。その「感性」に気づいてもらい、それを深堀りして、ブラッシュアップする。
「感性・〇△□・行動」というのが、このセミナーのテーマである。その人の感性で感じてもらい、その感じを〇△□で理性的に組み立て、それに基づいて行動する。そういうシンプルなスタイルをワークショップを通じて体感してもらうのである。1泊2日の泊りがけの、しかも全国でも名湯として知られる板室温泉にもつかれる、というおそらく日本で唯一の経営セミナーだと思う(詳細は「実感!アートスタイル経営」というホームページ参照)。
今年から毎月開催するということで、1月からスタートさせていただいた。おかげさまで好評のうちに、第1回目は修了することができた。今年1年かけて「アートスタイル経営」セミナーに磨きをかけて続けていくが、継続の中にこそアートスタイル経営の本質がある。創業460年の大黒屋の家訓に「石垣を積むように」という言葉がある。何事も「石垣を積むように」基本を徹底していきなさい、それが継続の要諦である、ということである。状況イメージが浮かんでくるとともに、行動イメージも浮かんでくる。ここにこの家訓の凄さがある。自らが抱えている問題に置き換えて考えることでヒントをくれるのである。あなたの「石垣を積むように」をモノにしていただければと思う。
(平成23年3月2日 日刊工業新聞掲載)

「はやぶさ」に学ぶ逆境に強く生きる思考法

真正面から困難に挑む/耐える精神が未来開く

上野延城(埼玉)

昨年の最も明るい話題の一つは小惑星「イトカワ」から表面の砂を持ちかえるという任務を成し遂げた「はやぶさ」である。
通信やエンジンなどのトラブルで絶対的なピンチを乗り越え、7年もの歳月をかけて世界で初めて小惑星への往復航行を成し遂げた。映像で燃え尽きた姿に多くの人が感動したのではないか。
 困難や失敗があってもあきらめないで、逆境に立ち向かうことの必要性をあらためて知らされたと人々は感想を述べている。
 2010年ヒット商品番付けの中でも殊勲賞に選ばれている。快挙の裏側には状況に応じた最善策を行った不断の努力があった。
 進化論で有名なダーウィンは「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでなく、唯一生き残るのは変化できる者である」と述べている。
何事でも変化に対応する、しなやかさがなければ生き残れない。「はやぶさ」の偉業を我が身に置き換えてみて、実践してみてはどうか。
 人間は困難にぶつかると逃げようとする。しかし、苦しみに真正面からぶち当たること以外に、苦るしみから逃げる道はない。逃げれば苦しみはもっと強い苦しみになって追いかけてくる。
 低迷する消費市場に打ち勝つには、人頼りの姿勢をやめて、自分が主体にやる気にならないことには始まらない。
 人頼りの姿勢の特徴は必ず相手のせいにする。環境が良くないといって、グチや不平をたらたらと言う。たとえどんな状況になっても、商売に言い訳は許されないのである。
 「はやぶさ」のプロジェクトマネージャー、川口淳一郎氏は著書「はやぶさ」式思考法の中でトラブルは勲章と思えと語っている。挑戦しないかぎり未来はこない。そこから逃げず挑戦し続けという意味で多くのトラブルは、いわば、私たちの勲章だと思っている。
 また、減点法と加点法の違いは、失敗をカウントするか成功をカウントするかである。減点法を止めて加点法にしようとも述べている。人間のやる事にはみな大差はなく、事を成し遂げるか、逃げるかの違いである。
 厳しい環境にも逃げないで耐える強い精神が現代は必要である。
(平成23年3月9日 日刊工業新聞掲載)

IT導入計画のススメ

二つの戦略的投資方法/「効率」と「効果」を考えて

阿部 満(南関東)

中小企業は機動性や特殊な技術ノウハウを持ち、時には大企業の集団的な組織力を超える、熟練工や職人による神業的な技術や技能の専門性を持ち合わせている。
しかし、その反面、経営資源のヒト、モノ、カネ、情報の中で情報の活用の格差が企業力の違いになってきた。ではなぜ、情報、つまりITの活用が進んでいる企業と全く進んでいない企業の二極化が進んでいるのか。
それは、中小企業では「自社にITの専門家がいない」「IT投資と効果が明確に見えない」「ITを従業員が使いこなせない」など、ヒトとカネを使ってIT化をわざわざ行うことへの不安材料があるとされている。
また、はたしてどのようにIT投資を行えばよいか。正直なところ、本当に自社にとって効果が上がるのかが見えていないのだ。そこで、それらのIT投資と効果を明確にさせるために「IT導入計画のススメ」と題してご説明していく。
まず、IT化を行うには企業ごとのITサイクル(段階的なIT導入の流れ)があることをご理解いただきたい。このIT化サイクルとは大きく二つの戦略的投資方法に分けられる。
一つは、IT化によって効率性を求めること(コスト削減効果・生産性向上など)。もう一つは、効果性を求めること(売り上げ・利益向上など)。つまり、IT化サイクルとは効率性と効果性の二つを考えてIT導入計画を練ることが重要になる。
では、さらに具体的に説明すると、効率性のためのIT化とは財務・会計システム、人事システム、発注や在庫管理システム、工程管理システム、原価管理などのIT化をいう。
一方、効果性を求めるIT化とは、ホームページ、ビジネスブログ、電子商取引(Eコマース)、グループウエアシステムや販売管理システム、顧客管理システム、営業支援システムなどをいう。
このようにIT化サイクルを意識し、IT導入による効率性と効果性を考えながら、定量的な目標に加え、IT導入計画を立てていただければ、読者の皆さまのビジネスモデルも良い形で変革していく。ぜひIT導入計画からススメてみていただきたい。
(平成23年3月16日 日刊工業新聞掲載)

「ウーマノミクスが日本を変えるか」を、検証する

女性登用進まぬ日本/なお「結婚」「出産」の壁

島影教子(東京支部)

いきなり「ウーマノミクス」を持ち出してもご理解いただけないだろう。かく言う自身も今年の1月11日のNHK番組「クローズアップ現代」で出会うまで「ウーマノミクス」の言葉を知らなかった。「ウーマノミクス」は、造語で「女性経済」=「働く女性たちの活躍」のことを言うらしい。つまり、女性を活かすことで社会を元気にするという主旨のものである。類語に「ダイバシティ」や「ワーク・ライフ・バランス」などの言葉がある。それぞれ正確には内容は異なるものの、いずれも女性雇用を増やし、労働力強化を図るものである。
「勤労婦人福祉法」として「男女雇用機会均等法」が施行されたのは元々、72年(昭和47年)。わずか39年の前の話であり、その後86年、97年、07年と改正され、現在は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律』と、なんとも長い名称になっている。
内容は、性による不利益な差別や妊娠や出産を理由にした退職強要や配置転換などの禁止、さらには女性だけでなく広い意味での性差別を捉えているところに特徴がある。主旨は、少子高齢化による労働力減少対策でもあり、有能な女性が子育てをしながら職場復帰できる環境整備でもある。内閣府の「男女共同参画局」や財団法人21世紀職業財団でも「働く女性の活躍推進の支援」を大きく取り上げている。
 近年よく耳にする「イクメン」なる言葉も均等化の表れのひとつであろう。しかし、現状は法的には整備されても、実際に育児休暇を取る男性の数はいっこうに増えない。ゴミ出しやアイロン掛け、キッチンに入る"主夫"や子供を抱く男性の姿は増えてはいるのだが、これは単に今のヤングファミリー層が奇をてらわないだけであり、また「草食男子」が増えた傾向現象であろうと思う。
実際に女性役職者が増えているだろうか?国会の女性議員の数が半数になっただろうか?全て否である。国内の女性労働者は現在、およそ2300万人。「共働き」の割合は、97年頃から「男性片働き」を逆転し、女性の収入が中流家庭を支えているのである。
先日、大手商業施設で女性の店長にお会いした、同じ女性として「増えてきましたね」と、敬意を込めて声を掛けたが「いや、まだ全国でも数人にも満たないんです」と、返事が返ってきた。会社も一時期、女性管理者を増やそうと努力したようだが、現実には「結婚」「出産」の壁を乗り越えられなかったようである。  わが国の25―54歳層の女性の有業率はM字谷と言われるもので30歳から35歳の数値が谷になる。これが、環境整備が整う海外ではゆるい山型でスウェーデンやオランダは特に顕著である。女性管理職比率も同様で日本は大きく立ち遅れているのだ。「ウーマノミクス」の言葉だけでなく取り急きの環境整備とキャリアを持ちながら活かせない、あきらめない時代を創りたいものである。
(平成23年3月23日 日刊工業新聞掲載)

中小企業会計基準のダブルスタンダード化

高まる情報開示の重要性/一層具現化の方向へ

岡部勝成(九州)

近年、国際会計基準のコンバージェンス(収束)やアドプション(採用)によるわが国の会計基準に関する議論は大企業に限らず、中小企業にも影響を及ぼしている。なぜならば、中小企業版の国際会計基準が2010年7月に公表されたことも起因しているといえよう。  とりわけ、わが国には約260万社(全法人の98.4%)の中小企業があり、その対象となる会計基準は中小企業の会計に関する指針(会計参与制度導入または導入可能等)と、それ以外の会計基準構想(「中小企業の会計に関する研究会」「非上場会社の会計基準に関する懇談会」「中小企業の会計に関する検討会」)」に分かれて議論が活発化し、中小企業会計基準のダブルスタンダード化の方向に舵をとっているように思われる。また、10年12月から11年1月にかけて経済産業省・中小企業庁は税理士に対して、「中小企業の会計処理・財務情報開示に関する税理士意識アンケート」を実施した。これは、中小企業を取り巻く環境が、金融環境や取引構造の大きな変化によるものであり、適正な会計処理に基づいた中小企業の情報開示の重要性が高まっているためである。それはステーク・ホルダーである取引先や金融機関から資金調達する上で有用性があるからである。さらに、中小企業の経営者には、財務諸表のデータに基づき経営状況を把握・分析し、効率的な経営判断を行っていくことも重要性を増している。現在、「中小企業の会計に関する研究会」や「非上場会社の会計基準に関する懇談会」、さらに「中小企業の会計に関する検討会」も設置され、経営者自ら会計処理を担えるようにする目的で、財務諸表などに盛り込むべき項目を減らし、言葉遣いも分かりやすくするとしている。05年8月に日本公認会計士協会などが作成した「中小企業の会計に関する指針」は、盛り込む内容が多岐にわたり、企業の利用が進んでいないという指摘もある。今後、経営者やステーク・ホルダーに受け入れられる中小企業会計基準が作成されることを鑑みると、中小企業会計基準のダブルスタンダード化は一層具現性を帯びるため、混乱が起きないことを望む。
(平成23年3月30日 日刊工業新聞掲載)

計画停電より総量規制を

企業と家庭に同等の負担/細かい配慮で国民の賛同

塚本裕宥(北関東支部)

大震災へのお見舞いを申し上げ本題に入りたい。電力会社実施の当座の計画停電はやむを得ぬことと賛成する。しかし計画停電は各方面の努力を認めない方法で、長期実施には適していない。賛成しない。富や雇用の源泉は企業が生み出すものであり、企業に工夫の余地がない計画停電は得策でない。
今回図らずも日本は世界の重要部品などの供給国であると分かった。省エネルギーは必要だが基幹産業などに無理な要請は不適だ。余談だが、重要部品を価格競争する必要がないことも分かったはず。
国難とも言える今、企業と家庭を同列とし、両者に同等の負担を強いてよいと考える。企業、家庭双方に総量規制するのが適切と考える。 ピーク時消費電力を考えれば、企業より一般家庭に重点を置き、以下を実施するのが適切とも言える。最近では7割が家庭用と聞くからだ。
東京電力、東北電力の顧客窓口には提唱済みであるが、両社などに改めて提案したい。一般家庭に向けに曖昧な「省エネの要請」でなく、強い調子で、例えば30アンペアのブレーカーを20アンペアに変更するよう要請すべきときである。暖房や冷房需要の少ない4、5月が本案実施の適期である。
家電メーカーにも提唱したい。温風ヒーターや掃除機は消費電力1000ワットでなく、600ワット程度で十分であると思う。消費を冷えさせず、電力会社のピーク時消費電力の低減に協力しようではないか。
電気料金については最低限の基本部分は値下げ、次の段階は従来同様、それ以上は高額料金にするなどの工夫が必要なのは当然だ。インセンティブが働くようにすることだ。
自家発電を持たぬ病院などについて総量規制しないのは当然だ。きめ細かい配慮があってこそ、多くの国民の賛同を得て本提言が生きる。企業に自家発電などの工夫を促すのも得策だ。
湿気が多く蒸し暑い日本の夏は、開襟シャツ、半ズボンで出勤するのが当然として、背広姿での通勤など従来の常識も変えたいものだ。
長期で根源的提言をしたいが、急を要する具体的な本提言を急いだ。政争に明け暮れる政治家には頼らず、国民が賢くなろう。
(平成23年4月6日 日刊工業新聞掲載)

グローバル化における企業の雇用能力の革新

若手に異文化の体験/個を生かす環境づくり急務

西 満幸(東京支部)

日本の貿易依存度はドイツの半分以下、直接投資残高対国内総生産(GDP)比は先進国の数分の一にすぎない。わが国の生産人口が減少する中でこれからの経済、社会を活力あるものにするためには、企業の雇用能力(エンプロイメンタビリティー)を革新し、貿易と内外直接投資を拡大する必要がある。
このためには、第一に、国内外の市場で勝つことに重点を置いた雇用能力の向上である。技術で勝ち、市場で負けてはいけない。組織社会の要である企業が先頭を切ってこの革新に取り組む必要がある。
第二に、若い20代社員の異文化での仕事・生活体験である。世界は小さくなったにもかかわらず、わが国では内外の異文化の中で活躍できる人材が絶対的に不足している。
歴史を振り返るまでもなく、異文化との意識的な接触があった後に日本は栄えてきた。隋・唐、明治の欧州、戦後の米国へ、若者たちが留学し、他の知と融合し、時々の新生日本を創ってきた。
この主役は常に若い20代である。異文化の中で仕事をし、世界のライバルたちと交わり、肌で感じ、それを暗黙知として吸収する。その中から世界が見えてくる。これは、羅針盤なき企業の成長戦略にも必須である。「かわいい子には旅をさせよ」ではないか。
第三に、多様な人材が個として働きやすい環境づくりである。異質との共生が求められる時代では、多様な文化や価値観を前提に、企業も個人も自立し、集団主義から個を生かす社会づくりへの変革が急務である。雇用、賃金、リカレント教育、退出障壁などは改善する必要がある。特に、わが国特有の一括新卒採用は、内外の留学生や既卒者らにはバリアーで撤廃すべきである。
ヒト・モノ・カネ・情報がグローバルに自由に移動する現在、企業の活躍の場は世界である。グローバル化のドラマは佳境を迎えており、企業はこれを、第二の黒船として捉え危機を機会にする。真のグローバル化を若者が暗黙知として捉え、「知行合一」を実践する。明るい未来を実現するためには企業も個人も痛みを覚悟して集団主義から日本らしい個の確立へ向けて、ルビコン川を渡る時代を迎えた。
(平成23年4月13日 日刊工業新聞掲載)

東日本大震災からのメッセージ

顧客視点の価値創出/求められる利他の精神

福島 光伸(埼玉支部)

3月11日に発生した東北関東大震災は、未曽有の被害をもたらし、今もなおその被害の全容さえつかめていない。被害にあわれた皆さまには改めてお見舞い申し上げる次第である。
今回の震災は大きな不幸をもたらしたとともに、今までわれわれが培ってきた利益至上主義、利己主義、倫理を忘れた経営、それらがもたらす軽薄な文化などを押し流したと考えるべきだ。
震災前、われわれは将来が見通せない閉塞感に悩んではいたが、その中でも何とかはなっていたし、経営においても「そうは言っても何とかなる」と考えていた。
震災に対する海外からのある記事で「日本は過去の2回の復興と同じように今回も立ち直ることができるか」というものがあった。その記事によれば過去の2回の復興とは明治維新と戦後復興のことであり、決してバブル崩壊やリーマン・ショックレベルのことではない。つまり、価値観が根本的に変わることに対して対応できるのかという意味を含んでのことであろう。
われわれにはいま、経営の原点に帰り、顧客視点の価値の提供に努め、その対価として利益を得るという活動が改めて求められている。利己ではなく利他が求められているのである。
そして二律背反する利他と利己の矛盾の中で利潤を上げ続けるという難易度の高い経営が求められている。
それができる企業は知恵の相乗効果が発揮できる企業であり、決して個人に依存する経営ではない。「知の化学反応」とも呼ぶべき議論の場を持っている企業である。
被災者の方々には大変お気の毒だが、今回の災害は「経営の原点に返って利他のために組織とシステムの経営を目差せ」という天からのメッセージととらえるべきである。
われわれは今こそ「企業のもつ価値観を変え、組織とシステムで顧客視点の価値創出の場を創る」ということに取り組むことが求められている。
そのためのスタートはまず経営者が、今回の災害が大きな見えざる力によって、世の中を変えようとしているということに気付くべきであろう。
それこそが経営の世界に生きるわれわれができる唯一の弔いではないだろうか。
(平成23年4月20日 日刊工業新聞掲載)

原発事故は想定外だったのか

希薄なリスクマネジメント/天災の教訓から学ぶ

青樹 道弘(東京支部)

東日本大震災による福島第一原子力発電所の放射能漏れの脅威が、日本中はおろか、世界中に降りかかっている。しかしながら、これは人災とも言えるのではないだろうか。確かに今回は400年に一度の地震であったであろうが、過去にもこれ以上の津波はあったのである。では、なぜマグニチュード9.0、高さ20メートル以上の津波を想定できなかったのかと言いたいのである。これから復興を図るにしても、これ以上の規模の地震と津波が襲っても影響がないような立地条件を守るべきであるだろう。
現在、日本では原子力発電は避けて通れない方法であるが、この原発事故は全世界の既存設備、新設予定に関しても見直しの問題を投げかけている。同時に放射能汚染問題が農産物・牛乳・魚介類を脅かしている。
特に魚介類に対しては、規制がなかったとの発表をしているが、大気汚染に続き汚染水の流失が分かった時点で、この問題は我々素人でも気になっていたことである。
これが想定できなかったから対応の基準値をこれから決めるという後付けの回答であった。
規制範囲内の農業・酪農業、畜産業、水産業、一般企業者は全て静観しているしかないものの、日々の生活は営まなければならない。「補償」という言葉で済む問題ではない。海外では日本産でくくられており、海外にある日本料理店の来訪者も激減しているそうだ。とんだ風評被害である。
さらには経済面においても世界中に影響を及ぼしている。震災後、一気に円高に進んだ為替も円安にストップがかからないような勢いもあった。この挙動は阪神・淡路大震災後の流れに類似しているが、ここから先の動きについては何とも言えない状況である。原発事故に収束の兆しが見えたなら為替はどのような挙動を示すのか、今からシュミレーションしておくべきであろう。
発端は全てリスクマネジメントの希薄さが今日の大きな問題となっているのである。今回の、地震・津波・原子力発電所トラブルのもたらした被害は、はたして全て天災だったのだろうか。まずはトラブルを最優先で解決した後で、もう一度この天災のもたらした教訓を再考すべきである。そして復興のためにも記念行事の自粛もよいが、どこかでケジメをつけて経済活性化を皆で実行することが必要であると考える。
(平成23年4月27日 日刊工業新聞掲載)

「なんとなく経営」から脱皮せよ!

個人商店的運営に成長なし/社員が変わる環境必要

山田 亮(東京支部)

中小企業の実態をみていると、あまり良い表現ではないが「なんとなく経営」が多いのが実情である。「なんとなく経営」とは、将来への不安は間違いなくあるものの、それまでと同じ「なんとなくそのままのやり方」で今をどうにか凌いでいるというものである。何を「なんとなくそのまま」にしているかというと組織運営の方法である。
多くの中小企業の組織運営の方法は「各個人が個人商店的にバラバラに頑張る」というものであり、その個人商店の集まりが一応組織ということになっている。その運営方法の中で必ずと言ってよいほど起きている現象は「できる人はできるができない人はできない」というもので、つまり「できる人」はわずかほんの一握りしかいないが、そのできる人に過度に依存するというものである。確かに現時点ではこの方法でも何とかやっているという企業もあるが、しかしこれから先もこの方法が通用し続けるとは考えにくい。
そもそも、この方法自体は景気が良かった時にあまり面倒なことを考えなくともそれなりに伸ばしていけたという過去のものであり、現在のような成熟経済の中でも同様に伸ばしていける可能性は限りなく低い。しかし多くの中小企業ではさまざまな個別事情を理由に、個人商店的運営方法から脱皮するような新たな組織運営方法を取り入れずに「なんとなくそのまま」を依然として続けている。
企業において何かを変えたいと考えた時、社員の活動が変わらない限り、何かが良い方向に変わることなどあり得ず、また「活動を変えたい」と考え「活動を変えなくては駄目だ」と経営陣が説いてみたところで、活動が変わるというのもまれである。
誰でも新たなことは取り入れずに、長年慣れ親しんだやり方を継続したい。それでも社員の活動が本当に変わるのは「本気で変わらざるを得ない環境に身を置かざるを得ない時」に変わるものである。
「組織は腐敗する」という古くからの言葉通り、「組織に必要な施策」を怠って「組織が良くなる」「社員の活動が変わる」ということは皆無に等しい。そのようなベーシックな組織運営のメカニズムを改めて見つめ直してみてはいかがだろうか。

(平成23年5月11日 日刊工業新聞掲載)

東日本大震災の教訓

最悪の事態を想定する/語り継ぎ風化させない

近藤 肇(中部支部)

3月11日、東北・関東地方を襲った地震と津波はかつてない規模で発生し、その被災状況も全容の把握にはまだ時間が掛かるだろう。死者・行方不明者数(2万人~3万人)は戦後最大といわれる。まさに地震国日本を象徴する出来事だ。
日本は今まで、地震予知システム、耐震設計・構造、避難マップや自衛組織の訓練、救援システム、各種の保険など震災に備えるため、ハード・ソフトの両面で対策を打ってきた。それらは各国の手本にもなっている。これまでにも何度も大規模な地震・津波に襲われてきたが、その都度被害を最小限に抑えることが出来たのは、それら非常時に備える日本社会の意識の賜物である。しかし、それにもかかわらず想定を超えた震災は襲ってくる。
科学技術の発展は多くの繁栄と利便性をもたらした。その結果、人間の自然に対する畏怖の念は、どこかへ消えてしまったかのようだ。しかし科学の発展は同時に人類に対する脅威にもなる。今回の大震災は、まさに人間の自然に対する無力感を思い知らされた。科学至上主義、経済至上主義への警告ともいえるであろう。
私は少年時代、名古屋に在住して1959年(昭34)の「伊勢湾台風」を体験した。
風速60メートルを超える台風の来襲時に深夜の満潮が重なり、堤防は決壊し多くの流木が住宅地に流れ込み、多数の死者が出た。堤防に打ち上げられた死体の数々は50年以上たった今でも私の記憶から消え去ることはない。水害の恐ろしさを身をもって体験した。
しかし年月が経過し災害に遭った地域にもいつしか住宅や工場が立ち並び、当時の被災地のイメージはどこかへ消え去って忘れ去られている。このたびの震災の報に接して、私は企業の心得として以下のことを提言する。
① 過去の物差しで未来を推し量ることは不可能である。最悪の事態を想定すること。
② 災害に備えて常に地域社会、協力工場や関係会社との緊密な関係を保つこと。
③ 災害に際して心に響く社会貢献を心がけること。「貧者の一灯」は信頼の回復につながる。
④ 災害の事実を語り継ぎ、風化させないこと。次世代に語り継ぐことによって自然に対する敬虔な気持ちを維持できる。

(平成23年5月18日 日刊工業新聞掲載)

6次産業化法の制定~儲かる農業の実現に向けて

生産・加工・販売を一体化/付加価値高め雇用創出

近藤 肇(中部支部)

6次産業化とは、農林漁業者がその生産事業(1次産業)だけでなく、2次産業(加工事業)や3次産業(販売事業)にも取り組み、農林漁業者が新事業の創出に積極的に関与して所得を増やす。儲かる農林水産事業を実現して、その結果、食料自給率の向上に寄与することを目的とする。
現在、日本の食料自給率は41%。そして農業に携わる人口は290万人であり、これは全労働人口の4%に過ぎない。そのうち61%は65歳以上の高齢者である。農業の将来を考えた場合、実に悲観的なデータと言わざるを得ない。
後継者が不足しているので耕作放棄地は全国で38万ヘクタールに及ぶ(農地全体の8%に相当する)。この状況を改善するためには農業を魅力のある職業にすることが必要だ。6次産業化とはまさに農業を多角化して農産物に付加価値を高めることである。
従来の農産物を加工して、ジャムや漬物を製造し売り上げ増加につなげる。景観を利用して、酪農体験、自然体験を促進するため、青少年の教育(教育ファーム)や民宿による観光収入に結び付けて経営の安定化を図ることが必要だ。
ドイツの農業従事者でも農業本来の収入は全体の半分程度であるといわれている。他は農家民宿、結婚式、誕生会、パーテイ―などのイベント、ショップ、レストラン事業といった兼業で収入の大半を賄っている。
とりわけドイツではグリーン・ツーリズムの意識が強く、BAG(協会)やDLGなど政府、自治体、産業界の支援制度が充実している。したがって農業者にもマネジメントのノウハウを吸収する機会が多く、その意識も高いといわれている。 今回、6次産業化法が成立した背景にはそのような日本の農業の抱える課題を解消することがあり、まさに政府・産業界を交えた国家的産業支援制度といえる。そこには農業を基盤とした諸処の地域資源を活用して儲かる農業を実現し、農業人口を増加しようとする姿勢がうかがえる。
また従来から取り組んでいる産地直売の普及、野菜の加工などにより、女性の特技を生かして雇用の拡大にもつなげられる。またこの制度は一定の手続きにより認定を受ければ、さまざまな支援を受けられる。
例えば①加工施設、直売施設などの費用の半分を国から補助が受けられる②輸出などの取り組みに当たって各セミナーや商談などに参加できる③融資面でのバックアップ。
最大2,000万円借り入れが可能な短期運転資金(スーパーS資金)の活用、農業改良資金(無利子)の特例適用-などがある。

(平成23年5月25日 日刊工業新聞掲載)

まちづくりと農商工連携

地域活性化の起爆剤に/努力と信念で危機克服

矢島英夫(東京支部)

3月11日の東日本大震災、津波被害には、目を覆うものがある。このような時にまちづくりと農商工連携は、どのように対処すればよいのか。三つの実例を踏まえ検証してみたい。
中堅の酒造会社である神戸酒心館(神戸市東灘区)は、1751年に醸造を始めた。戦争末期の1945年6月5日、空襲ですべての酒蔵を焼失。戦後近隣の蔵元を買い取り、生産再開にこぎつけた。
1995年1月の阪神・淡路大震災は灘地区に大きな打撃を与えた。震災復興では、19億円の融資活用により、免震構造の蔵に直売所、イベントホールを併設。年16万人が訪れる観光スポットとなっている。
 1875年創業の鏡山酒造(埼玉県川越市)は2000年9月に幕を閉じた。その跡地は10年10月に川越市産業観光館として観光の拠点施設に変わり、市民と観光客との交流を促進させ地域の活性化を図る場所となった。
06年に新たに設立された小江戸鏡山酒造は、08年9月に農商工連携の認定を受けた。酒造りに適した新酒米「さけ武蔵」を地元農家が量産化。新酒米の配合を高めた新味の生酒を製造、観光客が通年楽しめる体制を整えた。さらに、酒米の生産から製造までの体験ツアー企画を提供、観光の新しい視点を生み出した。
いろどり(徳島上勝町)は、料理のつまもの(葉っぱ)に使う材料を販売し、全国でも有数の地域活性型農商工連携のモデル町となっている。
81年2月に起きた寒波による主要産業の枯渇という未曾有の危機を乗り越え、葉っぱを中心に新しい地域資源を軸に地域ビジネスを展開し、20年近くにわたり農商工連携の取組みを町ぐるみで行っている。
東北地方の太平洋側では、地域社会は、今や壊滅状態にある。しかし、これら三つの事例にあるように日々の努力と信念による、地域発展、中小企業の生き残りのヒントがある。  まちづくり団体、NPO、コンサルなどの人々のコーデネートにより未曾有の災難を被った企業などを再生するために、あらゆるスキームを考えることで災害を乗り越えられるのではではないか。

(平成23年6月1日 日刊工業新聞掲載)

社員教育の仕方に工夫を

好奇心持たせ思考力養う/終業後の勉強会も効果

平山道雄(東京支部)

企業内において、部長職や課長職にある人の多くが部下の行動や教育に関して悩んでいるのを見たり聞いたりすることが少なからずある。
部下達は、技術系・事務系を問わず与えられた仕事に対する興味や関心はあるものの、またマニュアルや作業指導書を参照しながら仕事はするものの、扱う製品や仕事のやり方に対して好奇心を持たなかったり示さなかったりする傾向がある。これは就職前の生活(特に学生生活)が就職するために必要な知識修得のみに力を入れてきたためのように思われる。
また企業においては、経費節減の折、費用を節約した社内教育が従来にも増して重要である。企業内で自らが行う教育方法の一つは、日常の仕事を通じて行ういわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)教育であり、もう一つは集合教育の二つが考えられる。この二通りのそれぞれから、好奇心・探求心・観察力・思考力などが培養されるように職場に適した指導・教育方法を組み立てることが肝要である。
OJTにおいては本来の考え方に変化を加えて教えること以外に、目的を明示し確認しながら時間の許す限りにおいて一緒になって悩み考えることにより、部下に製品や仕事に関する好奇心を持たせ、合わせて思考力を養うように仕向ける指導が必要である。
集合教育においては業務上発生した問題解決の場においても目的を明確にし、疑問を投げかけながらブレーンストーミング方式で会議を進め、部下たちに花を持たせた形で解決に当たることで自信を持たせるようにする。
また、毎週一日を定時終業の日と決めている企業が多い今日、月に一日または二日、定期的に終業後2時間程度の勉強会を持つことをお勧めしたい。ここではWF分析法・動作経済の原則・事務工程分析等々科学的管理の基本を振り返ることによる基礎固め(温故知新)、また問題・課題を含んだケースを用いて全員で討議するケースメソッド方式による研究会は探求心・観察力・思考力の養成に大いに役立つものと考える。
日本経営士会ではケースメソッド方式を取り入れたMPP研究(経営士能力開発プログラム)を実施し会員の資質向上に効果をあげている。

(平成23年6月8日 日刊工業新聞掲載)

浮上するエシカル・マーケテイング

「つながり」と「社会貢献」/震災で高まる消費者意識

上野延城(埼玉支部)

東日本大震災の発生後、社会のために何ができるかといった「エシカル消費」が高っている。
 エシカル(ethical)とは「倫理的」「道徳的」という意味。エシカル消費とは、消費者が商品やサービスを選ぶ際に、社会規範に配慮したものを優先する行動を指している。
 エシカル消費の認知度が高まったきっかけは、売上に応じてアフリカに清潔な水を送るといった飲料メーカーのキャンペーンである。  内閣府が2010年に行った「社会意識に関する世論調査」によれば、日本人の65.2%が「日頃、社会の一員として社会のために役立ちたい」と考えている。この割合は10年前に60.7%、20年前は54.1%であった。
このように社会貢献に対する意識は高まっており、エシカル消費は従来以上に根付きやすくなっている。
エシカル消費のメリットは、自分に負担をかけずに、普段の消費行動のなかで自然に社会貢献ができるといった点が挙げられる。
「世の中のために良いことをしたい」「良いことをしている人を応援したい」という思いが、今後、企業や商品を選択する際のひとつの基準になっていく。
消費者のエシカルな意識にビジネスで応える企業も徐々に増えている。
博報堂の震災後の生活と消費の意識・行動に関する調査によると首都圏では「応援消費」が「買い控え」を上回っている。特に既婚女性では「応援消費」の傾向が全体よりも高い。
 エシカルはこうした消費者意識と企業活動や商品・サービスをつなぐキーワードとしての役割をもたらしている。
 エシカルの言葉の認知度が高まれば、企業の姿勢は今まで以上に消費者に訴えやすくなる可能がある。
 東京大学大学院の松原隆一教授は、つながりを重視する消費は、社会への貢献を重視する「エシカル」な方向へ向かうので、企業はビジネスとエシカルなことをセンスよく両立させ、さりげなくお金を使わせることが大事と述べている。
 商品やサービスの機能だけでなく、社会貢献を付加価値として提案しないと、消費者に受け入れられない難しい時代となっていく。

(平成23年6月15日 日刊工業新聞掲載)

中小企業は今こそBCPの策定を!(上)

緊急事態に備え/ステークホルダーとの信頼構築

小林祥三(東京支部)

東日本大震災で危機管理体制の重要性が強く認識された。筆者は中小企業に今こそBCPの本格的作成を提言したい。
BCP とは「事業継続計画」と呼ばれ、企業が自然災害、あるいは新型インフルエンザなどの集団感染などの緊急事態に遭遇した場合に、事業の損害を最小限にとどめて、事業の早期復旧を可能とするために、平常時に行っておくべき活動や、緊急時における事業継続のための方法・手段などを策定した計画書のことをいう。
  中小企業は、経営基盤の脆弱性のため、緊急事態が突発的に発生した際に、有効な対策を打てなければ、廃業に追い込まれる危険性や、事業を縮小し従業員を解雇しなければならない状況も考えられる。潤沢な経営資源により経営基盤が確立されている大企業よりも、むしろ中小企業にこそBCPの作成は不可欠と言っても過言ではない。
企業は顧客・仕入れ先などの取引先、株主・出資者、従業員、地域社会という四つのステークホルダーとの信頼関係によって成り立っていることは広くいわれていることである。BCPを策定する目的は、緊急事態に直面した場合に、まず従業員の安全を確保したうえで雇用を維持し、取引先との信用を守り、地域経済の活力を守ること、さらに緊急事態に対する中小企業の脆弱性について出資者の抱く懸念を解消させることである。
換言すれは、緊急事態に備えるBCPが策定されていない企業は、それを取り巻く四つのステークホルダーからの事業運営に対する信頼性を損なってしまうことになるといえよう。
現在BCPのひな型は経済産業省・中小企業庁をはじめとして、さまざまな機関から発表されている。筆者はステークホルダーとの信頼関係構築という観点から、特に中小企業に重要な事項は、①企業間の互助体制の確立によるサプライチェーンの確保②運転資金の確保③地域への貢献活動―の3点と考える。
経営コンサルティングを行う経営士は、この3項目を柱に、クライアント企業の業態の特性を勘案し、有効なBCPが作成できるように経営者に助言すべき役割がある。3項目の施策の骨子は、以下2回にわたって記述する。

(平成23年6月22日 日刊工業新聞掲載)

中小企業に今こそBCPの策定を!(中)

企業間の互助体制確立/平時から緊急時に備え活動を

小林祥三(東京支部)

前回、事業存続計画(BCP)策定に当たり、ステークホルダーとの信頼関係構築という視点から、特に中小企業に重要な事項は、①企業間の互助体制の確立によるサプライチェーンの確保②運転資金の確保③地域への貢献活動―の3点と述べた。今回は①の「企業間の互助体制の確立」について、施策の骨子を述べる。
今回の東日本大震災において、企業のサプライチェーンが寸断されるという大きな被害が発生した。大企業に比べ、自社において同一製品の生産拠点を複数持つことが少ない中小企業にとっては、緊急時において同業者間で、被害の少ない企業が被害の大きい企業を助けるという互助体制の確立がサプライチェーンの確保の見地から必要であるため、「企業間の互助体制の確立」はBCPの重要課題である。
このためには、緊急時に備え日頃から同業者団体を通じ、あるいは個別的に情報交換したりして、同業者と友好的な関係を築いておく必要がある。いったんBCPを作成すると、それを眠らせておくのでは意味がなく、平時から緊急時に備え、BCPに記載された事項の活動を行うことが肝要である。
「企業間の互助体制の確立」に関するBCPは、以下の3点に配慮して作成する必要がある。【代替生産先の確保】自社生産施設が被害を受けた場合に備え、代替生産の可能性のある同業者名と担当者リストをあらかじめ作成しておき、緊急事態が発生した場合に代替生産を要請する。自然災害の場合、同一地域にある同業者も同様な被害を受ける可能性場合があるため、遠隔地の同業者を加えることが望まれる。【代替外注先の確保】外注先企業が被害を受けた場合に備え、代替可能な外注先候補企業を事前に調査して、企業名と担当者リストをあらかじめ作成する。【代替生産品供給計画の伝達】顧客にはあらかじめ緊急事態に備えた代替生産品供給計画がある旨を伝えて、供給不安の解消を図り、緊急事態が発生した場合には被害状況と代替供給計画、復旧見通しを速やかに連絡する。自社の被害が軽微で、顧客の被害が大きい場合は、自社従業員を復旧支援のため顧客へ派遣すことも計画に加える。

(平成23年6月29日 日刊工業新聞掲載)

中小企業に今こそBCPの策定を!(下)

必要費用をあらかじめ算出/可能な限り地域支援

小林祥三(東京支部)

本項の最終回である今回は、中小企業に必要な事業継続計画(BCP)の重要3事項のうち、②の「運転資金の確保」と、③の「地域への貢献活動」についての骨子を述べる。
災害を受けた場合、施設の復旧や代替手配、さらに従業員の生活支援のため資金需要が急激に増加する。大企業に比べ財務基盤の弱い中小企業にとっては、必要な運転資金の確保が深刻な問題となるため、②は中小企業のBCPとして重要課題である。②に関して以下の3点を考慮しBCPを策定する。
(1)中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」に記載された「財務診断モデル」を活用して、被害程度に応じた必要費用をあらかじめ算出しておき、災害発生時には実際の被害状況の判定に基づき、不足資金を迅速に予測する。
(2)損害保険契約での補償範囲をあらかじめ明確にし、緊急事態が発生した場合には損保会社に速やかに連絡をして、支払いの早期実現を図る。
(3)被災した中小企業者向けに、公的金融機関による緊急時融資制度があるため、あらかじめこれらの制度が適用される要件及び特別相談窓口のリストを作成して、資金不足が生じた際には、「財務診断モデル」で算出した不足資金の融資を速やかに申請出来るようにしておく。
中小企業は、地域社会と伴に生きるという地域経済の活性化に密接な存在である。自社の事業継続とともに、可能な限り地域を支援することは、地域社会というステークホルダーとの信頼関係構築のために重要で、③は中小企業のBCPにとって忘れてはならない項目である。BCPには以下の3点に配慮する必要がある。
(1)自社事業所近隣で災害が発生した際に、人員の許す限り被災者の救出・応急救護に協力する。このためには、あらかじめ特定の従業員に救命救急訓練を受けさせておくことが望まれる。
(2)自社で災害用に備蓄した飲料水・保存食・防災具などを余裕のある限り地域に提供する。
(3)損傷した住宅の後片付け、救援物資の仕分けなどの活動に従業員の自主的なボランティア参加を企業として支援し、さらに必要に応じて、従業員に業務としてボランティア活動の参加も検討する。

(平成23年7月6日 日刊工業新聞掲載)

ロジカルシンキングを身につけよう

意思決定の精度高める/行動をスピードアップ

豊田賢治(埼玉支部)

政府は消費税増税の方針を打ち出しているが、国民の理解が十分得られているかといえば必ずしもそうではない。国民に対する説明責任が足りないのが原因だと言われている。しかし、ただ説明すればよいということではなく、わかってもらえる説明が必要である。
 企業においても根拠が曖昧なまま事業に取り組んで失敗したり、関係者の理解が不十分で十分な協力が得られないというケースが多い。これらは、論理的に考えたり伝えたりすることができていないためにうまくいかないのである。ロジカルシンキング(論理思考)がブームになったことがあったが、ビジネスでは基礎的に身につけるべき考え方であるにもかかわらず、いまだに定着していない。
 ロジカルシンキングの必要性は、①重要な論点を外さずに議論できる②周りにわかりやすく伝えられ、関係者の協力が得られる③グローバル化に対応し、外国人とも対等に議論できる―などにより、意思決定の精度を高め行動をスピードアップすることにある。
 ロジカルシンキングとは何かというと、「論点の全体構造とつながりを明らかにすること」である。人間はまず、主たる大きな考えを提示され、それからその大きな考えを構成する小さな考えや根拠を提示されると最も理解しやすいのである。これは、人に説明するときだけでなく、自分の考えを深めていくときにも同様であり、自分が何をどのように考えているかをはっきりと意識することになるのである。
 では、どのようにロジカルシンキングを身につけるのかというと、ロジカルシンキングの中心的な思考構造である、ピラミッド構造を構成する「ロジックツリー」を使いこなす訓練をすればよい。「ロジックツリー」とは問題や課題や項目を大項目、中項目、小項目と枝分かれして「全体構造とつながり」を図形化してわかりやすく表現するものである。
 具体的には、自分の仕事をロジックツリーで構造化する、新聞の社説をロジックツリーでまとめる、企画書や報告書などのビジネス文書の構想をロジックツリーで構成するなどを、日頃から実践すれば、論理的思考が身につき、わかりやすい説明ができ、周りの協力も得られるようになるのである。

(平成23年7月13日 日刊工業新聞掲載)

0歳児のマニフェストを作ろう!

全国民の衆知を結集/長期視点で着実な成長戦略

塚本裕宥(北関東支部)

国民と政治家や官僚に強く伝えたい。
 大震災の復興構想も大切だが、それ以前に0歳児のマニフェストを作る必要がある。躊躇している暇はなく、全国民の衆知を結集したい。
分かりやすく言う。1,000兆円近くの国債残高、0歳児にとっては生まれながら一人約1,000万円の負債を背負い、先送りはできない。国債元本を年間5兆円ずつ返済しても残高ゼロには200年間必要だ。利息分についても返済原資が必要、冷静にかつ厳粛に考えよう。
市民は自覚し、政争に明け暮れる政治家や官僚への監視を強めよう。今すぐ社会のありようを論じて、将来像を描こう。
 正確に言えば1~0歳児のマニフェストを作ろう。1世代(寿命)で100年間、2世代(寿命)で200年間等の長期の配慮が必要だ。
長期視点で政治、行政、経済、産業、金融、環境、教育、労働(雇用)、厚生、外交、文化、科学、技術……その他あらゆる分野を総体的に見直して策定する必要がある。国民を総動員する覚悟も必要だ。民主主義の原点から賛成は半分以上で十分だ。
夢物語の成長戦略でなく、100年間を見据えた着実な成長戦略を描こう。多くの識者が論じている成長戦略は具体性、着実性、実現性を欠くと見る。
 努力目標は必要でも人口減少社会にあって実現性に乏しい案は不適切だ。税と社会保障制度の一体改革等当然だ。歳出削減や増税等聖域を設けずに論じたい。
 国民は増税を嫌うが、無駄遣いの排除等は当然として、増税が必要なのは一目瞭然のようだ。
優先順位、重要度、緊急度等、短期視点でなく長期視点で論ずべく0歳児のマニフェスト作りを提言する。
高齢者への手厚い保護より、これから生まれる幼子への希望を託そうではないか。高齢者福祉は応分でよいと覚悟を決めよう。
マニフェスト作りには、将来を担い、将来に責任を持つ若い力が必要だ。若い人たちに任せ、高齢世代は彼らへの助言や支援に徹したい。

(平成23年7月20日 日刊工業新聞掲載)

サービス産業の販売力強化(上)

ESがCSを支える/「頑張ってるね」仕事の糧に

島影教子(東京支部)

総務省統計局が民間のシンクタンクを使って実施する「サービス産業動向調査」発表によると、2010年12月の売上高は24.9兆円である。これは昨年同月比2.0%の減少傾向にある。従事者数は昨年12月で2613万人あり、従業員数は前年比2.0%の減少である。それでも12月は年末需用があり若干持ち直して11月よりは0.4%増えている。
事業の内訳では医療・福祉サービスが増える傾向にある。今後は3月の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響で減少は免れないであろうが、それでもサービス産業は我が国を支える大きな産業であることは間違いない。これがわが国のサービス産業の現状である。
私自身、商業施設の販売員スキルアップ支援をメインに活動しているので、サービス業に従事する販売者の販売力強化について3回に渡って提言していきたい。
まず、初回のこの回では従業員満足度(ES)が顧客満足度(CS)を支える基本原理を考えてみる。そもそもサービスの言葉自体は「奉仕する(サーブする)」に由来し、有料のサーブと無料のサーブとに分かれる。基本は人が人にする行いで、評価そのものを判断するのはサーブされる側にある。
常にお客様評価が付く「お客さまありき」の商売である。今や飽和状態ともいえるサービス産業は、施設数の増加に伴い過剰なサービス競争を繰り返しているのが現状で、尽くせども尽くせども顧客はさらなる利便性を求める。できて当たり前の状況下でサービス従事者は疲弊している。
事実「私・・この仕事に向いてないのじゃないでしょうか?」などという相談も多く受ける。そんな時は自分に向いているかどうか決めるより、その仕事が好きか、その仕事をしていて楽しいかどうかを問うようにしている。 創意工夫で行う行動が認められた時、人はがぜん頑張れる。ホスピタリティー精神を嫌う人はいないはずで「ありがとう」のひとことがサービス提供者を支えるのである。つまりESがCSを支えているのである。お客様からの「ありがとう」だけでなく管理者からの「頑張っているね」の言葉を彼らは待っている。

(平成23年7月27日 日刊工業新聞掲載)

サービス産業の販売力強化(中)

「顧客」でなく「個客」をみる/要望しっかり受け止めて

島影教子(東京支部)

大切なお客様を「顧客」などと呼ぶこと自体、すでにお客様を意識しない姿勢が見える。お客様はさまざまなシーズやウォンツ、ニーズがあって私達の企業や施設を利用する。「顧客」でなく「個客」視点で向き合う必要がある。 ワン・ツー・ワンマーケティングの必要性が高いのがサービス業である。お客様が私たちに評価を下す原則下では一度でも不快な気持ちを持つと二度とその施設を利用することはない。選択の自由は利用者にある。しかし、それでは当然企業の存続に影響が出てくる。気づいたら利用者数が減っていたでは困る。
米国の顧客離れ調査によると1年間に25%のお客様が離れていく調査結果がある。さらに、その6割近くは繰り返し施設を利用しているのに何ら変わらないサービスに嫌気がさしている結果である。
 では、どうしたらお客様のニーズが分かるのか、答えは簡単である。要望を伝えてこないお客さま、また要望が明確でないお客さまにはこちらからお聞きするしかないのである。そのために販売者には会話力とカウンセリング力が必要になる。言わないならこちらから聞きに行く。
ただしこのタイミングが難しい。相手の懐に飛び込むのか、はたまた心開くように切り口を探し徐々に近づくのか、相手を見極めなければならない。お客様動向や言葉の端々に出てくる要望をしっかり受け止めて対応する必要がある。アプローチとニーズ確認が要である。
これは何も物販だけに限ったことではない。業種・業態にかかわらず無形商品を取り扱うサービスでも同じである。サービス全般に言えることである。自社が製造業でも事務職でもお客様は存在する。自分と対峙する人、全てがお客様と意識するとよい。取引先、エンドユーザーそのものがお客様である。
地方自治体でサービス研修をすると「私たちは窓口ではないので」と平気で言う人がいる。直接的か間接的かの違いだけで彼らも市民というお客様満足を提供する側である。お客様にしっかりと向きあうパーソナルサービスをしたい。
マネジメントの父ドラッカーは常に「顧客は誰か」を問いている。人、皆お客さまであり、お客さま(個人)をパーソナルに幸せにすることがサービス者の使命なのである。

(平成23年8月3日 日刊工業新聞掲載)

サービス産業の販売力強化(下)

ロールプレイングで自信/経営者こそお客様視点を

島影教子(東京支部)

この時期、商業施設は接客ロールプレイングコンテストに向けて研修と人選がクライマックスを迎えている。百貨店協会もショッピングセンター協会もこぞってロールプレイング大会を行う。自社内でコンテストを行う企業も数多く見かける。
その目的は販売者を競い合わせることでも、自社の名前を残すためのものでもなく、ロールプレイングを通して販売者のスキルを上げることにある。根底にあるのは、日々悩み続ける彼らに自信をつけてもらうための有効な手段なのである。
「役割演技法」の名の通り、演技が先に立ちパフォーマンスの高い発表が目に付く傾向があるのは否めないが、それでいいと思う。自分ではやり過ぎぐらいでちょうどいい。2割増しで表現するくらいで相手に届く分かりやすい印象に残る対応になる。自分が思うほど実際には表現できていないのがほとんどだ。お客様は買い物をする楽しみや、元気を求めて我々の所にやってくる。大阪弁でいうところの「辛気臭い」顔など誰も見たくない。真顔の待機や応対に楽しさがあろうはずがない。
 もうひとつ、企業としてはお客様視点でサービス評価をする必要性がある。いわゆる覆面調査(ミステリーショッパー)の実施である。自分はできている「はず」「つもり」のサービス行動もお客様からすれば不足ということが多い。不満足であるなら大いに反省し改善しなければならない。経営者こそお客様視点を重視する必要認識を高めて欲しい。
企業運営に重要業績評価指標(KPI)は必要不可欠である。ただし一度だけでは意味がない。同月同時期での比較とセルフチェック、管理者の日常判断も含めて判断することが重要である。そのための予算配分が必要である。結果から導きだされた問題点に気づけるのか、問題として認識できているのか、その問題をどのように解決するのか、解決に具体性があるのか、誰にでも分かりやすく実行できるようにブレークダウンされているのか、問題解決は実行されてこそ意味のあるものになる。
ぜひ、思うだけでなく実践されたサービススキルの向上に向けて努力を惜しまず強いサービス企業として継続経営をしてほしい。

(平成23年8月10日 日刊工業新聞掲載)

企業発展の糧「社会的責任」

ISO26000の知識習得/全社員対象に倫理観培養

平山道雄(東京支部)

団体・組織体における社会的責任の重要性・必要性は昨今の不祥事ニュースを聞くたびに感じられる。
2010年11月1日にISO26000の規格(社会的責任)が発行された。この規格の目的は、企業・団体などの組織体を長期的に持続し発展することを可能なものにすることにある。この規格は認証目的を意図していないし、またこれを推進するためには無形物への投資となることから、企業内ではいささか疎遠にされてきている傾向が感じられる。
社会的責任には①倫理的責任②法的責任③経済的責任④社会貢献的責任の四つに加えて⑤生産的責任の五つがある。この責任を組織体全体で果たしていく仕組みづくりの規格を示したのがISO26000であると解釈すればよいであろう。 規格に示されている七つの原則、すなわち①説明責任②透明性③倫理的な行動④ステークホルダーの利害の尊重⑤法の支配の尊重⑥国際行動規範の尊重⑦人権の尊重-を念頭に置き重視しながら、七つの中核主題として①組織統治②人権③労働慣行④環境⑤公正な事業慣行⑥消費者課題⑦コミュニティーへの参加およびコミュニティーの発展-があり、それぞれに課題が設けられている。
この社会的責任を推進していく仕組みを創り、全員が一丸となって実践し社会的信頼を増大させながら、永続的発展を可能な状態にしなければならない。
ISO26000の推進には企業・組織体が内外に持つ「人・もの・金・情報」など各要素が複雑に関係し合うことが予測される。だから、トップの方が強い関心を持ち担当者を兼任でもよいから2名任命し、ISO26000に関する知識を修得させると同時に、全社員を対象に、論理的思考力と倫理観の培養を図り、推進し得る土壌・体質を創っておくことが第一である。
手順良く考える思考力を養うには平面幾何などの証明問題を活用するとよい。また倫理感覚の培養は日常の生活・行動などから話題を見出し毎日の朝礼話材とする。倫理的行動は自然に法令順守に繋がるものである。
ISO26000は日本的経営の蘇生に貢献し産業社会と個々の企業・団体の活動・発展に寄与すると同時に広範囲の活動に役立つものと考える。

(平成23年8月17日 日刊工業新聞掲載)

節電対策と環境マネジメントシステム

良いスパイラル構築/経営全体の見渡し企業価値向上

土橋留美子(東京支部)

経済産業省の電力需給対策により、消費電力削減に苦戦している企業も多いのではなかろうか。安易に照明や室温から手をつけがちだが、弊害も大きい。
 実際に中堅の印刷工場において室温を28度Cにする節電対策を実施したところ、インク塗料の乾きの遅れから、断裁製本までの時間が伸び、休日出勤をやむなくされた。結果、人件費の増加、社員の体調にまで影響を及ぼす悪化スパイラルを招いた実例もある。
多くの生産ラインでは生産性や品質について日頃から監視システムを構築しているはずであるが、環境の激変に対応しきれない企業も少なからずある。輸出企業が円高不況にあえぐ中、どれだけの企業が節電に費用をかけられるのか疑問が残る。
大手企業では新技術による対策も積極的だ。自動車工場では、車体塗装方式を、新塗料で車体全体を漬け込む形で塗装する設備導入し、大きく電力とコストの軽減を図っている。
デマンド監視やラインのモニター、発光ダイオード(LED)照明など、ある程度の設備投資は必要だ。夜間・休日への生産シフトは節電実績が上がっている。
さらにアナログ的な節電対策は、同時間帯に複数の設備・機器の電源を一度入れると必要以上の電力負荷となるため、時間を20分程度ずらして入れていく。空調機によしずをかけるなどの工夫も案外有効だ。
 節電のために生産性や品質低下、原価高、そして業績悪化になったのでは元も子もない。環境を考える今こそ環境マネージメントシステム〈EMS〉の導入を考える必要がある。
日本経営士会では簡易でエコノミーなコンパクトエコシステムを推進している。前者が悪化スパイラルなのに対し、EMSはどこまでも良いスパイラルを構築していく。節電への取り組みはもとより、経営全体を見渡すことで、企業価値そのものや業績を上げていく。
 自社生産品をどのように生かしていくか、目的転換も必要な時期である。個々のエンドユーザーへ向けての開発・供給を、社会インフラ構築のための製品へ視点移行していくのも生き残りの秘訣だ。

(平成23年8月24日 日刊工業新聞掲載)

企業と事業承継(上)

震災に見る絆の大切さ/全国的な連携の仕組み重要

西 満幸(東京支部)

東北地方の自動車と電子部品の出荷額のシェアは、国内総生産(GDP)の倍以上のシェアである。これは、この地域に先端技術中心の一大産業クラスター形成を意味する。東北の豊富な労働力、土地や水資源、高速交通網の発達、東北大学をはじめとする教育機関の充実に支えられ、1990年代から発展した。東日本大地震を契機に企業は国内外における生産拠点の分散や調達先の多角化、戦略在庫などの手を打っている。大災害から学ぶ企業の事業承継のヒントは何であろうか。
(1)普段の絆
日本企業の強さは部品、素材、製造装置と完成品メーカーとの連携である。今回被害に遭ったハイテク系中小企業は高台にあったものが多い。建物や機械の倒壊などの被害に遭っているが、津波流失は少なかった。
震災後、「精密機械を貸してくれませんか」のメールに応え、普段の中小企業交流をもとに「近くの異業種」が支援した例、被災した部品メーカーが完成品メーカーの工場の一部を借りて震災後数日後には生産再開した例など普段の絆の大切さを痛感させられる。
企業としては建物の耐震化を進めると同時に、絆というソフト対策が重要である。危機管理の基本は平時における危機の認識と事前の準備にある。いざという時にどのような体制をとるか、それを日頃訓練し絆の醸成につなげる。
これから中小企業には、下請けメーカーから標準部品メーカーへ、成長求め海外に挑むことが期待される。産業クラスターは地域の集中生産による技術やコスト競争力、生産効率化などに有効であり、その強みと弱みを再考し強化すべきである。
(2)広域連携
前述の精密機械の例で全国中小企業団体が震災後いち早く支援した例や、物的被害のない菓子メーカーが物流途絶により生産不可となり、鹿児島の同業者が生産依頼に応じた例など、遠くの同業種による支援がある。
普段から全国中小企業の設備状況のデータベースを整備しこれを災害時や国の開発援助に活用する。「遠い親戚より近くの他人」といわれるが、今回の広域災害をみて全国的な連携の仕組みづくりの重要さが痛感させられる。

(平成23年8月31日 日刊工業新聞掲載)

企業と事業承継(下)

災害に強い街づくりに貢献/原発事故の教訓生かそう

西 満幸(東京支部)

(1)街づくりと企業
100年間に4回もの大津波が来るような地域では、工場や住居の立地は標高と命が密接な関係にある。これは東日本大震災1ヶ月後の東北3県の死者の92%が溺死からもわかる。明治の三陸海岸の石碑が語るように「子孫が幸せに繁栄していくためにはこれより下に絶対に家を建てるな」を順守すべきである。生活の不便さはあるが、交通、ITで十分補完できる。
企業は建物の耐震化を一層進め、災害に強い街づくりを目指して土地利用制限、集団移転制度、都市機能の集積などあらゆるメニューを活用し地元と協力しながら、内外観光客が安心して訪れる新しい街づくりに貢献すべきである。
(2)一次産業と事業承継
グローバル化の中では世界で通用する農林水産業に脱皮しなければならない。減り続ける専業農家、進まぬ規模拡大、高齢化、伸びない農業法人数など課題は多い。
 今後、農漁村の雇用確保には規模経営を追求する経営が必要であり、法人化や統廃合などは避けて通れない。
 われわれは近代以降、工場や職場と住む場所を変えてきた。一次産業においても職場と住居を分離する通勤の時代を迎えたのではないか。これは、かつての海女、ニシン漁などの番屋の現代版である。
わが国の一次産業は農商工連携などによる第六次産業化を強力に進め、高品質を生かし輸出に活路を求めれば魅力ある一次産業に再生でき、地域の雇用を守り、雇用創出が可能となる。
寺田寅彦は「災害は忘れたころにやってくる」といった。「今や自然や経済危機などの災害は忘れないうちにやってくる」のである。自然の脅威に対してなすすべもなかった近代までは、日本人は涙を流すことで災害の悲しみを忘れ、再出発を図ってきた。
現代はこれだけでは2万余の鎮魂に対して済まないと思う。また、原子力発電についても現実を冷徹に見つめる時期である。地球温暖化や国際的な電力醸成を見ると今回の事故経験を生かし、これをわが国の事業機会として捉え平和利用面で国際貢献すべきではないだろうか。

(平成23年9月7日 日刊工業新聞掲載)

中小企業の復興と特別貸付制度

経営改善への意欲高める/間接被害も制度活用を

新見健司(千葉支部)

政府は東日本大震災と原発事故によりダメージを受けた中小企業に対してさまざまな資金繰り支援を行っている。また震災前の2010年12月、金融庁は「中小企業金融円滑化法を一年間延長し、12年3月末までとする」ことを公表している。この保証制度は85万社の中小企業に利用され、公的金融機関の貸し付け条件の変更実績は120万件に上っている。
 被災から半年が経過したこの時期、中小企業が倒産や従業員の失業を防ぐ上で、まず求められるのは、経営者の経営改善に対する意欲と経営実態の把握ではないだろうか。経営者は金融機関との間で資金繰り計画を策定することで、経営マインドを改善できる。
 経営者が目を向けるべき制度として、5月の11年度第1次補正予算で成立した「東日本大震災復興特別貸付」(政府系金融機関)融資制度がある。融資は一定の条件があるにしても「自分の工場は直接の影響はなかったが、納入先企業が地震に遭い、代金回収のめどが付かない。当面の運転資金の導入を考えたい」などという中小企業は風評被害を含めた間接被害者として本件に該当する。
次に注目するのは信用保証協会が創設した融資額100%を保証する「東日本大震災復興緊急保証」制度となろう。セーフティーネット保証と災害関係保証と合わせた保証を組むことが可能なのだ。
 また政府は7月に総額2兆円の11年度第2次補正予算案を閣議にて決定した。中小企業の二重ローン問題対策債権買取支援に31億円を拠出するほか、原子力賠償支援機構設立、仮設店舗整備事業、施設復旧支援など重点を置いている。今後は本格的な震災復興対策を盛り込んだ第3次補正予算案も編成され、引き続き中小企業支援を強化するもようだ。
 日本政策金融公庫は震災被害でいったん廃業した中小企業が新たに事業を開始するとき、低利で長期な貸し付け条件を適用し支援している。そのほか「マル経融資」、再生支援協議会の利子補給を行う支援措置がある。
税務については4月の税制改正法成立に伴い、義援金・取引先の被災・被災企業の損失等々の税務上の支援措置が行われている。特別貸付制度は専門家に相談していただき、早期の活用を期待したい。

(平成23年9月21日 日刊工業新聞掲載)

困難な時代-ニーチェに学ぶ

自分自身の内的な「力」創像/形而上学的な目標持て

近藤 肇(中部支部)

大学生の就職が厳しい情勢である。7月時点で内定率は65%といわれているが、大学によっては30%程度と聞く。世界の経済が不安定で、日本の多くの企業は円高で業績不振にあえいでいる。この先、若者に十分な雇用が確保されるのか極めて不透明だ。
スペインでは失業率が21%と聞く。英国では財政難で福祉予算の圧縮のため暴動が発生している。米国ではデフォルト(債務不履行)の危機がささやかれている。日本政府は900兆円の国債残高を抱え、さらに東日本の震災復興のため財源を増税に頼らざるを得ない状況である。
自殺はこの数年間、3万人を超えている。日本人は宗教的な基盤が薄く、自由な生き方ができる半面、厳しい状況に陥った場合、人々に心のよりどころがなくなり、孤独にさいなまれる。「自分がなんのために生きているのか?」「何のために苦しんでいるのか?」。
若者が面接で理不尽な扱いに憤りを感じて、社会の矛盾に耐えがたきニヒリズムを感じざるを得ない。人生は失恋、嫉妬、怨恨、不満、それらを抱えて生きている(ルサンチマン)。
それがこの世界の通常の姿であると認識すべきであろう。
人間の世界は矛盾に満ちている。凡庸な人間はそれがひとつの「生」への深い了解であると認識すべきであろう。「それにもかかわらず、人は生きねばならない」
ニーチェの思想は「いずこの時代においても永遠に繰り返して生きているのが現実である」。世界はただ無限の時の中を意味もなく、ぐるぐると回帰しているだけである。
自然界でも深い雪や氷の世界が溶けて水になり、大きな海になる。大海の水は蒸発して雲となり雨となる。それは恵みの雨であるが、場合によっては洪水ともなる災害をもたらす。自然界のサイクル(おきて)でもあり、この循環を繰り返すのみである。この永遠回帰の中で人間は生きているのである。いかに生きるかを自分自身で選択することである。
自分自身の中のルサンチマンを克服するためには、この世界の「あるがまま」を是認して、世界に立ち向かう自分自身の内的な「力」を創造することだ。いつか大きな夢と希望を実現するであろう(超人となる)。
それには世界に立ち向かう「形而上学的な目標」を持つことが重要である。それが「生」の価値である、とニーチェは言う。

(平成23年9月28日 日刊工業新聞掲載)

国際ガイドラインからSR活動を考える

地域貢献活動の充実を/新たな視点で検討すべき時

小林 祥三(東京支部)

企業の社会的責任はCSRと従来から呼ばれてきたが、社会的責任は、なにも企業に限らず、NPOや公共団体も含む幅広い組織に求められる。このため、企業を意味するCorporateという文言を外して、現在ではSR活動と呼ばれるようになってきた。
2010年11月に、SR活動の国際ガイドラインとしてISO 26000が公表された。ISO 26000は、①組織統治②人権③労働慣行④環境⑤公正な事業慣行⑥消費者課題⑦地域社会への参画―7項目の中核主題とそれにかかわる課題を掲げている。
 中小企業にとって、これだけ広範囲の主題に取り組むとなれば、相当の負担が生じるから、優先順位を検討する必要がある。7項目の中で①は、他のすべての項目の基盤となるため、まず考慮すべき項目である。これは内部統制の構築によるコーポレートガバナンス(企業統治)の充実に相当する。中小企業に求められる内部統制については、本紙の08年11月12日から3回にわたって「経営士の提言」に発表したため、それを参照されたい。
次に考慮すべき項目は⑦と考える。なぜなら、中小企業は、顧客が地域住民であったり、経営者や従業員も地域住民である場合が多く、地域社会とともに生きる中小企業としては、⑦の「地域社会への参画」を新しい視点から考える必要があるからである。ISO 26000には⑦に係る課題として、(1)コミュニティーへの参画(2)教育・文化(3)雇用創出・技能開発(4)技術の開発とアクセス(5)富および所得の創出(6)健康(7)社会的投資-が掲げられている。
日本政策金融公庫の08年の調査によれば、中小企業の地域貢献活動は、地域の祭り、伝統行事の開催・維持や商店街の活性化に関するものが中心となっている。これらは地域社会にとって意義ある活動ではあるが、ISO 26000の公表を機に、中小企業経営者は、新しい観点からの地域貢献活動の充実を検討すべき時だと考える。
例えば、地域の学生・生徒の職場体験の提供やインターンシップの受け入れは(2)に、高齢者の雇用・就業支援は(3)に、地域内企業と共同での技術開発は(4)に、今まで蓄積したノウハウを生かして地域の起業を支援するのは(5)につながる新しい地域貢献活動の課題に合致するものと考えられる。

(平成23年10月5日 日刊工業新聞掲載)

中小企業も積極的に海外進出を(上)

「超円高」前提に対策を/生き残りへ実行の時

長谷川 正博(東京支部)

本年8月19日、1ドル=75円95銭と円が戦後最高値のレベルとなった。輸出を手がける企業は、収益悪化要因である円の動向に神経をとがらせており、早急に「超円高」に終止符を打つよう政府に期待してはいるが、今回の円高は日本経済の実力の反映ではなく、消去法で円が買われていることは周知の通りである。政府・日銀は円が77円台となった8月4日に4.5兆円を使い「円売り」介入を実施したが、すぐに円高に戻ったことは記憶に新しい。
米欧とも「他人のことにはかまっておられぬ」状況下にあり、共に「内向き」姿勢であることを念頭に入れる必要がある。このような事態では、「円安」方向にはいかず、逆に、再び円高になる可能性の方が高いとの観測があり、企業経営者としてはこれを前提に、対策を練ることが求められる。
この円高に加え、高い法人税率、電力不足、貿易自由化の遅れ(というよりは「背を向けている」)他、企業にとっては国際競争力低下となる多くの要因に取り巻かれているのが現実である。経営者は、いかに自社の行き残りを図り安定した経営を保つか、またさらなる発展を実現させるかを真剣に考え、実行に移さなければならない時にきていると言える。
経済産業省が8月下旬に大企業製造業61社、中小企業93社(うち製造業83社)を対象に行った調査では、今後半年以上現在の円高水準が継続する場合、46%の企業が「生産工場や研究開発施設の海外移転」で対応すると回答している。
大企業が生産拠点を海外に移したり、部品・部材の海外調達を増やしたりすれば、中小でも海外生産を増やしそれに対処しなければならなくなる。現に上記調査で、中小企業の対応策として、「海外生産比率を増やす」が28%、「生産や開発拠点を海外移転する」が17%であった。
アジア諸国からは円高や電力不足等に苦しむ日本の中小企業を自国に誘致し、高度な技術の移転を基に自国産業の底上げを図ろうと、日本の技術力を下支えしている中小企業の誘致に力を入れている。前述の経産省の調査では、大企業の18%、中小企業の13%が、中国その他アジア諸国から海外進出の誘致を受けたと回答している。

(平成23年10月12日 日刊工業新聞掲載)

中小企業も積極的に海外進出を(中)

台湾を足がかりに中国進出/合弁方式でリスク軽減

長谷川 正博(東京支部)

日本企業が海外進出を図る際、最も重視するのが、市場規模が大きく、拡大が期待される巨大市場「中国」であろう。しかしながら、初めの段階から、政治体制、法律・ルールよりは人脈等といわれているようなビジネス慣行が日本と全く異なり、対日感情(中国政府の教育)もいま一つである中国に直接出ていくことは、中小企業としてはリスクが高すぎると言える。この中国をターゲットとする場合、台湾に生産拠点を設置することがリスクを軽減する手段の一つとなろう。
本年8月末、台湾は、日本企業の進出を促す「誘致団」を日本に派遣し投資セミナーを開催、台湾当局が日本の中小企業向けの工業団地を整備する方針を伝えたと報道された。台湾は法人課税の実効税率が17%と日本の4割ほど、賃金も日本の半分以下であり、製造コストの圧縮が見込める。加えて、中国との事実上の自由貿易協定に当たる中台経済協力枠組み協定(ECFA)を結んでおり、巨大な中国市場への足がかりも得やすいというメリットがある。
台湾は2008年春、馬政権発足以後、中台経済関係は急速に深まってきた。長年の懸案だった「3通」(直接の通商、通航、通信)が実現し、金融市場の相互開放でも合意ができた。人口2316万人の台湾は、外貨準備高は世界第4位、対外貿易総額は世界第16位である(10年時点)。貨物船では台湾の高雄から上海まで20時間、航空便も台北から上海までは80分程度である。
日本企業が生産拠点を分散するため台湾に投資する動きも広がっており、10年の日本の投資は前年比、金額で67.6%増の4億50万ドル、件数で27.8%増(340件)であった。
海外進出に当たっては、プランニングの段階で、進出が本当に必要かどうかを十分見極めること。資金力、人材面でも無理のききにくい中小企業の場合、この点を特に慎重にする必要がある。直接進出の場合は、単独か合弁かの選択になる。経営資源面で制約のある中小企業の場合、単独で進出するよりは、適格なパートナーと組んだ合弁方式の方がリスクを少なくできよう。パートナー側が持っている中国市場と中国でのビジネス慣行の知識、人脈、販売ルートなど活用できる有利さもある。
(参考;台北駐日経済文化代表処ウェブは、http://www.japandesk.com.tw/)

(平成23年10月19日 日刊工業新聞掲載)

中小企業も積極的に海外進出を(下)

パートナー選定は慎重に/進出先の情報把握が重要

長谷川 正博(東京支部)

合弁方式を採る場合、パートナーの選定が重要であり、能力が高く、信頼できるパートナー企業を見つけ出す必要がある。また、パートナー企業との信頼関係を構築し、合弁会社設立後も、相互の信頼関係を高める努力を継続していくことが重要である。
選定前の合弁相手(候補)先の信用調査を徹底して行うことは言うまでもない。また、日本側も最終決定権者である社長が出向いて相手の「人となり」を見極めることも必要である。
台湾企業と合弁で企業経営を進めるときの注意点は、①パートナーとの役割分担を明確にすること②現地に即した事業計画をシビアに作成すること③戦略的にマイノリティー出資よりはマジョリティーの方が思ったことができるので、できれば、リスクは伴うが過半数出資をした方が良い―などが挙げられる。
対中国との仕事遂行に関しては、台湾人は言葉の障害がなく、いろいろなかかわり合いや人脈を含めて、日本側としてはメリットは大きい。ただし「文化の違い」があることは十分認識した上で、異文化下での企業経営の進め方を事前に十分理解する必要もある。
台湾企業と手を組み、台湾本体はもちろんのこと、香港やマカオも含む巨大中国市場でビジネス展開をしながら、ここを足掛かりとしてシンガポール、マレーシア、インドネシアなどの華僑(華人)との結び付きも狙い、「中華圏マーケット」進出の可能性を探る方法もあろう。中小企業も、積極的に広い海外に目を向け、自己変革も図りながら成長策を講じることが望まれる。
また、単独・合弁にかかわらず、テストマーケットとして台湾でまず事業展開し、経営ノウハウを蓄えてから、将来的に中国もしくはアジアへの事業展開を図るというステップを踏む選択肢もあろう。
進出形態の選択は、進出後の事業展開や自社の経営資源に対して極めて重要な影響を及ぼすため、計画する海外事業内容に活用できる自社の経営資源を十分に見極め、各事業形態のメリット・デメリットを把握し、最適な形態を選択していく必要がある。
特に、進出先の法律や優遇政策についての情報を把握するとともに、先行事例などの情報に基づいてそれらの運用の実情についても理解することが重要である。

(平成23年10月26日 日刊工業新聞掲載)

論理的思考のすすめ

目的の明確化と倫理・道徳観/組織体の課題解決に重要

平山 道雄(東京支部)

最近は、マニュアル人間が多過ぎるように思われる。これは、自分に与えられた仕事に忠実であるように見えるが、その作業の「目的」や「次工程はお客さま」ということを忘れているからであろう。
しかし、図面・仕様書等を渡されて「これをつくれ」と指示された人は、自分で工夫し努力してできた時は、本人の歓びにはひとしおのものがあり、何年たってもこの歓びは忘れていない。これは自分の持てる思考力を十二分に生かしたことによる賜であり、仕事をする上で思考力がいかに重要かを知り得たことになる。
ただ論理的な面については無意識的に働いているようである。日常生活においても知らず知らずのうちに論理的思考力を働かせている。例えば「明日は日曜日だから紅葉を見に行こう」と思い立った時、自分一人であればその工程は即座に決まるが、他に仲間のいる場合には意見が異なり調整が必要となってくる。この時、皆が納得できる案を出すために論理的思考が役立つ。
組織体における各種の課題解決に対しては、検討に必要な条件(人・物・金・情報等)や外部関連との状況を勘案しながら、いろいろな意見が出され討議される。その結果、最良な案が採用されることになる。
「論理的思考」を「現在から近未来の状況を鑑みて経営に関する事案の解決方法を理にかなって考え続けること」と解する。事案の大小に関系なく最良とされる案は、各種条件を満たしながら物事を手順良く論理的に組み立てて、関係者を「説得」するのではなく「了解」してもらう。そのためには、目的の明確化と同時に倫理・道徳観を重んずる。集団的思考技法の思想を加味して検討することがもちろん重要である。
また第三者の意見も重要な要素となることをも念頭に置く必要がある。特に倫理・道徳観を失っていると利害関係者との間で不都合の生じる懸念があるから注意を要する。
この「論理的思考能力」は定義・公理・定理などを駆使して解を得たり証明する代数・幾何を学ぶことで手順良く真理を追究することから身につく。これらが組織体の重要な経営課題解決に向けた論理的思考による科学的な見方に役立つ。

(平成23年11月2日 日刊工業新聞掲載)

中小のメンタルヘルスケア対策

精神疾患、5大疾患に指定/経営者はリスク管理を 

新見健司(千葉支部)

厚生労働省が本年7月に精神疾患を国民の5大疾病の一つに指定したことをご存じだろうか。従来のがん、脳卒中、心臓病、糖尿病と並ぶ重点対策を必要とする疾病に方針決定された。メンタルヘルスケアラインコース資格者の立場から中小企業の取るべき心得と課題を考えてみたいと思う。
 同省の2008年の調査では、精神疾患の患者は323万人になり糖尿病(237万人)、がん(152万人)を含む4大疾病を大幅に上回っている。また労働者健康状況調査では、一般従業員の約6割が自分の仕事や働く日々に強い不安、悩みやストレスがあり、メンタルヘルス不調による休職者がいる企業は6割に達している。
メンタルヘルスで休職者が1人発生した場合、職場にかかる経済的負担は400万円を超えるともいわれている。
一方、精神疾患のために生じる医療費や労働力損失等の社会的コストが年間11兆円にのぼり、中小企業にとっても非常に大きなリスクとなっている。うつ病や統合失調症などの精神疾患の患者数は今般の大震災と原発事故などからさらに増加傾向にあることが顕在化している。       
 メンタルヘルスケアは経営資源の限られた中小企業にとって、重い課題であるが避けては通れない。職場で従業員は業務範囲が広く、間接人員も少なく、特に管理職はプレーイングマネージャーとして仕事に忙殺されているケースが多い。
メンタルヘルスケアは「自分自身のセルフケア」「上司・管理職のラインケア」「職場の産業保健スタッフ・産業医によるケア」「医療機関・EPAなど職場外からのケア」の段階があり、まず自分をみつめセルフケアすることが基本となる。
メンタルヘルスの対策としては未然に防ぐ職場づくりと発生(途中経過も)した場合の対応に分けて考える必要がある。普段から準備しておくことは、①管理職クラスがストレスをためない職場づくりと初期対処の基本を認識すること②過重労働の防止と安全衛生に沿った職場の最低限のルールづくり③万一、従業員に異変があった際に会社が取るべき適切な対応方法と不調者の受診命令や報告義務、休職、復職などのルールづくり―など。未病、予防は国の方針であることから経営者はリスク管理の一環として念頭におかなければならない。
(平成23年12月7日 日刊工業新聞掲載)

営業にソーシャルメディア活用を

ITの口コミで情報発信/信頼力やブランド向上

阿部 満(南関東支部)

筆者が日頃から経営コンサルタント(経営士業)として活動する中で、中小企業経営者の皆さまと話をすると「ウチの会社は営業力やマーケティング力がない」「だから良い物やサービスをつくっても案件もなかなかでない」「景気も悪く売れないで困っている」といった声をよく聞く。
実際に、よくよくお聞きすると営業活動を行っているのは社長だけという場合が多々ある。
そんな中小企業でもITという道具をうまく使えば、何倍も成果が上がるのである。その際に、経営の原則である、顧客数×顧客単価×再購買=売り上げ、という公式を忠実に実践するかが重要である。それもITを活用してだ。  では成果が上がるITはどんなものがあるのか。最近、特に注目を浴びているのがツイッターとフェイスブックの二つ。近年情報が膨大に膨れ上がり、企業や個人がどの情報を信じてモノを購入したり、会社を選んだりすればよいか悩んでいる。
 そこで誰を信じていくかと考えた時に最も信頼度が高いのが、家族、友人・知人、会社同僚、同年代の同姓などの口コミなどである。例えば、アマゾンのカスタマーレビューや大手旅行会社のネットサイトの口コミだ。
 中小企業の場合は、自社のお客様であるターゲットに対して意図した形で口コミを発生させるのがツイッターやフェイスブックのビジネス活用方法となる。
それ以外にツイッターやフェイスブックは、もともと運用している自社のホームページ(HP)やブログと連携してアクセス数アップを図ったり、ターゲットとなるお客様とのコミュニケーションを徐々に広げていき、信頼力やブランドを向上させるなどの活用方法がある。
 このように従前の自社のHPやブログなどにツイッターやフェイスブックを加えて相乗効果を生み出すビジネス活用方法を「ソーシャルメディアマーケティング」と呼ぶ。また、ツイッターやフェイスブックは単独の活用でも効果的だ。
例えばお店を経営していれば集客に効果的で、ネット販売であれば宣伝効果も高い。さらに営業担当者が活動する際も、営業担当個人のプロフィルや趣味、お客様との関係(企業機密情報漏洩にならない範囲)などをツイッターやフェイスブックを活用して公開する。 
   お客様からの信頼度を高め、親近感を与えてから営業現場で商談を仕掛けることが可能となる。
ぜひ本記事を参考に、ツイッターやフェイスブックを活用し、自社のHPやブログとの連携により、ソーシャルメディアマーケティングを実践して成果を上げていただければ幸いである。

(平成23年11月16日 日刊工業新聞掲載)

農業とCSR~ISO26000の取り組み

農業通じ食や自然環境学ぶ/社会貢献への意識向上

近藤 肇(中部支部)

食育基本法には、「自然の恩恵や食に関わる人々の様々な活動への理解を深めること等を目的とし、家庭・学校・地域等を中心として教育ファームを効果的に進める」とある。
このことは青少年の食事のあり方に問題があることを示している。現代社会は「個」の時代と言われている。核家族、少子化、高齢者の一人住まい、それらが引き起こす現象として「こ食」すなわち「孤食」「個食」「固食」「粉食」「小食」が現実の食事風景である。
孤独な生活は、鬱やノイローゼの原因にもなっている。企業でもメンタルヘルスやカウンセリングに取り組まざるを得ない。放置すれば労災認定にもつながる。結局のところ企業は家庭との関わりを無視できない。
① ワークライフバランス…仕事と家庭のバランスが企業経営によって重要である。
② 職場のメンタルヘルスケア…職場のストレスや鬱に対する取り組みが労災防止対策。
③ ダイバーシティ―…個々人の多様な働き方の支援。
④ 教育ファームへの積極的な参加…食の安心、安全を学ぶ。
農業は食育を通じて、社会的な役割を果たしている。家族間のコミュニケーション、青少年に対して生産の喜びや学習環境を与える。また地球温暖化への抑制を図るため、二酸化炭素(CO2)削減、生態系の確保など、農業は多くの可能性を秘めている。
ある食品メーカーは企業の社会的責任(CSR)活動として、食の原点である農業(田畑)を通じて、食や自然環境の大切さを双方の視点から関連付けて学ぶことで人材の育成を図っている。
社員がボランティアとして農業に参加し、社会貢献活動への参画意識を高めている。農業による自然の恵みへの感謝、食卓を通じて家族間のコミュニケーションを図ることが基本的な柱となっている。
企業は社会的な責任を期待され、株主や消費者のみならず地域のコミュニティーにも影響を与える存在となっている。
ISO26000はCSRを規格化して実行可能なものにすることを目的としている。具体的には、①人権 ②労働慣行 ③環境 ④公正な事業慣行 ⑤消費者に関する課題
⑥コミュニティー参画、開発 ⑦組織、統治―と中核的な課題が明記されている。今後、ISO26000はCSRのメルクマールとなるだろう。

(平成23年11月23日 日刊工業新聞掲載)

理性的・論理的に考えよう

成長戦略に具体策を/日本再生問われる実行力

塚本裕宥(北関東支部)

1.以前からの傾向だが、日本人は理性的・論理的思考を忘れたようだ。
特に東日本大震災以後、各種報道・著作などについても、顕著な傾向だ。
国家破綻したとも言えるギリシャ等を含む欧州の国民も同様かも知れない。
私はさまざまな機会に、文の修飾や修飾語は不要、情緒的・感情的でなく、冷静に理性的・論理的に考えようと提唱しており、改めて本紙面でも提唱する。
2.具体的に理性的・論理的に考える必要のあることを例示する。
東京電力福島第一原子力発電所は6-9か月で冷温停止を目指した。この数字は、初期段階の見通しで、製品や構造設計に関わった者なら常識的に、1ケタや2ケタの安全率が必要で、国民に対し安全宣言できるのは、60-90か月(5-7.5年間)、600~900か月(50-75年間)必要と考えるのが妥当と言いたい。
国の借金返済(国債償還)は、10%や20%の無駄を省く経費削減で容易に捻出できると言った、国民に向けた甘い囁きなどもその典型例だ。
成長戦略を採れば日本経済を復活でき、税源をそこに求めるという主張があるが、部分的高成長は可能だが、単なる成長戦略では実現不可能である。
3.わが国は人口減少社会に入り、この1年間で、人口が10万人減少した。話題になったので読者はご存じのはずだ。
人口統計は正確に推計できる統計の一つ、2017年以降は年間50万人以上減少する。
減少する人口とは逆に成長するには、人口減少の速度以上に、一人当たり付加価値(単純に言えば稼ぎ)などを増やす必要があり、解決策は頭脳を遣い海外から富を招く方法が合理的だ。それらの具体策を主張する声が見当たらない。
4.「強い意志と不断の努力で立ち上がれ」や「世界は我が民族の叡智」を求めている、などと日本国民に対する情緒的・感情的な見方があるが、理性的・論理的な具体策を決めたいものだ。
実哲也氏は4月24日『日本経済新聞』中外時評で「世界が試す日本の再生力、内にこもれば信頼喪失」と理性的・論理的な主張をしておる。熟読吟味してほしい。
これからの日本再生のために、考えて考え抜き、理性的・論理的に企画・実行できる人の活躍に期待する。

(平成23年11月30日 日刊工業新聞掲載)

中小のメンタルヘルスケア対策

精神疾患、5大疾患に指定/経営者はリスク管理を 

新見健司(千葉支部)

厚生労働省が本年7月に精神疾患を国民の5大疾病の一つに指定したことをご存じだろうか。従来のがん、脳卒中、心臓病、糖尿病と並ぶ重点対策を必要とする疾病に方針決定された。メンタルヘルスケアラインコース資格者の立場から中小企業の取るべき心得と課題を考えてみたいと思う。
 同省の2008年の調査では、精神疾患の患者は323万人になり糖尿病(237万人)、がん(152万人)を含む4大疾病を大幅に上回っている。また労働者健康状況調査では、一般従業員の約6割が自分の仕事や働く日々に強い不安、悩みやストレスがあり、メンタルヘルス不調による休職者がいる企業は6割に達している。
メンタルヘルスで休職者が1人発生した場合、職場にかかる経済的負担は400万円を超えるともいわれている。
一方、精神疾患のために生じる医療費や労働力損失等の社会的コストが年間11兆円にのぼり、中小企業にとっても非常に大きなリスクとなっている。うつ病や統合失調症などの精神疾患の患者数は今般の大震災と原発事故などからさらに増加傾向にあることが顕在化している。       
 メンタルヘルスケアは経営資源の限られた中小企業にとって、重い課題であるが避けては通れない。職場で従業員は業務範囲が広く、間接人員も少なく、特に管理職はプレーイングマネージャーとして仕事に忙殺されているケースが多い。
メンタルヘルスケアは「自分自身のセルフケア」「上司・管理職のラインケア」「職場の産業保健スタッフ・産業医によるケア」「医療機関・EPAなど職場外からのケア」の段階があり、まず自分をみつめセルフケアすることが基本となる。
メンタルヘルスの対策としては未然に防ぐ職場づくりと発生(途中経過も)した場合の対応に分けて考える必要がある。普段から準備しておくことは、①管理職クラスがストレスをためない職場づくりと初期対処の基本を認識すること②過重労働の防止と安全衛生に沿った職場の最低限のルールづくり③万一、従業員に異変があった際に会社が取るべき適切な対応方法と不調者の受診命令や報告義務、休職、復職などのルールづくり―など。未病、予防は国の方針であることから経営者はリスク管理の一環として念頭におかなければならない。

(平成23年12月7日 日刊工業新聞掲載)

群れたがらない新入社員

役割使い分ける子供たち/ストレス発散の場が必要

島影教子(東京支部)

先日、経営士会とは別に長年会員として活動している日本交流分析協会の年次総会が大阪で開催され出かけてきた。「交流分析」とは文字通り人と人とのやりとりを分析し理解し自分の行動の修正をはかる心理学である。
今年は7年ぶりに交流分析の生みの親でもあるエリックバーンの一番弟子のクロード・シュタイナー博士が来日し基調講演があるというので勇んで出かけた。交流分析士には、人材育成コンサルタントや、ビジネスマナー講師、学校教師や保育士、看護師などが多く所属している。
「交流分析と教育」のテーマで行われたワークショップでは「最近の子供達は学校と家庭で自分自身の役割を使い分けている」という発表があった。エゴグラムというアセスメントシートを用いた自己分析手法によると、最近の子共は学校では元気なわんぱく坊主だが家庭では柔順な親に気を使う良い子であるというのだ。演じているわけでもなく自然とそれを使い分けているという。
本来、内弁慶なる言葉があるくらい家では自由奔放であり多少の我儘(わがまま)も親になら出せるものと思うが、どうも時代は変わってきているらしい。仕事を持つ親に気を使い遠慮して育った優しい子供達ゆとり教育で育っている。彼らは家でも気を使い、会社でも気を使う。また、ゲーム世代の彼らは会社に対する既存意識も低く群れることをしない。そこで、危惧されるのはそのはざまで精神的なバランスを崩してしまう若者が増えていることである。     つまり精神障害を引き起こし易くやがて「うつ」になる状況にあるのである。現在の親はほとんどが戦後世代で子供を叱ることやしつけを厳しくすることが少なくなっている。
叱られずに育った子供は打たれ弱い。過度の期待や、僅かな言葉のとげに敏感である。そのはざまでの悩みを家族にも友人にも打ち明けられないまま「うつ」になる。
では、どうすればよいのか。今更、過去には戻れないが、せめて悩みを聞く、ストレスを発散させる、リフレッシュの場を設ける、そんな努力が企業にも家庭にも、もちろん本人自身にも必要なのだろうと思う。

(平成23年12月14日 日刊工業新聞掲載) 

中小企業の危機管理

まずは日々の基本的習慣/危機的状態イメージを

豊田賢治(埼玉支部)

東日本大震災後に、埼玉産業人クラブの協力で会員企業の危機管理についてアンケートと訪問ヒアリングを行った。アンケートでは関心の高いリスクについて調査し、何らかの危機管理対策を実施している企業と特に実施していない企業で顕著な違いが出た項目があった。
自然災害、火災、労災等についてはどちらも関心度は高いが、コンピュータデータ、ネットワークシステムや情報漏えいについては、対策実施企業の関心度は高く、そうでない企業は低いという結果であった。危機意識の高い企業は目に見えるものだけでなく、情報など目に見えないものの価値も重視していることがうかがえる。
埼玉県内で訪問した対策実施企業については、幸いにも甚大な被害を受けた企業はなかった。それらの企業は事業継続計画(BCP)の作成まではしていなくても、安全衛生委員会を設置して日々の作業における社員の安全確保、定期的な消防訓練、朝礼での注意喚起などを行っている。
また、工場・職場の床を色分けして通路と作業する場を明確化したり、消火器の位置がどこからでもわかるように表示を工夫したりして見える化を徹底している。
社員との連絡手段も、携帯電話だけでは災害時に不通になることも考慮して、震災時にも通じたPHSも用意している企業もあった。
原子力発電所事故の影響については、輸出の際に放射線量測定を求められた企業も多いが、顧客との信頼関係が深く、工場と原発との位置関係を説明しただけで何も要求されなかったという企業もあった。
取引関係の深さにもよるが、日頃から頻繁に情報交換しているとか、トップ同士で積極的に交流することで対応が相当違ってくるのである。
 訪問した企業は一様に基本が徹底されており、5S(整理、整頓、掃除、清潔、しつけ)の推進、安全衛生に関する日頃の習慣、見える化、取引先との信頼関係構築に力を入れており、形だけの計画ではなく地道な活動をしている。
また、危機的状態をイメージしておくことが心構えとして重要で、危機的状態になった場合「どうなるのか」「まずどうしたらよいのか」をイメージしておくことも的確な対応につながるのである。

(平成23年12月21日 日刊工業新聞掲載)

震災に学ぶ「絆」マーケティング

「家族愛」意識より緊密に/環境と人、つながり再考

上野延城(埼玉支部)

昨年の世相を1字で表す「漢字」が「絆(きずな)」に決まった。
電通総研は11年の6月に「震災をきっかけとした人間関係の変化」について調査した。東日本大震災は、家族や友人との「絆」意識を顕在化させ、また「震災婚」という言葉にもみられるように結婚を決めたカップルも多い。震災により「絆」を見直し、自分にとって本当に大切な人はだれなのかを問い直すきっかけとなった。
人々は東日本大震災などの大規模災害で、家族や仲間との絆の大切さをあらためて知った。絆は人間が集団の中で生きて行くためには不可欠な要素である。
絆をコンセプトにしたマーケティングには「地域との絆」「仲間との絆」「家族との絆」がある。地域との絆を創出する地域住民間の共通の目的である「郷土愛」に関する伝統的な祭りや催事が震災後、各地で多くなった。
 また、買い物を通じて復興への協力意識が消費者にひろがった。「創業の事業スタート」のありかたを「事業モデル」ではなく「仲間との絆」に重点をおいて成功した企業もある。
 また、仕事で落ち込んだ時には仲間との絆が役立つことが多い。大学生に震災後の友人・仲間との付き合い方を聞いたところ、大学生の51.9%が「狭く深く付き合いたい」と回答した。10年度から10ポイント以上も増加した。震災以前は、ソーシャルメディア等で広く深く付き合おうとしていた大学生の仲間意識が震災によって変化し、より身近な友人と深く付き合うことにシフトした。地域内で何かを通じて友達づきあいをする相互間の「仲間愛」が深まった。
 震災は「家族との絆」をより強くした。「大切にしようと思った」相手は「親」が54%と最多。次いで「配偶者」47%「子供」47%「兄弟姉妹」46%となっている。家族の相互間の共通の目的である「家族愛」への意識がより緊密になった。
 消費者の節約志向は根強いが、家族や気の合う仲間同士の絆が見直されており、気軽に、自宅でプチ贅沢を楽しみたいと考える人も多い。震災は消費者が環境と人のつながりを考えるきっかけとなった。「絆」をキーワードにしたマーケティングがこれからの潮流になるものと予測される。 

(平成24年1月11日 日刊工業新聞掲載)

地熱・地下熱の利用促進を!

環境破壊なく安定出力/普及促進へ助成必要

塚本裕宥(北関東支部)

日本での自然エルギー利用とは、風力や太陽光発電を指すようだ。報道等を継続的に観察すると、それが顕著で、地熱や地下熱利用をなぜ考えないのか疑問だ。1999年に運転開始の東京電力八丈島地熱発電所を最後に、新規着工や計画を聞かない。電力不足の折なぜだ、どういうことだ。日本は火山国、潜在エネルギー量の豊富な地熱の利用促進が急務だ。
 地熱は出力面で不安定な風力や夜間は発電できない太陽光より優れている。自然エネルギー利用の中で、地熱利用は初期投資大でも経済的なはず。地球環境の破壊もほぼゼロ。
 太陽光による発電は産業用には不向きな低品質で、高コストであり、これへの優先的で大きな助成は疑問だ。
 地熱の利用可能な場所は国立公園が多く、法律が阻害している様子。人が作った法律で人を縛るのは、無意味で滑稽だ。必要により、改めるのが適切、環境破壊や景観保全に配慮することは当然で容易なはず。主観的だが風力発電は景観を損なうとの見方もでき、風車が林立する様子は、すっきりした自然景観を損なうと感ずる。環境や景観保全を主張する方の意見も聞きたい。世界情勢で価格変動する石油依存からも転換したい。
 地熱を利用すると温泉に依存している観光地に打撃を与えるという。これも配慮は容易なはず。過去からの利権絡みと思え、温泉への影響評価をしながら地熱利用を進めればよい。
 地下熱利用も促進したい。昨夏、青函トンネルを見学して地下熱利用が夏冬の空調エネルギー需要に好適なことを実感した。地表からわずかな地下に熱交換器を設置すれば、十分効果を期待できる。
 土木や建築業界では研究が進んでいると聞く。今こそ採用段階と思う。
 利用促進の政策を願い期待する。太陽光利用に補助金をつける以上の普及促進を図ってよい。昼夜を問わず利用でき、太陽光より優れているはずだ。
 地下熱利用を配慮した土地取引にはその分を上乗せすればよい。経済性を考慮した取引ができるはず。地熱発電を含め企業の本格進出を切望する。
 風力や太陽光発電より、地熱発電や地下熱利用にこそ大きな助成をすべきだ。

(平成24年1月18日 日刊工業新聞掲載)

米国から見る日本の労働環境㊤

業績盛り返す車メーカー/インドにマンパワー求め

森田喜芳(東京支部)

今年も昨年と同じ日に同じホテルに泊まって、今回の最大の目的であるデトロイトオートショーの見学にやってきた。昨年と今年は、日本から出かけてきたので、久しぶりに左ハンドルのレンタカー車を運転して空港からホテルまでやってきた。部屋に行くために、エレベーターに乗ったら懐かしいインド風の家庭料理の臭いがした。ホテルの大部分の部屋は、インド人の単身者や家族持ちの人たちが泊っている。 
このホテルには、インドから約4ヶ月の長期出張で多くの若い男女のインド人が宿泊している。朝8時前後に、ミニバンが迎えに来て、5~6人の人たちが乗り込んでいく。ミニバンは2台、3台とやってきてかなりの人たちを乗せて出勤していく。 帰宅はおよそ17時30分すぎから、朝出かけていったミニバンが続々と帰ってくる。
ここに長期滞在しているインド人たちの働き先は、ホテルにいちばん近いクライスラー社が多く、デルファイという元GMの部品事業部門にも通勤しているらしい。
その辺の事情をアメリカ人の友人が話してくれた。この現象はGMやフォード、そして大手の部品メーカーやさらには銀行までにも拡大しているとのことである。
インド人が米国に何をしに来ているのだろうと不思議に思って聞いてみたら、ほとんどが技術者でコンピューターのエンジニアであった。
クライスラーを例にとってみると、一度会社更生法で窮地に陥ったときに多くの人員整理を行った中には、多くのエンジニアも含まれていた。最近はかなり業績が盛り返してきたので、設計などのエンジニアが再度必要となってきた。しかし、以前に整理したエンジニアを再雇用するのではなくて、そのマンパワーをインドの市場に求めているのであった。インドの若いエンジニアを米国本土に呼び寄せて仕事をしてもらっているということである。
これらの現象を見ると、いま日本で行われようとしている海外への移転の話とはいささか異なった現象が現実として米国に存在している。米国の事情が日本と違うのであろうか。それとも、現在米国で行われている現象と同じことが、いずれ日本にもやってくるのであろうか。

(平成24年2月1日 日刊工業新聞掲載)

米国から見る日本の労働環境㊥

時差を利用し海外で事務/高齢化日本も人材確保を

森田喜芳(東京支部)

私は6年ほど前に米国で、インド人が長期滞在して仕事している職場を見ている。今から10年前に米国の大手自動車部品メーカーに籍を置き、デトロイトの本社に勤務していた時の事である。
米国人は17時に仕事が終わると一斉に帰宅する。私の場合は、日本との連絡事項などがあり、直接打ち合わせをする機会などのために、常に退社時間は20時ごろであった。私の近くにはコピー機とFAX機があり、毎日私が帰りかけるときにFAXの機械が動きだした。
どうしてこんな遅くにFAXを使う人がいるのだろうと思って見たらなんとインド人女性が使っていた。しかも、手書きの数字を羅列した何十枚もFAXをしていたのである。私も毎日顔を合わせるので、あいさつに始まって仕事の内容などを聞いたところ、インドの勤めている会社にFAXをして時差を利用して計算をして翌朝はこちらでまとめるというシステムで経理関係の仕事をしているとのことであった。
現在、日本のコールセンターなども、中国などの日本以外の国で行われているのも同様の考え方で、日本国以外で仕事をしているというのが、日本ではあまり大きく取り上げられていないのが実態である。
このように、日本や米国の本社と海外をつないで、時差を利用した仕事は特に事務関係の仕事には適している。日本の生産の現場などは、リーマン・ショック以前にブラジル人などが多く働いていた。
現実に、英国やフランス、そしてドイツなどはすでに10年以上も前からこの課題に取り組んで、現在は定着している。
米国は英語圏であるインドから、英仏では自国の言葉を話すかつての植民地から、独では独語を話すポーランドから、それぞれ人材を受け入れ、コミュニケーションは問題ない。
はたして日本では、今後欧米のような考えで生産現場やエンジニアリングの人材を外国から集められるだろうか。
日本は2011年に31年ぶりの貿易赤字となった。厚生労働省の発表によると、少子高齢化が世界でも類を見ないスピードで進み、60年の人口は現在の40%減、65歳以上の高齢者が人口に占める比率は40%となる。この状態で日本のモノづくりを今後も守るために労働人口は確保できるだろうか。

(平成24年2月8日 日刊工業新聞掲載)

米国から見る日本の労働環境㊦

人口減で変わる生産環境/語学など自己研さん必要

森田喜芳(東京支部)

果たして、日本では日本語を話す外国人を多数受け入れて仕事をしてもらえるだろうか。答えはイエスとは言いきれない。現在も看護関係で、フィリピンやインドネシアから研修生を受け入れ、日本語教育に始まって実務研修をしているが、日本の国家検定試験は新聞によれば、100人に1人ぐらいの合格率と読んだことがある。
難しい日本語にルビをふり、試験方法も改善しているが、いまだに合格率は低い。そのため3年間の研修を終えて、帰国する例が圧倒的に多いとのことである。
これからは、日本人が日本で英語を話して仕事をするか、または外国人を受け入れて日本語をもっとやさしい言語にして、外国人と共存して働けようにするかのどちらかであろう。その答えは、まだ出ていない。幸いにして、教育面では最近東京大学が秋入学を検討していると報道された。国際化に一歩踏みだし、今後の留学生の受け入れなどに有利になり外国の優秀な人材が日本に残ってくれる事が期待される。優秀な人材が日本に残ってリーズナブルな賃金体系であれば外国人もどんどん日本企業で働くようになるだろう。日常のコミュニケーションは日本語で、意思決定などで議論が白熱した場合は英語または双方の母国語以外の第三外国語で話すようなことが近い将来起きることが想定される。すなわち、日本の生産現場やエンジニアリング部門、経営部門では、日本人は上司の外国人に使われる事が起きて来るだろう。クライスラーの例を見てみると経営者、中間管理職、エンジニアリングなどにも外国人が入り込み、そのことが当然のように会社のオペレーションが行われている。その結果、2009年の経営破綻後、11年に初の黒字となった。
日本の人口減で、国内の生産環境も厳しくなっている。為替や収益の問題から、工場を海外移転する日本空洞化現象が現実の問題となっている。今後、日本で生産と輸出で稼ぐ時代は終わり、M&A、海外投資などを経営戦略に変化し、配当や利益還元で稼ぐ時代になるであろう。
そのためには、今後は我々自身が外国人とコミニュケーション出来るように今から自己研さんしていく必要があると考えている。

(平成24年2月15日 日刊工業新聞掲載)

中小企業だからできる「CSR経営」の勧め㊤

"4ない障害"の中小企業/全員参画で目的達成

上田 隆一(埼玉支部)

企業の社会的責任(CSR)というと「ISO26000」。企業活動を経済だけでなく、環境と社会の側面からも評価する「トリプルボトムライン」の代名詞といわれて久しい。中小規模企業の経営支援を主眼としている経営士の立場としては、事業体の特性や悩みを乗り越えて、そのCSR経営を有効に発揮していただくための方策を考案し実践することが重要である。そこで、中小規模事業の「強み・弱み」を含めた特性を考察してみたい。
 第1に、マンパワーが少ないことである。当たり前といえばそれまでだが、組織の対応力不足の面と、トップの意思決定や周知の迅速性という強みに反映する。
 第2に、マネジメントに関する情報の収集、分析、応用の面で、量、質の不足が生じやすい。そういう機会や受入れの窓口が見えにくい。
 第3に、CSR経営のためには、準備から仕組みづくり、運用と改善などのために時間がとられるが、そのような時間的な余裕がなく、できればやりたくないと考える。
 第4に、仕組みづくりや運営、維持のために外部からの支援を受けたり、勉強したりするための内部費用や経費支出の余裕がなく、「ない袖は・・・」となる。
 このような状況を端的にいうと、「人・情報・時間・資金」がないすなわち"4ない障害"といい、ついに"やらない"につながってしまう。
 このような状況をクリアして、本来の目的を達成するための手法が「全員参画型」の取り組みという。これは「トータルで推進する」といわれるやり方だが、ここでは単にトップの指示で参加するのではなく、準備、企画から構築、運営、維持、改善まですべての実行行為に参画するということである。
この場合の推進方法は、担当別ではなく、すべての内部情報やデータ、外部からの意見や要望などが横割り型で共有される。内部、外部のコミュニケーションの高度化により、いわゆる「PDCAサイクル」に近い形が実現される。その上で互いに信頼かつ責任を持つ関係を構築する。このタイプの経営システムは、企業におけるいろいろな課題への取り組みに有効になり、相乗効果が期待できる。

(平成24年2月29日 日刊工業新聞掲載)

中小企業だからできる「CSR経営」の勧め-㊥

「全員会議」で状況共有/"連番状"が組織風土に

上田 隆一(埼玉支部)

前回の記事で説明したように、一口に"全員で取り組む"といっても、中小規模組織の場合には、手分けや役割分担には限度があり、実際には困難である。そんな中で最も効果的なのは、「一人二役、三役」ということになるが、これとても単純なやり方では個人の仕事への負荷が増えるだけになる。重ねていうと、そこで考えられて実行されているのが、仕事だけでなく、情報のシェアと共有をシステマティックに行う方法を考案する必要がでてくる。
 こんな事例がある。環境経営活動が課題となった、従業員数人規模の技術サービス企業では、社内の活性化と新しい企業風土を構築したいと考え、社長が一人ひとりの社員と面談して「一人複数役」を説いたところ、社員側から逆提案が出された。それは、社長がわかりやすい理念や方針を作成して、徹底させると同時に、全社員が理念・方針に基づく活動を各自の仕事で実行する。必要な教育、訓練を受けたり、相互啓発をしたりすること、毎月定期的に「全員会議」を開催して、各自の分担について報告し、全員が状況を共有する。担当者ごとに顧客先や取引先からのオファーや申し入れなどについて、全員が日常見ることができるようにボードに記載し、必要あれば直ちに関係者の打合せができるようにすることなどを"連番状"にしようということになった。
この提案を社長は快く承認し、このようなアイデアが率直に出てきたことをうれしく思った。そして、この方式は、最も身近な者が先生役、情報発信者になると同時に、全員が生徒でもあり、教材集めも行うオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)の実践者になる。中小規模組織の内部研修制度としては最適であり、その上で社員の目標とする力量表と到達年限などをトップが示せばこれに勝るものはないが、この仕組みの解説や提言は別の機会にしたい。
なお、この連番状は相互の負荷低減の手段ともなり、「カンパニーアジェンダ」としゃれたネーミングになって毎年更新され、同社の組織風土になっている。また、このユニークなシステムや成果をホームページでアピールしたところ、思わぬところからの引き合いや受注につながったということである。

(平成24年3月7日 日刊工業新聞掲載)

中小だからできる「CSR経営」の勧め㊦

全社員がSR自己評価/定期的チェックで進展実感

上田 隆一(埼玉支部)

ここで提言する[SR-Selfシステム]は、CSR経営の重要性を理解し、中小規模組織といえどもCSR経営の例外にはならないことを十分に認識されている中小規模組織の"4ない障害"をカバーし、より効果的なCSR経営活動を行うために考案したものだ。端的には「全員参画型SR(社会貢献・企業倫理)体質の自己評価の仕組み」といえよう。自己評価という以上、チェックシートや評価点制度も準備しているが、ここではその仕組みの骨格に当たる事項について説明し、本提言の基盤を認識していただきたい。ここで提言する[SR経営システム]は、トリプルボトムライン+ワンの形態をとっている。
第1は、企業倫理、社会貢献、組織統治、法令順守などと解説される「コンプライアンス&ガバナンス」を「中核事項」に置いている。そして、コンプライアンスとは、組織として守るべきことは守り、やってはならないことはやらないことであり、ガバナンスとは、やるべきこと、やってはいけないことをわかりやすい表現にして全組織内に周知徹底することと提言する。第2は、組織の経済活動が健全かつ安定することの大切さを認識し、決算上のボトムラインの優良性維持を求める。
第3は、環境経営活動の妥当性と社会的効果を追求するために、幅広いステークホルダー、環境要素への良い影響を拡大することを提言する。第4は、社会の安心・安全を追求し、社会全般にわたる「満足の連鎖」による"新三方よし"の実現を提言する。
 チェックシートは5段階評価で、それぞれの段階の中間に、上位の段階に向かうための諸対策の実例を示して、ステップアップを支援する。チェック者は、当然全社員であり、定期的チェックすることによりSR体質の進展を実感できる。この仕組みを図示したのが下記の「SR-Self式トリプルボトムライン・モデル」である。

(平成24年3月14日 日刊工業新聞掲載)

中小企業にとっての経営責任者

現状把握、問題クリアに/効率よく・効果的に・幸せに 

釜澤直美(南関東支部)

2011年の暮れ、日本経営士会主催の経営士育成講座で、経済産業省発行「産業構造ビジョン2010」、中小企業庁発行「中小企業施策利用ガイドブック」等を教材に、日本企業の現状と課題解決に向けた行政のビジョン、特に中小企業の課題解決に向けて企業、行政の諸施策について関係機関のキーパーソン諸氏から、客観的資料を基に講義を受け、改めてその現実に驚愕した。
しかし、どのような規模の企業だろうと、現状把握、抱える問題を正確かつクリアーにすることで、規模の大小にかかわらず、解決に向けた方法、手段、支援のアプローチは見つかるのである。多くの場合、抱える問題・課題が何なのか、具体的でない。つまり、「抽象企業」になっていることが多いのである。
私の40年の企業勤務経験から、元気のない会社、仕事の忙しい割に労働対価に満足していない会社が、中小企業に限らず見受けられるのである。確かに、企業を取り巻く環境は容易でないことも承知している。現行の諸税制など、諸外国と比べ負担が大きいことも周知の事実である。
しかしながら、私は多くの中小企業と仕事をする中で、社長=経営者に疑問を抱く現実も見てきた。例えば、社長という経営責任を負う立場にあっても、①社員(例えば、どんな能力を持っているのか)②生産設備(例えば、設備の故障、稼働状況)③品質保証・生産管理などの諸システム④財務(例えば、資金の現状、負債状況、助成、支援策)-など、いわゆる経営資源に関する理解と認識が低いのである。
08年4月21日、日本の大学生とのテレビ討論番組に出演した韓国の李博明大統領が学生から「政治についてどのように考えますか」との質問を受けた。李大統領は「国家は統治ではなく、経営です。力で治めるのではなく、国を効率よく、効果的に運営する。そして、すべての国民が幸せになることです」と答えた。
私は、会社経営とは、この様な考え方に立った経営が必要であり、経営者は経営に関してもっと関心を持たなければならないのではいか。未来への希望がないと言われる経営者には、会社がどの方向に向かおうといった目標がないだけのように私は思う。

(平成24年3月21日 日刊工業新聞掲載)

女性管理者が増えない原因

登用に消極的な女性たち/女性自身の意識変革を 

島影教子(東京支部)

内閣府が打ち出すアクションプラン「202030(ニゼロニイマルサンマル)運動」=「2020年には女性管理者を30%までに増やす運動」の影響か、最近女性管理者(リーダー)を育成する教育プログラムをよく見かけるようになった。
日本で欧米並みに女性管理者が活躍する時代はまだまだ遠いと思われるが、自治体も民間企業も努力をしていることがうかがえる。むしろ、管理者採用に消極的なのは男性より女性ではないかと思う。
「私には無理」「そこまで望んではいない」「家庭が第一」「子育て優先」「無理はしたくない」などさまざまな理由を並べる女性が多く残念だ。
また、女性管理者の欠点も挙げられる。思いつき優先で突っ走る勘違い女性を多く見かける。望ましいのは知識と経験と行動がバランスよく保たれた女性管理者だ。
さらに言及すれば知識も意欲も高いが、周りが見えないヒステリックな女性管理者の下にいる男性社員が一番気の毒だ。暴走女性管理者を見るとハラハラする。これには男女関係なく自らの「発見」と「気づき」が必要である。
行動を阻む家事や子育ての軽減がなされても、女性自信のモチベーションが低ければ女性管理者は増えない。仕組みの不足だけでなく女性自身の意識変革をしなければ202030は成り立たない。女性自身の潔さが望まれる。これを、私は「ウーマンイノベーション」と呼んでいる。無駄に片意地張るのではなく周りを見渡せ、先を読める行動力を持つ賢い女性を増やすことが必要である。謙虚な国民性と長い間の男性社会が弊害となっていたが、これからは男女の差なく家事や子育て分担をする未来創造型が増えるであろう。少なくとも今の30歳以降の世代はそれが定着・浸透しつつあるように思える。
今年2月には経営士会に女性の会が再発足した。名称は「NJK」(日本経営士会女性部会)である。会では女性管理者育成に力を注いている。変革ある育成にモデルとなる女性経営士が指導・支援するという。秋の経営士全国研究会議でも研究シンポジウムを予定しているので今後の活動に多いに期待したい。

(平成24年3月28日 日刊工業新聞掲載)

再度、地熱・地下熱の利用促進を

太陽光・風力より安定的/景観配慮し垂直堀りを

(北関東支部 塚本裕宥)

筆者は2012年1月18日本欄で「地熱・地下熱の利用促進」を提言した。
それへの電話連絡を頂戴たり、展示会で趣旨に賛同いただいたりした。エネルギー
問題に関心ある方々の円卓会議でも提起、前向きさも感じた。
 日本経済新聞「経済教室」の「新・エネルギー戦略」など、識者の主張にも注目したが、化石エネルギー関連が主体で、再生可能エネルギーに目を向けていないのが実態、地熱や地下熱に関する提言などはわずかで、配慮不足を感じた。
 政府は国立公園等での地熱発電の規制緩和を検討の様子だ。地上から斜めに掘り、規制地域の地熱利用を認める方向だ。これで本当に地熱発電の拡大が見込めるだろうか?
 斜め掘りは妥協の産物だ。低費用の垂直掘りを認め、景観を損ねたら地表部を横引き、景観に影響ないようにすればよい。
硬直的考え方を脱し、柔軟な発想で試掘したい。試掘しやすくすれば開発への意欲が湧くはずだ。
 規制緩和の動きが出てきた様子、思い切った更なる規制緩和を求めたい。
 井戸水で程よい夏の冷たさ、冬の暖かさを体験の方は多いはず。
 地下熱利用はこれと同様の原理、体を動かす環境では冷却不足、暖め不足の程よい冷暖房が、健康的で省エネである。
通常の空調設備ではまろやかな冷暖房になりにくく、夏は全体的な冷やし過ぎ、冬は暖め過ぎになりやすい。
 地下熱利用は、夏冬の省エネ効果もピーク電力の低減にも寄与できる一石二鳥のエネルギー利用である。地下熱利用の先進事例を見て痛感した。
 地熱や地下熱利用は太陽光や風力発電と違い、安定的なエネルギー利用だ。
助成も太陽光や風力発電より、地熱や地下熱利用に厚くしてよいはずだ。
 この夏や今後のエネルギーをどうするか心配だ。企業に無理な省エネを強いたら、更に海外に逃げる。国内産業が更に空洞化してから、突然の停電があってからの対応では遅い。
 日本の地熱資源は約2000万kw、原子力発電所約20基分に相当、米国、インドネシアに次ぐ世界3位。地熱と地下熱利用につき英知を絞ろう。

(平成24年4月4日 日刊工業新聞掲載)

経営に役立つIT導入法

経営者自ら関与/導入時に体制とビジョン

阿部 満(南関東支部)

日頃、経営コンサルタントとして数多くのクライアントに対し、IT選定、調達、導入の支援を行っていると、IT導入を成功させて経営改革につながっている企業と、反対にIT導入を行っても一向に経営改革につながらず、ITコストばかりが負担になっている企業の2通りがあることに気づかされる。
この違いは果たしてどこで生まれてくるのだろうか。
筆者は、経済産業省の中小企業IT経営力大賞などで数多くの企業を認定と優秀賞企業に導いてきた経験則から次のような違いがあると考えている。
(1)経営者がITに無関心でITプロジェクトなどの社内組織に関与していない。
(2)外部専門家などは活用せずに、ベンダー各社の見積書と提案書のみで自社独自評価でベンダーとITツールを最終的に決定してしまっている。
(3)社内の情報部門に任せきりで他の組織がまったく関与していない。
(4)ITの教育などは特に行われておらず、各自がマニュアルなどを見ながら、場合により口頭で使い方を学ぶ程度になっている。
(5)IT導入後の改善について現場主導で行われてしまいIT改修などのコストが掛かる事について経営者が関与せずに現場主導になってしまっている。
このようにIT導入を行っても一向に経営改革につながらず、ITコストばかりが負担になっている企業の大半は、ITツールそのものもの問題というよりも社内の人と組織に関係しているのである。
では、ITで経営改革を行うためのIT導入ではどのようなことを行えばよいのか?
結論から先にいえば「IT導入時はきちんとプロジェクト体制を構築してから対応すること」ことである。
その際に、必ず経営者自らが関与し、IT導入による経営改革のビジョンや目標を掲げることである。この目標を掲げるか?掲げないか?でその先の結果に大きな差がでてくる。
また、世の中に数限りないITツールとベンダーを選定し、ITで経営改革を行うには、第三者の筆者のような存在も是非、ご活用していただきたい。
自社だけで解決するよりも結果的にローコストでIT導入による経営革新につながるケースが多いのも事実である。そして、IT導入による経営改革のビジョンや目標に対して、全員で共有化し、万が一、IT化の際に多少の失敗となった場合でも犯人を作らない組織体制を作ることである。
このような組織体制で導入したITは必ずや企業の経営改革につながり経営力を強化していくことだろう。

(平成24年4月11日 日刊工業新聞掲載)

毎年3万人自殺者止めよう

経営者の死は国家的損失/連帯保証人制度見直しを

佐藤 富夫(南関東支部)

10年程前の同じ提言を思い出した。自殺者は年々増えつづけ、14年以上にわたり毎年3万人以上である。多民族国家と違い、日本人ほど、連帯感と生活力、前向きな生き方など、民度の高い民族はないと思っていたが、自分さえよければよいとの考え方が増えてきたようだ。
万単位の死はあまりにも多く、その中の4割強が中小企業の経営者と言われている。それは、国家的なマイナス要因と考える。
私は長年、ベトナムホーチミン市にて仕事をしていたが、そこは自殺者が少なく、自殺者の事が新聞紙上に掲載されると聞き大変驚いた。
ベトナムの国民性のよい点は、くよくよしない、悩まない、他人を干渉しないなど、南国特有のおおらかさを持っていることである。
日本の少子化プラス自殺者の多さは、全国民が関心を持つ問題で、他人事と考えず対応していく必要があり、地域連帯の欠落も原因の一つではないかと考える。
特に、経営者の方々には従業員の健康管理など、自殺者ストップ運動の意識改革をお願いしたい。
自殺の話題はタブー視することが多く、思いやりの心をオープンに生活内部に取りいれるシステム作りが求められている。それには年配者及び職場の上司の意識革命が必要だ。
特に中小企業経営者の自殺を防ぐには、意識革命が不可欠。大手企業も含め、480万社中の99%、就労人口の75%は中小企業であり、現在の経営状態は、販売力の低下が原因で業績が低迷している。
経営者は今後、一段と資金繰りに困窮することになる。
日本で一番不人気な悪法は、連帯保証である。この法律のため、経営者の負担が大きく、なり手が少なくなっているではないか。
近々、日本の活性化は一部の大手企業のみに絞られ、大手も中小企業に支えられていることを再認識することが必要だ。

(平成24年4月18日 日刊工業新聞掲載)

禍から学んだ製品開発

身近なニーズに着眼/混乱教訓にシステム開発 

小林祥三(東京支部)

2011年11月9日の本欄に、「身近なニーズをくみ上げよう」と題して、中小企業ならではの方法で新製品開発に取り組むべきことを事例を挙げて論じたが、もう一つの事例を挙げて中小企業の製品開発のあり方を再度論じてみたい。
あの未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生からはや1年が経過した。小生の知る東京台東区に本社がある中堅企業は、その禍から学んだ教訓を生かして新製品を開発した。同社は主要顧客向けにEDI(電子データ交換)サービスを、24時間・365日行っているが、そのサービス拠点となっている福島県いわき市の事業所が、大地震と原発事故の影響で一時閉鎖を余儀なくされたため、その事業所の業務と従業員を台東区の本社へ緊急移転することとなった。
同社には、災害を想定した事業継続計画(BCP)は作成されており、かねてより訓練も行ってきたが、今回の地震はいわきと東京の2拠点同時発生のため、EDIサービスの手動切り替えにより混乱をきたした。同社は、この教訓を踏まえ、緊急地震速報の受信に合わせて、拠点間のサービス停止と移転を自動で行う必要性を痛感し、早速そのための新システム開発に着手した。
東京都台東区には、先駆的な新しい製品や技術を開発する場合に、その活動に要する経費の一部を助成する「新製品新技術開発支援事業助成金」制度があるが、同社のこの「緊急地震速報の受信に合わせたEDIサービス自動切替システム」の開発計画に対して、同制度に基づく助成金の交付が決定された。
冒頭に、中小企業に求められる製品開発の重要な要素の一つが、身近なニーズに着眼し、そのニーズに応える製品を速やかに開発していくことであると述べた。
同社が東日本大震災の教訓からニーズを認識し、早速「緊急地震速報の受信に合わせたEDIサービス自動切替システム」の開発に着手したという経緯は、まさに製品開発の重要な要素の一つを実行したことを物語っている。

(平成24年4月25日 日刊工業新聞掲載)

PDCA組み換え経営のすすめ㊤  

事業の狙いと特性把握/状況に応じて手順変更

吉岡 聡(南関東支部)

経営幹部会議や職場会議では "PDCA(計画、実施、評価、改善)をちゃんと回しているのか"という言葉が必ずと言っていいほど飛びだす。経営者、管理者、末端の社員に至るまで、経営の管理の基本といえばPDCAという概念が頭に浸透している。
PDCAとは、「計画を立て、実行し、その結果を評価し、その改めるべき点を明確にし、改善し、次の計画に反映させること」と一元的に理解している。
経営者・管理者にとっては響きのよい便利なキーワードであり、管理の概念的拠り所として形式的に回しているのが現実でしょう。
結果として、特に中小企業においては 「現場の状況は一向に変わらない、経営指標には上向いている様子は見られない」と首をかしげる経営者も少なくない。
何の根拠もない希望的な、時には指示的な目標・計画、あるいは大した努力しなくても達成容易な目標でお茶を濁すなど、"マンネリマネジメント"を延々と繰り返しているケースが多い。
これでは、打つ手がないために定番型PDCA手法を人並みに"行っている"だけの"PDCA呪縛経営"から脱却できない。
例えば、一つの事業を運営する場合「全体のPDCAだけではなく、どの段階でも、どの階層でも、そして各個人のレベルでも、常にPDCAを踏まえて管理を行う。しかもそれは、ワンサイクルだけではなく、終わりのない継続的なフィードバックの連鎖」である。
そんなことは当たり前だと誰でも言う。このように「PDCAを回す」と一括りのキーワードを口にした瞬間、全員が「PDCA は"Plan"から始まる」という魔法にかかったように定番化してしまう。
しかし、実際には、不良対策においては現状がどうなっているかを知らないと手が打てないので現場に出かけて、現物の現実を見て、そこから問題点を特定し、その原因を究明し対策案を考える。"PDCA"の順序じゃなくて、"CPDA"になる。
また、ISO9001等のマネジメントシステムの枠組みに、計画の前に予備調査(C)のステップが盛り込まれていないが、何事も計画するにはまず実態を知る必要がある。
マネジメントを効果的にすすめるには、事業の狙いとそれぞれのステップの特性を踏まえ、条件・状況によって定型的な"PDCA"を「P・D・C・A」とバラして因数分解したり、入れ替えたり、柔軟に考えたい。

(平成24年5月9日 日刊工業新聞掲載)

PDCA組み換え経営のすすめ㊥

各レベルで中身を具体化/展開して多面的効果追求

吉岡 聡(南関東支部)

「PDCA」を細分解し個人の意味を再考してみる。
企業組織のマネジメントは、階層や個人の各レベルにおいて"P・D・C・A"の中身を具体化し、さらに踏み込んで回してこそ多面的効果が表れる。
まず、"C"には、そもそも「マネジメントシステムの果たす役割は何か、それはできているか」を客観的に見つめる基本機能がある。また、その機能は人的能力の評価の分野でも次のように展開できる。
Plan力は、役割・環境・条件及び自己スキル分析のもとでの全体と部分の整合のとれた目標達成計画になっていること。Do力は、"Plan"を達成するための業務を行っていること。Check力は、実行が計画に沿っているかどうか定期的に確認分析をしていること。Act力は、"Check"に基づき行動及び計画の適切性への修正・改善をしていること。
さらに、"C"の機能には管理と経営の2つの側面もある。管理の側面は「自社の枠組み(基準、標準、計画)に対する実行・達成度合い」「活動があるべき枠組みを満たす方向に向かっているか」の評価。経営の側面は「経営の考え方や方向、活動の方向はこれでよいか」「自社の枠組みそのものが適切か」など全体を見直す問いかけ、問い直しである。これを使い分けるのが大事であるが容易ではない。
マネジメントシステムを柔軟に変えていくといわゆる「常に不完全なシステム経営」の概念に陥る。そこで、PDCAを「D及びC、A及びP」2つの領域に分ける。D及びCは「数値・標準を管理」する"システム範囲" 、A及びPは「システム概念や課題をどう設定し、どう実現させるかの議論や学習・アイデア創出」などの活動を具体化する"人の思考範囲"と位置づける。
まず、"D"では、それぞれの立場で内容が違う。管理者のそれは「部下が実行する動機づけや教育・指導・助言」等が主で、部下は「自己管理を高めつつ、管理者の助言を得ながら業務計画・目標達成計画を実践する」が主である。
"A" では、経営面と管理面で内容が違ってくる。経営面は「経営資源等の再構築やパラダイム・方針・戦略の転換等の改革的な処置」、第一線の管理面は「日常的な業務の改善、不具合面の是正処置、予想される課題解決処置」などが挙げられる。"P"では、経営理念・目的・目標づくりの合意形成まで拡大する。A及びP領域では組織コミュニケーションが特に重要となる。

(平成24年5月16日 日刊工業新聞掲載)

PDCA組み換え経営のすすめ㊦

現場状況を常時把握/成長度合いで順位変更

吉岡 聡(南関東支部)

PDCAの使い方は、組織の意志決定のしくみ、事業の規模、ライフサイクル、緊急性、情報手段の変化などで最適な組織形態が変わり"DCAP"や"CPDA"の場合もある。
例えば、新製品を売り出す時「立派な計画を立てて(P)、さあ売るぞ(D)、実績データを評価して(C)、さてどんな手を打つか(A)」ということはしない。
常時、現場の状況を聞いて計画とのズレを把握し、対策を検討し、緊急度合いを判断し必要なことは即手を打つ。
また、プロジェクト活動では、PDCAの"P"の中にもPDCAがあり、"D"の中にもPDCAがある。また、経営主導型の定型的PDCAサイクル戦略では次のような問題も生じる。
「環境変化への適応能力の喪失」「現場適応能力の低下」「変化が激しい業界では実行困難」「数値設定の計画・実行では本来の戦略意図から外れる」。
その場合、例えば、創生時(DCAP)⇒成長への移行期(CPDA)⇒成熟への移行期(APDC)⇒改革への移行期(CPDA)⇒再生への移行期(APDC)、危機管理対策(CPDA)など、事業年齢、企業外部環境等の転換時に管理サイクルを"戦略的PDCAサイクル"に組み換えることで実践的に活かすことができる。

(平成24年5月23日 日刊工業新聞掲載)

電力源ベストミックスの再考を

電力参入の自由化推進/技術検証し原発再稼動を

樋口藤太郎(南関東支部)

2011年3月11日の東日本震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故から一年経過し、脱原発とすべきという世論が高まりつつある。野田政権や電力会社の本音の意向を代弁するつもりはないが個人として提言したい。
3.11事故以前までのわが国の電源エネルギーの構成は、原発54基の有効稼働で3割をベースに、その他化石燃料の火力・水力電源の組合せにより、環境保全と経済の効率を満たすベストミックスだった。
 逆に脱原発で化石燃料を主体とする火力発電に代替、ピーク需要時は節電で対応する状況に移っている。化石燃料費の高騰により、現在電力企業の独占的総括原価方式を採る電気料金は、すでに世界的異例の高値に加え、17%もの値上げ要求となり、国内生産企業には経済的な打撃を与える。更に円高、震災、原発災害復旧が加わり、大企業には海外への移転を促し、容易に移転できない中小企業は壊滅的状況を及ぼす。これでは次世代に縮小経済規模や膨大な借金と放射性廃棄物を含むゴミの山を残す恥ずべき事態となる。
 3.11災害復旧期間は、統制的総括原価方式の電力料金の規制撤廃と、未完の原発技術の見直をする千歳一隅の機会と考えるべきだ。その対策として、経産省検討中の独立系統運用機関(ISO)付の「送電分離システム」の導入と、電力会社以外の企業の自家発の売電や再生可能エネルギー電力参入の自由化を進めるべき。現有の全原発を順次、安全性と災害事故対策を徹底的に技術検証しての再稼働を行う。環境保全と電力量・料金の安定を前提としたベストミックスを再構成し、継続すべきである。
 3.11以来、脱原発政策を発表したドイツを除く、各国や近隣の中国・韓国・新興国などが原発推進で増設している。米国も事故以来34年ぶりに、わが国の東芝と子会社のウェスティングハウスに4基の発注やベトナム・トルコ等からの引合いがある。
国内では、事故後学生の原子力関連分野への進学や産業への就職が減る傾向がある。しかし、原発推進の場合には、運転管理の遠隔化および輸出部門の炉本体や機器製造のニーズがある。脱原発推進の場合には、廃炉や放射性廃棄物の跡始末などのいずれも、長期の高度技術知識が必須であって今後とも若い人材養成は重要な課題で政府の適切な施策が重要となる。

(平成24年5月30日 日刊工業新聞掲載)

中小企業、海外進出のポイント㊤

経営資源を客観的に把握/進出の目的・目標明確化  

長谷川正博(東京支部)

2012年3月2日、中小企業の事業計画の策定などによる経営力強化及び中小企業の海外子会社の資金調達の円滑化を狙いとした「中小企業経営力強化支援法案」が閣議決定された。同法案の究極の狙いは、内需が減退(国内市場の縮小)する中で、中小企業の生き残り・経営力強化のため、海外展開の拡大・促進をより積極的に進めることにある。
日本は急速な人口減少と高齢化に直面している。その環境下で企業が存続するためには、急成長するアジアなどの新興国の「内需」を取り込み、いままで以上に「新規市場開拓・深耕」を目指し、事業展開をすることが求められている。
経済産業省によると、手取り収入が1世帯当たり年5000ドル(約40万円)以上、3万5000ドル(約280万円)未満の中間層は、アジア新興11カ国・地域で00年の2億.4000人から10年に14憶6000万人となり、20年には23.憶1000万人に達する見通し。一方で、アジア市場では3万5000ドル以上の「富裕層」も拡大している。日本の近隣に位置するアジアの市場、その成長をいかに取り込むかが自社の生き残りのカギを握るといえる。
一つの例が、従来内需型産業の代表とされるコンビニエンスストア業界である。同業界の大手企業は海外店舗拡大に力を入れており、大手コンビニの海外店舗数が12年度末で5万を超え、国内の店舗数4万8000店(11年度末)を上回るとみられており、アジアを中心とした新興国の経済成長=消費市場拡大をうまく取り込んでいる。
経営資源がある程度限られている中小企業が、海外進出を進めるに当っては、自社の置かれた経営環境と自社が保有する経営資源を客観的に把握する。合わせて、海外進出の目的・目標を明確化し、その目標に対し最適な行動をいかに進めていくか、進めるにあたって要素がそろっているかなどを十分検討することがまず重要である。このように自社の状況を客観的に把握・認識した上で、構想の具体化する。それに沿った予備調査を行い、進出先を決めてから当該市場での事業化調査(フィージビリティースタディー)を徹底的に行うというステップを踏むことになる。

(平成24年6月6日 日刊工業新聞掲載)

中小企業、海外進出のポイント㊥

情勢把握し最適国選定/自分の足で情報収集 

長谷川正博(東京支部)

海外進出の構想の具体化の次ステップは、予備調査段階となる。この段階は各種データの収集・分析であり、進出先候補国を含め3、4カ国の調査をする。例えば、タイへの進出を計画する場合でも、マレーシア、インドネシア、ベトナムなど周辺国を含め、各国のインフラ、法律・税制等投資環境、経済一般状況、国民性、政治情勢、労働事情などを調べ、最適であると思われる国を選定することが必要だ。
データ収集先としては、自社の取引先銀行、取引先企業、日本貿易振興機構(ジェトロ)や商工会議所、進出先国の在日大使館などがあろう。もちろん、自社の製品が対象国内で市場性を持っているか、改良すべき点はどこかなどをあらかじめ把握することは当然必要だ。
進出先の絞り込みができた段階で、次の最も重要なステップは事業化調査(F/S)である。F/Sの調査項目は大略次の通りである。(1)政治の安定性や方向、政府の政策(特に対外資)、(2)経済情勢、経済の見通し、産業政策、(3)社会情勢、宗教、教育水準、歴史、対日感情、(4)市場の規模とその変化、市場の特性、流通経路、商習慣、知的財産に関する制度、競合状況、広告・宣伝・販売促進手段の状況など市場関連、(5)人的資源、設備・原材料、部品・部材の調達、インフラストラクチャー等生産諸条件、(6)資金調達、金融制度、為替変動などに関する情報、(7)会社設立手続き、派遣社員環境などである。
これらの現地調査は派遣候補社員に実際に現地に行かせ、自分の足で収集・把握させることがポイントとなる。収集先として、対象国内日本人商工会議所、同ジェトロ支店、取引先銀行の出先店、取引先企業の拠点、当該国内日本大使館、自社の当該国内販売代理店、進出先国政府機関等が挙げられる。また、会社設立手続きを依頼する現地側会計事務所などからもデータ収集が可能である。
対象国や製品によって異なるものの、1か月ほどを上記現地調査に当て、操業後1、2年は赤字となることを考慮に入れ、5年程度の事業計画を作成、本社にて検討・討議のうえ「ゴーサイン」又は修正・再調査ということになる。この事業計画作成、経営支援や現地側での資金調達支援などが、冒頭述べた法案成立後は認定機関や日本政策金融公庫などから受けることができる。

(平成24年6月13日 日刊工業新聞掲載)

中小企業、海外進出のポイント㊦

人材育成に中長期的戦略/外国人雇用は注意必要 

長谷川正博(東京支部)

経済産業省の企業向けアンケートによると、海外拠点の設置・運営に当たっての一番の課題に「グローバル化を推進する国内人材の確保・育成」が挙げられている。つまり、海外展開のカギは"人材"ということである。
事業化調査(F/S)を進出候補先国で実行する場合も、少なくとも語学力、特に英語能力がない人では務まらないことになる。社内にそのような能力を持った社員がいない場合、新たにリクルートするなり、予備調査またはその前の構想の具体化段階から候補者を絞り、英語学校に通わせるなどして体制構築に努力すべきである。
 企業経営者として考えるべき事柄は、現在の環境下にあって、自社が急いで強化すべき能力は何か。短期的(2、3年)に対応するために必要とする能力は何か。何をやっておくべきか。中期的(3-5年)には何をやっておくべきか。長期的(5年以上)にはどうか、そのためには今から何をやっておくべきかなどを踏まえた企業戦略に基づく人材育成の設計図や具体的な諸方策によって、計画的に進めなければならない。
 グローバル人材として在日外国人を雇用するケースもあるが、この場合は次のような点を認識する必要がある。①仕事の指示等伝えたい内容はシンプルに漏れなく表現する。日本人同士の「以心伝心」は通用しない②議論での意見対立は「健全」と受け止め衝突を恐れない、③彼(彼女)が疎外感を感じないようコミュニケーションは積極的にとる④会議で議論した内容はメモにして確認し、何がどこまで決まったのかを明確にする⑤仕事以外の場面でも、気後れせずコミュ二ケーションを図る。なお、外国人を採用する際には、しっかりした労働契約書や就業規則など書類面の整備と、職務の詳細な内容等を明確に英文で作成し、双方で確認・納得の上サインし、双方で保管しておくことが重要となる。また職務記述書も明確にしておくことも重要である。
日本→人口減少→経済の停滞・縮小→企業のダウンサイジングではなく、アジア人口の増加→経済の活性化・内需拡大→事業機会の増大という積極的な認識を持って対処すべきであろう。

(平成24年6月20日 日刊工業新聞掲載)

公平・平等・対等について㊤

80年代に米国進出/採用ルールの違い実感

森田 喜芳(東京支部

「貴方は、このままの状態で採用を続ければEEOC(米国雇用機会平等委員)に訴えられますよ!」。私は突然、総務担当SVP(米国人上級副社長)に呼ばれて言われた。
私は、最初は何を言われているのかさっぱり理解できなかったが、どうやら我々の部門責任者である私の指示で米国人の採用をしていた結果の問題であることが分かった。前週に上記のEEOCメンバーが調査にやってきた結果、我々の部門が問題であると指摘してされたとの事である。
貴方の部門は、"学卒、若年層、白人、男性、しかも経験者のみの採用に偏り過ぎている"との指摘であった。今後は"女性、高齢者、有色人種"を増やしてください!との要求であった。しかも具体的に○○%増やしてください!と指示された。
当時(1980年)私は日系の現地自動車会社創業時のメンバーとして、我々の部門(調達部門)の課題である自動車部品を日本輸入から現地調達に切り替えるために現地人を約300人採用するさなかの出来事であった。そこで改めて、雇用機会均等法の勉強をさせられた。
アメリカの採用では筆記試験はなく、1次面接を採用担当と採用部門の係長が行い、2次面接に課長と日本人の私が行いほとんどの場合は、毎日の採用面接を行って当日2回の面接で採否の決定をしていた。
また、特徴的なのは職場の上司やかつての先輩などが本人の推薦人となって履歴書に記載されていた点である。したがって事前調査の段階では、その情報網を大いに活用しある程度の事前情報を整理したものである。
アメリカの履歴書には写真は貼っていない。また、面接時には、性別、年齢、人種、肌の色、宗教、国籍、出身国、家族、身体障害などに関する質問はしてはいけないことになっており、それらの情報を履歴書に書く事もない。唯一、年齢だけはアメリカの高校までは義務教育であり、高校の卒業年度で推察できる。
 そのため、面接当日までは上記に関する情報は全く無く、面接に多くの時間を費やして、本人から自発的に上記の情報を話してもらうようにするのに苦労した。当時はこれが米国での、公平、平等、対等なのであろうと知り、日本との違いを痛感させられた。

(平成24年6月27日 日刊工業新聞掲載)

公平・平等・対等について㊥

努力報われる学歴社会/大学移っても単位取得

森田 喜芳(東京支部)

私は、2002年に転職した。その会社は、前年まで米GMの部品事業部が分離独立した会社であり所在地はデトロイトの郊外にあり、5階建ての大きなビルがコの字型に3棟あり、世界本社も兼ねた本社機構の本部であった。
転職の際に履歴書を提出して、本社へ初出勤日に事前に内示されていた年俸やタイトルについて部門長と総務担当の女性2人と最終打ち合わせを行った。しかし、私はその時には気にしていなかった学歴が役職、昇格に連動していることがその後に分かった。
すなわち、この会社の場合はディレクター(部門長)で取締役になるには、例外を除いて、修士課程終了以上が条件であった。もちろん、この条件はGMの社内規定をスライドさせたものである。私の職場のナンバー2で、GMからの生え抜きの男性は博士号の肩書きを名刺にプリントしてあった。
その後、職場に慣れてきて、回りの人たちと親しくなり、その人達の経歴や会社での仕組みを聞いてみると、高卒で入社してGMの大学を卒業し、更に会社と連携しているいくつかの大学院で仕事をしながら修了し資格を得ている管理職も見られた。
高卒で入社した時は、全米にあるGMの工場勤務であった人たちがデトロイトの本社勤務でマネージャー(課長職)やディレクター(部門長)で仕事をしている人が私の周りには多く見られた。
アメリカの大学の場合は、取得した単位はどの大学に移っても問題なく、修了単位を得れば学位を与えられるようなシステムである。
従って、転勤が多くても勉強して学位を得られるような環境が整っている。また、修了年限がないために何年掛かっても修了単位を取得すれば学位は与えられる。
本人の努力しだいで学位を得て昇進、昇給する機会は、公平、平等、対等、に与えられており、努力すればその結果は報われる制度が学位となって証明されるということである。
すなわち、アメリカは学歴社会ではなく、人々は機会を均等に与えられてそれをクリアした人たちに、よりレベルの高い仕事とそれに見合う報酬が得られる仕組みになっている。努力すれば報われる分かりやすい仕組みが学歴として表現されるのが一般的である。
日本の場合は大学の単位は単一の大学内であれば適用されるが多くの場合は大学を移った場合は取得済みの単位は全て適用されない。
また、学習年限もあり学位は生涯学習の対象となりにくいのが現状である。

(平成24年7月4日 日刊工業新聞掲載)

公平・平等・対等について㊦

日常的な仕事と大学両立/日本社会も環境構築を

森田 喜芳(東京支部)

人口減少が進む中、子供を持つ女性が働きやすい社会にする必要がある。私がデトロイトで働いていた職場では、秘書の女性がある日、部門内異動により日本で呼ばれている総合職の仕事をしていた。確認をしてみたら彼女は最近、大学卒業の単位を取得し学士の資格を得たので総合職に移動したとの事であった。その女性は以前に軍隊(Military)から一般企業に移ってきて、部長職の秘書をしていた。
また、私の秘書をしていた女性の母親も高卒で銀行に入社して、仕事と育児を両立させながら勉強して、大学を卒業し最終的には定年退職時は銀行の課長職であったとの事である。同様に、私の秘書をしていた女性は今でも毎年、継続してコミニュティー・カレッジで学んで単位を取得している。
同じようにフォードの役員秘書をしていた女性が、大学そして修士を修了して、私が以前勤めていた自動車会社では、我々の部門に管理職待遇で50歳代の黒人女性を採用した例もある。このような例はアメリカでは数多く日常的である。すなわち昇進の最低条件は、平等、公平、対等に与えられた学歴であった。
日本では、少子化、高学歴女性も多くなり働く場所や管理職の登用などもっとフレキシブルで努力が報われる雇用機会の均等を進めて行きたい。特に幼児の育児を安心して長時間任せられる施設などの充実は、後期高齢者の施設の対応と同時に必要性は多く、早急な対策を要求されているのが現状である。
日本の高校義務教育化や授業料の無償化などの学校教育、制度は国民が受けたい教育を受けられる環境にすることも長期的な施策として取り組み、生涯学習の制度構築をしていきたい。
また、いずれ日本でも外国人の受け入れが活発になっていくことは必然的な現象であると考えられ、日本人だけでの単一民族を保つことは不可能に近くなっている。これらの人々と地球全体の枠組みから考えて、日本の社会全体が誰にでも、公平、平等、対等であるような環境を早く構築していくような努力が必要であると考える。

(平成24年7月11日 日刊工業新聞掲載)

原子力発電所の事故の脅威㊤

国会事故調「事故は人災」/胎児・幼児の健康第一に

青樹道弘(東京支部)

2012年7月5日、国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が「今回の事故は自然災害ではなく、あきらかに人災だ」と結論づける報告書を衆参両院の議長に提出した。これは昨年から私がこの「経営士の提言」(2011年.4月23日)で疑問を投げかけていたものであるが、まさにそのように断定された。くしくも、政府が総理大臣の責任で再稼働を断行した大飯原発の送電開始と同じ日であった。この原子力発電所の事故による被害を地球上にもたらした一日本国民として、今、意見を述べなくてはならないと考えた。
わが国の原子力発電は、イギリスの原子炉を導入して東海村において実用運転を開始したのが最初であるが、イギリスの保険会社ロイズ社は日本が地震大国である事、原子力が確立された技術ではないと言う事で、原発の保険を引き受ける事を拒否した。このため国は万が一原子力発電所の事故が起きた時は電力会社が負担しきれない部分を国(国民)が負担すると言う、原子力産業保護のための「原子力損害賠償法」の制定に向けて、事故による損害額の試算を当時の科学技術庁に委託していた。最悪の場合、当時(1960年)の国家予算の2.2倍の損害が生じると言う、それこそ想定外の結果が出たそうである。
今回の事故による放射能が環境中に拡散される中、政府や専門家により『ただちに健康には被害はない』と言われているが、胎児や幼児の将来にわたる健康を真剣に考えての発言なのだろうか。内部被曝によって後から生じる晩発生影響が問題で、外部被曝とは異なり、長期間人体を損傷し続けるのである。
実際に測定されている放射線はガンマ線のみで、アルファ線、ベータ線の測定は行われて居ないのである。いったん体内に取り込まれるとより非常に危険な放射線の内部被曝は計測出来ないと言うのである。知っておくべき資料として、一冊の本が紹介されている。ラルフ・グロイブ、アーネスト・スタ-ングラス 著、肥田舜太郎、竹ノ内真理 訳 「人間と環境への低レベル放射能の脅威-福島原発放射能汚染を考えるために-」(あけび書房)で、原題は『The Petkau Effect:The Devastating Effect of Nuclear Radiation on Human Health and the Environmentt』 いわゆるぺトカウ効果(「液体の中に置かれた細胞は、高線量放射線による頻回の反復照射より、低線量放射線を長時間、照射することによって容易に細胞膜を破壊することができる」という現象が、カナダの医師アブラム・ぺトカウ博士によって証明された)について書かれており、初の邦訳出版となった。低線量放射線による生体レベル、細胞レベル、分子レベルでの影響を発見・かつ詳細に紹介。原爆・核実験。原子力発電所がもたらす様々な放射線被害、今日に至る政府当局による放射線防護基準の欠陥を指摘している。

(平成24年7月18日 日刊工業新聞掲載)

原子力発電所の事故の脅威㊦

大飯原発再稼動に疑問/安心して生活できる国に

青樹道弘(東京支部)

ある若者が「私は今、福島原発4号炉のことが一番気になっており、万が一の地震などが起きた際いち早く国外に脱出できるよう、家族も含めいつでもパスポートを身につけている。」と言った。
現在のこの事態がどれだけ大変な状況であるかを熟知した上での言葉である。彼は日常、熊本県の信頼のおける農家から肉・野菜や水を取り寄せており、外食は殆んどしていないらしい。そんな彼に対して、被災者を応援するという意味で使われている「エシカル」について質問したところ、それぞれの世代にはそれぞれの役割があるという答えが返ってきた。
そのようなともすれば神経質すぎるように見える行為をすべき世代、つまりこれから子供を育てていく世代、とその心配をしなくてもいい世代、を指して言っていたのだろう。
さらにある方には、「高齢者は自分自身に将来への何の憂いもないからと言って、何でも食べても良いのだろうか疑問に思っている。たとえ微量であっても体の中に放射性物質が蓄積され、いずれは火葬されて骨となり埋葬される。その時点で、空気中や土の中に浸透し、まためぐり巡って来るのでは・・・」と問いかけられた。
現在の政府関係者、当該研究者たちは、遠い将来のことまで本当に考えて、考えて大飯原子力発電所の再稼働を決定したのであろうか、甚だ疑問である。
毎金曜日に総理官邸前で反対運動を繰り広げている市民団体は、それを一番心配しているのではないだろうか。
国の原子力発電技術や海外への設置権など、大きな国家事業である事は間違いない。
しかし、それらと、安心して生活できる健全な国家建設とを天秤にかければ、どちらが大切かは考えなくても分かるだろう。少なくとも『ぺトカウ効果』をできるだけ多くの人に知って貰うよう活動したい。

(平成24年7月25日 日刊工業新聞掲載)

操縦室から見る財務管理

機長と経営者に共通点/計器と景気見ながら操縦

山下恭司(千葉支部)

財務管理の文字を「財務」と「管理」に分けて「会計」の文字を組み合わせると、「財務会計」と「管理会計」となる。「財務会計」は社外のステークホルダー(利害関係者)への説明責任を果たすために使用される「管理会計」は、社内関係者への説明責任を果たすために使用される。
財務管理に使用される会計用語の機能は、私が過去に在籍した航空会社の操縦席の計器に酷似している。パイロットは、優れた知識・技能を持って操縦室内の計器を確認、窓外に起こる自然現象の様子を見ながら操縦する。操縦技を駆使するがゆえに、顧客は安心してその飛行機に搭乗しフライトを楽しむことができる。 
経営者は、操縦席の機長と似たところがある。会社経営の優れた知識・技能を持って、財務諸表に示されたデータと社外の景気動向を見ながら、会社のマネジメントを司る。経営者への信頼があるがゆえに、ステークホルダーは安心してその会社に資金を委ねる。
資金計画は、飛行機の燃料計算に等しい。たとえ瞬時でも資金が途絶えてしまえば、会社は倒産に追い込まれる。飛行機に例えれば燃料を失っての墜落である。
利益計画は、経営者の思いを具現化する、飛行機でいう飛行計画である。目的地に向けた飛行計画書はさまざまな観点から作成される。
例えば、成田空港から太平洋を越えてアメリカ西海岸まで飛行する場合、追い風のジェットストリームに乗り、太平洋を真東に飛ぶ飛行ルートを選ぶか、大圏ルート(最短距離)でアリューシャン列島上空を飛ぶ飛行ルートを選ぶかは、当日の大気の状況を見極めて判断される。その日の外的要因であるジェットストリームの位置、高度、風速の強さ、ルート上で予想される急激な気温変化などから、最も効率的、かつ安全で快適な飛行ルートが選択され実行されるのである。
経営に例えれば、会社の現状のみに心を奪われることなく、そこから予測される諸状況を計画に盛り込んで、周りの外的要因に対処していく。計画によっては、到着地までの所要時間が1時間以上も違う飛行状況がある。それだけ出発前の判断は重要であり、燃費(=資金)にかかる経費の節約も大切な課題と例えられよう。経営者には、綿密な計画書の作成と、適正な「変化のマネジメント」をお奨めしたい。 

(平成24年8月1日 日刊工業新聞掲載)

思考・規則の壁を破ろう

少子化ふまえ学校統合/組織の理念見直す機会に

塚本裕宥(北関東支部)

私たちは頭の中で、自ら思考・規制の壁を作り、できない理由を考えがち、人が作った法律なのに、役所の基準や省庁間の壁があるという理由で、改革などを諦めている例が多い。本筋を忘れ、枝葉末節に捉われている例も多い。
人口減少社会になり、先行的にそれに見合う施設数や内容にする必要があるのは当然だ。それには施設の統廃合が必要。それで財源の有効活用や施設の充実も可能である。私たちの身近な例を示す。
断っておく、私の基本は「我らの子孫と我らのために」である。
幼稚園、保育園、小学校、中学校、高等学校の統合などを考えたい。
これら学校などは、大幅に過疎化が進んだ地域以外、かつての第二次ベビーブーム時と変わらぬ教室数の例が多い。小学校の場合1学年、各2学級程度の学校が多く、通常教室として、計12教室必要。これに理科、音楽、工作室などが必要で、実態は余剰教室を物置同然に使用の例が多い。是非、身近な学校で確かめてほしい。贅沢に使っているのが実態だ。
そこで私は幼稚園+小学校、保育園+小学校、小学校+中学校、あるいは、中学校+高等学校の如く統合などを考えることを提唱したい。
幼子が通うものは、合理的な通学距離として現状と同程度の便利さとしたい。
小~高等学校や幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省の管轄などと縄張り争いをしないこと。できる方策を考えるのが適切だ。
あいた幼稚園などは地域の施設として、放課後、幼老混在の見守り施設にするなど、地域ビジネスを活用、衆知を集め有効活用を図りたい。幼子を大切にして、雇用を生み出すことが大切だ。次も考え方で似たような例である。
農家・商店を支援するために組織が農協・商工会議所であるはずなのに、農協・商工会議所を守るため、農家・商店が会費で支えていると見える。
私の穿った見方だろうか。設立の基本に立ち返り、組織の存在の必要性や組織の理念を含め見直す機会だ。他の組織も理念に立ち返りたい。組織は頭から腐る。組織の寿命30年ともいう。肝に銘じたいものだ。

(平成24年8月8日 日刊工業新聞掲載)

教育施設の合理的統廃合を

行政の縄張り意識やめよう/地域ビジネス活用も大切

塚本裕宥(北関東支部)

筆者は思考・規制の壁を破ろうと提言し、例として人口減少社会を見据えて教育施設の統廃合が必要と提言した。ホームページや実地で確認してあり、具体的理由を例示してみる。
A小学校:800の戸建て造成を期に、1971年4月開校、19学級733名。78年度、団地開発に伴いピーク時、42学級1633名に達した。
79年度、隣接小学校開校で一部移籍、31学級1259名に減少したが、隣接の団地造成で、82年度、35学級1357名に増、以後は減少傾向。
11年度現在、普通14学級444名、支援3学級16名。教室概数32。当校は歴史が分かり、本提言を裏付けやすい情報開示である。
B小学校:79年4月開校、普通26学級、支援1学級。
11年度現在、普通13学級409名、支援3学級14名。教室概数28。
隣県の高層団地隣接C小学校:11年度現在、普通6学級112名、支援2学級11名。教室概数36。
教室数は不変なのに、児童数などは、ピーク時から2分の1から3(4)の1に減少した実態、年間出生数が約100万人に減少が如実である。
幼稚園+小学校、保育園+小学校、小学校+中学校の如く統合などするのが適切、1つの敷地で複合施設にすれば、設備費や管理費の低減が可能である。
校舎・体育館・運動場・プール・給食・図書・保健・音楽や工作の特別室の維持管理など、諸経費の合理化が可能で、余剰教職員も生ずる。
経費を節減、教育内容などを充実するのが得策だ。冷房設備が不十分な実態なら、それを充実するのもよい。理科・情報室などの充実もよい。つじつま合わせのため、空き教室を物置同然にしていたり、たまにしか使わぬ特別室にしておくなど不適切だ。意味あるよう利用価値を上げたい。
柔軟な発想や必要により地域ビジネスを活用することも大切だ。夜間不在である学校に、デイケアセンターを併設するなどの柔軟な発想も大切だ。
基本は「我らの子孫と我らのために」である。行政の縄張り意識はやめ、次代を担う子供は社会の宝、ゆとりある児童数で、慈しんで育てよう。

(平成24年8月22日日刊工業新聞掲載)

中小企業にとっての管理・監督者

自律型風土の「職場力」/目標共有やる気引き出す

釜澤直美(南関東支部)

近年のビジネス環境をみると、ちまたにあふれる企業分析に基づく、自社の強み、弱みの分析、更には経営資源の効果的な投入により、新しいビジネスモデルの構築こそ勝ち組への道だと言う風潮があるように思う。
しかし、一方で新しいビジネスモデルはアッと言う間に真似され、寿命は益々短くなっている現実もある。この様に変化とスピードの激しい現代、何が中小企業の強み、競争力となるのでしょうか。それはズバリ「職場力」です。
ビジネスモデルを軸にしつつも、企業の差別化は、いちいち上司からの指示がなくても社員が自ら考え、工夫し、具現化できる自律型風土であり、この風土で育まれた「職場力」が、差別化されたビジネスモデルを継続的に造り出す企業体質を作る事ができる。それでは一体、自律型風土の「職場力」とはどのようなものか。
実際に自律型風土の「職場力」により、閉園の危機を救った自律型組織の事例を紹介したい。
北海道の旭山動物園は標高292mの旭山の麓に位置する日本でも有数の寒冷地、ましてパンダの様に広く知られた人気者の動物もいない動物園は1990年代には入園者数の減少で閉園の危機に陥る。
そこで当時係長の職にあった現名誉園長が、当時10人の飼育スタッフ達と取った行動は、自分達は「何をしたいのか=目標」、「何をすべきか=手段」を全員が共有する事から始めた。①動物園の存在意義②閉園危機の切迫感の共有③動物園の在り方のアンケート調査によるポジティブ・フィード・バックなどから出た結論は、動物園とは生き物を見せる処、単なる動物の姿、形を見せる事に価値はない。「動物の行動展示」で付加価値を持たせ、動物の本当の魅力を「伝えること」だった。
ダグラス・マクレガーのⅩ・Y理論における管理・監督者とは、①個人の欲求や目標が企業の目標につながるように調和を取ること②従業員の知的能力を最大限に活かすこと、とも言う。
社員は、会社にとって最大の資産であるが、しかし活かさなければ意味が無い。近年社会人の仲間入りを果した「ゆとり教育世代」の社員を含め、いかに社員のやる気を引き出し、強みを業務へ活かすかを真剣に考え、実践する能力を身に付けた現代版管理・監督者の登場を期待したい。

(平成24年8月29日 日刊工業新聞掲載)

ES経営とCS経営

まず従業員が仕事に満足/仕事理解で高いサービス

石倉憲治(東京支部)

「CS経営」に対して、「ES経営」という言葉がある。ES経営のES(Employee Satisfaction)とは従業員満足である。それを志向した経営がES経営と呼ばれている。
ESなくしてCS経営の実現は難しい。なぜならCS経営の目標である「顧客の期待することを叶え、満足を提供する」直接的な行為者は、従業員に他ならないからである。従業員が自分の仕事自体に満足していないCS経営は、掛け声倒れとなり絵に描いた餅に帰することは自明である。ES経営とCS経営とは密接につながっており、一心同体のものだと言える。
基礎的な人的サービスはルーティンワークであり、もれをなくすことがポイントになる。そしてその徹底はマニュアル教育が必要不可欠である。しかし、このようなサービスからは十分な顧客満足は提供できない。顧客満足につながる高いレベルの人的サービスは、従業員が仕事を理解して、仕事に満足している結果から生まれるものだ。自分の仕事の意義、その重要性、自分の果たすべき役割などを徹底理解することで仕事の面白さを深く知った上での顧客対応が、高いレベルの人的サービスを生むのだと言える。
ESを考えるとき、外してはならない事項がある。仕事の報酬のこと、賃金のことだ。
アメリカの心理学者で経営学者であったハーズバーグ博士は『動機付け-衛生理論』で「衛生要因(不満足要因)である賃金、職場環境などの向上は不満足の解消にはなるが動機付け(満足要因)にはならない。動機付けは仕事の満足から得られるものである」と言っている。賃金の向上は従業員の不満の解消にはなるが、それが動機付けとなり仕事の満足までにはつながらない、と言うのだ。
賃金は業界平均よりは少し高めにして従業員の不満足は解消して、仕事そのもので満足を与える。これがES経営の要諦のようだ。

(平成24年9月5日 日刊工業新聞掲載)

身近に見るCS経営

本屋さんの立ち読み奨励/接客態度・技術が向上 

石倉憲治(東京支部)

CS(CustomerSatisfaction)とは1980年代にアメリカで言われ出した経営理念で「顧客満足」と訳される。組織や経営のすべてを顧客中心に展開し、顧客の期待することを叶え、満足を提供する。
品質はもちろんのこと、サービスをも徹底的に見直すことにより顧客の満足を高め、さらにより良い企業として発展を遂げようとする経営姿勢である。
最近、私は本屋さんでこの「CS経営」という思想を実感している。以前本屋さんでは「立ち読みお断り」とのPOPが貼ってあったりした。また、立ち読みをしていると、従業員がハタキをあてたり、急に本の整理などをしだしたりして顧客に近付き、無言の圧力を感じさせ立読みをしづらくしたものだ。その圧力に耐え切れず店外に出て行った経験をお持ちの方は多いと思われる。
その状況が最近は様変わりしている。椅子が陳列棚の端に用意されていて、「立ってお読みいただくのは辛いでしょうから、どうぞお座りいただいてゆっくりお読みください!」と言わんばかりなのである。以前のような立ち読みに対しての嫌悪感を払拭して、逆に立読み大歓迎の姿勢を示し、十分納得の上で満足をされ図書の購入をしていただきたいとしているのである。
立ち読みからの図書購入の購買形態はインパルスバイング(衝動購買)のカテゴリーに入ると思う。そのときたまたま手にした図書が衝動的に興味を持ち購買へと至るのであるから、「衝動的に興味を持つ」ための内容理解が必要になる。そのためにはある程度の読書時間を取らなければならない。そうしなければインパルスバイングにつながらないし、満足した購買とはならないはずである。
だから「顧客の期待することを叶え、満足を提供する」本屋さんの販売形態は、このように椅子を用意した販売形態となるのであろう。
このような本屋さんは一様に従業員の接客態度が良い。従来の本屋さんのイメージはそこにはなく以前よりはるかに接客技術が向上していて、さらなる顧客満足を得ようとする姿勢がみなぎっているようにも見える。
まさに「CS経営」そのものだと思える。

(平成24年9月12日日刊工業新聞掲載)

教育施設の統廃合は聖域か

教育施設は過剰状態/適正配置、喫緊の課題

塚本裕宥(北関東支部)

筆者は思考・規制の壁を破ろうと提言、例として人口減少社会を見据えて教育施設の統廃合が必要と提言した。あらためて提言を補足する。その統廃合は聖域か。否聖域ではないはず。行うべきは、その適正配置や教育内容の充実のはず。
読者もホームページや実で確認して、各地で声を上げて欲しい。この指摘は行政の管轄とも関係あり、各地で声を上げるのが効果的だ。さらに、公共施設という観点への拡大も必要だ。
3小学校の事例を紹介した。実態確認のため、近くの幼稚園や小中学校に足を運べば、少子化を実感、読者の身近にも非効率が多いはず。現在の教育施設の規模は、第2次ベビーブームを基準にしており、多くの教育施設が過剰な状態になっており、放任状態とも言える。
1000兆円に上る財政赤字(国債残高)、身近な無駄遣いから脱却して、財政の有効活用を図りたい。その一つとして教育施設の合理的統廃合を提言しており、幼児や学童の遠距離通学を強いないが、学校などの適正配置は喫緊の課題だ。財政破綻して1市各1小中学校の例は誰も望まぬと思う。
各学校などは地域の便利なところにあり、統合による空き施設を作り、放課後校(アフター・キッズスクール)、幼老混在の見守り施設(デイケアセンター)、情報・ふれあい交流センターや食事などの家事支援センターに変え、ビジネス感覚で雇用の場としたい。省庁間の管轄に捉われぬ、柔軟な発想を生かし、衆知を集め優れた実行計画としたい。
この提言を実施すると、当市ではこういう事例がある、という情報交換も進むはず。
意識改革のできる運営者に任せるのも大切だ。もちろん、非効率な再利用を予想のときは、空き施設を廃止するのが適切だ。
行うべきは適正配置や教育内容の充実のはずだ。校区の境界居住の児童は、いずれに
しろ存在する。ある市の例は望まず、小異を捨てて大道に付きたい。
基本は「我らの子孫と我らのために」行政の縄張り意識はやめ、次代を担う子供は
社会の宝、慈しんで育てよう。

(平成24年9月19日日刊工業新聞掲載)

やめる・戻る勇気を持とう

財政健全化は喫緊の課題/新幹線以外で活性化を

塚本裕宥(北関東支部)

日本の国債発行残高1000兆円、これ以上後世負担を積み増さぬ勇気を持とうと提唱する。その例として北海道新幹線を採り上げる。今なら遅くない。北海道新幹線函館~札幌間延伸をやめようと提唱する。完成予定は2035年度末。今でも財政状況の悪い北海道、更に悪化を招くだろう。
市内に小中学校が各1校だけ、この悲惨な例がある夕張市、北海道のお膝元の例だ。将来ある若者に悲惨を強いている北海道、財政負担を招く新幹線を延伸するのは、正気の沙汰とは思えず、私の予想の外れを祈る。航空機(LCC)との競争激化を予想、在来線存続の大きな負担等を考えたら、引き返すのは今だ。
狭い日本に新幹線網を張り巡らして、何になるか?人口減少の経済や海外からの観光の活性化は新幹線以外で考えたい。日本の政策や投資等は、一度決めた(まった)ことだからと、まっしぐらに突き進む例が多い。悲惨な例だが、先の戦争はその典型例だ。
思いとどまる、覆す勇気を持ちたいもの。これまで投資が無駄になる、努力が報われぬ、面子が立たぬなどの理由から突き進み、残ったのは、役立つことの少ない道路、ダム、その他、多くのプロジェクトがあり、今の国債残高を積み増したのだ。その反省がなく、教訓にしたい。
是非この辺で、やめる・戻る勇気を持ちたいものだ。企業の新規事業開発や選択と集中をし過ぎ、結果的に企業存続さえ危うくした例も、思い起こしたいものだ。身近に多くの例があるはず、教訓にしたい。
筆者はビジネスを社内の面子で進めて失敗、私の主張が正しかった経験を改めて思い出す。道に迷ったときは、「来た道を戻るのが鉄則」を思い起こそう。面子などというつまらぬ意地の張り合いは無意味。
原発の即時停止等は主張しないが、原子力村と揶揄の事例を教訓にしたい。
われらの子孫とわれらのために、他の公共投資を含め、財政の健全化は喫緊の課題だ。
あらためて、やめる・戻る勇気を持とう!と提唱する。

(平成24年9月26日日刊工業新聞掲載)

重要性増すリスクマネジメント㊤

与信管理マニュアル作成/営業部門は情報共有化を

近藤肇(中部支部)

企業のリスクにはさまざまな要因(形態)が挙げられます。大別すると震災や洪水、異常気象等の自然要因と事故、伝染病、民族紛争等の社会環境の変化によるリスクがあります。日本のように食糧自給率が低く(39%)多くを輸入に頼っている状況下では、自然災害やカントリーリスクは日本の企業や消費者に多大な影響を及ぼします。
さらに経済的要因として金融危機、為替の変動、PL(製造物責任)等があります。特に製造業や輸出企業にとって製品のクレームによるPLは日本よりも欧米の基準が厳しく、日本企業も多額の賠償金を支払う事例が出ています。PL訴訟は商品のイメージを損なうことにもなり、損害は計り知れないものがあります。また取引先の倒産も企業にとっては大きなリスク要因です。
金融業や商社は取引先への与信管理としてマニュアル化されています。
中小企業の多くは取引先の調査は調査会社への信用調査程度で間に合わせているのが実情です。経済状況の変化の速い今日では調査会社のデータだけでは不足でしょう。倒産情報が流れた時点では、いわゆる一般債権の保証は無きに等しいのです。抵当権等の担保権の設定があるか車両等の所有権が留保されていなければ債権の確保はできません。
取引先の与信管理は自社でマニュアルを作成することが重要です。管理部門は、支払いの遅延や手形取引の変更等のチェック、取引先の役員や本社、資本金の変更、合併等のチェックを怠らないことが必要です。
営業部門は取引先の変更や幹部社員の動向を営業日報等で速やかに上司や幹部に報告して情報の共有化(ナレッジマネジメント)することです。
とくに社内事情に精通している総務や経理部門の管理職の退職は危険の予知情報として注意が必要です。
それらを総合して危険と判断した場合は確定日付による支払いの督促、公正証書の作成を求め自社の債権の優先弁済権を確保することが重要です。
このようにリスクマネジメントは近年企業の存続にとって重要性が認識されています。
事業継続計画(BCP)は、ISO22301として国際規格化されています。

(平成24年10月3日日刊工業新聞掲載)

重要性増すリスクマネジメント㊦

情報漏えいや不正防止/相互チュエック機能を確立

近藤肇(中部支部)

企業経営にとってのリスクはここ数年内部による不正の増加です。社内の不正による情報の漏えいや金銭や商品(部品)の横領、不正使用は事務部門の少数精鋭化やITの活用のため、上司や会社幹部が気付くのが遅く発覚するまでに時間が掛かっているのが現実である。
従って気付いた時はその被害が極めて大きく、会社の経営基盤をも揺るがす事態に陥っていることがあるのです。
ここに不正経理の事例を挙げます。経理課長Mは大手企業の経理事務職を経て某中小企業に転職して5年になります。会社幹部は経歴書のみでMを信頼して前職の職務経歴や生活態度まで調査することを怠っていたのです。
担当役員は経営者の家族の世話に時間をとられ、事務は任せきりになり職場にも週に1度か2度出社するという状態で、金庫の鍵も預けたままでした。
総務部長は着任して日が浅く業務の実態を把握していませんでした。
Mは60歳を過ぎて独身であり、外食が多く競馬、宝くじに熱中して金銭に無頓着な性格でした。給料のみでは足らずやがて会社の経費に手をつけることになるのです。
取引先を利用して個人の飲食やガソリンの付け回しをし、取引先と共謀して架空の修理伝票を計上して経費を私的に流用する行為が日常化していきます。さらにパソコンの経理ソフトも経理課長Mに任せ、経理ソフトの修正をして帳簿の改ざんをし、上司はそのチェックもしないままで数年が経過していきます。気付いた時は3000万円を超える使い込みが発覚したのです。
このような不正を防ぐにためには、日常業務のルールやマニュアルを具体化して相互のチェック機能を確立することです。多くの中小企業に見受けられる特徴として社内の決済基準がなく(あっても曖昧であり)特定の社員を信用しすぎることです。
職務権限規定、稟議規定、物品購入規定、新規取引規定などで予算や職務権限を役職別、個人別に設定することが望まれます。経営者といえども例外を認めないことです。
一定額を超える交際費や物品の購入などは事前に申請して決裁を得ることが原則であり、事後の報告にも白紙の領収書は禁止です。
また、管理職とりわけ総務職や経理職の社員を採用する場合は経歴書をうのみにするのではなく必ず前職の人事担当者に確認を取り、適性検査などで職務の適性を客観的に判断するような採用基準を就業規則で明記することです。

(平成24年10月10日 日刊工業新聞掲載)

人材育成に倫理・道徳教育を

講話や職場で意見交換/総意反映し業務円滑化

平山道雄 (東京支部)

多くの企業・団体においてはISO26000(社会的責任)の導入のために、組織化して活動している。しかし、内部では、社員による金銭着服事件の発生や、職位を利用して既事業と整合性の採り難い仕事を立案実行して他部門に迷惑をかけているのを見かける。
また、外部との関係においては贈収賄・不法取引などさまざまな事件が発生している。これらは全て企業・団体の規模の大小を問わず経営に関する要素である"人""物""技術""情報""金"の五要素の中で、最も重要な "人"の行動から発生しているものである。どこの企業・団体においても不祥事発生の危険性は潜んでいるものであり、いかに倫理的責任・法的責任が欠如しているかがうかがえる。
近年、小学校から大学に至るまで倫理道徳教育が貧弱になっている傾向があることを思うと、企業・団体において「倫理的責任・法的責任」を人財育成の中心課題として採り入れる必要がある。これを進めるにあたっては、それぞれで規定化してある倫理規定を基に、「倫理とは何か」「道徳とは何か」など主たる語句の定義・実施目的・期待効果(狙い)を平易な言葉で説明し、社内報や講話などを通じて全員が統一した解をだせることが肝要である。
話材には論語や言志四錄などを活用するのも良いが、日常においては「倫理とは、人倫のみちである、また道徳とは、人のふみ行うべき道であり、善悪を判断する基準である」ということを踏まえて、社内のみならず一般社会生活の場において、見聞きした身近な事柄から取り上げて、「人間はいかにあるべきか」を皆で考え相互に意見交換が出来る場(雰囲気)づくりを、朝礼や会議の終了時に少しの時間を割いて実施してみてはいかがなものか。
また、一方通行的な話以外に職場内で討議を行い、適時に職場間で発表し合ったら良いであろう。全員が倫理・道徳感覚を身につけて行動することが、日常業務における「報・連・相」も順調に進むようになり総意を結集することを可能にする。これによって、職場観境が良くなり、仕事・作業の効果も上がり、社会からの信頼を勝ち取ることが出来る。

(平成24年10月17日 日刊工業新聞掲載)

本来の品質への回帰

技術に拘り過剰機能/顧客の要求を製品に

金子昌夫(千葉支部)

中小企業の製造業においては「本来の品質」重視のモノづくりに回帰することである。製品の外観・形状や寸法精度などを向上させることも「品質」だが、顧客へ満足する製品を提供するのが「本来の品質」である。自社の技術力やモノづくりへのこだわりから過剰な仕様(高機能や外観品質)で、使い勝手の悪い不必要な製品を作り上げている。その結果、コスト面で有利な海外製品に負ける場合もある。だからこそ、顧客(市場)の要求を製品化する「本来の品質」へ回帰することが重要である。
顧客が自社の商品を購入するのはなぜか。どのように使っているか。商品を使う時に困っていることは何か。最終的に選択するときに最も重視する機能は何かなどについて、QC手法(新QC7つ道具の連関図、系統図、マトリックス図など)を使い整理し、求められ「品質」とは何かを明らかにすることだ。顧客(市場)が要求する「品質」から製品仕様を明確にすることで、今まで過剰であった仕様から要求外の品質・機能を省き、部品コストを大幅に削減できる。
これからは、国内市場だけではなく、新興国市場にも目を向けていかなければ継続的な成長は期待できない。しかし、顧客(市場)の要求を明確にすることで、市場にマッチした品質を作り上げることができる。新興国市場においては、現地のニーズにマッチした製品仕様による適正品質の構築、機能と品質と価格のバランス化であり、飽和化した国内市場においては、製品を使って得る付加価値が必要である。
顧客(市場)の要求する「品質」を明確にし、製品化をすること。それには、モノづくり側の品質力を向上させなければならない。開発・生産準備段階では、作りやすい設計構造・設備とした上で、生産部門が標準に基づき作業を行うこと。
品質を確保することを基本に、機能、性能、安全にかかわる重要な品質特性については、開発段階から図面、設備、製造方法、工程管理面から確保する取組みを行い、品質の維持・向上を進める。一方、外観や異音などの官能特性については、発生要因を明確にし、対策の検討を行い、日々の改善をすること。また、顧客のさまざまな使い方を試みて、意地悪テストの実施などを行い、顧客の視点で品質を再確認することも重要である。

(平成24年10月24日 日刊工業新聞掲載) 

「中小会計要領」の課題と展望

普及率向上に使命感/信頼性ある決算書が必要

岡部勝成(九州支部)

現在,わが国の中小企業の会計ルールには、2005年8月に「中小企業の会計に関する指針」(中小会計指針)が公表された。それとは別に12年2月に「中小企業の会計に関する基本要領」(中小会計要領)、さらに同年3月に「中小企業の会計に関する検討会報告書」がそれぞれ公表され、中小会計要領の普及・活用をめぐる議論が最重要視されている。
中小会計指針が日本税理士会連合会・日本公認会計士協会・日本商工会議所・企業会計基準委員会の4団体から公表されて以来7年が経過しているにもかかわらず、その普及率は260万社あるといわれている中小企業全体のわずか10%台にしか至っていない。この現状を勘案し、さまざまな議論の末、公表された「中小会計要領」に対する期待感や役割、とくに普及・活用の向上をめざすべく実施するという絶対的使命観のようなものを感じ得る。
こうした中、08年9月のリーマン・ショックからの回復基調が軌道に乗ろうとしていた矢先、11年3月11日に発生した東日本大震災は、わが国経済に大きな打撃を及ぼし、復興に向け動いてはいるものの、その傷跡は今尚色濃く、混迷を続けていることは周知のとおりである。また、海外に目を向けると欧州不安や米国経済の減速、さらには中国経済の先行き不透明感の台頭など、国内外の影響は中小企業に大きな影を落としている。
中小企業政策において、13年3月末に終了する中小企業金融円滑化法は、過去延長までされ、中小企業を支援してきた。その効果は、過去3年の倒産減少基調からも明白であろう。現在、各金融機関は金融庁から出口戦略をどうするのか提出するよう指示されているところである。
今後、一層の複雑化・多様化する経済・経営環境の下、中小企業がゴーイング・コンサーン(事業の継続性)を実践していくためには,信頼性のある決算書は不可欠だ。そのためにも「中小会計要領」に基づいた決算書の作成は経営状況の早期把握やステークホルダー(金融機関や取引先など)への説明能力や説明責任の向上を進めるうえで、有用性があると考えられる。「中小会計要領」が市場に受け入れられるのか、普及・活用は中小会計指針のように低調で推移しないのか動向に注視していくことが必要であろう。
最後に、12年8月30日に施行された中小企業経営力強化支援法は、「中小会計要領」との連関で中小企業の経営力・資金調達力強化に寄与するといわれているため期待したい。

(平成24年10月31日 日刊工業新聞掲載)

MMによる商品企画10のステップ㊤

ネット時代の変化に対応/市場や顧客、理解し活動

小塩稲之(埼玉支部)

マーケティングを単機能としてではなく、あらゆる取り組みにおいて先行する全社的な概念として捉え実行し適応すること。私は、これを「マネジメントマーケティング」(MM)と呼んでいます。
MMの考え方は、川下から川上を見つめ、経営全体、経営の根幹までを含めて『市場の視点』から構築するものです。さらに、インターネット時代に入り、消費行動パターン、マーケティングの理論は、AIDMAからAISASになったといわれています。Attention、Interestは同じ。
しかし、次の段階のDesire、Memory、Actionと行く過程が、現在はDesireがSearch(あるいはResearch)となり「調べる、下見」をするというものも含めて事前の確認がされます。ネットができたことで、リアルタイムに顧客が情報を適時に知るということ。そしてもっと重要なのが、Actionした後にその購買の情報、あるいは感覚を顧客同士で瞬時に"Share"してしまうことです。
今回紹介するMMの商品企画は、そのような時代に対応し、従来の「ひらめきや勘だけに頼る企画開発や、技術シーズ中心の商品企画」を廃して、継続的な商品企画が望めるようになるシステムです。それが、商品企画の「10のステップ」です。これは次のようなステップにより、市場や顧客を理解した活動を行うことです。
①マーケティング環境分析、②3C調査 セグメンテーション(市場の細分化)とターゲティング(市場の絞り込み)、③アイデア発想・アイデア選択評価、④ポジショニング分析、⑤商品設計、⑥製品評価、⑦SWOT分析、⑧マーケティング・ミックス(4P)による分析と戦略立案、⑨構造化ダイアグラム(アクションの優先順位付)、⑩ロードマップ作成(中長期計画)。最初のテーマの設定は、しっかり慎重にやること。営業も生産部門も、社内の意思統一を図ることが重要です。アイデア出しが、商品企画担当者の腕の見せ所。経験を積み、アイデアをストックしておくことがポイントです。
テーマの設定とアイデア出し、そのためにさまざまな調査と分析を実施します。「他より付加価値の高い商品を作れるか」が、商品開発者の任務といっても過言ではありません。次回は、アイデア発想とポジショニング分析について紹介します。

(平成24年11月7日 日刊工業新聞掲載)

MMによる商品企画10のステップ㊥

仮説立てチームに明示/市場調査でニーズ明確化

小塩稲之(埼玉支部)

商品企画の「10のステップ」の手順の最初はまず「仮説を立てる」ことです。経営資源やミクロ・マクロの外部環境与件を有効に活用するため、経営者がたてた仮説は、経営者の頭の中にしまわず、チームに明示することが望まれます。組織の大きな課題である「共通目標・貢献意欲・コミュニケーション」の3点を醸成するのに効果的だからです。
また、自社のメリットより、顧客のメリットを想定して顧客からヒアリングをしやすくすることも重要です。市場の声を社内フィードバックできるような体制も常に準備しておかねばなりません。『市場の視点』に立ってマーケティングを考えれば、不確定な要素や問題点を早く明示することで、つくってしまってから市場に受け入れられずに不良在庫になることもないでしょう。
次に、市場ニーズにマッチした商品開発かどうかの検証です。市場調査の実施を通じて、対象市場の市場環境や、市場ニーズを明確化する。これにより市場ニーズにマッチしない商品開発や、成長性が乏しい、あるいは予想していたより市場規模が小さいマーケットへの新製品の市場投入を防ぐことができます。
アイデア発想ですが、当社が新商品を開発するとすれば、こんなものをやるべきというイメージを持っている人は多いものです。そこで、その商品を使う側からの検証が重要です。そのためのアイデア収集、分析を行います。
ただ、アイデア発想法をいかに理解したとしても、そのメンバーに商品知識が欠けていたり、理想論ばかりではなかなか着地しません。いくら目新しくても、経験や歴史、商品知識、技術などを理解していない素人集団では、そのアイデアや発想は失敗します。
実際、商品知識がある人のアイデア発想が必要です。よく、「センミツ(1000回トライして、二つか三つしか成功しない)」といわれますが、素人の発想では継続的なアイデアは得られません。次のポジショニングは見込み客に商品やブランドのイメージをどのように位置づけるかということです。ポジショニングの設定は、「ひとこと」で言い表せることも重要な要素です。「ひとこと」で言い表せることは、一つの効用(べネフィット)に絞り込んで訴えるということであり、ブランドの特性が明確になります。
ポジショニングの例として、ボルボは「最も安全な車」、BMWは「究極のドライビング・マシン」、ポルシェは「世界最高の小型スポーツカー」という位置づけをしています。

(平成24年11月14日 日刊工業新聞掲載)

MMによる商品企画10のステップ㊦

商品コンセプト明確に/SWOT分析で問題点発見

小塩稲之(埼玉支部)

今回は、商品企画の中でも、商品コンセプト、デザインコンセプトを決める一番の柱となる「商品設計」です。モノを理解するには、『モノ』よりも『コト』に注目することが重要です。モノにとらわれると、モノ自体の分析ばかりに目が向いてしまうことが多くあります。
「あなたの会社の商品と他の商品との効用の違い、またはその商品の考え方(商品コンセプト)は、何ですか」という問いが重要になります。実は、これが明確にされていないと「商品」としての情報発信はできません。そして、いつまでたっても、売れない「製品」というレッテルを貼られることになります。「製品」と「商品」には、大きな川が流れています。「製品」はつくっただけのモノであり、「商品」は商いになるモノ、売れるようにしたモノです。そこで、製品か、商品かの判断材料となるのが、製品評価です。
次の3つに細分化して評価することが重要です。それは、(1)新規性(2)優秀性(3)市場性です。次のステップであるSWOT分析では、自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)、ビジネス上の機会(Opportunity)と脅威(Threat)を明らかにすることですが、SWOT分析で導きだした課題を重要度、効果性、実現性、経営資源の制約を考慮し絞り込み、その因果関係を分析しながら、真の問題点を導き出す手法が構造化ダイヤグラムで、これに落とし込むことが重要です。その時「なぜ、それが起きたのか」「その原因は何か」を繰り返し、真の問題点を導き出す「なぜなぜ5回」は欠かせない思考回路です。このダイアグラムにおいて真の課題を抽出し終えたら、現在の状況、課題解決策を実施後の1~2年後(短中期目標)、3~5年後(長期目標又はあるべき姿)の課題が解決した状態の道筋を具体化、立案するのがロードマップです。ここまでが商品企画10のステップで、ここで、いよいよ、完成前のプロトタイプ(試作品)の製造になりますが、プロトタイプでは、「プロトタイプ調査」の視点が重要です。特に技術製品については『市場の視点』からみるとプロトタイプ、あるいは原理モデルに相当するものをときどきみかけます。量産化前のプロトタイプの段階で、対象市場の市場環境(市場規模や成長性)、競合環境、市場ニーズなどについて分析を行い、プロトタイプを顧客に持ち込むことでその市場調査を実施することは極めて重要になります。この市場調査の実施を通じて、事業アイデアの市場可能性も同時に検証でき、 また市場調査の結果を踏まえて、市場ニーズにマッチした商品化の課題を抽出することも可能となります。

(平成24年11月21日 日刊工業新聞掲載)

開発資産の活用㊤

海外展開で分業も拡大/過去に学んで情報共有

渡辺智宏(南関東支部)

最近の製造業、特にエレクトロニクス業界において、米アップルや韓国サムスンなど海外勢は快進撃の一方、ソニーやパナソニック、シャープなど日本企業ではあまり明るくない話をよく耳にするようになった。
日本のモノづくりはどうすべきか?という議論が沸く中、開発部門では新興国への拠点展開の動きが活発化している。
新興国市場への事業拡大を狙ったマーケティング強化や、生産工場との密な連携による効率化、コスト削減、取引企業からの要望などが主な理由である。開発拠点の海外展開には部門全体の方針検討や、開発拠点の役割見直しなど多くの課題がある。
本連載ではその中で、開発資産の活用に焦点を当てる。
開発部門はこれまでも効率化やコスト削減を狙って分業を進めてきたが、開発拠点の海外展開の拡大とともに、分業はさらに複雑に拡がっていくものと予想される。
私は製造業やIT業界などの開発部門のマネジメント改革を支援しており、その中で分業による弊害も色々と見てきた。
特に、分業した業務の統合時に重要問題が顕在化する場合が多い。
例えば、製品開発の役割分担が曖昧で実装すべき機能が抜けていたや、機能単体で最適化を図ったが結合すると不整合が発生したなど、統合化、横断化の考慮不足による問題をよく見受ける。
役割分担が進むと、担当範囲の業務完遂に終始し、ビジネスや製品全体を捉えたアイデアの検討がおろそかになるケースもある。ステークホルダーも増えるためコミュニケーションが複雑化し、情報共有が不足するといった問題も発生しやすくなる。
分業自体は効率的な考え方であるため、その良さを十分発揮できるよう、これらの対策を考えていく必要があるが、基本的なアプローチとして、まず過去の教訓から学ぶということがある。
これまで分業を進めてきた開発部門であれば、過去に発生した問題とその対策が蓄積されていると思う。それらを振り返り、今後の海外展開に活用していくのである。
過去の経験を今後活用していく上で、「キュレーション」という概念を紹介したい。次回はキュレーションの説明と、この概念を開発部門にどのように活用できるのかを述べていきたい。   

(平成24年11月28日 日刊工業新聞掲載)

開発資産の活用㊥

必要な情報、収集・分類/つなぎ合わせて価値創出

渡辺智宏(南関東支部)

前回は、開発拠点の海外展開について、課題の1つである開発資産活用という観点で、拡大する分業とその弊害、1つの解決策としてキュレーションというキーワードを述べた。今回はキュレーションの説明と、開発部門へのアナロジーについて述べていきたい。
キュレーションとは、無数の情報から必要なものを収集・分類し、つなぎ合わせ、新たな価値として提供する概念である。美術館や博物館で、企画や展示を担当する専門職のキュレーターに由来する。キュレーターは既存の作品、資料の意味や価値を問い直し、コンテンツを選択して絞り込み、それらを結びつけて新しい価値を生み出すように展示方法などを工夫することが役割である。最近、インターネットの世界では氾濫する情報を整理し、新たな価値を創造する仕組みが構築されてきている。
例えば、東日本大震災では災害関連情報にツイッターなどのソーシャルネットワークが活躍したが、情報が錯綜する中、被害状況や行方不明者など、必要とされる特定のテーマに基づいて情報を整理、発信する「まとめサイト」が被害の拡大防止に大きく貢献したといわれている。
このように、既存の情報を整理することで新たな価値を生み出すことがキュレーションという考え方であり、これは開発部門にもアナロジーできる。
開発部門には、過去の開発で検討した商品企画案や技術・設計資料、評価項目、障害情報、リスク・課題情報などさまざまな情報の蓄積があるが、多くの開発部門では目先の忙しさで、過去の開発の蓄積情報を整理して、開発資産として活用するところまで手が回っていない。今後、海外の開発拠点が増えれば、情報の散在、非共有が今まで以上に広がり、過去の開発情報がさらに死蔵する恐れもある。
そこで、過去の開発プロジェクトの情報と、それに加え、世の中に公開されている他社事例情報なども収集し、技術戦略、業務プロセス、組織運営などテーマを設定して、整理・体系化していくキュレーターを設置するのである。
次回は開発部門におけるキュレーターの役割、必要なスキル、キュレーションの運用方法などについて述べていきたい。

(平成24年12月5日 日刊工業新聞掲載)

開発資産の活用㊦

収集情報を有効活用/提案・説明力ある人材育成

渡辺智宏(南関東支部)

前回はキュレーションの概要について述べた。最終回となる今回は、キュレーションの運用方法について述べていきたい。開発部門におけるキュレーターの役割は大きく二つある。
一つ目はこれまで述べてきたとおり、過去の開発プロジェクトの各種情報(商品企画案、顧客・競合情報、設計書、チェックリスト、コスト情報、リスク・課題情報、障害情報など)と、他社の改善事例などを収集・整理する(開発資産を作成する)ことである。
例えば、「技術戦略」「プロジェクト管理」「組織運営」「開発基盤」などカテゴリーを設定し、収集した情報を分類し、それを大・中・小項目のような形に構造化し、今後の開発で参考情報として活用できるような資料にまとめていく流れになる。
二つ目の役割は、開発資産の活用教育である。開発資産をどのように活用すると効果的か、どのように使用者に伝達すると活用してくれるかを考え、使用者への教育を行っていく。
これらの役割を果たすためには技術や設計の知見に加え、論理的に情報を整理・深堀りする能力、整理した情報を使用者に活用してもらうための提案力、分かりやすい説明力などが求められる。
このような高度な能力が必要なキュレーターは、技術管理部門や品質保証部門などスタッフ部門に配置し、育成することが望ましい。
本来スタッフ部門は、戦略部門としてライン部門へ知見を提供する参謀役であり、キュレーターはまさにこの役割を担うからである。
最近はスタッフ部門の人員が削減されるケースも多い。ライン部門だけでなく、スタッフ部門も多忙になる中、キュレーションのような戦略的業務を担っていくには、スタッフ部門の意識改革と、作業的な業務の削減・効率化に向けた継続的な改善が欠かせない。また、あえてライン部門からスタッフ部門に優秀な人材を配置転換するなど、スタッフ部門の強化による開発部門全体の効率化、付加価値向上という姿を目指していく必要がある。
3回にわたり、キュレーションという概念を用いながら開発資産の活用について述べてきた。厳しい競争環境の中、開発部門の継続的な付加価値向上に向けて、キュレーションという考え方が何かの参考になれば幸いである。

(平成24年12月12日 日刊工業新聞掲載)

エネルギー政策への提言㊤

安全停止した女川・福島第二/原発輸出の技術資産

樋口藤太郎(南関東支部)

3・11の東日本震災の福島第一(F1)の原子力発電所事故以降、わが国の電力源ベストミックスは、即原発停止によって完全に崩壊した。本来の電力源のベストミックスは経済的には電気代の上昇を押え、良質電力の安定供給と温暖化ガスの削減の環境保全を実現する3目標のバランスがとれる最良の状態が想定されていた。
2012年の8-9月に政府が実施したパブリックコメントは、F1被害の惨状のみが伝わった世論の結果として、当然ながら原発0%に80%の賛成を占めた。
それを受けて政府は、即脱原発や30年に原発0%にすると決定した。しかし、産業界や経団連の反対がでると、すなわち一部原発稼働を発表したり、政策方針のダッチロールを呈している。将来の原発代替手段として、再生エネルギーの比率拡大を発表しているが具体性と実現性に欠ける。電気の安定供給のため、電源不足分を化石燃料石油ガス類で補っても膨大な燃料費と温暖化ガスの増加となる。
すでに全ての原発を止めた結果は、この1年間で3兆-4兆円に及ぶ浪費が発生、これを15年間続けると13兆円、20年続けば24兆円を捨てることになる。
電気代に転嫁しても、国民に相当の負担となり、産業界には国内生産品のコストアップとなり、その上一部の輸出製品で近隣国の国際競争に敗れ、大きな貿易収支の赤字を出している、わが国の「モノつくり」の壊滅に向かっている。
国民が即脱原発のシナリオを選んだことは、わが国のモノつくりの否定と縮小経済、雇用と所得低減の容認と温暖化ガス増の社会を選択したことになっている。
残念ながら、わが国の脱原発方向のシナリオは、米国では賛成されていないし、国際的にも受け入れられない施策となっている。
12年8月、国際原子力機関(IAEA)、米仏国原子力規制委員会(NRC)、一線級専門家達19名は地震と津波に耐え抜いた女川原発の詳細を調べ、安全マニュアルに追加、その成功を評価している。
ところがわが国のマスコミは大きな被害となった3・11の東日本震災の福島第一原発災害のみを取り上げ、当日同じ位置と条件にあって全く災難を克服に成功した女川原発や福島第二原発の功績をわが国のマスコミはほとんど発表していない。この外国の評価がもっと早く国内に伝わっていれば、脱原発の運動や国民の意識も変っていただろう。
原発の安全マニュアルの作成には貴重な成功事例こそ失敗事例よりメンテナンス規格に採用すべき技術資産であり、原発設備を輸出するわが国にとって重要なノウハウとなるはずである。

(平成24年12月19日日刊工業新聞掲載)

エネルギー政策への提言㊦

再生エネに地熱発電/中国へのODAは開発費に

樋口藤太郎(南関東支部)

本題に戻って具体的な提言を続けると、わが国の持つ先端技術開発を生かす政策を採れば、2030年原発稼動0%達成も夢物語ではないと信じている。
まず第1には、女川、F2、F1原発の地震に対しては、3-4倍の耐久力あり。とIAEA(国際原子力機関)などが評価しており、活断層上も心配がないと評価している。津波被害には女川、F2並の体制と安全性を装備する原則をクリアした休止原発を即刻再稼働し、また一般的な寿命と言われている40年がきたら順次に運転を停止・廃炉にする。基準を決め該当すれば、停止中の原発を見極めて再稼働しベストミックスのバランスを採り電気料金削減で経済活性化につなげ、次の将来の原発代替の技術装置の開発費に充当するためにも原発の再稼働を継続する。
次に、原発に代替するエネルギー源として有望な再生エネギーには地熱発電の活用しか存在しない。資源の少ないわが火山国の地熱資源は世界で3番目に多く恵まれている。全国の温泉地や国立公園内に18か所の小規模地熱発電所がある。これの規模を拡大するのが今のところ、脱原発につながりやすい。気候に支配される現在の太陽光発電や風力発電は安定良質の電気の大量獲得や電気代アップ、費用対効果・減価償却に難点がある。
次世代に地熱発電として期待される技術は、地球を原子炉として活用する技術である、わが国は少ししか手掛けておらず遅れているが、地下2キロ―3キロメートル位に6000度Cのマグマ層の近くまで注水して200度-300度Cの蒸気を利用して発電する高温岩体発電方式がある。
これは温泉地には関係なく地球のどこでも設置できて、例えば廃炉の原発所の跡に設置できて、しかも大規模の原発の代替エネルギーとなる可能性がある。豪州、欧州、米国で研究が進んでいる。これが成功すれば、放射能の懸念や現在の放射性廃棄物のマグマ付近への押しこみ処理も可能にならないかとも期待したい。あらに、次世代の高効率太陽光発電の地球を離れた静止衛星に設置し、365日発電気を電磁波送電、地上受電所に受ける技術開発が事件段階に入り、わが国がリードしている。現在の太陽光発電エレメントは発電率最高20%であり、夜、雨天、曇天の発電不可、この新エレメントは「量子ドット」と称し、太陽の可視光線、紫外線の全ての光線が電気に変換されて、光線エネルギーの60-80%の効率となる。およそ30年頃完成で30年の原発O%にマッチする可能性がある。また、化石燃料の活用で無駄な費用を使うより、現有する50基の原発活用で電気量費用を下げる「モノづくり」で経済の活性化を進め、新規技術開発の研究費を集中的に供給すべきである。今や世界第2の経済大国に日本からのOED(政府開発援助)資金も中国への供給を即刻中止し、わが国の新規技術の開発研究費に充当することである。

(平成25年1月9日日刊工業新聞掲載)

経営に役立つISOへ㊤

まず企業の経営理念/ISO規格は実現への手段

上田 隆一(埼玉支部)

いま、日本の経済界ではISO(国際標準化機構)規格を生かして運営している企業が数万社あると思われる。いわゆる、「ISOマネジメント」といわれる経営スタイルである。代表的な[ISO14001][1SO9001]が圧倒的に多い。これらの規格では、構築し、運用しているシステムについて、"継続的な改善"を求めている。
例えば、14001の場合では、継続的改善について、次のように定義している。「企業が決めた環境方針と整合をとって、全体的な環境に関する問題点が数値で測定できる良好な結果が出るように、企業の保有する経営資源を投入して、繰り返し行われる経営活動」。いわば、トップマネジメントが制定し、公表した経営方針に準拠して経営目標を達成することができるように経営の仕組みを絶えず改善し続けることが求められていることになる。しかも、これらのことは、14001の審査認証を得るためには必須の要求事項であるので、"適当に"やる訳にはゆかない事項である。
しかし、環境に関する実績といっても、企業の経営活動の結果の一側面である。例えば、環境のこと、品質保証のこと、情報セキュリティのことだけを切り離して経営活動をする訳にはいかないであろう。また、経営改善の対象は、企業の諸活動、全製品・サービスであり、そのために、人材、使用する機器・設備、経営の仕組みなどのノウハウを改革・改善・改良を続ける必要があり、これこそが"経営活動"そのものであるといえる。
このように考えてくると、最初に求められてくるのが、企業の在り方、存在意義、将来目標、経営理念・戦略などの設定であり、その実現のために有用な手法や仕組みを導入することが重要。それらの一つが、14001であったり、9001であったりすることになる。
同時に、14001や9001について、第三者の認証・審査・登録の実績は、ホームページ上での公表や会社案内・名刺などへの表示などパブリシティ的なブランド力になることは確かなことで、認証審査を継続してきた企業が多いのも確かであろう。
このような社会情勢では、ISO規格の認証・審査登録の件数は頭打ちで、審査機関によっては、純減が明確になっている例もあるという。そのような風潮の中で、ISO規格への「適合性の審査」に「有効性の審査」も加えて実施している審査機関は、「経営に役立つISO経営」を期待する企業群の"駆け込み寺"的な役割を果たしているともいわれている。<2回連催>

(平成25年1月16日 日刊工業新聞掲載)

経営に役立つISOへ㊦

意見交換会で問題点指摘/自社流にシステム改善

上田 隆一(埼玉支部)

ISO(国際標準化機構)経営に疑問を持ったような企業では、14001を例にすると、いつまでもEMS(環境マネジメントシステム)でもないだろう。
このままでは、14001が経営活動の目的になってはいないか。あるいは、少なくとも、経営理念の実現が目的になっていないのではないかといった疑念が生まれてきた。
そのような企業の事例をご紹介したい。
A社は製造業でISO14001を導入し認証を受けてから6年が経過し、2回の更新審査も経た。その間には14001の仕組みを活用して、5S活動、改革改善活動を展開し、ユニークな取り組み企業といえる。
しかし、トップから考えると、推進会議は「ISO委員会」、活動報告は「ISOレポート」ということで、"ISOの手のひらから抜け出せない"との思いが強く、何とかならないかと苦慮してきた。
あたかも、トップの継承を実行することにもなり、そこで、役員・幹部に集まってもらい、トップの素直な気持ちを話し、全員無礼講で意見交換をしようと呼びかけた。
役員幹部諸氏も漠然とはトップと同じような感想を持っていたことが分かり、意見交換は白熱し、行き着いたところは、「自分たちがやってきたことは、14001が求める環境マネジメントシステム(EMS)に縛られていた」、「自分たちの経営システムについて、意見も、自負もなかった」ということであった。
そして結論は、直ちに「EMS」から「AMS(A社の経営システム)」にネーミングを変更し、トップの継承に合わせて実行することになった。
14001も9001も、次回の改定時期(恐らく2015年頃か?)には、大幅な見直しが行われる模様で、その中の一つには、経営のパフォーマンスの継続的改善の現れとして、環境パフォーマンスの継続的改善が示されるような内容があるものと予測される。

(平成25年1月23日日刊工業新聞掲載)

日本の人口と経済発展㊤

少子化進めば日本人ゼロに/「人口は国力」問題認識を

森田喜芳(東京支部)

「日本人の人口が3000年にゼロになる」-。 これは数年前に小生が読んだ新聞の見出しだ。試みにインターネットでチェックをしてみたら、2008年の出生率と死亡率を基準にした人口指標によると冒頭のような結果が出ることが分かった。「子供人口の時計」というサイトを見つけたのでチェックをしてみたら、1秒ごとに日本の現在の子供の数が表示されている。(東北大学院経済学研究科)「少子化が進めば1000年後の5月5日の子供の日は来ない!」と、リアルタイムで少子化の状況が分かる子供人口統計を東北大学がサイトを作り、公表している。
また、12年の3月に総務省が発表した3月末時点の人口動態調査によると日本人の総人口は前年同月比に比べて26万3727人減少した。3年連続で前年を下回り、過去最大の減少率となった。少子高齢化の進展で死亡数が出生数を上回る人口の自然現象が初めて20万人を突破したと報告されている。当然この現象は労働人口の減少にもつながっている。
「人口は国力だ」。小生が初めてこのことを聞いたときはあんまりピンとこなかった。小生の記憶では17歳の時に世界史の先生からこの言葉を聞かされたときには深く理解もせずにいた。小生はその後、自動車製造会社で働いていたが、今から37年前に自動車および自動車関連部品メーカーの海外進出の必要性に迫られて、当時の小生は海外調達のアジア担当をしていた関係でアジアのどこかの拠点に部品製造業の会社の進出計画を企画していた。
進出計画書の作成にあたり、小生はインドネシア、マレーシア、タイなどの国々を約1ヶ月間単独で出張視察して、いずれかの国に申請計画を策定する必要に迫られていた。その企画書の作成にあたって最終的にどの国に進出するかというポイントは、上記の「人口は国力だ」が決め手となり、当時インドネシアに電装部品5社との合弁会社を設立した。
 以上のような経験から、今後は人口の多い国が世界の大国になっているのだろうということを小生は37年前に感じ取った。現在振り返ってみると、当時の判断は間違っていなかったと言える。ちなみに日本の労働力人口という15歳以上の人口は、厚生労働省の推計によれば今後05年(平成17年)の6770万人をピークに減り始めて、2025年には6300万人になると予測されている。
また、年齢構成からいえば若年層の労働力が減少して60歳以上の労働力が増加していくという労働力人口にも高齢化が予測されている。このような現実に対して、今後日本はどのような政策をとっていくのであろうか。日本として、日本経済にとって、大変深刻な問題であると小生は認識している。(3回連催)

(平成25年1月30日 日刊工業新聞掲載)

日本の人口と経済発展㊥

アメリカ人口右肩上がり/里子受け入れ学ぶ点も

森田喜芳(東京支部)

先進国の中では、日本の人口は今後減少の一途をたどるが、一方でアメリカは常に増加傾向である。アメリカの人口は、現在世界第3位で今世紀中は右肩上がりである。
中国は2025年、インドが2060年にピークを迎えるのに対して、アメリカは先進国でありながら、常に増加し続ける推計となっている。メキシコを中心としたラテン・ヒスパニックの移民、さらにそのヒスパニックの人たちは出生率2・0を大きく超えるため(2.7から3.0近くで推移)全体の出生率を大きく引き上げている。
そのため、アメリカの人口は、10年に3億1038万人から、40年には3億8346万人になると予想されている。以上のような経過からアメリカでは、移民と高い出生率により毎年人口が増加している。
そのほか他国から里子として子供を受け入れているケースも多い。小生の知っている例では、以前小生が働いていたアメリカのオハイオ州で同じ会社に勤めていたオフィスの初婚の女性は、結婚が2度目の男性と一緒になった。
その女性はすでに高齢で子どもが生まれる年齢を越えていたために、2人で相談した結果、ロシアから白人の子供を里子として迎えることになった。詳しいことは定かではないが、アメリカでは里子を受け入れる団体などがありその組織を通じて里子をもらいに夫婦でロシアまで行ってきた。里子を迎え入れて里親となったその夫婦は大変ハッピーであると言っていた。
別のケースでは、小生の次男の高校の男子同級生は、やはりアメリカ国内で里子として白人の家庭に3番目の子供として自分たちの子供と同じ扱いをして全く差別なしに育てられていた。上の2人と里子の本人は同じ白人であるが、背の高さ、顔つき、髪の毛の色、などは全く似ていなかった。
3人の子供たちは、本人たちもその事実を充分承知の上で一緒に生活をしていた。余談ではあるが小生の次男の同級生は大学を卒業した後、2度にわたり1週間から10日間、日本の我が家に遊びに来ていた。
以上のように、アメリカの各家庭で経済状態が許されれば里子として子供を迎え入れて、一人前の教育も施し立派に育て上げる人たちが多いということを小生のアメリカ滞在で感じたことであり、その点は日本とかなりその考え方や生き方など、人生観に大きく違う点を感じさせられた。小生は、自分自身を含めていつか日本もそのような社会に早くなってくれると事を願っている。

((平成25年2月6日 日刊工業新聞掲載)

日本の人口と経済発展㊦

女性の出産・就業支援/保育施設の充実急げ

森田喜芳(東京支部)

日本は、戦後の繁栄と成長は働き手の増加に支えられてきた。国民の稼ぎが全体で大きく伸び、税収をぐんぐん増やした。社会保障や地方への資金配分を思い切って変えたのはそうした好条件があってこそだと言える。現在はその前提が一変しつつある。
富を生み出す働き手は減り、首都圏では高齢者人口が今後30年で5割増え、日本を支えるゆとりを失う恐れがある。
にもかかわらず、社会保障や国と地方のあり方をめぐる政治の議論ばかりで一向に前進しない。
社会の工夫で人口減少を防ぐために可能にする施策が必要である。出来ることの第一は、なぜアメリカのように日本は移民政策をとらないのだろう?またそれらの答え以前に議論をしている話を聞いたことはない。まったく不思議な現象である。
第二は出生率を上げる政策であり、出産後の施設、小規模な家庭保育など多様な形の保育に資源を投入する。現実にアメリカの育児では24時間子供を預けることが可能であり女性が交代制勤務をしながら夫婦で協力して育児をしているのが現状である。
すなわち保育施設を充実して女性の出産と就業継続ができる環境づくりが必要である。女性のキャリアと出産の両立を可能にする国の資源の投入と施策を早急に実施することが必要である。
現実的には保育所に入れない待機児童の解消に向けて保育所の増設が進み、都市部では保育所の確保が困難になっている。同様に人材確保も難しく、5年後には7万4000人の保育士が不足する見通しであるとも伝えられている。
一方で、外国人の介護福祉士候補は試験に合格せずやむなく滞在期限を迎えたために帰国する。経験を積んだ外国人候補者の3人に2人が帰国するのはもったいない。受入れをさらに増やすとともに定着への支援が必要である。
それでも最近は外国人用の試験にはルビをふったり、分かりやすい言葉にし、さらに試験時間も50%ほど延長するという報道も伝えられている。もっともっと合格率が高まるような施策をすべきである。
少々状況は違うものの、米国での免許証取得に外国人はその母国語で筆記試験を受けることができる。これらは安全面などで異論があると思うができるだけ合格させるような施策の一つである。
移民が受け入れられないという現状では、介護福祉士等できるだけ外国人の働ける場所を提供できるようにならないのだろうか?
現在の議論は今後ますます増えていく高齢者対策の年金や医療保険などに集中しており、人口の増加、労働人口の減少を防ぐ政策など、早急に前向きの議論と実施が望まれる。

(平成25年2月13日 日刊工業新聞掲載)

「女性力」を活かし企業活性を図る選択と創造

商品開発で「女性脳」活躍/適材適所の人員配置に

島影教子(東京支部)

近年、大いに注目されているテーマのひとつに「女性力」が挙げられる。女性労働力は再就職支援強化、育児制度の見直しなどさまざまな取り組みが整備され改善傾向にある。また、最近は働きたくても働けないならばいっそ自分で会社を起こせばいいという女性が増えている。
2013年1月に埼玉スーパーアリーナで行われた国内最大級のビジネスマッチングイベント「彩の国ビジネスアリーナ2013」では「ウーマノミクスフェア」が同時開催されていたが、ここには70件以上の女性起業家関連のブースが出店されていた。
埼玉県産業労働部にはウーマノミクス課というものが存在し、これをさいたま市と埼玉県産業振興公社が特別協賛して今回のフェアが実現されている。ウーマノミクスプロジェクトは「女性が自己実現をしていきいきと輝く社会」をつくるためにさまざまな取り組みを支援しているのだが、今回の出展企業から見えてくるものはいずれも「女性力」を活かした無理をしないスタンスの会社が多いことだ。
職種は育児、介護、マッサージ、美容、食品販売が目立つ。ご存知のように、物の購買や消費の決定権は多くの場合女性にあり、男性よりも斬新なアイデイアを出すのも女性である。無理をせずに身の丈で満足するのも女性ならではの特徴がある。
もともと思考は「男性脳」と「女性脳」に大きく分かれる。別の言い方ならば「右脳」と「左脳」に分けてよい。商品開発には「女性力」を活かした「女性脳」が活躍する。もちろん性別でなく男性でも「女性脳」の持ち主は存在するし、またその逆もある。ドラッカーはこれを「プレフェッショナルの条件」の中で「読む人間」と「聞く人間」と表現している。
人員配置にこの「男性脳」と「女性脳」を理解して適材適所の人員配置に役に立てればより強固な組織造りができるはずである。手前味噌だが今年2年目になる「NJK」(日本経営士会女性部会)の3月シンポジュームでは、筆者がこのテーマで講話を予定している。選択と創造力のある人材の活かし方と人材育成をご一緒に考えて頂く時間を共有できれば幸いと思う。

(平成25年2月20日 日刊工業新聞掲載) 

中小の海外進出支援㊤

「空洞化」から「後押し」へ/現地での資金調達可能に

上地弘恭(近畿支部)

政府が行なう中小企業支援策のひとつに「海外進出支援」がある。この分野についての制度が昨年あたりから充実してきた。まだ一般的に知られていない制度も多いため、これから3回に亘って解説したい。以前の中小企業支援策に対する予算配分は、製造業を中心として国内の活動に限られるものが多かった。これはひとつに、海外へ出ていく会社が増えると「国内産業の空洞化」につながるとされてきたからである。政府が税金を使って中小企業を支援する目的として「国内雇用の拡大」「設備投資の拡大」等が挙げられるが、以前はこうした目的が「海外進出」によって妨げられると考えられていた。ところが実際に製造業の「国内従業者数」を追跡調査したところ、国内拠点だけにとどまった企業の「国内従業者数」は横ばいで推移していたが、海外拠点を持った企業の「国内従業者数」は増加傾向にあった。出所「中小企業白書2010年 直接投資を開始企業の国内従業者数」こうしたデータなどからも、中小企業の海外進出を「後押し」することが、国内法人の雇用や設備投資を促すために有効であることが次第に明らかになってきたと言える。
政府では以前から海外資金のための低利融資制度を設けている。これは海外子会社の資本金や、海外での設備投資に必要となる資金を貸付ける制度であるが、この制度による貸出残高も年々増加傾向にある。そこで政府は昨年8月「中小企業経営力強化法」を施行して、更なる海外進出を「後押し」する制度を盛り込んだ。具体的には、政府系金融機関による海外子会社に対するスタンドバイ・クレジットの利用が可能となったことだ。この制度を利用するには国の事業計画の認定が必要とされるが、これまで政府系金融機関では、国内法人(親会社)が借入れを行ない海外子会社に貸付ける「親子ローン」でしか海外の資金需要に応じることが出来なかった。今回のスタンドバイ・クレジットでは、海外の提携金融機関に政府系金融機関が信用状を発行するため限られた国でしか利用出来ないが、今後アジアを中心に現地の提携金融機関を増やして海外子会社の現地調達を後押しする方針だ。こうした制度を利用するためには事業計画の提出を求められるが、注意したい点は国内法人の雇用拡大や設備投資または利益増加が見込まれる計画でなければならない。海外進出を支援する国の目的は、あくまで「国内産業の活性化」にあるためである。

(平成25年2月27日 日刊工業新聞掲載)

中小の海外進出支援㊥

海外の金融機関に信用状/法改正で資金調達促進

上地弘恭(近畿支部)

前回は政府が行なう海外展開施策の背景について説明した。今回は政府が整備している「低利融資制度」について述べたい。日本政策金融公庫では主に製造業に対し、海外の子会社設立や製造拠点などの設備投資のために必要となる資金を融資している。発表によると、2011年度は675件、総額395億円の利用実績があり、前年度と比較すると約3倍に伸びていた。
この制度では、海外で必要となる資金をいったん国内の親会社に貸し付けるもので、親会社は借りた資金を子会社設立の「資本金」として出資金に充てることもできれば、海外子会社への「貸付金」として転貸することもできる。
どちらにしても、借りた資金は最終的に海外送金するため、必要な資金は海外送金する前に融資を受けることが必要だ。日本国内での調達金利はアジア新興国と比べると低水準で推移しており金利面でのメリットが大きい反面、返済計画で為替変動を考慮する必要がある。また親会社でも子会社資金の借り入れ(親子ローン)は、借入総額が膨らむため限界がある。そこで政府は12年8月に法律を改正し、日本政策金融公庫では海外子会社の現地調達を促す「スタンドバイ・クレジット制度」の取扱いを始めた。
これは日本政策金融公庫が提携している海外の金融機関に対して信用状を発行するもので、海外子会社の現地通貨建ての資金調達を支援する制度である。13年2月時点での提携先はタイのバンコック銀行に限られているが順次アジアを中心に提携先を拡大させる方針となっている。「スタンドバイ・クレジット制度」利用要件のひとつに「経営革新計画の承認」がある。これは新たな取組みを行う事業計画を国が承認する制度で1999年に始められた。もともと「国内」における新たな取り組みを想定していたが、12年8月の法改正により「海外」の取り組みに対しても認められることとなった。
自社の海外進出計画を「新たな取組み」として国からの承認を得ることで「スタンドバイ・クレジット制度」の利用要件が整う。更に保証協会の利用枠が引き上げられる措置も整備された。海外へ進出する際は、事業性調査や金融機関への相談など、事業計画の策定が必須となる。そうした事業計画をベースにして、事前に国からの承認を得ておくことが、低利融資活用において有効であると言える。

(平成25年3月6日 日刊工業新聞掲載)

中小の海外進出支援㊦

海外展開の補助金制度/ステージ毎に活用を

上地弘恭(近畿支部)

前回は政府が行なう海外展開のための低利融資制度について説明した。今回は政府が整備している「補助金制度」について述べたい。2012年あたりから海外展開を後押しするための新たな制度が増加しており、ここでは製造業を例として海外進出ステージ毎に利用できそうなものをピックアップしてみた。
【計画策定ステージ】
 海外進出の計画策定にあたっては現地訪問による情報収集が欠かせない。生産拠点設立のための視察、販売先開拓のための市場調査等にも費用が必要となってくる。こうした「F/S(フィージビリティ・スタディ)事業可能性調査」のための補助制度が中小機構で昨年より始まっており、費用の補助だけではなく専門家によるアドバイスも行なっている。
【事業開始ステージ】
 海外で行われる展示会に出展するにあたって、中小機構とジェトロでは、出展費用の一部を補助する制度を設けている。販路拡大のために出展計画があれば利用したい制度だ。この制度でも単に費用の補助だけではなく、出品物の輸送・通関業務や、商談資料の翻訳、通訳の手配など様々な問題も相談することで支援を得ることができる。
【事業拡大ステージ】
 現地での次のステージとして社員教育が重要となってくる。現地の技術レベルを上げるためには、現地での指導だけではなく日本国内での実地研修を行いたいと考える企業も多い。そうした現地技術者の受入研修に必要な費用を補助する制度をHIDAでは実施している。更にHIDAでは研修査証のための身元保証やHIDAの研修施設による日本語等の導入研修など、実地研修を行うに当たっての様々な支援を得ることができる。
 こうした補助金制度は、毎年4月頃に期間限定で公募されるものが多く情報収集が欠かせないが、中小企業庁では昨年11月に「中小企業海外展開支援施策集」として小冊子にまとめた。同庁ホームページからも入手できるので、一度は目を通し必要であれば事前に関係機関へ問合せしておきたい。
政府では昨年8月に企業財務に関する専門知識等を有する専門家を「経営革新等支援機関」として認定する制度を開始した。政府の支援策活用に不可欠なものが「事業計画書」であるが、こうした「認定支援機関」の支援を受けて自社の事業計画をしっかり立てることも支援策活用には有効であると言える。是非、しっかりと自社の事業計画を策定して様々な支援策を活用し海外展開を成功して頂きたい。

(平成25年3月13日 日刊工業新聞掲載) 

流通コストと流通業の存在意義

スーパーでは流通が機能/ネット時代価値問われる

石倉 憲治(東京支部)

「流通コスト」と言う言葉をご存知だろうか?「流通コスト」とは商品の流通に必要となる費用のことで、一般的には製造卸価格(製造者の出荷価格)と最終消費者に販売する価格(店頭価格)の差額を言う。すなわち卸売業者と小売業者の合わせた稼ぎ(粗利益)のことである。
通常、食品の場合、量販するための流通コストは販売価格の45%~50%を要する。
例えば流通コストが45%として、製造業者が100円の製品を流通経路に乗せる場合、店頭の販売価格は100円÷(1-0.45)=182円となる。製造業者が原材料を調達し製造加工をして、その品質保証もして、そして自社の利益も含めて出した価格と、同じほどの金額を流通業者が得ることに対して抵抗感を持つ生産製造者の方は多い。
現在、私は特産品の販路開拓及び製品開発のお手伝いもしているが、地元の生産製造者の方はこの「流通コスト」を理解しなく納得されない方が多い。だから、道の駅等の直売所の販売が中心となってしまう。この場合、通常、販売価格の10%~20%が流通コスト(直売所の取り分)なのでこの程度なら納得はされるのである。だから量産、量販は不可能となる。
食品スーパーは全国の生産製造者から、顧客の望む1万アイテム以上の商品を適切な時期に、適切な量を顧客に一番近いところで提供をしている。この機能の価値が流通コストとして市場は認めているのである。すなわちマーケティング機能が価格として反映している。
フィリップ・コトラーは「マーケティングとはニーズとウォントを満たすための交換プロセス」だと定義した。彼の国であるアメリカはマーケティングを発展させてきた国で、マーケットインの思想を世界に植え付けた。そしてマーケターの存在価値を高く認めている。しかし、現在、ネット通販等が台頭して、顧客は生産製造者とダイレクトに結びつくようになってきた。従来のような流通コストをかけずに商品が入手できる(流通される)ようになってきた。まさに今、流通業の存在意義が問われているのだと思う。

(平成25年3月27日 日刊工業新聞掲載)

元気いっぱいのモノづくり

みんなが主役の活動で意識改革/熱い志で実践を

岡崎 充男(東北支部)

グローバルな展開で企業経営環境が激変する中において、気持まで落ち込まないよう明確な「志」(ビジョン・旗印)を掲げ、常識にとらわれない根底からの「意識改革」と魂のこもった「哲学」が今こそ必要になっています。
企業支援においては、従業員全員が主体的かつ意欲的に活動できることに重きを置いて取り組んでいます。トップを先頭にして、志を持って改善・改革活動を進めていく中で自ずと意識は大きく変わってきます。蓄えた力が大きいほど改善の仕組みが力強く動き出して実をつけていくことになります。(格納庫で整備された飛行機が飛行場に出て一気に飛び立つのに似ています。)合わせて「感謝の心に根ざした哲学」が全体を支える上でとても重要な基盤になってきます。
工場に入った時に従業員の皆さんによく声掛けをします。「みんなが主役だ、脇役はいない」。一人ひとりが活性化され、良いところをどんどん伸ばして明るく元気になる活動を踏まえて改善・改革活動は進んでいきます。
心の扉を開けなければ熱い気持ちも伝わらないため、[相互理解→相互信頼]を意識して現場でコミュニケーションをとりながら改善を進めていくことが重要になります。
意思疎通、実践、達成感の積み重ねで信頼感は着実に深まります。
改善意欲に燃える集団では、対話の中で熱い情熱が炭火が移るように伝わっていきます。多くの人の無尽蔵のアイデアが渦巻いてくると、その相乗効果は異常な力を発揮して成果を生み出し「意識改革」が定着していきます。
「他に負けない圧倒的な強みと、お客様のニーズをとらえてのスピーディな動き、そして人づくりとグローバル対応」に取り組んで必死で汗してがんばっている企業が勝ち残っていきます。このような力・エネルギーが日本の製造業の底辺をしっかりと支えています。
目先の動きに一喜一憂することなく、腰をすえて「将来を長いものさしで見据えながら(長期視点)、腕(技術)に磨きをかけ、力の入れどころを誤らず(決断)、お客様に必要とされる企業」であり続けるよう、熱い志をともし続けながら実践していくことが大切です。
《元気いっぱいのモノづくり》は今日も、これからも進化を続けていきます。

(平成25年4月4日 日刊工業新聞掲載)

円滑化法終了後の金融機関の対応

軟着地へ支援継続/問われる企業の経営改善結果

岡部勝成(九州支部)

中小企業金融円滑化法(以下円滑化法という)終了後の金融機関の対応が世論の的になっている。金融庁はソフトランディング(軟着陸)のため実質的延長を視野に入れた姿勢で各金融機関には指導を行っている。実際、2013年2月15日、福岡市の福岡財務支局において金融庁の畑中龍太郎長官は「円滑化法終了後も対応は変わらない」と強調。具体的には金融検査マニュアルや主要行・地域金融機関向け監督指針を改正し、貸付条件の変更に対応する努力規定を明文化するなど準備に余念がない。
そもそも円滑化法は、前政権である民主党主導によるリーマン・ショック対策の緊急措置として09年12月に施行され、東日本大震災などの影響により二度延長された経緯がある。すでに、円滑化法を活用した貸付条件変更の利用企業数は30万~40万社に上ると言われている。
とりわけ、企業は条件変更の後、1年以内に経営改善計画を金融機関に提出する義務を負っている。これは中小企業の倒産抑止や資金繰りの円滑化など一定の評価がある。一方、モラルハザード(倫理の欠如)の助長といった批判もあることも忘れてはならない。ここで、金融機関の動向をみると13年3月15日、『日本経新新聞』によると中小企業の倒産に備え、貸倒引当金の積み増しを行っていると報じられている。
以前、社会問題化した「貸し渋り」や「貸し剥がし」を起こさないよう自己資本比率の減少を防ぐべく、貸倒引当金の増額については、自己資本項目に算入することができ、その反面、劣後債や劣後ローンは自己資本項目から控除されるという施策を講じることも公表されている。東京商工リサーチによると企業の倒産件数は09年度以降減少基調で推移しているのも事実であり、12年度に至っては月ベースで、1,000件を下回っている月が7回あった。
これはすでに述べた中小企業の倒産抑止の現れであろう。現在、にわかに脚光を浴びているのが、「企業再生ファンド」の台頭だ。企業再生ファンドは経営難の企業の債権や株式を金融機関などから買い取り、経営に深く関与して事業を立て直し、株式の売却益や配当収入を狙うというものである。
5%ルールと言って、銀行は規制により,事業会社の発行済み株式の5%までしか保有できないが、ファンドはその規制を受けず全株式を取得することができ、経営の意思決定にまで深く関与することができるのが強みである。とりわけ、金融庁がファンド設立を促進していることもあるため、今後動向には注視することが肝要であろう。最後に,企業に対する「目利き」と言われて久しい。正に円滑化法は3年間という猶予期間を経て、その経営改善の結果が問われている。

(平成25年4月11日 日刊工業新聞掲載)

イノベーションを起こす人材の役割 ㊤

研究開発部門の改革支援/「変われない」事例多く

渡辺智宏(南関東支部)

安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が始まり、景気回復の動きが見られるようになってきた。今後、さらなる景気拡大を期待したい。
そのような中で、これまで日本経済を支えてきた製造業、特に電機業界は凋落の一途をたどっているように見える。原因はさまざま考えられるが、その中の一つに「変われない」ということがあるように感じる。
過去に一世を風靡すると、その成功体験が災いし、成功した時の考え方・やり方から変えられず、時代の変化の中で淘汰されてしまうという現象である。本連載ではこの点に着目し、物事を大きく変えるという意味を持つイノベーションの創出に必要な人材の役割について述べてみたい。
私は主に、製造業のR&D部門の業務改革を支援することが多い。その中で、企業の歴史やしがらみによって改革が進まないケースを多く目にする。儲からず撤退したほうがよいのは分かっているが、先人達の功績や社員の大規模なリストラが様々な理由で断行できずに仕方なく継続している事業、各部門の都合が折り合わず、なかなか進まない製品開発などいろいろだ。
例えば、開発部門は新興国市場を狙う上でコストを劇的に下げるため、機能や品質基準を見直し、現地サプライヤーの安い部材を活用したいと考えているが、品質保証部門では「前例がなく、基準を下げて何か問題が起きると真っ先に対応しなければならないのは我々だ」といった押し問答で開発が進まないといった具合だ。このような中で、イノベーションを起こし、革新的な製品・サービスを世の中に送り出すためには誰が何を行っていけばよいのだろうか。
この革新的な物事を世の中に出す(イノベーションを創出する)ための人材とその役割について述べていく上で、まずイノベーションという言葉の定義をしたい。イノベーションという言葉は曖昧性が強いからだ。本連載においてはイノベーションを「事業目標を達成する上で、問題・課題となるモノ、事柄を変え続け、目標を達成すること」と定義する。モノとはビジネスモデルや技術、製品・サービス、事柄とは業務内容や推進方法などを指す。
この定義に基づき、次回 はイノベーション創出のために必要な3つの視点について述べていきたい。

(平成25年4月18日 日刊工業新聞掲載)

イノベーションを起こす人材の役割 ㊥

危機感・ビジョン・実行力/3視点+支援者得て推進

渡辺智宏(南関東支部)

前回は変われない企業の事例とイノベーションの定義を述べた。今回はイノベーションに必要な3つの視点について述べる。
三つの視点とは①将来の危機感、②ビジョン、③イノベーションの実行力である。
一つ目は将来の危機感。今のままでよいという雰囲気の組織ではイノベーションは起きない。変わるきっかけには危機感の醸成が必要だ。
危機感醸成には内外環境の認識が必要だ。業界の展望や顧客・競合動向、技術変遷、自社の収益傾向などの情報を収集・共有し、そこから将来への懸念を定期的に議論し、危機感を醸成させる。
危機感醸成でもう一つ必要なのがイノベーション対象(変える対象)の知見習得だ。不十分な知見では自社のレベルも正確に把握できず、変える必要性に気づきにくい。
二つ目の視点はビジョン。危機感が醸成されても変わる筋道が見えなければ皆不安になるだけだ。
ビジョンはイノベーション活動の道標であり、魅力的な将来像を示し、皆を動かす原動力としなければならない。ビジョンを描く上でもイノベーション対象の知見が必要だが、それに加えて伝え方も重要になる。
三つ目の視点はイノベーションの実行力。ビジョンだけで実行が伴わなければ何も変わらない。効率的な実行にはイノベーション対象の知見と、変わりたいという信念が必要だ。
実行力には活動の推進者だけでなく、推進者の支援側の役割・スタンスも大きく関わる。円滑な活動に向けた推進者への投資や権限付与、難局打開に向けた支援、勇敢な活動への評価など支援者の役割は重要だ。
革新的な活動が周囲の支援を得られず、逆に阻害され頓挫する例は多い。既得権益の保持、失敗の責任や部門間の利害調整回避などが主な原因だ。イノベーションの成否には支援者の役割が強く影響する。
また実行力の別要素として周囲への浸透がある。イノベーションで生み出された物事は、現代では当たり前の存在になっている。電気、自動車、インターネットなど後世の人達が存在に疑問を感じないほど当たり前になった物事は、昔イノベーションで生まれ世の中に浸透したのである。この浸透を組織的に図ることが重要だ。
次回はイノベーション創出のための人材の役割について述べる。

(平成25年4月25日 日刊工業新聞掲載)

イノベーションを起こす人材の役割㊦

先導・推進・支援3役連携/互いに歩み寄る努力重要

渡辺智宏(南関東支部)

前回はイノベーション創出に必要な三つの視点を述べた。今回はこれに必要な人材の役割を述べる。イノベーション創出には先導者、推進者、支援者の三つの役割が必要だ。
一つ目は先導者。イノベーション活動をリードする役割だ。才能に溢れ、将来への強い危機感を持ち、ビジョンを掲げ、周囲に変革の必要性を訴え、活動を引っ張っていく。
二つ目は推進者。先導者から変わる必要性を訴え、活動を引っ張っていく。支援者。活動を権限や責任、資産(予算)などを使って後方支援する役割だ。
一般的に、先導者は内発的動機が強く、現状の課題に前向きで貪欲に執着して対抗する傾向がある。また非常識で生意気、周りの空気を読まないタイプが多い。推進者、支援者は現状の疑問を我慢・傍観し、既存の延長線上で物事を考える傾向がある。常識的で謙虚、周りの空気を読む協調的なタイプが多い。
この三役の連携が必要で、先導者が不在ではイノベーションは起きないし、いたとしても周りが非協力的ならば失敗する。
実は先導者が支援者から活動を阻害される事例は多い。主な原因には支援者の過去の功績や環境などが考えられる。活動支援に必要な地位や権力、資産などは年配者が保有することが多い。彼らは先導者より前の時代に活躍し、地位や既得権益などを確立した。その産物がイノベーションで壊されるのであれば活動に否定的になる。また、今のまま過ぎ去れるのであれば苦労して変わりたくないという心理もはたらく。この心理には授かり効果と損失回避の二つが影響するといわれている。授かり効果とは自分が所有するものを高く評価し、手放したくない傾向。損失回避とは不確実性がある時、ある価値のものを得る喜びよりも失う悲しみを強く感じる傾向だ。
この解決に向けて、三役が互いに歩み寄る努力が重要だ。先導者や推進者は支援者に対して日常業務などで実績を示し、良好なコミュニケーションを取り、交渉力を身につける。支援者は先導者の非常識で理解しがたい提案にも理解と許容を示し、存在を認めることが必要だ。
3回にわたりイノベーション創出を人材の観点から述べてきた。本連載が何かの参考になれば幸いである。

(平成25年5月2日 日刊工業新聞掲載)

販路開拓支援の本質

スーパーでは流通が機能/ネット時代価値問われる

石倉 憲治(東京支部)

「流通コスト」と言う言葉をご存知だろうか?「流通コスト」とは商品の流通に必要となる費用のことで、一般的には製造卸価格(製造者の出荷価格)と最終消費者に販売する価格(店頭価格)の差額を言う。すなわち卸売業者と小売業者の合わせた稼ぎ(粗利益)のことである。
通常、食品の場合、量販するための流通コストは販売価格の45%~50%を要する。
例えば流通コストが45%として、製造業者が100円の製品を流通経路に乗せる場合、店頭の販売価格は100円÷(1-0.45)=182円となる。製造業者が原材料を調達し製造加工をして、その品質保証もして、そして自社の利益も含めて出した価格と、同じほどの金額を流通業者が得ることに対して抵抗感を持つ生産製造者の方は多い。
現在、私は特産品の販路開拓及び製品開発のお手伝いもしているが、地元の生産製造者の方はこの「流通コスト」を理解しなく納得されない方が多い。だから、道の駅等の直売所の販売が中心となってしまう。この場合、通常、販売価格の10%~20%が流通コスト(直売所の取り分)なのでこの程度なら納得はされるのである。だから量産、量販は不可能となる。
食品スーパーは全国の生産製造者から、顧客の望む1万アイテム以上の商品を適切な時期に、適切な量を顧客に一番近いところで提供をしている。この機能の価値が流通コストとして市場は認めているのである。すなわちマーケティング機能が価格として反映している。
フィリップ・コトラーは「マーケティングとはニーズとウォントを満たすための交換プロセス」だと定義した。彼の国であるアメリカはマーケティングを発展させてきた国で、マーケットインの思想を世界に植え付けた。そしてマーケターの存在価値を高く認めている。しかし、現在、ネット通販等が台頭して、顧客は生産製造者とダイレクトに結びつくようになってきた。従来のような流通コストをかけずに商品が入手できる(流通される)ようになってきた。まさに今、流通業の存在意義が問われているのだと思う。

(平成25年3月27日 日刊工業新聞掲載)

計量法・単位記号の尊重を

正しい表記は国の基本/「単位」直立体「量」斜体に

塚本 裕宥(北関東支部)

 たかが単位、されど単位という学術的、科学的、技術的な提言をする。身近な事例から示す。日頃散歩する県道に「風神山自然公園→1Km」の表示がある。これを1「キロメートル」と多くの人は読むだろう。
私は企業での単位表記のご意見番の経験から、計量法により学術的、科学的にはそう読まず、1「ケルビンメートルやケーメートル」と読む。計量法に反する表記ともいえる。
 正しい表記は1km、kを小文字、直立体で書く。科学立国、技術立国を目指す日本なら、単位やその表記は計量法に則り、正しく表記したい。正しい単位表記は国の基本といえる。
 大手の製薬会社やPC・AV機器会社の新聞広告に、単位記号を斜体表記してあった。計量法に無知な表記、日本を先導するこれら会社は、単位記号の正しい表記を知らぬ様子、残念である。大手製薬会社消費者窓口にμmの表記につき、電話連絡したが指摘を理解できぬ様子だった。
単位表記を理解不足の人達を相手にしても無意味、問うのをやめた。PC・AV会社の例は斜体の単位記号と記憶している。単位記号の軽視は企業等の科学的、学術的力量の劣化と思える。
 誤りを的確に理解して対応した、最近の別の事例を紹介する。
 ある検定所の啓発用資料、単位記号の接頭語、「μ マイクロ」と表記してあった。これの正しい表記は「µ マイクロ」、μではミューだ。
 計量法では、単位記号は直立体、量記号は斜体で表記する決まりである。
 これは科学(文献)、技術(文献)に関わる者には常識のはず。きつい言い方だが、これを知らない科学や技術に関わる方々は、学び直して欲しい。
最近は質量の時代のはず、重量表記も目立つ。これも気になる。
道路標識のKm、PC等のKB、長さのμmについては、km、kB、µmに修正したい。
気圧のhPaへの表記変更は関係者の努力で正せた。道路標識の「Km」、国交省等関係
者は、正しく「km」と表記すべく、標識表記に関わる方々(看板製作者を含む)まで、
指示を徹底して欲しい。

(平成25年5月16日 日刊工業新聞掲載)

私のコンサルティングプロセス

管理サイクル回し計画策定/経費削減努力に全力

石倉憲治(東京支部)

私のコンサルティングプロセスを紹介する。プロセスだから管理サイクル(PDS)を回す。「経営分析・診断」→「改革の方向付け」→「中期経営計画」→「計画周知徹底」→「実践」→「検証」の流れ。紙幅の関係で要諦を述べる。
「経営分析・診断」はまず、決算書のB/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)に基づきCF(キャッシュフロー)計算書を作成。中小企業経営の最大の課題はやはり資金繰りだ。手元流動性資金をいかに潤沢に確保できるか。CFの動きは特に正確に把握する必要がある。また、決算書(=申告ベース)のB/SとP/Lから実態ベースでのB/S(=時価B/S)とP/L(=実態P/L)を作成する必要もある。これはデューデリと呼ばれるような厳密な内容を求めるものではない。
資産価値のない科目(電話債券、前払費用など)を償却する。土地を路線価に基づき再評価をする。法定どおりの減価償却費を計上する。水増しのない正確な棚卸資産計上をする、などを行い、時価B/Sと実態P/Lを作成する。
中小企業の多くの決算書は調整されている(悪く言えば粉飾)と言われるため、次のステップ「改革の方向付け」を誤らないためにも必要な作業だ。このように作成したCF計算書、時価B/S、実態P/Lに基づき収益性、生産性、安全性等を分析・診断する。次に「改革の方向付け」だ。経営改革の基本スタンスは「売上高を現状確保し経費削減で対応する」とする。すなわち売上高向上の無理な努力より、それは維持しつつ経費の削減努力に全力を挙げるという考えだ。
ただ縮小均衡に陥らないよう常に心掛けなくてはならない。「改革の方向付け」の要諦は最終利益を明確にすることである。目標とする手元流動性資金額から現在保有額を差引いた金額と、有利子負債削減目標額の1年分返済額とを加え必要なCFを計算。さらに非資金取引である減価償却予定額を引き算して最終利益を算出する。
「次年度経営計画」は「改革の方向付け」で明確にした最終利益から、営業利益、売上総利益へと遡って立案する。売上高は現状維持なのだから売上原価及び販管費をいかに削減するかにかかる。勘定科目毎に現実的な削減案を考える。このようなプロセスを踏むと自ずと具体策が出てくる。そして「中期経営計画」の立案と進む。
経営者は中期経営計画の最終年、すなわち改革完了の経営数値を見てその数値になった自社に思いを馳せ「優良企業へ脱皮するこの経営改革はやり遂げねば!」と決意。プロコンはその演出家で全面的なサポーターとして存在する。主役は経営者だということは言を俟たない。

(平成25年5月30日 日刊工業新聞掲載)

「アベノミクス」は火点け役、頑張れニッポン㊤

枯れきった世の中に期待感/企業戦略見直しの転機

小島和久(東京支部)

アベノミクスに対する世論の評価は高い。半年前までの円高、株安が円安、株高に転換し、世の中の雰囲気は格段に良くなった。そこで経営者にとってアベノミクスがどうなるかは長期の企業経営を考える上で、重要な前提条件となる。アベノミクスが功を奏して日本経済がデフレと長い景気の停滞から脱却するのであれば、それに適応した企業戦略を立て直さなくてはならない。
しかし、アベノミクスに関しては専門家の間でさえ賛否両論が平行線を辿る。ところで、昨年末以降の円安・株高の動きを考えると、アベノミクスの効果は大きいが、必ずしもそれのみで実現しているのではないように思える。複数の好条件が重なる、正に絶妙なタイミングで出現しているのである。
為替については、2007年6月の1ドル=124円から11年10月の1ドル=77円へと4割も円高・ドル安になり、12年末にかけては(円高=ドル安の)底入れの兆しさえ見せていた。円高行き過ぎ論も強まる状況にあった。
また、安倍首相誕生前の日本の株価は売られに売られ、もうこれ以上売る人も少なくなっていた。出来高も細り、株価はまさに陰の極にあった。そんな時は逆に、きっかけさえあれば、安くなり過ぎた株価に火がつきやすいのである。
こうした状況の時に安倍首相が登場し、積極経済政策を主張したのである。
金融をこれまでと異次元の規模で緩和するという期待感がきっかけとなり、過度の円高から底入れしかけていた為替は円安に転じ、陰の極にあった株価は上昇し、枯れきっていた世の中の期待感に火がついた。
このようにアベノミクスに刺激され、まず為替と株価が動き出したが、これは円高と株安の行き過ぎによる反動もあり、行き過ぎ分は修正されやすい。
しかし、今後2年間で2%の物価上昇やデフレ脱却などを目指すアベノミクスは、政策が進みその効果が表れる筈の1、2年先でないと結果は分らない。
株価には1年先などを先読みする先見性があるとされ、私も何回か実感した。今回もそうした動きを発揮してくれるかどうか興味深い。これまでの株高の勢いは、変動はあっても、既にそのことを示しているかもしれない。

(平成25年6月6日 日刊工業新聞掲載)

「アベノミクス」は火点け役、頑張れニッポン! ㊥

萎縮経営から抜け出す/異次元緩和 復活への一歩

小島 和久(東京支部)

昨年までの日本経済は「失われた10年」が「失われた20年」に伸び、遂には「失われた状態」から抜け出すことさえ難しい状態に陥っていた。日銀の白川前総裁により、金融緩和は既に行われたが、こうした停滞局面では全く効果を発揮しなかった。経済があまりに悪かった。日本経済は陰の極に近かったのである。
そんな中でも景気に循環はある。2012年秋前後から一部の景気指標が底入れして、安倍首相が政権に就く頃は、主要指標の数値が低下から上昇に転じていた。
安倍首相にとっては最高のタイミングであった。循環的に上昇局面に入りかけていた景気が、アベノミクスへの期待感との相乗効果で、勢いを増している。しかも陰の極からのスタートであり、上昇に弾みがつく可能性もある。
また、金融緩和により日銀から民間銀行に供給された資金が銀行で止まらず、世の中に出回るかどうかが問題である。銀行の貸出残高の伸び率は、既に昨年からプラスに転じ、徐々にではあるが高まっている。異次元金融緩和でこの傾向が強まり、世の中への資金の流れが増えれば、アベノミクスにも実体経済にも前進への1歩となる。
 一方、企業は長年にわたり、前向きな設備投資も人員増も抑制している。この辺りで積極的に事業を前進させないと、企業活力そのものに影響する。名目賃金もここ数年減少傾向にあり、これ以上続けば社員の士気に係わる。もともと現在40歳台の中堅層以下は、仕事の上では「失われた日本」につかりきりなのである。経営者の意識も「失われた20年」の中で実力以下の状態に委縮している。日本の実態は思った以上に危険であった。
こうした時にアベノミクスが現れ、先行き期待感が生まれると、ながらく待ち望んでいた事業展開のチャンスと考える企業が現れるだろう。企業内の意識が解放され、長期にわり抑えられていた設備投資などのカバーも含め、企業活動が思いの他に上向く余地が生まれる。
ただ期待感は、いつまでも実体経済が好転しなければ消滅する。先に述べた景気の循環的な上昇局面をアベノミクスが後押しし、実体経済の拡大が現実に続くことになれば、景気の復活は本物になる。

(平成25年6月13日 日刊工業新聞掲載)

「アベノミクス」は火点け役、頑張れニッポン!㊦ 

企業活動トレンド反転/前を向き新しい世界へ

小島和久(東京支部)

安倍晋三首相誕生前、円高および株価下落のトレンド、景気及び企業活動の停滞トレンドは行き着く底周辺まで進んでいた可能性がある。つまり陰の極であった。そんな時、タイミング良く強力な刺激が与えられると、トレンド反転の契機になる。アベノミクスが正にそうした刺激剤になった可能性がある。株価・為替は既に陰の極から脱却した。
アベノミクスは火つけ役を果たしているものの、実体はちょうど火のつきやすい枯れ木の状態にあった。アベノミクスが単に火点け役であったとしても、経済が再生を遂げることはあり得るのではないか。陰の極からの復活は、強力なインパクトを持つ可能性がある。この時アベノミクスの超金融緩和と「期待感」が重要な役割を果たすのである。
ただその場合、火がいくら点火しやすい状態にあったとしても、芯つまり経済の実体が腐っていて、再起不能な状態になっていたら、いくら火を点けたところでその火は間もなく消えてしまう。
日本経済は20年以上という長期間にわたる停滞状態にあり、このまま更なる低迷が続けば、いつかその芯が腐り、国全体が危篤状態に陥る可能性もあった。
しかし今は、復活への意欲も、力も、体制も依然、残っている。その証拠が、株価の力強い上昇とアベノミクスに呼応して広がり始めた活気の中に示されている。表面的な空気に惑わされず、実態を見通さなくてはならない。
今の経営者層は自信喪失しているとの調査結果もあるが、保守化し眠らせている本来の力を目覚めさせ、発揮させることさえ出来れば、自ら力で復活の第一歩を踏み出せるのである。
底入れから大きく反転した株価の様に、経済や企業活動についても、長期のトレンドが低下から上昇に転じる時、強い勢いを見せる可能性がある。
またそうした勢いがないと転換自体が難しくなる。
これまで人々の視線はしっかり前を見ていなかったのではないか。前を向くことが、日本の危機を脱出するために必要なのである。向きを正せば、新しい世界が開ける。日本の完全な復活を、多くの人達が望んでいるとしたら、そのこと自体が期待を実現させるのである。がんばれニッポン!!

(平成25年6月20日 日刊工業新聞掲載)

ご縁は自らつくるもの

機会を求める/人が人を呼び込んだ町おこし

山田 一(千葉支部)

 私が町おこしの活動らしきことを始めたキッカケは、ある人とのご縁が始まりだった。千葉県南部にある第三セクター、いすみ鉄道鳥塚亮社長との出会いである。縁あって日本経営士会千葉支部と千葉県経営者協会の共催で鳥塚社長に講演をお願いした。当時全国のローカル鉄道の赤字経営が問題となり、廃線を余儀なくされた鉄道が多かった。いすみ鉄道もその一つで、存続が危ぶまれていた時期でもあり、鉄道が無くなったならば地域の灯が消えてしまうと熱っぽい語りかけが印象に残る講演であった。
 その後、千葉県観光リーダー養成講座でご一緒に勉強した奥様を介し能楽師シテ方観世流橋岡会橋岡久太郎九世を知ることとなる。経営士会千葉支部総会に特別講演をお願いして、日本の伝統文化である能楽に関してお話をして頂いた。この講演には、先の鳥塚社長もお呼びして、懇親会の折に、町おこしの面から夷隅地域で「薪能」を企画してみてはという提案をしたのがスタートとなった。
その後、町の有力者への働きかけを試み、その功もあり、オペラ歌手の村上敏明氏も賛同して下さった。若い人たちに本物の芸術を知る心を養ってもらうという視点から、2012年10月6日に大原市内の大原文化センターで"能楽とオペラの協演"という形で花開くこととなった。
地元高校生による能楽への参加、地元合唱団によるオペラへの参加が出演者と客席と一つになった感動的な高まりのうちに公演を成功裏に終えることができた。是非続けてほしいという地元の方たちの要望も強く、継続することで町の特色をだせればという思いから、13年も公演を行うべく検討に入っている。
 人とのご縁は待っていては来ない。自ら作り出し、人が人を呼び寄せていく、そしてご縁のあった人たちとどうコラボレートできるかを探ることで、新天地を見いだせたのではないかと考える。
 経営においても、同じことが言える。毎日の仕事にきゅうきゅうとするだけでなく、自分に無いものを求め外部の人に目を向けてみるのも時には必要ではないか。
縁あって知り合った他人と一緒になって共有化できるものはないかを探し出すことで、思ってもいない効果が期待できる。

(平成25年6月27日 日刊工業新聞掲載) 

知と経験が最も大事なグローバル企業への変革

多文化の中で20代人材育成/キャリアを正当評価

西 満幸(東京支部)

わが国の海外進出企業は2万社、全体に占める海外売上高は2割となった。日本企業の海外活動は活発化しているが、国際競争力は弱い(2013IMDランキング24位)。グローバルで活躍できる人材、海外からの投資を呼び込める人材が不足している。「知と経験が最も大事な社会」に変革し、持続的な成長を実現する必要がある。
第一に、20代のグローバル人材育成だ。社内標準言語が英語となり、多文化社員が協同で日常業務を進める時代が始まる。海外勤務は早目に体験させ、幹部への必須なキャリヤパスとする。入社後数年の20代社員に多文化の中で、グローバルビジネススキルや、個人を大切にし、残業が少ない働き方など世界標準を生活の中で会得させ肌で身につけさせる。日本生産性本部の調査では新入社員の半分以上が海外希望である。20代でグローバルビジネスの世界に放り込み、これを日本型雇用・労働改革に生かす。
第2に、大学院進学者の増大である。文科省によれば、大学院在学者26万人は韓国33万人より少ない(人口1000人当り2.1人は韓国の1/3)。中国は154万人。英米大学生の30%が30歳以上であることも特徴である。米上場企業役員の40%はMBA、対日本の大企業役員の修士はわずか6%。日本は働き方を変え、30代以降でも新しい知とキャリア挑戦が必須である。
第3に、これらの知と経験を生かす通年採用の早期実現である。7,027対0、これはIBM(US)と同業日本トップ社の最近のキャリア募集状況である。その募集情報は職種・勤務地・スキルなど具体的で、Footer「お客様別情報」/就職希望の皆様、として取り扱っている。キャリアはグローバル企業ではお客様である。成長には新しい知と経験=キャリアが必要で、労働流動性を大胆に高める必要がある。
今後、世界のリーダー役は知識労働の生産性向上に成功した国と産業となる。専門家教育とキャリアを正当に評価し、「知と経験」にインセンティブを与える日本にする。何を変え、何を残すかを熟慮実行し、働き方などグローバル頭へのシフトこそが、企業の持続的な成長を約束できる。

(平成25年7月4日 日刊工業新聞掲載)

三本の矢 活用のコンサル

PDCAコンサルでサポート/事業承継に留意を

矢島 英夫(東京支部)

今や、アベノミクスの三本の矢が日本再生の切り札のごとく走り回り、20年以上にわたる低迷期の時代を乗り超え、活力のある時代の曙を迎える。トップの政策により、よみがえった。翻って会社経営にも応用できるではないか。ヒト・モノ・カネの3つの要件から考える。
◎ヒトは人財
新会社法成立前の株式会社は、役員3人以上が必須要件。トップは、3年先、10年先を考え、事業展開し、事業継続マネジメント(BCM)考えた役員布陣により、低迷期の会社経営も乗り越える。中小企業は、資本金の10倍以上の借入をしている。売上に対して経費がほぼ同じ位あるので利益は0か赤字となる、赤字になると会社継続できなくなる企業が続出する。そこで、どうすればこのジレンマから抜け出せるかを考える。
◎モノを考える
事業目的である儲ける製品は何か。本業+副業+αの三つ揃うと将来を切り開く力となる。選択と集中は、100年以上続く老舗企業であれば、時代に即した仕事が身の丈のあった経営が永続の力となる。簡単に言えば本業を大切にしながら新しい時代に即した企業経営に切り替えできる決断力である。時代の先を見通せるスキルである。
◎カネを考える
 資本から会社経営を考える。昨今、売上が減少し資本額が資本金の金額を下回り、自己資本が限りなく0に接近,又は0を越えマイナスとなると債務超過状態となり破産、会社倒産などとなる。しかし売上を高まれば、貸借対照表の資産が増加、効率よい経営は利益を出す。自己資本を高めることが可能となり、資本の充実が図れる。
◎ヒト・モノ・カネのことを全体で考える
 PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルによるコンサルで企業をサポートする。BCMを考えないと企業は、存続しない。最近倒産に至る中小企業は、ある日突然倒産する場合が多いのはどうしてなのか。
企業のトップの突然の死は、承継負担が過大となり、会社倒産を生じる。突発な出来事に対して、デジタル的なコンサルの対応は困難で、前々からアナログ的なコンサルを企業に提案しないと真の意味のコンサルはできない。

(平成25年7月11日 日刊工業新聞掲載)

科学立国・技術立国なら

道路標識の単位表記に誤り/基本の徹底を提言

塚本裕宥(北関東支部)

 5月16日付本欄で「計量法・単位記号の尊重を」と題して提言した。今回は道路標識に関することを主体に提言する。この種提言は繰り返しが重要だ。
科学立国、技術立国を目指すというが、日本の道路標識は誤表記が多く、お寒い状況だ。私の確認に疑問があるなら、身近な高速道路、国道等の標識を見て欲しい。私の指摘が正しく、誤りの多さを実感するはずだ。
私は前回述べたように、企業における単位記号のご意見番であった。新入社員が2年間の研修を終え、その発表会で単位記号を粗末に扱うと、小さなことだが、将来のためにとの思いから、考え違いをきつく諭した。
道路標識に関して、東京まで50Kmのような誤表記があきれるほど多い。正しくは50km、「k」は大文字でなく、小文字が正しい。Kmでは計量法上、前回示したとおり、「ケルビン メートルやケー(イ)メートル」と読む。
 天気予報でお馴染みのhPa(ヘクトパスカル)は、NHKがミリバールからヘクトパスカルに変更します、変更しましたと何度も何度も繰り返したので、今ではミリバールという単位は全くと言えるほど影をひそめた。
 国交省の関係者は、正しく「km」と表記すべく、標識表記に関わる方々(第一線の看板製作者を含む)まで、指示を徹底して欲しい。
 本件について、6月1日のある周年記念の席上、国交大臣経験者と面談の機会があり、標識を見直すようメモを添え、提言のエピソードがあることを付言する。私の提言が生き、第一線まで指示が行き渡るかを見守りたい。
今は、重量系から質量系に移行のときであり、ついでの提言をする。日本の教育を見ると、大学までは質量系で学習するのに、社会人になった途端、重量系に戻ってしまう。不思議な国と言わざるを得ない。
「本体質量5kg」というような表示を徹底しているのは、家電業界だけと見える。多くの業界で、まず「本体重量」でなく、「本体質量」と表示を変更する必要があるはずだ。自動車業界等の協力が欠かせない。
些細なことだが、こういう基本的なことを徹底することが科学立国、技術立国の出発点と思えてならない。

(平成25年7月18日 日刊工業新聞掲載)

男女共同参画社会に向けて

女性の能力活用/多くの人々の協力あってこそ

塚本裕宥(北関東支部)

 体験を基にして、男女共同参画社会に関する提言をする。私がそれを意識したのは、企業在籍の1965年頃、品質保証という技術部門に、女性社員の配属を受けたときである。当時は自分の身を処するのが精一杯で、適切な対応をしたか定かでない。
その後85年頃、創造性が必要な商品企画という企画部門に、工場採用初の大学卒女性社員を受け入れたときである。
そのとき以来、今後は女性でも、性別とは無関係に活躍できるよう、育成責任があると痛感、適切に対応した。
育てるという男性の視点でなく、当人の自覚で育つよう見守り、支援するのが適切とも考えた。85年頃受け入れた女性社員たちは、今も既婚社員として技術部門で活躍しており、OBにも配布の社内報で活躍状況を知り、適切な対応だったと思っている。女性でも適切で丁寧・充実の社員教育をするので、定年退職するまで永続勤務をしてほしい、結婚もするだろう、子育てもするだろう、女性目線を生かせる商品開発を通じ、充実の人生も送って欲しいなどと励ましたのを、昨日のことのように思い起こす。
彼女たちの活躍は、女性でも自己実現が大切と考え、その努力もあり、世間もそれを後押ししたと思う。
 お客様第一には、社員・職員を大事にすることが先決で、そんな活動にも、当然、男女共同参画という考え方を含むはずだ。
人口減少社会になり、女性の能力活用は非就業者をも含み、主婦等のパート労働の大切さは熟知のはずだ。
多くの方々は組織をよくするためのノウハウを持ち合わせているはず。それも活用したい。組織は男性と女性で成立、社員を区分する必要はない。
 自助である夫や祖父母等の協力、共助である働く仲間として支え合う企業の協力、公助である待機児童をなくすなど、社会の協力あってこその男女共同参画社会である。多くの方々の女性への温かい目線が基本であり、根底では若者への支援優先につなげたいものである。
ダイバーシティ(多様性)とも関わり、頭では理解しているものの、体で理解しているかは疑問で、男性優位の考え方を変え、行動を変えようと提言する。

(平成25年7月25日 日刊工業新聞掲載)

開業率を高め雇用創出するグローバル社会に

社内起業を倍増・外国人雇用拡大/外国企業誘致を

西 満幸(東京支部)

アメリカやイギリスの開業率はわが国の2―3倍である。アメリカの破産法は簡単に破産・簡単に再チャレンジ、早い与信回復が基本である。わが国の起業支援制度はかなり整備されている。失敗を認めない社会や与信の問題から、起業・開業意識は低い。経済の成長には開業率を高め、産業・事業の新陳代謝を促す工夫が求められる。
第1に社内起業を倍増させる。失敗の回数が増えれば、それだけ成功が速くなる。社会が失敗を認めないのであれば、せめて企業は失敗を認める。失敗しても再チャレンジできるような加点主義人事に大胆に転換する。勤務時間の20%を社員が情熱を感じられるプロジェクトにあて、世界最高水準の企業研究開発費と潤沢な内部留保を起業に大きく投資する。遅れているサービス業種(研究開発・対事業所)などは開業のテーマとなる。
第2に世界で8番目に多い外国人留学生14万人の活用である。外国人は起業意識が高いが、卒業後日本の会社に就職するのは8000人にすぎない(2011年) 。採用枠を拡大し開業率を高める。米国には年6万5000人の高度専門職向けの短期就労ビザ(H-1B、6年間有効)がある。地方の外国人雇用では住宅支援や米政府の引っ越し代全額負担などの施策も参考となる。ちなみに、シリコンバレーの開業の5割は1割の移民住民による。
第3は対内直接投資を高めることだ。11年の日本の対内直接投資残高は国内総生産(GDP)比4%で、ドイツの5分の1にすぎない。企業誘致当事者の自治体と企業の直接接触・支援が重要となる。ドイツでは貿易・投資振興機関が企業進出支援を無償で行っている。16州はこの政府機関と連携、セミナーなどで来日し具体的に各州の優位性を直接担当者が紹介している。
80年の歴史を持ち元気な富士フィルム、そのフィルム事業売上高は1%である。130年の歴史を持つコダックはフィルム事業に固執し破綻した。
企業は社内制度改革と外国人雇用を拡大し、政府と自治体は強連携で外国企業を誘致する。持てる力を最大限に発揮すれば、グローバル時代の中で雇用を拡大し、成長することが十分可能となる。

(平成25年8月1日 日刊工業新聞掲載)

先生、もっとカンタンに経営がわかるようになりませんか?

基本・目標・行動で定義/PDCAシクルを回す
「〇△□の経営・入門」その1

山本英夫(南関東支部)

クライアントの社長さんたちからこんな要望が出てきた。「社員のみなさんに経営の話をする時は、中学生にもわかるくらいの説明でしてほしい」とか、「ドラッカーがいいのはわかるけど、やっぱりあれでは難しくて・・・」等々。以来、ずっと模索してきた。経営における重要な基本項目についても触れながら、経営指導支援の内容についても盛り込んだ経営入門テキストができないものか、と。
そして、痛感したことは今までの切り口ではダメだということ。切り口を換えてアプローチしないとできないことがわかった。常々、経営コンサルタントとは「会社を通して、社会を良くしていく」という強い使命感を持って取り組んでいくものだと考えていた。それではどんな切り口がいいのか。考えに考え抜いた結果、次のような問題を自らに出した。「3つの用語を使って経営の定義をせよ。マネはいけない」。そして、出した答えは「3つの用語とは、基本・目標・行動」。3つの用語を用いて作成した定義とは「経営とは、基本を徹底し、目標を明らかにして行動すること」とした。
さらに、わかりやすく、可視化するために「基本=□、目標=〇、行動=△」と図形に置き換え、3つの図形を組み合わせて、□が下、○が上、△を真ん中にレイアウトしたピラミッドを作った。「○△□の経営ピラミッド」である。「□を徹底して、○を明らかにして、△すること」と置き換えることができる。これが、「○△□の経営」の基本だ。
経営者における迷いには大別して3つある。1つ目は、「どこにいるかわからない」。2つ目は、「行き先がわからない。目標があいまい」。3つ目は、「何をしたらいいのか分からない」。1つ目は□に対応する。基本の徹底をすること。基本とは、次の3項目。「人・物・金、情報・時間・技術」の経営資源の見直し。経営理念の見直し。組織図の見直し。2つ目は○に対応する。目標を明らかにする。経営理念から出てくるビジョンに基づき、経営計画に落とし込んでいく。三つ目は△に対応。経営計画にもとづき、事業計画・実行計画に落とし込んだ内容の具体的実行と確認と改善実行。つまり、PDCAサイクルを回すということである。これが、「○△□の経営」の基本の基本である。

(平成25年8月8日 日刊工業新聞掲載)

先生、もっと儲かるような視点も入れるとどうなりますか?

「重い」「資金シクル」など追加/7アイコンで説明
「〇△□の経営・入門」その2

山本英夫(南関東支部)

 「□=基本、○=目標、△=行動」の三つで「経営の基本の基本」は押さえたものの、現実の経営において気になる「利益」についてはどのように考えたらいいのか、という声も出てきた。
そこで、この三つの用語・図形をさらに深く理解していただくとともに、これをベースとしてさらに四つの用語・図形を加えた。
□=基本を、「人間の基本、六大経営資源の基本と経営理念と組織図、仕事の基本(挨拶・返事・相づち、3S、ホウレンソウ)」というように展開した。そして、○=目標を「目標<目的<夢」、△=行動を「経営>業務>作業」とした。これにより、次に説明する内容につながっていく。
具体的な四つの用語・図形とは、「利益=▽」「業務サイクル(売る・つくる・管理する)=▲」「資金サイクル(調達・投資・回収)=▼」「おもい・経営理念・経営哲学=◎」の四つである。特に、「資金サイクル」を加えたことによって、より現実的な経営としてとらえことができるようになる。
行動=△は、具体的には「業務サイクル=▲」「資金サイクル=▼」の両方をバランスよく回すこととして展開していく。そして、その「行動=△」の結果として「利益=▽」をとらえるのである。さらに、この利益▽を三つの面からとらえることにした。「差額としての利益」「お役立ちとしての利益」「価値創造としての利益」である。
そして、□=基本の真ん中に「◎=おもい・経営理念・経営哲学」を据える。すべては、「おもい」から始まり、経営哲学をベースとして経営理念を明確にしていくのである。ここで覚えておいてほしいことは「哲学―理念―計画」という「おもいの3サイクル」。理念の前に哲学があり、理念の後に計画がある、サイクルである。
これらを「経営の基本がわかる七つのアイコン」として「○△□の経営ピラミッド」を完成させることになった。これが「○△□の経営」の基本と言っていい。「○△□・▽▲▼◎」の、たった7つのアイコンで「経営の基本」を説明できるということで、クライアントの社長たちには喜んでいただいている。

(平成25年8月22日 日刊工業新聞掲載)

先生、CSとか目標管理はどう考えればいいですか?

補助線・図を加える/経営ピラミッドシンプルかつ深く
「〇△□の経営・入門」その3

山本英夫(南関東支部)

「○△□・▽▲▼◎」の七つの図形で「経営の基本」が説明できることをお話してきた。また、要望が出てきた。「CSや目標管理はどう考えればいいですか?」、「ドラッカーのマネジメントがこれでわかりますか?」「アメーバ経営にも当てはめられますか?」などなど。
 経営の全体について切り口を換えて説明しているだけなので、「全部これで説明できますよ」と答えておいた。これらは、すべて「○△□の経営」の応用編になるので、詳細説明は割愛させていただく。基本的には、7つのアイコンで作成した「○△□の経営ピラミッド」に補助線、補助図を加えて展開していくことで、それができる。
 例えば、CS経営を理解するには、「経営ピラミッド」の△の中に2つの△ができるように2本の補助線を引き、それぞれの頂点の上に○を描く。これで、△の中の左右に1つずつの「経営ピラミッド」ができる。左がCS(顧客満足)のピラミッド、右(従業員満足)がESのピラミッド、大きなピラミッドはSS(社会満足、CSR)のピラミッドというように見立てることができるのである。
 そして、目標管理制度を理解するには、△の中に3つの△ができるように6本の補助線を引く。3つの△のそれぞれの中にまた、6本の線を引いて、さらに3つの△をつくる。つまり小・中・大のピラミッドができ、全体目標・部門目標・個人目標を示すのである。
 それ以外にも、ワーク・ライフ・バランスを示すピラミッド、経営理念のピラミッド、セールスのピラミッドなども表すことができるようになっており、経営を深めていくことができるのである。
 こうして、経営における主要な手法や考え方を経営ピラミッド一つで理解することができるようになっている。ここまで理解が進めば、ドラッカーのマネジメントも容易に理解できるようになる。ちなみに、○=顧客の創造、△=(三辺を)マーケティング・イノベーション・生産性の向上、□=経営資源・組織・真摯さ・責任とみなし、△の中身を「仕事」と「労働」として見なすだけでも、基本的な理解を押えることができるのである。
 このように「○△□の経営」はシンプルかつ深く広がっている。

(平成25年8月29日 日刊工業新聞掲載)

伝統食にもイノベーションの波

ごま豆腐 老舗野こだわり/新しい食べ方も提案

河上晃(南関東支部)

例年にない今年の酷暑も、お大師さまの地高野山へ一歩入ると凛とした静寂に浸され身も
心も引き締まります。高野山は一山境内地といわれるように、いたるところがお寺の境内地であり、高野山全体をお寺と受容する宗教都市でもある。
2004年の世界遺産登録後の高野山には、毎年4万人以上の外国人の観光客も訪れ、聖地内も国際色豊かなスポットになっている。
そうした国際宗教都市高野山にあるごま豆腐の老舗Hさんの店舗を訪ねた。Hさんは高野山にて長くごま豆腐の製造販売に従事されている。
地域密着、地産地消、地方製造業の形でありながら、時代の変化に適応した提案も発信されている。
ごま豆腐という伝統食の範囲を超えて、嗜好の変化への革新、増加する外国人観光客への
対応、日本人・外国人・観光客・地域住人を問わずに健康に留意した健康食品として時代の要請に応えた経営をされている。
高野山のごま豆腐は、お題目を唱えながら石臼で白ごまをするなど、昔ながらに白ごま、
吉野葛、深山から湧き出る清水のみで真心こめて製造されている。シンプルなだけに素材の良さが味の決め手となり、舌触りの良い触感のすっきりとした味の中にごまの風味がはっきりと味わえる。
添加物は一切使用しないなど健康にも留意し、さらにごま豆腐は鮮度が命と生にこだわり、
「夏季には保冷容器を持たないお客様には持ち帰りを許さない」など頑固なこだわりを徹底
している。
しかし、ごま豆腐の製造・取り扱いには頑固な反面、進取の気概は豊富で、召し上がり方
では、冷たくしてワサビ醤油でいただく伝統的な食べ方から、黒蜜をかけてのデザート風や、
和三温糖やきな粉をかけての食べ方に加え、夏には桃のコンポートをかけての食べ方など四
季折々の果物のコンポートとの一見スイーツ的な食べ方など、これまでの常識を超えたごま豆腐の新しい食べ方も提案されている。
グローバル化の中で生き残りのため海外へ進出する企業も多いが、地域の特産品などを扱
う中小企業は地域と共存することが求められる。
約1200年続く高野山のごま豆腐の強み(良さ・本質)を活かした時代の変化を先取りする革
新性は、地方製造業の究極の形と考える。

(平成25年9月5日 日刊工業新聞掲載)

すぐそこにある危機(アルバイト・パートの人財化)

店員は顧客との接点/教育・労働規範の指導徹底を

河上 晃(南関東支部)

昨今、アルバイト店員の起こした問題が続いている。ストレス発散のためか眉をしかめる行為をして、その行為を写真に撮りネットに投稿している事件である。
周りに注目されたいという動機で、虚構の世界と現実の世界とが一緒になった。大人からしたら幼い欲求だが、雇用する経営側からすると、売上減少や休業、揚げ句に閉店を余儀なくされると、「若気の至り」では済まされなく、「大きな経営リスク」である。
これまで私たちは働くにあたり、社内教育、OJTを通して労働規範・話し方・礼儀をは
じめとして企業倫理観をやさしく指導されてきた。
しかし、昨今の風潮は、働く人を単なる労働力・労働費用(コストセンター)としての視点に立っており、将来的に付加価値をもたらしてくれる人的資源(プロフィットセンター)としての視点は少ない。そのために求められるものはマニュアル通りに動くことであり、上記のやさしい指導は皆無と言える。
例えば、小売業ではサービス向上と人件費削減はトレードオフの関係と位置づけられ、企業間競争を勝ち残るために労務構成を正社員からアルバイト・パートに置き換えることが勧められてきた。
しかし、消費財業種や小売店において、顧客が最初に出会うのはアルバイト・パートが多い。そしてこのアルバイト・パートとの出会いを通して、顧客はその背後の企業の良否を判断することになる。いわば、出会いの適否の蓄積で、企業経営の盛衰が決まると言っても過言ではない。
社員への企業倫理観の培養活動はこれまでもなされているが、今回の騒動は、その指導範囲のアルバイト・パートへの拡充の必要性を啓示したものともいえる。
アルバイト・パートの雇用期間は短期でも、付加価値創造の源泉との長期的な人的資源の視点での指導・育成をすることが競争優位性の確保や大きなリスク対策になると考える。
経営の神様松下幸之助さんの次の言葉が心にしみる。「年若き社員に、得意先から『松下電器は何をつくるところか』と尋ねられたならば『松下電器は人をつくるところでございます。あわせて電気商品をつくっております』とこういうことを申せと言ったことがあります」(『理念経営のすすめ』 田舞徳太郎 致知出版より)

(平成25年9月12日 日刊工業新聞掲載)

ヒトを育てる コンサルの考え方 

後継者早期に「スイッチオン」/先人達の経験法則利用

矢島 英夫(東京支部)

1. 人は人材でなく人財である。人は磨けば珠となる。人の遺伝子の98%はオフである。
これをオンにするで、人は磨かれる。スイッチオンの考え方は、村上和雄氏の考え方である。人は、逆境のとき「底力」が外に一気噴出する。火事場の馬鹿力がそれである。
しかし、常時この力を出していると肉体は壊れる。そこで力をセーブする遺伝子はオフとなっている。98%のうち、30%をスイッチオンすれば人間は、力を発揮する。
2.共同生活をおくるアリ、ハチの世界。働いているのは全体の8割、2割は遊軍的立場で毎日を過す。8割が何らかの原因で生存できなくなると、今まで遊軍的立場にいた2割が働き始める。しかし、2割のうちでも働かないものがまた2割出る。2;8の法則は常に群全体の生存を考えて法則が成り立つ。翻(ひるがえ)って企業にもこの法則は成り立つ。直接生産する人は、8割で、2割が新しい事業展開を図る、これが新しい源泉となる。
3.人の力量は、通常は大差無い。遺伝子のオンかオフかの差である。オンを30%増すと能力が80%増加し20%の余裕ができる。20%の余裕で、明日につながる仕事ができる。法隆寺大工であった西岡常一氏が「木のいのち木のこころ」の中で、塔や堂の垂木は20%程無駄を後ろに残す。解体修理のとき腐った端の部分を切り取り引っ張り
出せば、1本丸ごと取り換えないで済む。千年持つように古(いにしえ)の大工は千年先のことを
考え、材木を財木にした。企業にもこの考え方は使える。人材を人財に変えるには、2:8の法則を熟知し、2割の人間にするには休眠遺伝子の30%をオンにすることである。
4.さらに、木に二つの命があると西岡氏は言う。檜の寿命は2500年位が限度である。
木の命の一つは樹齢、一つは木が財木として生きる耐用年数。昭和17年(1942)に法隆寺五重塔を解体修理したとき、塔の瓦を外して下の土を除くと、次第に屋根の反りが戻った、鉋(かんな)をかけると檜の香りがする、これが檜の命の長さです。立木で千年、
五重塔の垂木で活かされて1400年合計2400年の寿命です。この考えは、これから老舗企業になる企業にも使える考え方である。
先人達の経験法則を利用することにより、よりよい人間に経営者にもって行くことができる。スイッチオンされた、次の時代を背負う後継者を育てる。先輩経営者が後輩経営者となる人を早期にスイッチオンすることが事業承継に必要なことです。

(平成25年9月19日 日刊工業新聞掲載)

移転価格税制への認識と対応 その1

海外子会社への所得移転防ぐ/取引価格安ければ追徴課税

長谷川正博(東京支部

 企業活動の国際化に伴い、中堅・中小企業も海外に子会社を設置するケースが増えてきている。これにより企業は国内事業とは異なる様々なリスクに直面することになるが、移転価格税制等の税務リスクも海外展開を進める企業にとって無視できないものとなってきている。例えば、日本国内にある企進(日本法人)が、自社の商品を通常の取引価格(「独立企業間価格」という)より安い価格で海外の子会社等関連会社に輸出すれば、国内での所得が減る一方、商品を安く仕入れた関連会社は、所得を増やす事が出来る。これを、国内から海外への所得移転という。法人税率の高い国から低い国に所得移転すれば、企業グループ全体で納める税金を少なくできることとなる。
 このように、日本法人が海外子会社等関連企業との商品・サービスの取引価格を独立企業間価格より安くするなどして、企業収益が海外移転することを防ぐ制度がここにいう移転価格税制であり、日本では1986(昭和61)年に導入された。国税庁は独立企業間価格と異なる価格により当該日本法人の課税所得が減少している場合、その取引は独立企業間価格で行われたものとみなし課税所得の計算を行い追徴課税する。つまり、移転価格税制は、海外の関連企業との取引を通じた所得の海外流出の防止を目的としているものである。
 我が国の移転価格税制が適用される対象となるものは、日本法人が国外関連企業との間で行う商品・サービス等の販売・購入、役務の提供その他の取引であり、国外関連取引は、日本法人とその国外関連企業との間の取引をいうが、国外関連企業とは当該法人との間に次の関係にある外国法人を指す。
①親子関係等 : 二つの法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済み株式等の50%以上の株式または出資金額を直接又は間接に保有する場合、
②兄弟関係等 : 2つの法人が同一の者によってそれぞれの発行株式等の50%以上の株式または出資金額を直接又は間接に保有される場合、
③実質支配関係 : 役員の兼務、取引依存、資金借入等により、一方の法人が他方の法人の事業方針の全部または一部につき実質的に決定できる場合。
(平成25年9月26日 日刊工業新聞掲載)

移転価格税制への認識と対応 その2 

ロイヤリティーなども対象/事前確認制度利用を

長谷川正博(東京支部)

 前項において移転価格税制とは、日本法人が海外にある関連会社との取引において価格を意図的に操作し、納税額を減少させたとみられた場合、独立企業間の取引価格に基づいて行われたとして課税所得を再計算し、税額を調整することが出来る制度である旨説明したが、この独立企業間価格の判定基準には独立価格比準法、再販売価格基準法及び原価基準法等の方法があるが詳細は専門書を参照して頂きたい。
また、本制度の対象となる行為は、商品あるいは製品の仕切り価格を下げる「仕切り価格の操作」、適正な金利を下回る低利または無利息により貸付を関連会社に行う「低利・無利息貸し付け」(但し倒産防止など正当な理由がある場合は除く)、関連会社の増資直後、業績回復が見られない理由などにより同社の株式の評価減を行う行為等がある。
さらに、親会社と海外子会社間で移転価格の対象となるのは製品価格だけではなく、無形資産である技術指導料やロイヤリティーなども対象になる。ロイヤリティーを過剰に支払ったとして海外子会社が進出先国の税務当局により追徴課税されることもある。このように企業には海外の関連会社が現地側で課税された所得に、日本でも課税(移転価格課税)されたり、又はその逆のケースのように二重課税のリスクもあり、この様な事態を避けるため、二国間の税務当局が適正な取引価格と税額を調整する「相互協議」に基づく「事前確認制度(APA)」がある。
これは、企業が海外の関連会社と行う取引価格の算定方法等について、予め税務当局に確認してもらう制度である。但し、日本と租税条約を結んでいない国は対象外となるので注意を要する。移転価格税制はアジアでも導入が進み、各国の税務当局は税収確保のため、ある意味では国際的な税の分捕り合戦の様な体を成しており、海外進出企業には常に税務リスクもあることを前提に対応する必要がある。
移転価格課税のリスクを回避するためには、企業は海外の関連企業との取引条件や価格などが適正であることを文書化(日本では2010年の税制改正時明文化された)して立証できるように予め備えておきAPAを積極的に利用する事が必要である。
自社が契約している税理士など専門家に相談をしながら対応することもリスク低減のための大切なポイントとなる。

(平成25年10月10日 日刊工業新聞掲載) 

フロントローディングの再考―㊤

3Dプリンター活用/スピードアップR&Dの命題

渡辺智宏(南関東支部)

最近、さまざまなメディアで3Dプリンターなど次世代のデジタル技術を活用したモノづくりが特集されているのをよく見かけるようになった。3Dプリンターは3DCADで描いた図面をもとに、立体模型を作り出す造形装置である。
私が初めて3Dプリンターを見たのは、今から約10年前のことである。主に通信やハイテク、各種輸送機器など、組立系製造業と呼ばれる企業のR&D(研究開発)部門の業務改革に携わることが多い私は、ためしに購入してみたという、ある顧客先の電機メーカーで拝見した。それは、樹脂を粉上にして吹きつけて重ねていきながら立体物を作り上げるという仕組みだった。
当時は数千万円したと聞いていたが、最近は、機能や性能によって幅があるものの、大幅に価格が下がってきたようだ。機能が充実して、さらに価格が下がってくると、3Dプリンター活用の幅は広がる。最近注目されているような個人によるモノづくりの実現だけでなく、メーカーのR&D部門で繰り返し行われている試作などにも大きなメリットが生まれるようになる。
従来は時間とコストをかけて試作を行っていた。ところが、3Dプリンターで試作することによって、それらを大幅に削減することが可能になる。3Dプリンターはまだ発展途上であり、今後解決していくべき課題も多いが、QCD(品質・コスト・納期)をレベルアップさせるための革新技術としても今後の活用が期待される。
このように、ものづくりを支援する技術が発展していく中、開発業務の進め方も進化させていく必要がある。製品ライフサイクルがものすごいスピードで短期化しており、開発期間短縮は最重要課題の1つとなっている。モノづくりを支援する技術やツールを最大限に活用した開発のやり方に変革し、スピードアップしていくことがR&D部門の命題であるといえる。
本連載では今回例を挙げた3Dプリンターなど、モノづくりを支援する技術・ツールの発展により変革されるべき開発の進め方に着目し、20年以上前から現在にいたるまで、開発業務プロセスの目指す姿の代表格とされている「フロントローディング」について再考してみたいと思う。
(平成25年10月17日 日刊工業新聞掲載)

フロントローディングの再考―㊥

早い段階で問題や課題抽出・対策/段取り八分徹底

渡辺智宏(南関東支部)

前回は、モノづくりを支援する技術・ツール発展の一例として、3Dプリンターを取り上げた。今回はこれらを活用しながらのフロントローディングについて考えていきたい。
フロントローディングは、開発の初期段階からプロジェクト関係者を巻き込んで、早い段階で問題や課題を抽出・対策する(前工程に工数をかける)ことで、後工程で発生する問題を最小化し、手戻りを削減する(後工程の工数を削減する)という考え方である。技術者のほか、調達、製造、品質保証、販売など各担当者が企画や構想段階から参画し、それぞれの知見で意見を出し、対策案を検討、実施していく。フロントローディングを進めることで、工数だけでなく不要な試作の削減による開発コスト削減や、事前の製造性(製造のしやすさ)考慮による製造コストの削減、より魅力ある商品検討なども可能だ。
フロントローディングは、いわば段取り八分を徹底するという考え方で、QCDのレベルアップに効果的だ。何もかも全ての業務をフロントローディングすればよいというわけではない。モノづくりの支援技術やツールが進んだ現代において、業務によってはフロントローディングが逆に効率を悪くするケースも出てきている。例えば、3Dプリンターを使って早く安く試作でき、試作して問題を発見した方が手間(工数)がかからないのであれば、試作前に工数をかけて問題を事前に発見するフロントローディングは逆に非効率だ。
ソフトウエア開発でも同じようなケースがある。巨大な流用母体が存在するソフトウエアに機能を新たに追加する際、構想設計段階で悩んでいるよりも、とりあえずコーディングして動かしてみた方が、全体の構造や機能追加による影響範囲のイメージがつかめ、障害を早く発見でき、品質が早く高まるのであれば、フロントローディングよりスパイラルアップで開発を進めた方が効率的だ。
それでは、効率的なフロントローディングを行うためには何を心がければよいのだろうか。次回はこの点について考えていきたい。

(平成25年10月24日・日刊工業新聞掲載)

フロントローディングの再考―㊦

開発のQCD定量分析が王道/工数・コストを最少に

渡辺智宏(南関東支部)

前回は、杓子定規で全ての業務をフロントローディングすべきではないことを述べた。今回は、フロントローディングすべき業務の見極めについて考えていきたい。
フロントローディングの主な目的は、開発で発生する工数、各種費用の最小化で、それを踏まえてフロントローディングすべき業務を考える必要がある。逆に工数や費用が上がる業務ではそれを行うべきではない。これを判断する上で、開発プロジェクト全体を俯瞰し、各業務で発生している工数、コストを過去のプロジェクトから振り返り、定量的に把握することが重要だ。その中で工数やコストの増加部分に着目し、原因を分析し今後フロントローディングすべき業務を明確化する。
ソフト開発部門と議論すると、フロントローディングはソフト開発に合わないと言われることが多い。これは全ての業務をフロントローディングで考えようとする典型だ。設計段階ではコーディングをベースにスパイラルで完成度を高め、試験段階では膨大な試験項目を実施するので、予め実験計画法などで組み合わせパターンの最適化を計画した上で効率的に実施するといったように、状況に応じて最適な方法を選択すればよい。
開発全体でのフロントローディングが効果的なタイミングは、複数の担当者が役割分担して業務を開始する手前だ。組立系製造業ではエレキ、メカ、ソフトなど各技術単位で役割分担して開発を進めることが一般的だが、この分業前のシステム設計のタイミングで想定されるリスクや問題を議論し、対策案を関係者で事前協議しておくことが大きな手戻り防止につながる。特に開発全体の方針や各担当の役割など、曖昧性が高い内容をフロントローディングで決めておくことが重要だ。
デジタル技術の発展に伴い、最適なフロントローディングのやり方も変わってくる。最適を考える上では適化を考える上では、現状の開発のQCDを定量的に分析するという昔からの改善の王道がやはり重要だ。漠やはり重要だ。漠然としたフロントローディング信仰や偏見に陥らず、工数やコストなど事実を定量化し、事実を定量化し、それらを最小化することを念頭に置いた上で、フロントローディングすべき業務を検討しべき業務を検討していく必要がある。

(平成25年11月7日 日刊工業新聞掲載)

来て下さってありがとう(シニア創業者のおもてなし)

店内に「ほっこり」空間/琴線に触れる人と人との関係

河上 晃(近畿支部)

「はじまりの奈良、めぐる感動」(平城遷都1300年祭の合い言葉)の奈良で新しい店が評
判である。元幼稚園教諭の女性が定年退職を期に創業された、奈良市内中心部からすぐ近くの町に所在するH(店名)さんである。
定年退職後に何かをやってみたいという人は多い。長い間働いてきたが、定年退職という節目に過去の自分を振り返り「自分とは何か、本当にやりたかったことは何か、自分という存在は認められているのか・・・」などに青春の血が騒ぎ葛藤する。
何よりもシニア世代には時間、経験、人脈、体力、(幾ばくかの)お金がある。例えば、時間は平均寿命が男性約79歳、女性約86歳とこれからの自己実現に十分な時間がある。
定年後も働きたいという希望が約80%の定年対象者にあり、創業を考えている人も多い。
しかし、創業の実現にはハードルもあり、さらには創業後の赤字企業が他の世代の創業者に比べて多いという厳しい現実もある。(出典元 中小企業白書、日本政策金融公庫レポート)
若年創業者は「若さ」を武器に事業の拡大を望むが、長い社会経験を持つシニア創業者には身の丈以上の成功よりも「自分のやりたいことを追求しながら安定した収入を得る」ことを描く人が多い。 
Hさんは奈良県が主催している「魅力あるお店づくりセミナー」にて約半年間にわたり
毎月の勉強会やmahoroba純情商店団 (模擬店舗)への参加を経て創業された。
Hさんに入店すると佐保川の土手の緑で目を慰められ、高い天井の空間とのひとときの
コミュニケーションに浸るような非日常的なほっこりする雰囲気の店内は、私たちだけの
場所・ひとときを分かち合う店内(落ち着いて会話できる)になる。
健康を考えた美味しいランチはリーズナブルな価格ながら、手間をかけ下味を生かした
うす味で品数満点、落ち着いた器と相まって来店客の心を射止めている。品の良い女性が親しい友人と楽しげに食事しながら、嬉々としてお茶碗をもっておかわりに行くなど「ほっこりスペース」そのものである。
お店で切り盛りするオーナーの「来て下さってありがとう」の言葉は、昨今のテクニカル面に注力して数字で判断しがちな店舗運営とは違う、琴線に触れる人と人との関係を表している。たとえ厳しい経済環境下でも、人と人との関係の先に「つつましくも日々新たな明日」があると考える。

(平成25年11月14日 日刊工業新聞掲載)

カネを考える 良いおカネの使い方でデフレ脱却  

利益の一部社会に還元/ヒトとモノの間取り持つ潤滑油

矢島 英夫(東京支部)

1.カネは、別名キンともいう。金属のキン(金)は一番価値があって昔々は、モノを買うのに金貨が通用し、我国でも江戸時代においては大判等に金が使用されていた。昔から一番金に価値があった。金という漢字は、いい響きであるがおカネとなると良くも悪くもなる。自然現象では、水は高い処から低い処に流れるがおカネは、下から上に流れる。金は、カネとキンの2つの名称があり、キンは、現実に存在し、流通しているカネの担保をしている。また、おカネには二つの大きな機能があります。
2.第1は市場における交換の媒体としての役割。市場におけるモノの交換機能です。
第2は価値の保存機能で貯蓄。おカネの本来の機能は第1の機能、つまり市場におけるモノの交換の媒体としての役割。現代の市場では物々交換という仕組みが失われ、市場におけるモノの交換は必ずおカネが媒介します。
交換の媒体としてのおカネが不足すると、すぐにモノ(商品やサービス)の交換機能が失われ、片方でモノが余ってしまう一方で、モノが人々に行き渡らず不足するという事態が同時に発生。つまり、「モノ余りとモノ不足が同時に起こり」ます。これがデフレ状態です。一方で第2の機能である貯蓄は異常なまでに膨らみます。そして今も第1の機能は減り続け、第2の機能だけが膨張を続け、第1の機能をどんどん圧迫する。おカネを貯め込んでも人は豊かになれない。
おカネをひたすら増やし、貯め込むという第2の機能を抑制し、おカネを回し、モノの生産と交換を活発化するという第1の機能を回復することこそ大切。おカネは、通貨として価値を有し得難いものである。
3.カネとおカネとは同じようなものであるが全く性格を異にする。身体でいう所の二の腕と二の足のごとく二の腕は、腕の一部位であり二の足は躊躇するさまを示す。このおカネをコントロールするのは、使われ方でなく使い方に意味をもつようになる。よく仕事でも後に利益が付いてくるような考えだと良いがおカネに執着するあまり追求しすぎるお金は付いてこないと結果となる。かのドラッカーがいっている社会の中に会社が存在しその中に生かされ会社は存在する。そのために利益の一部を社会奉仕に使う。
すなわち社会に還元するという考え方である。おカネはヒトによって使用され、モノの売買におカネが介在して、ヒトとモノの間を取り持つ潤滑油として働いている。良いおカネの使い方で、本来の機能を発揮させることが大切であると考える。
(平成25年11月21日 日刊工業新聞掲載)

業績低迷脱却の品質活動  

強み・弱み「自社関係図」作成/会社で活動項目策定

金子昌夫(千葉支部)

円安下で業績が回復した工場がある。一方で、設備投入や生産方式の変更をしたにもかかわらず業績が横ばいの工場、取引先の販売不振による受注量減少やコストダウン要求から業績が低迷する工場もある。経営資源を有効活用して、他社との差別化や価格競争力から顧客に製品を提供しても、業績が良くならないことがある。
顧客は製品の機能的な品質にとどまらず、利便性や感性的な品質から評価をする。
このため、製造側からの品質と顧客から考える品質とは一致せず、また、社会や環境変化に応じても変わってくる。
工場では「顧客価値を高める品質活動」が重要になる。顧客価値を高めるには、自社固有の強みを組織能力に直結し、顧客が満足する価値を提供する仕組み、メカニズムを構築することが必要である。
品質活動は、自社の現状と今後の方向性から組織能力を強化し、効果的な仕組みをつくり、実践する活動である。活動を進めるには、外部・内部の組織能力、顧客との関係を可視化するために、「自社関係図」を作成する。自社の強み、弱み、特徴から独自の組織能力を明らかにし、次に、競合先との優劣、既存の顧客、提供している製品・サービス、自社と顧客先との関係から顧客先の購買を決定する要因と決定者を特定し、提供している顧客価値を明確する。
また、協力会社、外注先と自社との間で、自社の能力発揮のためにはどのよう外部能力が必要なのかを明確し、「自社関係図」に組織能力、顧客価値、外部能力を体系的に表す。
この関係図から、①どのような顧客に価値を提供するのか②顧客価値を創造するのか③活かす能力と不要な能力は何か④どの組織能力を強化するのか⑤環境変化を予測し、新たな顧客価値に必要な組織能力は何か―などを確認し、どのように顧客価値を高めて、深耕拡大、新規開拓を進めるのか、そのために外部能力を含めた自社に必須の組織能力を想定し、業績向上への道筋を立てる。
業績向上を掲げた経営目標の達成に向けて、経営トップが積極的に関与し、組織能力の創造と維持・向上を図る活動項目を全社部門で策定する。活動項目ごとの活動を各部門が期限までに必ず実施し、検証、見直しを推進することで、業績低迷からの脱却ができる。
(平成25年11月28日 日刊工業新聞掲載)

職位と偉さと役割の区分 

組織に人をつける/職位はマネジメント単位と一致

福島光伸(埼玉支部)

多くの企業では職位を役割ではなく、偉さを表すものとして使っています。そこに組織内におけるマネジメント展開の大きな問題点が発生します。
「長く勤めてくれたからそろそろ課長に」とか、「Aさんが部長ならBさんは次長に」とかいうように職位を偉さの序列、あるいは褒賞としてのアイテムとしているのです。
本来部長は部の長であり、課長は課の長であるはずです。部を持たない部長、課を持たない課長などは存在すること自体がおかしく、そのような状況が組織内マネジメントを混乱させるのです。 部長と職位が付いているあの人からの指示は無視できないというのはおかしい考えではないでしょう。しかし、自分が所属している部の部長ではなく、ただ単に○○部長からの指示ということであった場合それが組織的にみてどのような意味を持つのか。自分の所属している部長の意見と異なっていた場合、どちらを聞くべきなのかマネジメント視点から見た場合混乱を生じてきます。
「職位はマネジメント単位と一致させる」それが組織内マネジメントを混乱させない条件です。
「部長」とは、部をマネジメントする人であり、管轄する部単位の役割をはたして高度な成果を上げる人のことです。 例えば、部が三つしかない会社で部長相当のマネジメント力(偉さではありません)を持つ人がいた場合、人に組織をつけるのではなく、組織に人をつけるべきです。
前者の考えでは「部はないが部長にしておこう」あるいは「部長だけの部を作っておこう」ということでしょうが、ポジションがなく部長が必要ないなら、あえて部長は作らずその(仮にA氏)は課のマネジメントとしては部長の能力があるわけですから「課長」に位置づけます。
なんらかの理由で能力のあるA氏に課長職でさえ職位を与える余地がないという場合は、部長相当の社内資格等級に位置づけ、ほぼ同じ給与とします。他の部長とA氏の異なりは、職位手当がつくかつかないかになりますし、もし会社の都合で他の部長が部長職から外れた場合は部長手当のみなくなります。
職位手当はあくまでもその役割に支払われている「手当」だからです。このように考えて職位制度は設計すべきです
(平成25年12月5日 日刊工業新聞掲載)

人間中心イノベーション

「世のため人のため」人間力磨け/凛とした規範も必要

河上 晃(近畿支部)

2013年10月に東京都内で女子高生殺人という凄惨な事件が発生した。
コンサルタントとして被害者のご冥福を祈りながら、事件と経営について考えた。 犯行の動機は、交際相手より「別れ話」を持ち出され、「復縁を迫った」が果たせず、殺人に及んだということである。「別れ話」や「復縁」という言葉は大人の愛憎の世界と考えられるが、現在では高校生はおろか中学生の会話にも出てくる。
掘り下げると、社会規範の境界が曖昧になっているといえる。 従来マーケティングでは新規需要先として若者に焦点を当てたものや新需要開拓先として、例えば、従前は男性大人用として受け入れられていたものを女性や若者(子供)へと広げていった。 そのせいか電車の中で高校生の「焼き鳥は皮、ハツ、肝、白子がうまい店に行こう」などの会話が耳に入る。
思春期頃に抱いた大人の世界を垣間見る興味と挑戦を、若者を庇護したかのように大人から提供している。 経営の視点では、グローバル競争の中で日本企業の苦境が話題になる。
大きな要因として、「革新的な商品開発力が弱い」と指摘されている。戦後の成長期は「キャッチアップモデル」で成功したものの、バブル経済崩壊後の苦境からはいまだに脱し切れず、バブル後の20年間に世界の国内総生産(GDP)は約2倍に拡大したが、日本のGDPは停滞したままだ。
技術や品質は世界水準でも新興国の普及品や欧州のブランド力に押され、日本独自の高 付加価値化や差別化ができずに低迷している。
アンゾフの多角化戦略には商品・市場共に新分野への挑戦が提示されている。換言すれ ば自社の能力プロフィールの境界から未踏の世界へ踏み出し、自社の現有能力のシナジー 効果を上げることが求められる。
市場に潜在する想いを感知して翻訳した商品を創出するプロセスへの人間中心イノベーションが期待され、それには深い教養とビジネスセンス、志を備えた人間力が求められる。
青白い論理になるが「世のため人のため」に企業は存在する。社会の共通善の実現には人が感性で直感した信念(志)をプロセスへと展開する人間力が必須になる。欧州のビジネスマンはシェイクスピアを修得して一人前というが、現在の日本のビジネスマンにも「郷土史」や、「古典」、「日本文学」に親しみ、アイデンティティを矜持する凛とした規範が必要かと考え、提言する。 (平成25年12月12日 日刊工業新聞掲載)

地域社会をみんなでケア(お互いさまに支えあい)

高齢化時代の「生活づくり」/「三方よし」で解決を

河上 晃(近畿支部)

社会保障や年金に比べると目立たないものの、生活の基盤というべき買い物事情が逼迫
している。(先進的な活動をしている地域も存在している)
わが国は、世界でも有数の富裕国に なったはずだが、満足な買い物もできずに苦悩している人たちがいることに目を向けるべきである。 高度成長期以降に造成されたニュータウンでは高齢化が進んでいる。(全国で65歳以上 の高齢者のみ世帯数1120万世帯『2010年国勢調査』、13年には全人口で高齢化率25% の予想『2012年高齢社会白書』) この間、大型ショッピングモールやスーパーは増加しているが、小売商店の店舗数は想像を絶するほどに減少している。
特に生活に密着した飲食料品小売店は1982年を100として09年には実に50%強の存在になっている。
高齢者は3K(健康、経済、孤独)のどれかを欠いていることが多い。また買い物が負担に なり、健康の基になる食事もあり合わせでしのいでいる人たちもいる。 一般に人が抵抗なく歩ける距離は約400メートル程度といわれるが、買い物をしたくても徒歩で行けるところに商店がない現実がある。また公共交通機関での買い物には乗り場 が遠いとか、体力的な不安や利用料金の心配もある。 移動販売や配達サービス、買い物代行などもあるが高齢者の利用しがたい想いにも寄り添う必要がある。 食品の購入に現物を見て買いたいという意識も強い。
自分で見て・考え購入すること で買い物にもはりあいがでる。買い物は生活必需品を揃えると共に、生き生き生活する生 活機能を維持する効果もある。 これまで小売商店はお客さまを店舗に誘引し、いかに買っていただくかに注力してきた。
高齢者の買い物は特別な場合を除くと購入店・品目・量の概略は予想できる販売条件だ が、上記のように販売する側と高齢者との間にミスマッチが生じている。
解決には、三方よしでパラダイムシフトした地域での支えあいが必要と考える。行政は社会福祉の一つとして高齢者に生活必需品購入の場を提案すべきであり、商業者は買い物での出会いを通して地域社会を維持し、若年者もコミュニティの一員として参加を求められ、私たち経営士も地域住民、商業者、行政と協働して地域社会のケアの推進が必要である。
わが国の強みである「モノづくりのしくみ」を、地域ニーズに対応した「生活づくりのしくみ」へ昇華させる地域社会ケアの活動が求められていると考える。 (平成25年12月19日 日刊工業新聞掲載)

グラデーション化で障がい者雇用は変わる

自社に新しい色を織り交ぜ/個人の強み引き出す

佐藤 仙務(中部支部)

近年、障がい者の雇用に積極的に取り組む企業が増えている。厚生労働省の調査でも障がい者の雇用率は年々上昇していて、平成25年(2013年)の調査では、1.76%と過去最高水準に達した。
筆者も身体に重度の障がいがあり、自分の身体で自由なところは両手親指を1センチメートル動かせることと、そして、会話をすることのみである。つまり、生まれつき全介助の寝たきり生活を送っている重度障がい者だ。しかし、筆者は最年少で経営士となり、そしてたった今、こうして読者の皆様へ問いかけをさせていただいている。
その理由は何故か。それは筆者が経営士とは別に起業家としての一面を持っているからだ。当時、19歳の筆者は同じ障がいを患っている同志とともに、ウェブ製作会社を起業したことが大きく起因している。
そこで今回、筆者がこの場で提言させていただきたいのが「若き起業家の夢」でも「重度障がい者としての闘病話」でもなく、今の時代であれば寝たきり生活を送っているような筆者でも起業ができるという点である。その背景には急速に進歩するIT環境の恩恵もあるが、何より、障がい者に対する“社会の変革”というのも少なからず影響しているだろう。
その一例として、ユニクロがある。障がい者雇用を社会への還元という捉え方だけでなく、障がいのある人と一緒に働くことで、実は企業側にとっても非常に得られるものがあったという。ただ、これは大企業のケースであって、一般的な中小零細企業にとっての障がい者雇用というのはまだまだ対応力がない。
では、これからの障がい者雇用に対して中小零細企業はどうあるべきかを考えてみたいと思う。ちなみに、筆者が導き出した答えは「企業のグラデーション化」である。グラデーションとは、物事の段階的、時間的における変化の総称のことで、一般的にデザイン分野で広く使われる用語だ。
つまり、雇用の問題の目指す先とはグラデーションのように白か黒かではなく、企業側が個人に合わせた環境を提供し、その人だけの色を見つけ出すことが今後求められてくる。
彼らのいい面に目を向け、それを強みとして引き出すことができれば、事業の生産性や継続性の向上に大きくつながるはずだ。 (平成26年1月16日 日刊工業新聞掲載)

情報を経営に活かし儲けにつなげる

「ナレッジ・マネジメント」/組織全体で共有・活用  

矢島 英夫(東京支部)

企業経営にとって役立つ様々な要素・能力のことを「経営資源」という。これには、ヒト・モノ・カネの次に第4の経営資源の情報がある。
1995年のウィンドウズ95の出現から始まるIT(インフォメーション・テクノロジー)の発展は目覚ましい。 日本においては、官から民への郵政改革によって、情報とりわけ通信関連の発展は目覚ましい。今や、情報なくして、生きていけない世の中になった。大量の情報量の処理は、一方向から双方向の時代になった、テレビ通信においても、アナログより情報の量が圧倒的に多く送れるデジタルに切り替わり、電話においてもデジタル信号を使う光通信に切り替わった。
一つの政策の変更によって劇的に代わったのである。情報でのインターネットの発達は、軍用が民間に解放されたことによる賜物である。
さて、情報をいかに利用するか。良い情報、悪い情報の峻別を如何にして行うかが問題である。100%良い、100%悪い情報というものは、無い。 情報の活かし方としては、ヒトがデータに意味付けし、解釈を施して初めて生の「データ」が「情報」へと変化する。例えば、表計算ソフトを使うと数値が出力される。その状態では,単なる「データ」である。「このデータは,この観点からみると、今後の販売促進に役立つはずだ」といった解釈を付けることにより,生のデータが情報へと変化する。
「情報」が更に変貌すると第5の経営資源の「知識」(ナレッジ)となる。知識は更に「ナレッジ・マネジメント」となる。ナレッジ・マネジメントとは、情報技術の発展によって、個人の持つ知識を組織全体で共有し、有効に活用することで業績を上げようという経営手法である。
この場合の知識とは、経験や仕事のノウハウと幅広いものを指し、近年、経営資源に新技術(ナノテク、バイオ技術)などや企業文化・風土なども含めている。 常に情報が中心に動く時代において、経営者にとって情報は、唯一の判断材料と業務の改善点を指摘してくれる点で得難い。
情報を最大限に活かせば企業の儲けは大きく影響を受ける。時代の流れに見放されないためにも、情報を先取りしていくことは企業経営には、重要です。 (平成26年1月23日 日刊工業新聞掲載

中堅・中小企業の外国人留学生の採用とその活用 ㊤ 

優秀な人材確保職場に活力/マイナス面克服カギ

長谷川正博(東京支部)

日本社会の少子高齢化・人口減少などにより国内市場は縮小を余儀なくされており、成長の機会は海外市場に求めるしかなくなってきた。 これに加え、環太平洋連携協定(TPP)、東アジア地域包括的連携協定(RCEP)への加盟による国際的競争が更に激しくなることも考えられ、中堅・中小企業(以下「中小企業」という)の、自社の生き残りをかけたアジア新興国等への海外進出(輸出および企業進出)に拍車がかかっている。
帝国デ-タバンクの調査によると、日本企業の海外進出のきっかけの上位5要因は、①国内市場の縮小、②新たな事業展開、③取引先の海外進出、④労働力の確保・利用、⑤ボリューム・ゾーンなどの市場・販路開拓が上位を占めた。
このような環境下にあって、中小企業の喫緊の課題の一つとしては、海外の企業に伍して競争出来る実力を備えた人材(グローバル人材)の確保・育成である。自社の競争力の維持・強化には、優れた自社製品・サービスの提供とともに、国籍を問わず優秀な人材を確保し、活用することが重要となっている。
一方、2013年12月20日で、年間の訪日外国人数が1,000万人になったと報道されたが、外国人の国内での消費拡大(外国人パワー)にも期待がかけられており、この面からも「企業の国際化」が求められていると言えよう。 このようにこれからの中小企業は内需型企業といえども国際化・グローバル化への脱皮が必須である。このような企業の期待を担うべき人材として、国際感覚を持ち語学に堪能な日本人とともに、外国人留学生の採用・活用を積極的に行っていくことが、これからの国際化路線をとる企業にとって必要な要件となろう。
10年6月6日付日本経済新聞で報告された「外国人のいることのプラス面は?」(二つまで選択)の上位5項目は、①アイデアが生まれやすいなど職場の活力が増す②職場に変化が生まれる③日本人が分からない業務上の課題が分かる④外国語を習得しやすくなる⑤海外関連事業を手掛けやすいなど職場の活力が増したり、切磋琢磨により、自分も磨かれる等の積極的評価が聞かれた。
反面、以心伝心が難しい、自分の影が薄くなる、彼らの日本語力の問題などのマイナス面もあった。これらのマイナス面を克服していくことにより国際化の達成に通じるのではないだろうか。(3回連載) (平成26年1月30日 日刊工業新聞掲載)

 中堅・中小企業の外国人留学生の採用とその活用 ㊥ 

 業務・期待する役割明確に説明/人生計画も確認を

長谷川正博(東京支部)

外国人留学生を採用する企業側のニーズとしては、海外現法とのブリッジとなる人材、将来の海外展開に備え現地幹部候補となる人材、アジア圏への販路開拓・拡大のため海外営業が出来る人材、国籍を問わず優秀な人材、社内のグローバル化・ダイ―バーシティー化のため多様な人材を求めるなどである。
既に海外に現法を持っていたり、将来設立する計画のある企業は、現地側のマネージャークラスとしての活躍を期待したり、日本本社と海外とをつなぐブリッジとしての活躍を求めたり、自社内の国際化、所謂「内なる国際化」を実現し今後の流れに対応できるよう社員の多様化を図りたい、等の期待がみてとれる。
ある外国人留学生専門の就職斡旋企業の事例では、紹介した中国人留学生を海外営業職として採用した企業が、数年で中国・台湾の取引先での自社製品のシェアが大幅に伸び業績拡大に役立ったケースや、技術開発力で優位に立つため、国籍を問わず優秀な理工系人材を採用し業績を上げている企業もあるという。
一方、日本で就職を希望する外国人留学生の中には、「希望する仕事があれば企業規模や場所にこだわらない」「早い段階から責任を負い、さまざまな仕事を通じて経験を積みたい」など、中小企業の業務環境に向いた職業観や志望動機を持つ留学生も多い。 中小企業は、このようなニーズも踏まえ、大手企業とは異なる中小企業での働き方や、自社で働く魅力を具体的にPRすることで、自社にあった価値観を持つ留学生を採用することが可能である。
そのためには、留学生に対し、業務や期待する役割を明確に説明することが重要となる。 状況に応じて、語学力を活用し、外国人としての価値を理解し、社内で「オンリーワン」を感じられる仕事を柔軟に割り当てる工夫も必要であろう。
また、外国人留学生の採用を考えている中小企業で、一つ留意しなければならないことは、ほとんどの留学生は就職後一定の期間(最低4~5年間)は日本で仕事を続けることを希望しており、採用後短期間で母国や海外に出ていくことには抵抗感があるということだ。
採用後にすぐ海外に派遣したいと考えている企業側の思惑と、この面で、ミスマッチが起きているケースもある事を見聞するが、彼らの人生計画等も良く確認し、それに沿った対応を採るべきであろう。 (平成26年2月13日 日刊工業新聞掲載)

中堅・中小企業の外国人留学生の採用とその活用 ㊦ 

日本人従業員と差別しない/労働関係法規の習熟を

長谷川正博(東京支部)

企業側として、外国人を雇用するために留意しておかねばならない点は、①何の目的で雇用し、どのような業務を担当させるのかを明確にしておくこと②日本で就職する外国人は日本の雇用慣行やその企業風土に従わねばならないが、企業側も彼らの持っている特性や文化の違いを十分理解し対処すること③担当業務を詳細に、明確に定めることや、業務指示も明確に出すことを心掛けること④社内の評価システムをよく説明し理解させることである。
また、外国人の採用にあたっては、外国人であっても日本国内で就労する場合には、日本人と同様、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害保険法などが適用される事も忘れてはならない。
いわゆる日本人との差別はしてはならないということだ。
外国人の就労に関しては、日本に生活基盤を有していないことや日本の労働慣行に習熟していないことなどからさまざまな問題が起こりがちである。 それらを回避するためにも、「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」(厚生労働省)を守り、彼らに日本の労働関係法規を理解させたり、自社の企業文化の習熟など企業側の努力も必要である。
他面、自社の国際化を図るために、外国人留学生を採用したいとの希望を持ってはいるものの、企業知名度の不足、情報発信力不足などの制約のために留学生とのマッチングが出来ないという中小企業も多いという実態もある。外国人留学生の求人活動としては、ハローワークへの登録、大学の就職課(キャリアセンター)への照会などあるが、自社が望む人材を効率よく見い出すためには、コストはかかるが、人材紹介企業、それも外国人留学生に特化した企業に依頼することが効果的である。
筆者が所属する日本経営士会は中小企業の経営活性化に力を入れている。この一環として、国際化の一助となり企業と留学生のマッチングに少しでも役に立ちたいとの思いから、2013年5月に外国人留学生専門の就職斡旋企業(東京都小平市)と業務協定を結んだ。東京を中心とした関東圏の中小企業を対象にこの種の支援も行っており、また、外国人の活用に関するエッセンスをまとめたパンフ的なものも作成しているので、関心のある企業の方は下記に問い合せ頂きたい。
外国人留学生を採用し彼らを効果的に活用することを通じて、自社の国際化達成に結び付けて頂きたいと念願している。 (平成26年2月20日 日刊工業新聞掲載)

味一筋の焼きもち店(新しい成長モデルへの一考)

根気強く地域で味追求/時代に流されず事業深堀り

  河上 晃(近畿支部)

吉野の深山を起源として古くから歴史を育み、地域に恵みをもたらしてきた奈良県吉野川沿い に、毎日の商いを午前中に終わる焼き餅店(K店)がある。古街道沿いで約140年前から旅人への 焼き餅の販売で知られ、江戸・明治・大正・昭和・平成の時代の変遷と嗜好の変化にさらされながら も一心に商いを続けてきたお店である。
K店で一つひとつ丁寧に作られる焼き餅は、「ほおばると頃合いの良い餡の甘さと、噛みごたえ のある周囲の餅(固くはなく粘り強い餠本来の味)との相性もぴったり、さらに鉄板で焼かれた焦げ 目との色合いが美味しさを倍増させる」、春はよもぎ・初夏から秋はみたらしと旬(季節)の味も楽しめ る。
手作りの少量生産で賞味期限は当日中など品質重視、単品主義の強みを活かした販売をされ ている。 大量生産や大量消費がもてはやされた時代にも、規模の拡大ではなく根気強く地域で味を追求 しつづけた経営も注目に値する。
グローバル化のもとに、海外市場(新興国)への進出が集中豪雨的な潮流になっている。過去の成功体験での進出だけでなく、新興国のCSV(共通価値の創造)の要請にも応えることも求められている。 私たちは、昭和の高度成長期から平成になっても、「より早く、よりたくさん・・など」前進と拡大を 第一と考え、人より早く前に出るとか、階段を上がるためのビジネス技術を磨いてきた。 しかし、ビジネスはアクセルを踏むと同様に、ブレーキをかける、立ち止まる、考える(検証する)ことも重要で、個々のステージごとに使い分けるビジネスのハンドリング技術が現在では求められている。
わが国では、高齢化のスピードとともに、ボリューム(高齢者数の多さ))も問題になる。2025年の 高齢者人口は約3,500万人(10年国勢調査より)と予測されるなど、人類の未踏ゾーンへ進んで いくことになる。
その中で住みやすい活力ある社会を維持するには、これまでの通念を打破しながら、高齢者予 備軍の技術や経験を尊重して、社会へ還元する仕組みづくりや、地域資源を活用した事業の深掘りが必要である。
そうして個を尊重した新しいコミュニティの創造と、地域活力の創造とを両立させた新しい成長モ デルの創出が世界に先駆けて求められている。時代に流されずに一心に事業を深掘りしてきた小 さな生業店の歴史は、日本の課題解決の一考になるのではないかと考え、提言する。 (平成26年2月27日 日刊工業新聞掲載)

新聞を読む効用(新入・若手社員への薦め)

深い考察・知見習得/コンセプチュアルスキルを高める

   河上 晃(近畿支部)

新聞を読む人が急速に減少している。例えば、新聞発行部数は、2000年の5,370万部から12 年では4,778万部へ、「新聞を読む」時間も、20代では05年からの5年間で一日当たりの接触 平均時間は「5・44分」から「1・44分」へと減少している。(平成23年版 情報通信白書)。
私たちを振り返ると、テレビ、雑誌からの情報収集や周りからの教えも勿論ながら、新聞を読んで一般常識を身に付けたり、社会の動きを意識していた面も大きかった。 現在では、ネットで最新のニュースやその関連情報も直ぐに検索でき、雑誌類も細かいノウハウ ものがあり、スキルを身につけるには便利な環境にある。しかし、ノウハウものだけでは、自分自身 の深い考察や知見の修得は難しい。
新聞は情報の山と言える。国内外の政治・経済の動きから一般読者の意見まで、朝刊には約18 万字(新書の一冊以上)の情報があり、さらに見出しや記事のレイアウトは読み始める基準にもなる。 新聞をしっかり読み、その後にテレビやラジオの解説で考えを深め、さらには足りないところをネットで検索して補えば深い考察や知見の修得に最適である。
新入・若手社員が社会人として経験を重ね、上位の仕事へと進む上で重要な能力の一つにコンセプチュアルスキル(概念化能力)があげられる。
「知識や情報などを体系的に組み合わせ、複雑な事象をまとめることにより、ものごとの大枠を理解する能力」といわれ、平たく言えば「要約して伝える、できごとの背景を掴む、可視化されないことを想像する能力」といえる。
このコンセプチュアルスキルを高めるための経験は若いうちの仕事に多くある。
例えば、仕事に 優先順位をつける、不在者への電話の適切な対応や、コピーした資料を見やすいように整える・・ ・・など、これまで心遣い、気働きといわれたことを、相手軸に立ち、職場の方向性を読んで意識し て行うことができれば、コンセプチュアルスキルの向上につながる。
スキル向上への一歩は自ら幅広く情報を集める、整理する、深堀することであり、新聞を読むことはそのための大きな要素といえる。
もうすぐ入社式の時期になるが、新入社員にかぎらず若手社員に対して、先輩社員や企業の職制は深い考察や知見の修得のために、新聞の購読を勧めるべきと提言する。 (平成26年3月6日 日刊工業新聞掲載)

企業と寿命

長寿のコツは“適温適圧”/リアルタイムを生きる

   矢島 英夫(東京支部)

衣食住の住の建物、ヒトモノカネの人、大中小の企業にも寿命がある。建物、人、企業の一代の寿命は、長くて30-35年である。建物は、鉄筋コンクリート造、戸建であっても寿命は、35年くらいで建替が行なわれる。人も同じで、働き盛りは、30-35年位。企業でも一代は、だいたい人と同じである。老舗の企業は、代々継続している。
人では、きんさんぎんさんは即応力あるいは対応力で長生きした。企業の長寿には、1か0のデジタルでなくアナログ的思考が有効である。言葉で言うと、良い按配とか、良い加減とかいう心の持ち方である。
良い按配、良い加減は、例えば風呂の温度である。38度Cから42度Cの範囲に個人個人の適温がある。最適な温度であれば、人はリラックスでき、疲れ、ストレスがとれる。また、人の体温、血圧である。それぞれに適温適圧がある。その範囲を超えたり、下がったりすると身体は、変調を来す。
企業は人同士の集りであり、人の適温適圧の中、企業自体で培われてきた企業文化・風土をうまく活用することにより、最適な範囲で身の丈にあった企業にすることが長続きするコツである。人の集合体である企業は、1人のリスクは企業全体のリスクにもなりうるので注意すべきである。
世界最長の寿命を持つ金剛組は、1400年続く企業である。35年の代表の寿命で、1400年で40代の代表交代があった。大阪四天王寺の隣地に社屋を構え、四天王寺とともに生きた企業である。 社是は伝統と技術を駆使し教えを弁(わきま)え、仕事にあたり社業の発展を通じて社会に貢献する理念のもと、初代金剛重光から現在まで、脈々と続いた。四天王寺は戦禍で焼かれてもその度建替えた。それは4回にも及ぶ。焼失ごとに平坦な土地に3次元の寺院を復活させ、4次元の時空を生きてきた。これは、点・線・面・球へと広がり更に4次元の時空の考え方となり、過去現在未来とつながる。
人、企業は、現在というリアルタイムを生きている。最善・最適なものは何か、デジタルでなくアナログ的に全体を俯瞰し、適温適圧適リスクをうまく使って、年相応の知識と体力を使い、経験を活かし技術を活用し、円滑なバトンタッチにより、長く良い世間に合致した企業が生まれると思う。 (平成26年3月13日 日刊工業新聞掲載)

中小企業の会計基準

キャッシュ・フロー計算書/米英基準と比較・検討を

   岡部勝成(九州支部)

わが国の中小企業における会計基準にはキャッシュ・フロー計算書が必要ないのであろうか。右山(2013年)は,中小企業において,事業により使える現金預金が増えるか,減るかが最大の関心ごとと言える。すなわち,同族企業の多い中小企業は,株主に対する会計情報よりも取引先の会計報告により取引先の安全性が第一であろう。とりわけ暫定措置として,差額キャッシュ・フロー計算書の作成を提言している。しかしながら,諸外国との比較を見るとわが国中小企業会計基準では基本財務諸表にキャッシュ・フロー計算書が内包されていないことが,浮き彫りとなってきた。これは,キャッシュ・フロー計算書の語彙が,2005年8月に関係四団体(日本税理士会連合会,日本公認会計士協会,日本商工会議所,企業会計基準委員会)から公表された中小企業の会計指針には記載されているが,2012年2月には金融庁と中小企業庁が共同事務局を務めた中小企業の会計に関する検討会から公表された中小企業の会計に関する基本要領には語彙が記載されていないことからもわかる。現在,中小企業に対して2つの会計基準が存在していることになっているのである。
2013年6月にアメリカにおいて米国公認会計士協会(AICPA)は,新たな中小企業向け会計基準として「中小企業のための財務報告フレームワーク」(以下,FRF for SMEsという: Financial Reporting Framework for Small- and Medium-sized Entities)を公表した。その中で,基本財務諸表として第8章にキャッシュ・フロー計算書が記載されている。一方,中小企業版国際会計基準(以下,IFRS for SMEsという。)においても,基本財務諸表として第7章にキャッシュ・フロー計算書が記載されている。営業活動によるキャッシュ・フローの報告は,直接法または間接法を特に奨励していない。しかし,完全版国際会計基準(IFRS)では,直接法または間接法によるが直接法を奨励している。これは,大企業においてもアメリカと同様な形式が採られている。
わが国の会計基準やその制度構築に多大な影響を与えたアメリカおよび昨今,とりわけIFRS for SMEsおよびイギリスとのキャッシュ・フロー計算書にフォーカスした比較・検討を行い,そこからわが国の中小企業会計におけるキャッシュ・フロー計算書の課題や今後の展望を考察することは必要であろう。(平成26年3月20日 日刊工業新聞掲載)

続・科学立国、技術立国なら

過失か作為か明確に/基本の重視・論理観の醸成を

   塚本裕宥〈北関東支部〉

 3月15日付「STAP細胞 証明できず」の報道があり、この提言をする。若い女性研究者を持ち上げたと思ったら、突き落とすような報道姿勢には、研究者育成の暖かい視線がない。残念だが、基本の軽視と倫理観の欠如を感ずる。成功した、しそうなら誉め、失敗した、しそうなら徹底して叩く、そんな報道にうんざりする。冷静、理性的に臨んで欲しい。
 本欄で2013年5月16日付「計量法・単位記号の尊重を」、7月18日付「科学立国・技術立国なら」と題して、提言した。その中で、些細なことだが、単位記号の尊重を提言した。
さらに最近は科学や技術の領域では、質量系の時代のはず、日本の教育では、大学まで質量系で学ぶのに、社会人になった途端、重量系に戻ってしまう、不思議な国だと指摘。これら基本を徹底することが、科学立国、技術立国の出発点であると提言した。
基本を軽視する社会風潮が、倫理観の欠如に結びつくことを懸念、それが的中なら残念である。
私は企業における単位記号のご意見番であった。新入社員が2年間の研修を終え、その発表会で単位記号を粗末に扱うと、小さなことだが将来のためとの思いから、考え違いをきつく諭した。定年後も科学・技術的文献作成の際、金属の顕微鏡写真を示すのに、単位の表記で直立体への訂正を求めた。文献作成者は、嫌な顔せず正していたことを思い出す。科学立国、技術立国を支えると考えたからだ。
 STAP細胞の記事に「論文発表直後から、世界中の研究者のあら探しによって問題点があぶりだされ、最高権威だった科学誌の審査が機能せず、草の根的なレビューが機能したという点でも興味深い」とあり、私のような草の根的提言が役立つことを願う。その実在性に信念を持っていれば、論文を撤回せず、訂正や続報で対応すべきだ、「撤回なら、故意のデータ操作や捏造など不正ありと世界はみなす」の旨記載もあり、過失か作為か明確にするよう対応して欲しい。広く科学・技術に関わる者として切望する。
 この報道事例では、未解明が多く、正確なことは言えないが、基本の重視や倫理観の醸成、若い頃からの教育が大切と思う。私が言いたいのは、この1点のみだ。(平成26年3月27日 日刊工業新聞掲載)

コップの中の争いはやめよう

人口減、各種施設は統廃合を/我らの子孫と我らのために

   塚本裕宥(北関東支部)

 国立社会保障・人口問題研究所の推計のように、日本は移民受入国にならぬ限り、人口減は止まらないはず。国民の多くは自覚している。その実態認識や処方箋検討に、週刊東洋経済2月22日号「人口減少の真実 甘く見るな!本当の怖さ」の熟読をお勧めする。
 1000兆円もの後世負担があることも多くの国民は自覚しており、若い世代への負担増を防ぐには、各種施設の統廃合が必要で、本欄で提言したことが何度もある。
しかし、私の地元、茨城県や日立市を見る限り、短期間で実現するとは思えないが、提言が生きた形跡はない。
最近、県内のある市は、市立小学校7校→2校への統合案を「統合で逆に財政負担は増す、住民の意見が反映できておらず拙速だ」と審議会で否決、本会議でも否決の公算が大だ。コップの中の争いをしている時だろうか。いっそのこと、市長の専権事項で予算を執行、統合するのが適切とも思える。
 冷静、理性的に考えて欲しいものだ。この先30年、50年も、100年かも知れない、人口は減り続ける。今なら、統合に必要な適切で有効な投資ができる。この機会を逃がしたら、将来に禍根を残す。
 夕張の悲劇として、小学校6校、中学校3校→各1校に統合せざるを得なかった事実を忘れたくないものだ。
 話を日立市に移す。日立市には教育委員会 生涯学習課があり、当課には税金で支援の百年塾(当課傘下の従属とも独立機関とも見え、所属者に拘束性がなく不思議な組織)が所属、当塾中に産業や街作り寄与の「産業部会」、無料(他では有料もあり)で観光案内の「まち案内人」の2組織がある。
 この2組織は県なら、商工労働部、通常の市役所なら、商工振興課、観光物産課、または、商工会議所、観光協会等の所属が適切なはずだ。これなど、コップの中の勢力争いや古き慣行の遺物と思えてならない。
どう見ても課名からも他都市と比べても、生涯学習課管轄では理解できない。早急に現状打破して、産業部会、まち案内人の組織は経営センスを磨き、税による支援から脱却、自立を図るのが適切と思える。
基本は「我らの子孫と我らのために」だ。コップの中の争いはやめよう。(平成26年4月3日 日刊工業新聞掲載)

遠くて近い国際理解・観光立国

語学力生かし民民外交を/社会人の貢献活動提案

  塚本裕宥(北関東支部)

 外国語に堪能な社会(組織、企業)人への呼び掛けである。あなたの英・中国・韓国・ロシア・ドイツ、その他の言語力と海外経験を生かして欲しい。民々外交で近隣のぎくしゃくした関係改善に繋がれば更に幸いだ。
 外国語に少しの自信があったら、「私が支援するので、貴中学校から海外の学校に情報発信しよう」の趣旨で、近隣の中学校の外国語教師に、誠意ある呼び掛けをして欲しい。下駄履き感覚で直接訪問すればなおよい。担当教師は生きた外国語学習を望んでおり、以下は成功例に基づくもので、教師の時間的制約から、望んでもできない教育方法である。
中学校の立地状況、入学や卒業式、給食、掃除、運動会、文化祭、日本的なお茶や剣道等のクラブ活動、学校のお宝といえる物や活動の簡単な紹介を英語などでまとめる。日常の写真を使うのが適切、簡潔な説明で十分である。
 学校のホームページに掲載してもよいが、あなたの現地の信頼できる知人あてメールなどで送り、現地の教師に届けてもらうと効果的である。
 海外の相手は身近なことに反応する。そこから国際理解が始まる。
 説明文は文法など少々無視してよい。当方は「日本語は正しく遣えるが、中学生の外国語につき、怪しい点があったら、ご容赦を・・・」等と正直にやり取りすればよい。相互の文化理解になる。具体的な提案である。
 こんなやりとりで、あなたの外国(語)経験で社会貢献できる。この提案を見て、思いついたら、早速あなたの学区の中学校に出掛けよう。当該校の外国語教師は感謝の心で対応するだろう。あなたの語学力も生かせる。
 これぞ社会人の貢献活動であり、国際理解・観光立国の入り口である。卒業旅行に日本訪問の可能性も期待できる。予想外に遠くて近い観光立国に繋がるだろう。
 コップ(学校内)の中の争いがある?そんなことを気に掛ける必要はない、乗ってくる担当教師に、まずは呼び掛ければよい。
 私は語学力が伴わず直接的なことはきないが、この欄で「大連研修ツアー」のことを紹介したことがあり、支援の橋渡し役はできる。支援したい。
国際理解・観光立国とは、こんな草の根の活動が出発点のはずだ。(平成26年4月10日 日刊工業新聞掲載)

市民後見人(参画型社会福祉の到来)

老いを社会的に支え合う/「おかげさま」の心で協働

   河上 晃(近畿支部)

3月15日に大阪でとても元気の出るシンポジウムが開催された。“これぞ大阪の底力”
「地域の権利擁護をすすめる市民後見人の活動」(主催=大阪府社会福祉協議会大阪後見セン
ター他)である。
〈注釈〉市民後見人とは、家庭裁判所から成年後見人等として選任された一般市民のこと。
(報酬を前提としない)
高齢化が進む中で、誰もが住み慣れた地域で安心して自分らしく暮らすことを目指す権
利擁護の充実と地域福祉活動として、判断能力が十分でない人の生活を身近な市民の立場
で支援する「市民後見人」の活動が全国で進んでいる。
わが国の認知症高齢者の現状は、2010年で65歳以上の高齢者人口2,874万人中、認知
症が有病率15%で約440万人、さらにMCI(正常と認知症の中間の層で、全ての人が認知
症になるのではない)有病率推定が13%で約380万人と推定されている。
高齢化社会、認知症、成年後見とは、ビジネスマン時代には縁遠く感じる。
しかし、定年退職の節目を迎えて家族・親戚・地域との関係性の希薄化や生活の安心や
安全の変容に接して愕然とする。高齢者の単独世帯や夫婦のみ世帯の増加や、都市部でも
急速な高齢化が進み、成年後見も50%以上を親族以外が選任されるなど、地域福祉に新し
い担い手が求められている。
定年退職後に何かやってみたいという人は多い。これまでのビジネスマン生活とは大きく
違うが、市民後見人として地域福祉活動に参画することも、第二の人生として有意義では
なかろうか。
平均寿命が男性約79歳、女性約86歳とこれからの活動(自己実現)に十分な時間もある。
もちろん、高齢者に寄り添い、高齢者のスピードに合わせた市民後見活動は従前のビジネ
ス環境とは大きく違う。
高齢社会の進展に伴い出現する新しい生活課題の解決や、老いを社会的に支え合うために、
私たちの行動をどう変えるかなどは、これまで福祉活動の中心を担っていた専門職の人たち
と、社会経験豊かなシニア世代との協働によって克服できるのではないだろうか。
お金という客観的な尺度では測れない、善意の経済ともいうべきお互いさまの社会福祉の
実現は、何かを成し遂げられたのは、周りのいろんな人のおかげと感謝する「おかげさま」
の心を持つ日本人によるイノベーションが発端になると考える。
 参考資料  (出典 大不況は日本型資本主義で乗り切れ 田坂 広志共著 文芸春秋社)
(出典 市民後見人・成年後見制度啓発シンポジウム資料)
(平成26年4月17日 日刊工業新聞掲載)

2050年の超過疎化への対応(上)

小中学校運営で一考/地方中規模都市に集団移転を

   塚本裕宥(北関東支部)

 課題を先送りしていれば、失われた10年・20年のように瞬く間に、時は過ぎる。解決の方策は問わぬ。何らかの形で本提言を生かしたい。2030年、50年を目指す提言である。この提言を書いていたら、3月29日付「2050年、国土の6割が無人」との報道、わが意を得たりである。国交省は今夏をめどに、人口減少に備えた国土整備の基本方針をまとめる予定の旨だ。それに先行した提言である。
 日本の戦後復興は平野部から山間部へ発展・拡大したと見ることができる。今はその逆の現象が生じている。こういう大きな視野・視点で考えたい。
 児童・生徒、つまり、小学校―中学校を対象に提言する。幼稚園、保育園を含めてもよい。典型的な例として1学年10名以下といえる児童数30―60名程度の小学校、生徒数15―30名程度の中学校を考えていただきたい。
 このような場合、地方行政(市町村)や住民は、小学校と中学校の統合等を計画する。これで課題・問題は解決するだろうか。3月28日の「NHKニュースウォッチ9」を見た方はすぐ気付くだろうが、短期は別にして、中・長期では解決にならない。スクールバスでの解決策もあるが、根本解決は困難だ。
この場合、小学校や中学校の教職員全員を含め、地方の中規模都市に集団移転することを提言する。その親達には、簡単に変われない働く場など諸般の事情がある。大切なことだが、ここでは除いて考える。
私の住む日立市を例にとる。日立市の小中学校は統合せず、実質空き教室だらけで運営している。教職員用になる公営住宅も空き家が多い。そんな訳で過疎地の学校ごとの移転を受け入れる余地は大きく、効果的、効率的受け入れが可能である。今なら学校や公営住宅の補修再生が低費用で可能である。
住み慣れた土地を離れる子供がかわいそうだという感情論はやめよう。なお、行政経費については、移転先に移すことができるはずだ。
この過疎化現象、児童・生徒数が減少し学校経営(運営)が成り立たない例は、過密の東京でも生じている。都心が働く街と化し、子育てする街ではなくなっているのである。まずはここまでとし、次回更に詳しく述べる。(平成26年4月24日 日刊工業新聞掲載)

2050年の超過疎化への対応(中)

地方中規模都市の衰退防止/将来世代への大切な投資

   塚本裕宥(北関東支部)

国交省は人口減少に備えた国土整備の基本方針を策定予定。それに先行した提言である。
前編で述べた小規模な学校では、子供たちの健全な育成を促すための運動会も文化活動も、日頃の集団的な討議も、「いさかい」をして覚える対人関係も身に付かない。さまざまな情操教育も欠落や不足する。小・中学校9年間学級の編成替えもなく、ときに複式学級がよいことか問いたい。
これからの義務教育は、語学教育などグローバル化、ローカル化への対応は必須で、重要事項であるが、内容不十分や迷走する恐れもある。教職員も自分の担当教科はよしとしても、担当教科外は仮の免許で教えるような実態である。子供も教職員もいわば悲惨な状態であり、是非早く解決したいものである。小規模校では、子供も教職員も疲弊している実態だ。
本提言は分かりやすく言えば、過疎地の過疎化を促進、早く元の森に戻すための方策である。地方の中規模都市の衰退の緩和を狙ったものでもある。
地方の中規模都市の活性化を唱える施策やそれを推進する方々は多いが、今後の人口減少社会を考えれば、衰退緩和策をとることこそ理にかなっていると言いたい。国土全体を考えた対応策が急務であり、大切である。
失われた10年、20年では、中心市街地の再生、活性化とうたいながら、成功した例が少ないのはご存知の通りだ。補助金を積み、積み増しては、結局国債での後世負担を増してきただけである。誤りに早く気付きたい。
日立市の例であれば、今なら学校と公営住宅を手入れして、過疎地の複数校を受け入れるため、行政経費を支出(投資)することができる。急ぎたい。日本の将来を担う若い人達の幸せを優先したい。
戦時中の集団疎開の逆であり、学校全体の里親縁組のようなものである。本提案にはそれなりの意義があるはずだ。地方の中規模都市や日本全体としてみた衰退防止には効果的と考える。農山村に若者を呼び込む活動は否定しない。成功事例は認める。地域の実情に合わせればよい。
日本の衰退防止には、早い対策と対応が大切である。提言が生きることを切望する。将来を担う若い世代への大切な投資と考えたい。(平成26年5月8日 日刊工業新聞掲載)

2050年の超過疎化への対応(下)

子供たちを高齢者の外孫に/社会貢献・知恵で乗り切る

   塚本裕宥(北関東支部)

先の提言で述べたことに関連、別の解決策を提言する。先に過疎化の進んだ学校の移転を提言、今回は個別対応を提言する。冷静、理性的に考え提言を生かしたい。子供がかわいそうだという感情論はやめよう。
 私の住む戸建住宅団地の現状は、総戸数約 800戸、総人口2300人、65歳以上約50%と高齢化が進んでいる。全国的に見れば限界集落の範囲に入るが、小さいが商店街が健在で、買い物難民などもなく、元気な住宅団地だ。
 住民意識も高いと評価する。元気な高齢者が多く、主体は高齢の夫婦2人暮らしが多い。全国的に類似の地域は多数あるはず。
 この高齢者に超過疎地の子供たちを、血縁のない外孫として迎える案だ。迎えた子供は、当団地の通学区の小・中学校に編入すればよい。経験のある夫婦であり、超ベテランの子育てができる。私もやり繰りできたら、引き受けてみたい。近隣にも類似の団地は多い。高度成長の世代がそのまま高齢化したもの、元気な人達の集合である。集団として情報交換もできる。
 子供が体調不良等になったら、かかりつけ病院に行けばよいし、救急救命病院も完備の市であり、相応に優れた子育て環境である。
 当然のことだが、子供を預けるための費用は親元が負担する、預ける側、預かる側で相談して決めればよい。行政等が契約的指針を作る方法もある。預かる側は年金主体だが相応の収入があり、適切な金額で折り合いがつくはず。いわば中期里親制度と言えるもの、戦中の学童疎開の逆で、その個人版と考えたら分かりやすい。
 費用面ではビジネスライクにやり取りすればよく、人類愛といえる善意が入るので、思いやりのある望ましい地域社会になり得る。
 高齢世帯が社会貢献できるし、血縁がないだけに良好な人間関係の基礎を築けると思う。心を込めた「叱る」という人格形成への役割も果たせる。
 人口減少社会の日本を、我々の知恵で乗り切りたく提案する。
 高齢世帯も緊張感があり、肉体的にも精神的にも若返ると期待する。
 血縁の孫と血縁のない孫、その親との交流ができる思わぬ副次効果も期待したい。日本社会の衰退を防ぐ一助になれば幸いである。(平成26年5月15日 日刊工業新聞掲載)

中東市場開拓を前向きに!(上) 

富裕・中間層向けビジネスに商機/近隣国展開容易に

   長谷川正博(東京支部)

 皆さんは”MENA“という用語を御存じであろう。”Middle East North Africa”(中東北アフリカ)を略したものである。当該地域の人口は全体で5億3149万人(2012年)、うち20歳未満が40%超と若年層が豊富な人口構成となっており、名目国内総生産(GDP)は東南アジア諸国連合(ASEAN)10の約2倍(4兆3667億ドル、13年)の経済規模を持ち、MESA全体の実質GDP成長率は10年5.5%、11年4.0%、12年4.8%(共に実績)、13年3.1%、14年は3.7%と見込まれている新興経済圏である。
残念ながら、日本企業、特に中堅・中小企業にとって、中東は地理的な遠さや、文化的・宗教的な要因により市場開拓や進出にもう一つ関心度が低く、ビジネス対象の市場としての認識がいま一つ、であるように思える。
当該地域は、日本および日本人に対する関心や尊敬の念は強く、日本製品への信頼感や評価も高く、この意味でも日本企業としては魅力ある市場であると言えよう。また、当該地域は、言語・宗教・文化の面で同質性が高いため、一国で確立したビジネスモデルを域内他国へ持ち込むことが比較的容易であることから一つの市場として捉える事もできる。  
さらに、①人口増加率が高い②若年層が多い③一定の富裕層が存在し、今後中間層の増加が見込まれる、などの特徴もあり、日本企業にとって有望市場に成長する可能性がある地域と言える。
ただ、国によって所得水準が大きく異なる上、同じ国内でも格差が大きいので、どの国のどのような消費者をターゲットとするのか、をまず明確にし、自社製品の適格性をよく認識し、またはターゲット市場に適した製品の開発等を行いながら進出計画を実践する必要はある。
もちろん、そのためには十分な情報収集・分析が前提となることは言を待たない。
  MENA地域に含まれる国は西は北アフリカのモリタニアから東はアフガニスタンまでの20カ国強であり、トルコ、イランを除き同じアラブ民族で、宗教もイスラムをベースとしているという類似性を持った地域であるが、本稿ではこの中のアラビア半島に位置し一般的に「金持ちの国」と認識されている湾岸産油国から構成されるGCC(湾岸協力会議)加盟6か国に的を絞って論述していくことにしたい。(平成26年5月22日 日刊工業新聞掲載)

中東市場開拓を前向きに!(中)

購買層ターゲット明確に/ニーズ探り製品・価格戦略

   長谷川正博(東京支部)

湾岸協力会議(GCC)諸国の経済状況を概観すると、GCC全体の実質国内総生産(GDP)成長率は2010年―12年の年平均は6.7%、13年と14年は共に4.0%の成長が見込まれている(IMF〈国際通貨基金〉資料より)。外国人を含む人口合計は4,429万人(12年時点)であり、将来予測(中位推計値)では20年4,929万人、30年5,788万人である。
また、加盟6カ国の「1人当りGDP」(13年時点)は、サウジアラビア2万2663ドル、UAE6万9185ドル、クウエート5万1243ドル、 カタール1万3748ドル、オマーン2万4557ドル、バーレーン2万4465ドル(同資料)となっている。当該金額を日本の都道府県(10年数値、1ドル100円換算)と比較すると、UAEとクウエートは東京(4万3060ドル)より上に位置し、オマーンおよびバーレーンは宮城県(2万4500ドル)とほぼ同じ、サウジアラビアは鳥取県(2万2600ドル)と同じレベルとなり、カタールは遥か上方に位置することとなる。
ただ、国別にまた同一国内における格差があり、国別の全職種の平均賃金の比較では、最も高いサウジアラビアを100とした場合、UAEは94、クウエート91、カタール81、オマーン77、バーレーン76であると言われている(*)。
また、当該諸国は外国人労働者の比率が高い事も市場特徴の一つとなっており、これが同一国内での賃金格差の要因であるが、自国民を100とした場合、欧米系(日本人はこのグループに入る)は同じ100、(他国の)アラブ系97、アジア系81であり(*)、市場への参入にあたっては、富裕層・上級中間層、中間層及び低所得層と三分化(または二分化)を前提に、どの購買層をターゲットとするかを明確にし製品戦略・価格戦略を立てる必要がある。
例えば、サウジアラビアは、高所得国だが、富裕層1割、中間層2―3割、低所得層7割と言われるほど格差が大きい。市場に適した商品投入と価格設定がかなえば、ビジネスの可能性は大いに広がると言えよう。
この地域の消費者はMade in Japanへ高い信頼を寄せているが、中間層の多くに「いい製品だが高すぎる」と思われているという難点がある。他国製品より割高であれば、価格差を補って余りある優れた点を消費者に訴求する必要があるし、余計な機能を削って価格を下げるという方策もあろう。現地ニーズを探って製品に反映させる努力をしなければならない。(*)出所;中東協力センターニュース、2007・6/7号
    (平成26年5月29日日刊工業新聞掲載)

中東市場開拓を前向きに!(下)

インフラ関連・医療分野など有望/見本市出展で商機

   長谷川正博(東京支部)

現在、人気の高い自動車、家電製品、果物、日本食などに加え、湾岸協力会議(GCC)諸国で有望と思われるビジネス分野は、まず2020年頃まで年3―4%の需要の伸びが予想されている電力。海水淡水化により水をつくることから、廃水処理後に再利用するリサイクルの仕組み作りが求められる水分野。太陽光と風力を中心とする再生可能エネルギーなど各分野の機器・部品・補修部材関係。鉄道やモノレール建設の活発化による車両、鉄道システム関連機器やこれらのメンテ需要。環境分野機器及び住宅関連機材や地域冷房関連機器。
また、GCC諸国の平均寿命が長くなり、かつ資金もあるため、健康・医療に対する関心も高まりつつあり医療機器と製薬も含めた医療分野全般や、スパ(SPA)産業向けの化粧品・トリートメント・健康機器。女性の社会進出が活発化していることによる化粧品分野(例えば10年のUAEの化粧品市場規模は約860億円)。
中東諸国はまた、教育、文化、芸術、スポーツなどにも力を入れており、これらの分野に関連するソフト、機器・機材などへの需要も高まることは想像に難くない。さらに、これらの国は食糧安保の懸念からアフリカや中央アジアの農業国の土地に投資して穀物を栽培し、自国に輸入する動きが活発化しており、農業技術への需要も高まっている。
自社製品を新規市場に投入させるためには、種々の事前調査や社内体制づくりが求められる。
また、市場開拓の一環として見本市・展示会への出展がある。見本市・展示会に出展すれば、短期間に多くのバイヤーと接触することができ、効率的に商談を進めることができる。
ただ、一社単独で行うことが難しい場合、日本貿易振興機構(JETRO)と組んで参加する方法がある。JETROでは海外各地で行われる見本市・展示会においてジャパンパビリオンを設置し、中小企業の出展をサポートしており、ここに出展する中小企業には国からの補助により一部出展経費の補助が受けられるというメリットもある(*)。
ただ、出展すべき見本市の選定には自社製品の適格性チェックなど各種事前準備が必要なため、大体半年先に開催される見本市をターゲットに検討する必要があろう。もし可能であれば、同類の見本市に事前に見学に行くことが望まれる。(*)http://www.jetro.go.jp/services/tradefair/ 参照
(平成26年6月5日日刊工業新聞掲載)

奨学金返済破綻の防止には

大学進学の必要性熟慮を/就職後学び直す機会ある

  塚本裕宥(北関東支部)

 奨学金・教育ローン返済破綻の例を聞く。奨学金・教育ローンを組み大学は卒業したが、思った就職ができず、残念ながら収入不足で、返済が滞り破綻する例を聞く。親御さんの年収減も追い討ちを掛けている実態もあるようだ。
実質的を含め、大学卒業が必須なのは、医師、薬剤師、弁護士、弁理士、上級公務員など限定的で、猫も杓子も大学に行くという、社会風潮は誤りと言いたい。それでの大学の質的低下も事実と思う。まず、大学に行く必要があるか、熟慮して欲しい。職に就き、学問的に極める必要が出てから進学しても遅くないはず。
こう考える当人や親は少ない。学問をすることと大学進学の意義や意味を的確に理解してから、大学など進学を考えても遅くないはず。結果的に大学で学ぶのを後回ししてもよい職に就いている実態を直視して欲しい。
諸外国の事情について詳しく知らないが、前述の考え方は、欧州では当然と聞いている。社会に出てから、必要に応じて学ぶ、学び直すのが、適切と思えてならない。奨学金・教育ローン破綻を防止する根本的考え方と思う。
戦後の混乱期から復興、成長を牽引した世代は大学卒業者主体ではない。この世代はがむしゃらに働き、その一方で自己研鑽した世代だ。この世代の大学進学率はそれほど高くなく、適切相応の率で推移してきたと言える。
教育費について「社会が子供を育てるという考え方」が必要な時期にきており、給付型奨学金など厚く広い公的負担が適切との声がある。子供は社会の共有財産、社会が育てる責任があるのは確かだが、費用丸抱えの考え方に全面的賛成はできない。社会的に見合う対効果を考えた費用負担が原則だ。
社会が子供を育てるという考え方をよく理解する私だが、大切な家庭経済を考え、ライフセミナー等では「教育費と保険」を見直すよう声を大にして説いている。「必要な教育費かな。保険かな」と自問したい。萎縮は不要だが、教育費と保険は冷静、理性的に考えて投資する必要がある。
奨学金などの破綻があるから、社会で厚く広い公的負担をするのは、論理が逆であり、明らかな誤りと言いたい。賢い生活者になることを切望する。(平成26年6月12日 日刊工業新聞掲載)

単発の企画で街が活性化するか

市・市民が積極的発揮/地元の産業遺産活用も一考

   塚本裕宥(北関東支部)

私は様々な形で県や市の活性化の活動に、何の見返りも思惑もなく参加・支援している。この中で気になることがある。
1点目はこの種企画が単発で継続性がない。例えば、単発の研修会で活性化するだろうか。継続を提言すると聞き置くだけだ。2点目は中心市街地の活性化を狙っているが、実力や世の中の趨勢を考え、衰退防止に力点を置く必要がありそうだ。
3点目はこの種企画が、国などの実質的に補助金目当てと見える。特に最近のアベノミクスは、補助金バブルの様相と見える。4点目は当地域の人が主体でなく他人依存である。その典型例が講師や指摘役・支援役を東京主体の他都市に依存していることだ。
これを続けていたら、国の財政負担を増し、後世負担が増すばかりだ。富も県・市外に逃げて行く。地元の協力者を育て、身の丈に合わせるのが適切だ。他県・市の人に依存すると、岡目八目が働くことは認めるが、当県・市のことを付け焼刃で事前確認してくるので、正確な視野・視点でなく、通例は一般論を述べることになる。
各地には、よく探せば、日本で唯一、世界で唯一のものがそれなりにあり、それを発掘せず、眠っている例が多い。私の地元日立市には、5億年前の地層、世界・日本一本数の多い桜、吉田正記念館、産業遺産としての日立鉱山関連の日鉱記念館、日立製作所関連の小平記念館があり、それをどう生かすか知恵を絞る必要があるが、やれない、やらない理由を述べる人が多いのが実態だ。
ユネスコ無形文化遺産の日立風流物もある。こういう良好な事例がありながら、適切な活用ができていないと見える。私案だが、風流物のレプリカを作り、販売する等の経営センスも磨きたい。多種多様の案を生かせるはず。
市は企業、特に日立製作所に働きかけ、産業遺産の的確・適切な公開への協力を要請するのが適切だろう。市民目線では、その働きかけが弱いように思える。日立製作所の企業市民としての社会貢献に期待する。
是非、積極性を発揮してほしい。市や市民が目覚め、自立・自律することが先決と思う。冷静、理性的に考え、提言を生かしていただきたい。(平成26年6月19日 日刊工業新聞掲載)

地域・社会貢献と組織人(上)

定年退職者の職務経験生かす/企業はシニア研修強化を

   塚本裕宥(北関東支部)

最近の定年退職者を見ると、自分の楽しみとそのための仲間作りには積極的だが、かつての専門性を生かす、責任や負担の掛かる地域・社会貢献には消極的であり、積極的であって欲しい。企業勤務経験者にはその職務経験、官公庁勤務経験者には行政経験を生かしてほしい。
 多くの組織(企業や官公庁など)人は、定年後社会に出ても受身として学ぶこと、ゴルフ、グランドゴルフ、最近は少ないがゲートボールなどスポーツを楽しむことが主体で、組織人として培ってきた経営、経理・財務、販売・接客、情報処理(パソコン)、人財(材)育成、物づくり、その他多種多様のノウハウなどを吐き出す役をしている人が少ない。さまざまな能力を眠らせたままは惜しい。
定年退職→ゴルフ三昧、カルチャーセンターやスポーツジム通い→サービス付き高齢者住宅などの福祉施設、のような受益者人生では社会的損失だ。自ら楽しみ、楽しめなくなったら社会のお世話になるような生活は、ごめんだと思う方は相当数と思う。
 定年が60歳から65歳になりつつあるが、高齢というにはふさわしくない。組織で身につけた能力を社会に還元することこそ、人としての務めだろう。何十年もの勤労で疲れた、組織人として精一杯働いたので、更にビジネス(勤労)的なことを続けるのは嫌だと言わず、広範な社会貢献をしてほしい。この疲れた人生発言をするのが、官公庁勤務者に多いのは気になる。
別視点だが、地域・社会貢献のうち身近なものが納税だ。この納税は日本に住む人の義務で、社会貢献に含めることは少ないが、大切なことだ。
 JAIC(国際協力機構)などで活動して海外貢献しながら、対価を国内に還元してほしい。日本社会はこういう60―80代の働きを求めている。組織も定年前に定年後の心構えや人生設計立案を積極的に支援してほしい。
 2001年以後の21世紀、特に08年秋のリーマン・ショック後、企業に余力がなくなり、企業人の定年後の教育・研修が疎かになったと思える。企業の社会的責任を広く捉え、是非、シニア対象の教育・研修をして、社会に送り出してほしい。企業が先に負担すれば、後日企業が負う社会的コストの節減が可能と考えてほしい。先行投資である。(平成26年6月26日 日刊工業新聞掲載)

地域・社会貢献と組織人(下)

自ら活動する価値認識を/有償・無償で知恵提供

   塚本裕宥(北関東支部)

 社会福祉協議会、日本赤十字社などの活動に関わることを、社会貢献活動と思っている方々が多い。この活動は第一線の奉仕者の労働は無償提供と言える。有償の役員や事務職員の給与、事務所賃料や償却費はもちろん、会場費、電気・ガスなど光熱費も税金や寄付依存だ。その実態を認識、自分の活動が社会の負担であると自覚したい。
 税などを使う側から、税負担を削減、納税するよう経営(ビジネス)感覚を磨き、雇用を生むのが望ましいと思う。私の住む日立市ではこう主張すると、金は汚いもの、守銭奴との見方をする人が多い。その方々を支えているのは、若い納付者が払う保険料だ。金は汚いものとの感覚はやめたい。
日本の年金は自らの積立金を取り崩す積立方式でなく、後世負担による賦課方式の自覚を持ってほしい。現役時、保険料を負担、自らに還元できている面は否定しない。後世負担を増す税金を遣う活動はきれい、自ら稼ぎ税金を納める活動は汚いという。
私には逆のように思え納得できない。社会や他人に役立つこと、金を稼ぐことのバランス感覚こそ大切だ。今は人口減少社会だ。雇用の確保、海外から富を招き入れることの大切さを自覚したい。税金の消費者→税金の消費量削減→税金消費0→納税に移行する人達を求めている。
何歳になっても自ら稼ぐ、雇用を生むことは大切なこと。任意団体、NPO、会社組織でもよい、働く場を作り活力ある(衰退防止)社会を作りたい。表面的社会貢献(ボランティア)活動より、働く場、労働の対価を払う雇用を生む方が、より大切であると考えたい。働いて稼ぐことの大切さ、その価値を認識したい。行政から業務を引き受ける団体などの活動もありだ。高齢者の活用と税の節減が可能だ。
ここで注意したいのは、現役世代の働く場(ビジネス)との競合を避け、奪わぬことだ。高齢になっても企業に知恵を提供するコンサルティングは可能、こんな貢献も大切と思う。余談だが投稿による社会貢献もありうるのではないか。
私は目一杯、いわゆる無償の社会貢献をしながら、モノづくりノウハウの伝承や人財(材)育成の有償活動もしている。学生を含むグローバル化対応の大連研修ツアー、経営品質向上活動なども続けたい。(平成26年7月3日 日刊工業新聞掲載)

中小零細企業の人材育成について

2割の社員底上げ/コーチング徹底、マルチ能力達成

   釜澤直美(南関東支部)

そもそも我々企業で働く者にとって、「使える社員」、「使えない社員」と言う言葉の意味するものは何か。まるで、古びた骨董品の様な響きではないか。
イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートの法則(納税額の80%は20%の高額納税者によって占められていると言う)がある。同じような意味合いで使われている分析法にABC分析手法がある。この考え方によると、売り上げの80%は20%の社員で生み出され、また商品の売上額の80%は全商品銘柄の20%で稼ぎ出している。
つまりロング・テール現象になっていると言うものである。そこで、このABC分析手法の考え方を中小零細企業の人材育成に導入するとどうなるのか、つまり、80対20の2割の社員を再建のために育成するのである。
企業経営に於ける経営資源としての「人・物・金・時間」の中で、「人」は無限の可能性を秘めた最強の経営資源あると私は信じて疑わない。なぜなら、「人」以外の経営資源を考えていただきたい。「物」も使い方次第で寿命を何倍にもできる。「時間」にしても業務改善、作業の習熟度合いにより、同じ時間でも成果に大きな差が出るのである。
ある零細企業における人材育成の事例を紹介したい。慢性的な経営危機にあったその会社は、従業員35人ほどの零細企業で、事業戦略の見直しにより、量産品加工形態から試作品、大物少量品を徹底した短納期で生産する事業形態にシフトした。しかし、納期を順守するには昼夜2交代作業が必要。その条件として、現状の社員で24時間リレー生産を可能にする事であった。
切迫感の中、社員に対し、会社の現状、社員の生活を守るため会社が生き残らなければならない事を説明し、実施した社員教育は、1人3役、加工冶具を製作し、切削加工を行う、加工した製品を三次元測定機などで計測評価する技能、つまりマルチ能力を持った社員の育成である。
その教育の責任者に抜擢したのは、幹部社員から冷遇されていた学卒社員で製造、品証経験の平社員である。徹底したコーチングにより目覚め、大役を引き受け1年がかりで6人のマルチ能力社員を育成、完全24時間リレー生産を可能にしたのである。この立役者を含めると7人(2割)となる。
現在この立役者はマネジャーに昇格し、再建の中心的存在となり、活躍しているのである。(平成26年7月17日 日刊工業新聞掲載)

大学の職業教育~欧州の現実と日本の課題㊤

デュアルシステムが第一歩/職業基盤となる技能伝承

近藤 肇(中部支部)

欧州、アジア及び日本の大学生の就職事情は程度の差こそあれ、厳しさを増している。
日本では2008年秋のリーマンショック以来、就職戦線が厳しくなり、毎年約60万人の大学生のうち、10~20%がいわゆる「ニート」と呼ばれ、正社員として職場に就くことができない。
欧州(とりわけ南欧)ではさらに厳しく、ギリシャでは若者の60%が未就業だ。
日本では、一部の研究専門の大学(大学院大学)や特別な教育、資格を養成している大学を除けば、多くの大学では卒業後に就職を求めて入学する学生が大半である。
彼らの大半が一般企業に入社して会社での教育(OJT)を通じて実力を身に付けるのであるが、なかには社会人としての基本的なマナーすらもできていない学生もいる。
中小企業の多くは新入社員に計画的な教育をする余裕がないのが実情である。従って採用しても3年以内に退職するケースも多い。
これらは企業が学生に求めるスキルと大学での教育のミスマッチが原因と考えられる。私は、この数年新卒(高卒、専門学校、大学など)の就職指導、カウンセリングの実務体験を通じて、現在欧州のモデルとなりつつあるドイツのデュアルシステムの現状と日本の大学(大学生)の職業教育の課題を提言したい。
欧州では、イタリア、ギリシャ、スペインなどの若者が、職を求めて社会に対するデモが頻発している。
EU事務局内のギリシャの責任者は、ドイツの職業教育をモデルにして失業の対策とすることを提案している。
大学や専門学校の卒業だけでは就職の保証にはならないのみならず、現実の教育の証しにもならないのである。技能は正確には学校の教育とは無関係である。
ドイツでは、マイスターの免許状に対して6段階にわたって資格の分類がある。そのことによってドイツの労働市場にも好都合な職業教育を開始する。またそれが良い経営にも起因している。
欧州は、今や職業教育の形や内容に対して、新たな価値を重視する方針である。EUの事務局もこの職業教育や指導の改革が重要な一歩であるとしている。
デュアル教育システムは、しかし。奇跡的に効く手段ではない。欧州で法外に高い若者の失業を一定期間で部分的に克服するためには、解決することの要素の一つである。
それらは職業生活を築くために、そして更に発達するためにも若者の職業参加に基盤となる権限を与えることである。
※欧州に関する内容は、「Die Welt」より引用。(平成26年7月24日 日刊工業新聞掲載)

大学の職業教育―デュアルシステム ㊦

マイスター制度の採用提案/6-8段階で資格評価

   近藤 肇(中部支部)

南欧の展望をみた場合、負債の危機によって苦しんでいる国々にとって、そのためにもかつてのドイツの特別の方法を公開することは、これ以上の方策はない。
Cedefop(欧州職業訓練開発センター)の新しい責任者による指示は全く啓発的である。
これらの国々の固有の問題は、価値の低い有資格者の数が高い状態にあるのみではなく、大学の卒業生の就業意欲に対する障害になりうる。
すなわち大学で多くの職業の実現が可能になることを若者に暗示することを止めるべきだ。
デュアルシステムの基本は、理論と実践の組み合せが、学校と経営の入り混じった教育として成功のモデルとなることであり、ドイツはそれを強力に実行する。
そして将来においても高度な国内の経済力は、実践的な知識を持った高度な専門家に頼らざるを得ない。
日本の大学の職業教育の課題としては、カリキュラムとその運用であろう。ここ数年、行政(厚労省、中小企業庁、農水省など)や各自治体がそれぞれ計画、実施している就職支援事業が挙げられる。
それらのプロジェクトには、企業と新卒予定者(および3年以内に卒業したいわゆる第二新卒)の面談によって、一定の期間就業体験するという、いわゆる「インターンシップ(就業体験)」を実施して、企業と学生のミスマッチを防ぐ効果を発揮している。ここでのポイントはやはり教育カリキュラムである。
ドイツのマイスター制度に相応する職業訓練システムを日本にも採用することが、インターンシップをより効果的に運用する最善の方策だろう。
そのためにもOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)のマニュアル化、ユニット化が必要と考えている。では、現時点で、大学はこのインターンシップに対してどの程度関わっているのだろうか。
多くの大学は、実務の大半を就職指導室またはキャリアセンターに負っていて、大学生の評価、成績に連動していないのが現状である。(一部の大学では単位の認定に連動することも検討、実施しているようではある)
課題は大学でのカリキュラムとその評価システムであろう。ドイツの「デュアルシステム」ように、習得した内容により6―8段階の評価に分け免許状を交付して、企業のニーズと連動すれば多くの中小企業が採用時点でのミスマッチや採用後の教育における無駄をなくすことができるのではないか。
 ※欧州に関する内容は[Die Welt]より引用。(平成26年7月31日 日刊工業新聞掲載)

過去の温もりを忘れよう

人口減・財政縮小の時代へ/覚悟を決め悲観的に準備

  塚本裕宥 (北関東支部)

 日本の縮図、典型例、私の住む日立市を例に実感の提言をする。過度な悲観や萎縮は不要だが、物事を直視することを忘れてはいけない。悲観的に準備して、楽観的に行動することが大切、国も地方も同じ覚悟が必要。日立製作所が当市で拡大・発展した時代、当市には福祉優先等で対応して温もりがあった。
しかし、失った10、20年により、過去のものとなり、多くの人が感じているはずだ。内容の正しい理解のため、会社名は実名とする。当該会社と敵対でなく、大切な互恵関係である。
 日立製作所の主力工場は、将来を考え苦渋の決断をして、三菱重工業との経営統合で新会社に移管となった。事実を市民は真摯に受け止めたい。
 当然、新会社は理念も大切、経営数値(利益)も大切という経営になり、将来を考えた新事業開拓など、健全な赤字は許しても、会社全体の黒字経営は絶対的である。新会社に移管となった工場の現在地での存続、従来からの地元取引先(下請)との取引関係の見直しは当然あり得る。取引に人情や温情の入る余地はなく、地元に落ちる金は先細りを覚悟したい。将来展望は明るいと予想するより、暗い方向を覚悟したい。(悲観的に準備・・・)
 こんな当市、130億円(以上か?)も必要な市役所新庁舎建設は見直すのが当然だ。私は、当欄2012年9月26日日刊工業新聞で「やめる・戻る勇気を持とう」と提言した。将来、相手次第だが土浦同様「売上低迷のヨーカドーに移転、新庁舎建設を見送ってよかった」なら幸いだ。
 行政は、建屋の良否で結果が違うだろうか。人の知識や知恵を優先すべき、新しい庁舎ならよい仕事ができるなら別だが、それはない。関係者が業務に真摯に向き合うかが大切なはず。新庁舎建設より、市長・議員・職員の意識や能力向上こそ、真剣に取り組むべきだ。
 過去のぬくもりは忘れ、人口減少や財政縮小の厳しい時代へ覚悟を決めよう。教育改革等考えた方が、支出の低減や有効活用になる。
 対応策は過疎地から学童(国内留学生)を含む学校移転と市内には国立と私立の計2大学があり、海外留学生の受け入れ拡大だ。特色ある教育にすることだ。当市には海外体験者が多くその活用も有効と思う。(平成26年8月7日 日刊工業新聞掲載)

5Sは社風を変える

仕事一つひとつ整理・整頓/「業務向上」達成の手段

   橋本琢磨(北関東支部)

今更ながら、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の話である。5Sは、全ての仕事の基本であり、業種、規模は問わない。経営者に対して、あなたの会社は5Sしていますか。 と言う問いに、「掃除して綺麗にすることでしょ。いつでもできるよ。」と、答える方が多い。
でも、実際には実施していない企業がほとんどである。いつでもできることが、できていないし、5Sに対する認識も間違っている。次に出てくる言葉は、時間がない、人がいない、うちの規模でやっても、うちは古いから、など言い訳ばかりだ。一事が万事という言葉があるが、一つの事ができない企業は、全てができていないのである。
規模を考えた場合、2、3名の小さな工場でも、整理・整頓がきちんと行われて所は、仕事が丁寧であり、納期を守り、見積りも正確だ。つまり、作業場所が整理・整頓されているだけではなく、仕事一つひとつが整理・整頓されている。だから、段取り時間・加工時間も短いし、材料にムダがない。結果として、価格競争力がありながら、利益をだすことができるのである。
古いと言う事例を考えると、老舗高級旅館が挙げられる。築数十年の建物であっても、隅々まで整理・整頓・清掃が行き届いている。古いということと、手入れがされていないと言うことは別物なのである。その様な環境で働く従業員は、おのずと躾が身についている。
だから、ただ掃除をするのではなく、顧客が喜ぶ事は何かを見い出すことができるのである。そして、それが企業文化という形で定着し、他社にまねのできないサービスを提供している。また、顧客は満足の形として、他より高額でも代金を払うのである。
5Sを行う目的は何かを考えると、「掃除して綺麗にすること」は、最終目的ではない。5Sの目的は、業績を上げることにある。そして、正確に言うと5Sは、目的達成の手段である。
正しい5S活動を続けると、職場環境が良くなることは当然として、コミュニケーションが良くなり、風通しの良い社風が形成される。そこから、アイデアもでてくるのである。今更ながらの5Sであるが、正面から向き合ってはいかがですか。(平成26年8月14日 日刊工業新聞掲載)

中堅・中小企業の「タイ・プラス・ワン」への取り組み(上)

近隣国に生産分業体制/AFTA視野、受入地も急成長

   長谷川正博(東京支部)

数年前までは「チャイナ・プラス・ワン」と言われ、人件費の高騰・労働者不足やとどまることを知らないかのような反日感情の再生産他の要因による「中国から他国・地域への生産拠点の移転」が話題になっていた。
2014年版中小企業白書によると、「撤退を経験した国・地域」で最も多かったのは中国(42.3%)であり、「撤退を検討している国・地域」でも中国が62.4%と断トツのトップとなっており、後者の方が前者より比率が高いということは今後共中国からの「撤退」がさらに進むことを示唆していると言えよう。
 一方、最近では「タイ・プラス・ワン」という言葉をよく聞くようになった。「チャイナ・プラス・ワン」は、前述の通り、中国における投資リスクを回避するために、中国を出て(ないしは拠点を縮小して)、他国で同様の投資・生産を行うものである(この意味では「チャイナ・ツー・アナザーワン」の方が妥当なようだ)。
これに対して、「タイ・プラス・ワン」は、タイで事業展開している企業が、生産拠点を維持したまま、組立作業等の労働集約的な部分を、コストの安いカンボジアやラオス、ミャンマー(CLM)など近隣国に移し効率的な生産分業体制を構築するというものである。
この背景には、タイにおける労働力不足と賃金上昇により、タイでの労働集約的な生産の妙味が薄れてきたことが第1の要因であると言える。タイの失業率は1%を下回り、賃金水準はこの2年間で30%以上も上昇したと言われている。
また、タイ近隣のCLM各国政府が外国企業誘致に積極的に取り組み始め、投資受入地として成長してきたことが第2の要因である。これら諸国の近年の成長率は、先行東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国を上回り、いずれの国も中所得国へ移行する過程にあるといえる。アジア開発銀行(ADB)によると、2010-30年のGDP平均伸び率はカンボジア8.2%、ラオス7.8%、ミャンマー9.0%、ベトナム7.3%、タイ4.8%と予測されている。
ASEAN自由貿易地域(AFTA)が誕生する15年には、同域内でCLMの輸入税が原則撤廃される見込みであり、これによりタイから原材料や設備・機械や、さまざまな消費財の調達が容易になると見込まれ市民生活の質向上にも寄与しよう。(平成26年8月21日 日刊工業新聞掲載)

中堅・中小企業の「タイ・プラス・ワン」への取り組み(中)

メコン流域インフラ整備/物流効率化ルール課題

   長谷川正博(東京支部)

「タイ・プラス・ワン」のような事業モデルは、タイと周辺国の拠点間で、原材料・部品や完成品の物流業務が発生するため、国内はもちろん、国境をまたぐ幹線道路の完備などハード面とソフト面での輸送インフラの整備、物流網の充実が欠かせない要件となる。2006年に完成したメコン川流域の三つの経済回廊はこの流域地域の経済発展に大きな貢献を果たすであろう。
ミャンマー・モ-ラミャインからタイ、ラオスを経由し、ベトナム・ダナンを結ぶ総延長1450キロメートルの「東西経済回廊」は、インドシナ半島を東西に横断する回廊である。これにより、ラオスやタイ東北部の内陸都市はダナンを経て海外の市場につながる。
「南部経済回廊(第二東西回廊)」は、タイ・バンコク、カンボジア・プノンペン、ベトナム・ホーチミンを結ぶ総延長900キロメートルの路線であり、その完成により最も経済効果が期待されている。
南北経済回廊は、インドシナ半島を南北に縦断する回廊で、中国雲南省・昆明を基点にタイ・バンコクまで南下する2000キロメートルの回廊である。これらの回廊の完備により、例えば、バンコク―ホーチミン間の輸送は海運で5日かかるが、南部回廊なら1日に短縮されるため、域内の効率的な分業体制の構築や拠点の再配置に活用できると期待される。このような物流インフラの整備でこれらのメコン流域地域は一体化された経済圏とみなされる。今後の成長力を秘めたこの経済圏の総人口は約2億4000万人と世界4位のインドネシアに並ぶ。
 「ハード面」の利便性を補充する「ソフト面」では、大メコン圏経済協力プログラムの交通分野で取り組まれている「CBTA(越境交通協定)」がある。これは、国境をまたぐ多国間の包括的な交通協定であり、あらかじめ決められたルートを相互に、一つの書類で車両が行き来できるもので、1999年にラオス、タイ、01年にカンボジア、02年にベトナム、03年にミャンマーが調印した。主要な取り組みとしては、通関窓口を輸出国で行い、データ通信で輸入国も共有することで、通関手続きの簡素化、負荷軽減を目指す「シングル・ウインドウ」。輸出国と輸入国において、重複する通関処理、品質検査、検疫等を共同で行い、1回で完結する「シングル・ストップ」がある。
これらをより効率良く進められるような統一ルールの策定など更なる環境整備が求められる。(平成26年8月28日 日刊工業新聞掲載)

中堅・中小企業の「タイ・プラス・ワン」への取り組み(下)

メコン流域進出に魅力/域外輸出ビジネスも視野に

   長谷川正博(東京支部)

 メコン流域地域の物流網完備により、モノなどの移動がスムーズになり、「一体化された経済圏」としてとらえた同市場への取り組みが企業として重要となる。さらに、当該経済圏のみでなく、ミャンマー南部にありバンコクの西方に位置するダウェ―にまで延びる道路整備が完成すれば、バンコクからマレー海峡を経ずに、インド、中東、ひいてはアフリカに向けた輸出が容易になり、これらの市場を狙った輸出ビジネスも可能となる。
また、産業にとって重要なインフラ整備、特に電力では、発電量の拡大(流域5カ国合計で2010年の2477億キロワット時→5878億キロワット時)、送電網を接続し電力を融通しあうパワーグリッド構想がある。
 企業にとって、このメコン流域地域への進出の主な魅力は、まず一つは人件費の安さである。11年時点での製造業労働者の平均月額賃金は、タイ(バンコク)286ドル、ラオス(ビエンチャン)118ドル、ベトナム(ハノイ)111ドル、カンボジア(プノンペン)82ドル、ミャンマー(ヤンゴン)で68ドルである。もちろん、中国やタイの例を見るまでもなく、経済発展と共に賃金は常に上昇トレンドにあり、これら諸国も賃上げ圧力が強まり、現にカンボジアでは労働争議が多発し13年3月下旬、同政府は月額最低賃金を約3割引き上げることを発表した。
ただ将来は、この賃金上昇は中間層の増大=消費市場の拡大につながることになる。また、人口増による当該市場の拡大も期待できる。
三つ目は、東南アジア諸国連合(ASEAN)に拠点を有する企業にとっては、ASEAN 自由貿易地域(AFTA)成立により特定の拠点で集中的に生産することでコスト競争力を高められ、域内のみならず、ASEANが締結しているインド、豪州、ニュージーランド、中国などとのFTA(自由貿易協定)/EPA(経済連携協定)網を活用することにより、域外国への輸出拡大が期待できる。
かつ、FTA締結先国との双方の拠点で部品等を融通する体制を敷くこともできる。法人税の安さも魅力の一つである。
14年1月時点でタイ、カンボジアは20%、ベトナム22%(16年には20%に引き下げ)、ラオス24%、ミャンマー25%である。
 もちろん、新興国への進出にはさまざまなリスクも伴う。進出するにあたっては、自社の経営資源の分析・把握、自社製品の販売可能性、市場の特性・将来性、対象国の詳細な情報収集など十分に時間をかけ検討・調査することが重要である。(平成26年9月4日 日刊工業新聞掲載)

金融機関の中小企業向け融資姿勢改善

“好決算”も信金正念場/期中平均残高、半数がマイナス

  岡部 勝成(九州支部)

景気回復の影響で2014年に入って、金融機関の中小企業向け融資姿勢が改善している。日本政策金融公庫によると、2014年上期(1月-6月)の貸し出しDIはプラス5.2,13年下期(7月-12月)から2.0ポイント上昇し改善され、3期連続でプラス基調を維持している。景気回復によって金融機関の財務状態が改善されたことが背景にある。
日本金融通信社によると、14年3月末時点の1,251金融機関(都銀5、信託銀4、その他銀(新生銀、あおぞら銀)2、地銀64、第二地銀41、信金267、信組155、労金13、農協699、ゆうちょ銀1)の預貸金を見ると、合計557兆円(前年同月比増減額10兆円、同増減率1.9%)。シェア上位では、都銀186兆円(33%、前年同月比増減率2.3%)、地銀172兆円(30%、同増減率3.1%)、信金64兆円(11.5%、同増減率2.0%)、第二地銀46兆円(8%、同増減率1.4%)、信託銀35兆円(6%、同増減率1.2%)と続いている。とりわけ、シェアは僅少であるが信組、労金はともに前年同月比増減率2%台と健闘している。
また、預貸率上位では、信託銀97%、その他銀78%、第二地銀74%、地銀73%、労金67%、都銀63%となっている。一方、信金、信組はともに50%台と低調に推移しており、本業において経営面を圧迫している。
そこで、日本経済新聞は九州・沖縄に本店を置く29信金の2014年3月末決算にフォーカスし、「かりそめの信金好決算」と題して掲載した。その内容を概観すると29信金中、26信金で最終損益が改善するも、実質業務純益の増益は16信金と対前期比マイナス3信金となっている。
具体的には、有価証券運用益や株式等売却益などが寄与し収益改善するも、本業には不安をもちつつ、再生可能エネルギーや医療といった各分野などの開拓に躍起になっているようである。 一方で地方自治体頼みといった融資姿勢も内包している。これらの意図するところは、融資利回りの低下であり、現実に29信金すべてがマイナスに陥っている。
特質すべきは、財務的・経営的に最も重要な融資の期中平均残高が29信金中、15信金は増加するも、14信金でマイナスになっているということであり、利ざや減少に拍車がかかっている。さらに、九州地区は全国でも地銀からの強烈な融資攻勢で有名であり、いわゆる一本釣りといわれる肩代わりが横行していることも日常茶飯事に行われている。
さて、このような非常事態にどう各信金の理事長は経営のかじ取りをするのか、正念場は続きそうであるため動向に注視してみたい。
最後に、「ソリューション」という語彙からヒントがありそうな気がしてならない。(平成26年9月11日 日刊工業新聞掲載)

生物に学ぶ企業の生き方

ベクトルを一にすると力を発揮/平衡保つ経営実行

   矢島英夫(東京支部)

1. 安倍首相が掲げる3本の矢、古<は毛利元就の3本の矢だが、1本だと折れるが3本ま 
とまれば強固なものとなる。すなわち、ベクトルを一にすると力を発揮する。
2. 生物で例えるならば蜜蜂である。女王蜂を中心に働き蜂が花の蜜を集め、蜂蜜にして卵
から育った働き蜂の食糧とする。蜜蜂は花の蜜を取るとき花の受粉を助ける。農作物の
受粉の3分の1を蜜蜂が支える。女王蜂を中心に働き蜂は、仕事を分担してベクトルを
一にして働く。企業も個々から成り立つ。個々の働きは、小であるが企業の中の一人ひ
とりのベクトルが一致すると力を発揮する。
3. 女王蜂の働きが限界又は群が過大になると分蜂という現象が現出する。すると次代の女王
蜂を誕生させる。卵から羽化した蜂に、若い働き蜂の下咽頭線から出るローヤルゼリーを
与え続けると次代の女王蜂が現出する。同様に、企業でも債務超過になると企業の存続さえ
難しい。脱皮するには債務を元の企業に残し第2の会社を誕生させて新しく出発するも良
い。この点において老舗企業の考え方は、柔軟である。本業に徹し、他方常に新しい収
益の上がる策を考え、その方向にカジを切る。二本立てで、いつも天秤のように平衡を保
つ経営を行う。
4. 蜜蜂の世界に話を戻すと新しい女王蜂が育つと古い女王蜂は、働き蜂半分を引き連れ元の
巣を出る。企業でいえば暖簾分けである。ローヤルゼリーという滋養食物を自ら作り出す
ということは、企業でいえばIPS細胞(人工多能性幹細胞)のように企業再生するの
と同じである。若い女王蜂の群は、若返り蜂の世界も活溌となる。蜜蜂は蜂蜜という贈り
物を人にもたらし、またローヤルゼリーという滋養食品を提供する。企業も企業活動に
よって製品、生産物を作り、サービスを世の中に提供する。老舗企業が「もうかりまっか」
と言葉は「ほどほど利益」を上げるという生き方である。これは最後に世間の「おかげ」
という言葉で表現される。
5. 蜜蜂は、花の蜜を取るときに受粉の手助けをし、生存のために花から蜜を貰う。花は受粉
により成実し、結果的に農作物の生存に寄与する。
生物である人の集合体である企業は企業活動によって得た果実(利益)の一部を世の中
に還元することも必要で、前述の老舗企業の考え方が蜜蜂から学ぶものと合致する。
これがまた生物である集団生活を送る蜜蜂の働き、生き方、また後継者を育てていく
ことに相通じるものと筆者は、考える。(平成26年9月18日 日刊工業新聞掲載)

日本人を朱鷺の運命にしてよいか

女性が活躍しやすい社会に/若年世代に重点支援を

   塚本裕宥(北関東支部)

この提言は何年も前から温めていたものを推敲したもので、当初、題名は「日本人を絶滅危惧種にしてよいか」と思い浮かんだ。それでは自虐的過ぎると思い婉曲的題名にした。
 日本人を朱鷺(とき)同様(絶滅)の運命にしてよいだろうか。否と考えたい。そうするには劇的(ドラスティック)な対応が必要だ。
 まずは、20―39歳の女性を大切にすることだ。働きやすい職場、適切な処遇、恋の相手(世話焼きおばさんも必要か、それより相手である若者の生活の安定が重要だ)、出産しやすい環境(産院、産婦人科)の整備、子育てしやすい環境(保育所、小児病院、小児科)の整備など、早急に行いたい。予算の傾斜配分は当然。現状は若者支援の予算不足だ。
 日本から朱鷺は絶滅。こんな運命を日本人が辿ってよいだろうか。日本の政治家、行政はこれを肯定しているように思えてならない。高齢者を手厚く保護することより、若い世代、これから生まれる世代を優先することの方が大切なはず。若い世代がいるから、高齢者の年金が回っていると自覚したい。
 私は長年社会人講師として教壇に立ってきた。必ず、選挙に行き投票行動で、その政策を実現する政治(家)を選ぶよう促してきた。
高齢者以上に投票することだ。選挙制度を変え、子供や子持ち女性に投票権を追加付与してもよい。日本人を朱鷺の運命にしないために、こんな思い切った決断が必要だろう。
 国会議員定数に関しては衆目の一致するところであり、違憲の判決が出ており、ここでは述べない。隠れがちな身近なことを述べたい。
 市会議員定数について述べる。市議会議員定数は、水戸市が人口27万1000人(議員定数28人)、つくば市が同22万人(同33人)、日立市が同18万6000人(同28人)、土浦市が同14万2000人(同28人)、古河市が14万5000人(同28人)、取手市が同10万9000人(同28人)、高萩市が3万人(同16人)、潮来市が2万9000人(同18人)である。
私は単なる反対者ではないが、お手盛り的な議員定数を保っていてよいだろうか。水戸市は模範かな?
 水戸市に比べ、他市の市会議員定数が多過ぎる。自らの身を切らぬことをしており、極論だが、これで最も大切な若者への支援ができるか問いたい。(平成26年9月25日 日刊工業新聞掲載)

ASEANの大国、インドネシアの魅力は?(上) 

輸出先有望市場として注目/法制面の透明性など課題

   長谷川正博(東京支部)

 昨今、ASEAN(東南アジア諸国連合)に注目が集まっている。ASEAN関連のセミナーはほとんどが大盛況のようだ。経済や競争のグローバル化が進展し、また、人口減少・高齢化社会に突入するなかで、市場の縮小化が予想される。日本国内市場にとどまるのみではなく、今後の成長が期待できるASEAN市場への展開に中小企業(中堅企業も含む)は活路を見いださざるを得ないことが背景にある。
これを裏付けるように、日本からの対外直接投資額(2013年実績)は、ASEAN10カ国向けが前年比2.2倍の236億㌦(約2兆4000億円)と急増する一方、中国向けは32.5%減の91億ドル(約9000億円)に落ち込んだ。12年は中国(134億ドル)がASEAN(106億ドル)を上回っていたが、種々の要因を背景に、日本企業が中国よりもASEANに進出する動きを加速させていることを表している。
ASEANを地理的にみると、「陸のASEAN」(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイ)と、「海のASEAN」(シンガポール、マレーシア、ブルネイ、インドネシア、フィリピン)とに分けられる。筆者は前回の本コラムにおいて「陸のASEAN」の可能性について報告(本年8月21日、28日及び9月4日)したので、本稿では後者のリーダー格であるインドネシアについて報告する。
 まず、日本企業からみたインドネシアの市場としての位置付けであるが、2014年版中小企業白書によると、「輸出の開始を準備または検討している国・地域」は、トップである中国(中規模企業43.9%、小規模企業46.6%)の次にインドネシア(同28.0%、17.8%)が来ており、次いでタイ(同27.3%、21.9%)となっており(同白書P401)、輸出先有望市場として人口の多いインドネシアが注目されている事がわかる。
また、「直接投資先として準備または検討している国・地域」では、生産機能では中国、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンと、インドネシアは3番目に位置付けている。一方、販売機能では中国、北米、タイ、ベトナム・ミャンマー、インドネシアとかろうじて5番目となっている(同白書P406)。
中小企業は、進出先としていまひとつインドネシアの魅力又はイメージがはっきりと見えないからであろうか。同国は広大な領域と多くの島々からなるものの、経済の6割がジャワ島に集中しており大きな地域間格差や、民主化が進められてから10年ほどしかたっておらず、法制面での不透明性、インフラの未整備等の欠点があるのは事実である。(平成26年10月2日 日刊工業新聞掲載)

ASEANの大国、インドネシアの魅力は?(中)

人工増で高い成長潜在力/インフラ・物流網充実必須

   長谷川正博(東京支部)

インドネシアの今後経済発展が期待されている。それが実現していくとされる背景は、第1に、生産年齢人口がまだしばらくは増え続けるということ。第2に、世界でも有数の豊富な天然資源を持っていること。天然ガス(165兆立方フィートの埋蔵量)や石炭(世界第2位の輸出国)、パーム油(世界最大の輸出国)、カカオ(世界第2位の輸出国)、スズ(世界第2位の輸出国)、ニッケル(世界全体の12%の埋蔵量)、ボーキサイト(世界第4位の生産国)などがある。第3に、東西5200キロメートル、南北1870キロメートルという広大な領域を持ち、水産業や海洋資源開発の面でも大きな可能性を秘めていること、などである。
 国の市場規模を示す人口をみると、2013年で2億4800万人と、日本の人口の2倍に達し、中国、インド、米国に次いで世界第4位の規模を誇る。産児制限をしていないインドネシアでは、中長期的に見ても人口の大幅増加が見込まれ、国連の中位推計によると、14年2億5100万人、19年2億7000万人、24年2億8000万人になるとみられている。
人口増加は、将来労働力が潤沢に供給されることを意味している。また、同国は、働いて収入を得る生産年齢人口が、子供や老人など養われる側より多い「人口ボーナス」期が2025-30年頃まで続くとみられ、「インドネシアのマクロ経済が軌道に乗り所得水準の向上が進展するならば」の前提条件付きではあるが、消費活動が活性化され、経済成長にとってプラスの要因として働くことになる。
また、商品・サービスの購買力を示す中間・富裕層の存在では、現在、全人口の約30%に当たる7,400万人おり、毎年新たに約800万-900万人が当該層に移行しており、20年までに同層は1億4,100万人(うち、世帯可処分所得年1万5000ドル超~3万5000ドルの上位中間層は5750万人)、人口全体の53%に達すると見込まれている。
 上述の「潜在力」を十分生かし切り、経済成長を達成していくためには、政治の安定性確保はもちろんのこと、同国が現在課題として直面している電力や各種インフラの整備、人的資源の質向上、労使関係など法制上の更なる整備、投資家保護の不備の解消など、政府が本気になって取り組んでいくことが必須条件となる。
また、産業の総合発展のためには生産拠点のみでなく物流ネットワークの充実が欠かせない。この意味からも現在進めているMP3EI(後述)の進捗を見守りたい。(平成26年10月9日 日刊工業新聞掲載)

ASEANの大国、インドネシアの魅力は?(中)

高所得国へ国家戦略/機器・サービス需要増に商機

   長谷川正博(東京支部)

 インドネシア政府は2011年5月27日、11-25年の長期計画、「経済開発迅速化・拡充マスタープラン(MP3EI)」を発表した。これはA4判で204ページに及ぶもので、25年までに名目GDP(国内総生産)を10年(7000億ボル)の6倍超にし、GDP規模世界トップ10入りを果たすという目標を掲げている。
詳細は紙幅の関係上割愛する。特に注目すべきポイントは、マクロ経済目標として、①11~14年間の年平均実質経済成長率6.4~7.5%(ちなみに実績は、11年6.5%、12年6.2%、13年5.8%)、②15-25年間同8-9%③この成長率達成のためのインフレ率は11-14年6.5%/年(実績は11年3.8%、12年4.3%)、15-25年は3%/年④25年での名目GDP4兆-4兆5,000億ドル、1人当り国民所得1万4,250~1万5,500ドルと25年に高所得国になることを目指している。
さらに、45年には名目GDP15兆―17兆5000億ドル、1人当り国民所得4万4,500-4万9000ドルへと一層の高所得国化を目指すとしている(対ドルルピアレートは1ドル=9,000ルピア程度に設定)。
重点分野は、本計画の投資総額4,000兆ルピアのうち約半分に当たる1,900兆ルピアを当てているインフラ整備(電力・エネルギー開発、道路整備、鉄道整備など)である。更に、主要な島々を「六つの経済回廊」に分け、各経済回廊による経済の潜在性の開発、国家の連結性強化、人材能力の強化と科学技術向上を主な戦略として打ち出している。
同回廊の各々のターゲットは①スマトラ経済回廊=天然資源生産加工センター、エネルギー供給基地②ジャワ経済回廊=国家工業・サービス促進③カリマンタン経済回廊=鉱産資源生産加工センター、エネルギー供給基地④スラウェシ経済回廊=農水産業・石油ガス・鉱産物生産加工センター⑤バリ・ヌサトゥンガラ経済回廊=観光のゲートウエ-、国家食糧補助⑥パプア・マルク諸島経済回廊=食料、漁業、エネルギー、鉱業促進センター-としている。もちろんこの野心的な長期開発目標を達成するためには、現在直面している課題を克服していく必要があることは前述した。
上記の開発計画遂行に伴い出てくる各種機器・サービス需要への対応、またインドネシア国内市場の拡大に合わせた製品・サービスの充実を図ることにより、日本の中小企業にもビジネスチャンスが出てこよう。インドネシアのこれからの動きに注目したい。(平成26年10月16日 日刊工業新聞掲載)

未体験の物価上昇

差別化・差異化商品を訴求/“競争しない”戦略実現を

   河上 晃(近畿支部)

4月の消費税増税を節目に、消費の現場に変化が起き、国産インフレが出始めている。
身近な事例では、4月の消費税増税後に、3月まで98円(消費税込み)のリンゴが本体価格100円になり、それに消費税がブラスされて108円で売り出され、ガソリンはレギュラー価格が1リットル当たり約170円と高止まりしている。
仕入れ価格が高くなったとの要因もあるが、取扱店数の減少というこれまでとは違う供
給者と消費者との関係の変化も大きいと言える。特に生活に密着した飲食料品小売店数は
1982年を100として、2009年には実に50%強、ガソリンスタンドも94年を100として
11年には60%強の店舗数など、小売店の店舗数は想像を絶するほどに減少している。(出
典 商業統計、エネルギー白書)。
小売店の価格設定は、デフレ基調に進んでいたものの、今春は消費税増税を期に値上げしたところ、抵抗も少なく値上げが進むので、小売店は価格決定に自信を取り戻している。
高齢化に伴う消費者の買い物範囲の狭小化や店舗数減から寡占状態になり、小売店に価
格決定権が戻ってきていると言える。需要も、供給も十分にあるのに流通経路の縮小が価
格に上昇圧力を与えている。
雇用面では、求人件数は増えても給料は変わらず、春闘でのベアの恩恵も少なく、実質
賃金指数は、13年7月から連続マイナスになっている。(出典 毎月勤労統計調査 厚生労働省)。物価上昇に賃金が追い付いていないため、消費者の購買行動も慎重になっている。
自動車販売では、低グレード車の商談が多いといわれ、円安でも輸出数は増えずに貿易収支は赤字というしばらく経験していない経済状況に、消費者や企業は不安を感じて購入を抑えているために、中小企業や小売店は苦境に陥っている。この環境を打ち破るには、差別化・差異化した全社的マーケテイングが必要になる。
縮小した流通経路の良さを活かしながら、商品の良さを消費者や購入企業にやさしく結びつける、販売技術や接遇などの質的な高度化が求められる。
ITの活用や商品のアピールに比べ、販売の現場は軽視しがちだが、現在の苦境の克服
には、差別化・差異化した商品を消費者や企業へやさしく結びつけ、社会全体の満足につなげるオーソドックス・マーケテイングが求められていると考える。
いわば競争しない新しい競争戦略の実現が求められている。(平成26年10月23日 日刊工業新聞掲載)

企業が生き延びるための、QC手法の活用

他社に先駆け新商品を/企業環境分析ニーズ明瞭に

   永井 守(東京支部)

企業の目的は、結果として利益を得ないとこれらの目的は達成できないと考えている。利益を上げるには、「売れる商品」を適切な時期に市場に出さなければならない。
しかし、今売れている商品を市場に出荷しても、既に競合他社が市場を占有していれば、その競合他社を上回る「魅力」ある商品を市場に送り出す必要がある。携帯電話を見ればその理由は即座に理解できる。斬新な機能やデザイン、他社を凌駕する性能を持った商品であり、後発企業は製品価格を下げなければ市場を占有することはできない。
このことから、他社に先駆けて市場に出す事が重要になる。スマートフォンでは、各社が多機能・低価格を競争ポイントにし、利益は目減りし部品およびサブ組み立企業にしわ寄せが来て、最終的には撤退する。このように、興味深い新商品が生まれ→市場で育ち→成長し→市場で飽和状態になり→やがて当たり前の商品となり、メーカの撤退が始まる。 従って、社会が欲している興味深い新商品を発掘し、その興味深い新商品を開発可能な技術を予測し、開発し市場が欲した状況下に販売を始める。市場が欲した状況下とは、その商品を購買可能な経済状態であり、社会がその商品を活用可能な生活環境になった事が必要。
従って、企業が利益を上げ続けるには他社に先駆けて新商品を市場に送り出し、利益が目減りした時点で新たな新商品を出せば良い事になる。それには、企業環境を十分に分析し、長期戦略を練る必要があり、特に昨今「環境問題」、「PL(製造物責任)問題」、「少子化・高齢化」が大きく叫ばれている中、これらを考慮した戦略が不可欠になる事は推測がつく。
企業環境を分析すると、将来どのようなニーズが発生するか見えて来ます。
例えば、「少子化」により国内労働力は不足し、海外労働者を必要となって来ると、言葉の問題が発生し、携帯可能な翻訳器が考えられ、一人の子供に費やす教育費が当てられ、「高齢化」により足腰が弱まり足腰を補助するロボットお手伝いさんロボットなどが考えられる。
この考え方は、新QC七つ道具の連関図を活用すれば導き出す事は可能です。(平成26年10月30日 日刊工業新聞掲載)

事業承継者に必要な経営教育とは

ISO規定確実に承継/品質マネジメント明確に

   永井守(東京支部)

中小企業基盤整備機構が2011年3月に「事業承継実態調査報告書」を発表している。この報告書で2852社のアンケート回答があり、「事業承継にあたって問題となりそうなことは何?」との回答で「後継者を教育する」が46.2%と第2位の「取引先との関係を維持する」の37.5%を8.7%上回り、第5位の「後継者の候補を確保する」18.8%を合わせると、65.0%(複数回答)に達する。
そして「後継者にはどのような資質・能力が求められるか?」で第1位が「リーダーシップ」(31.6%)、第2位「自社の事業に関する専門知識」(27.2%)、第3位以下「営業力」(26.0%)、「判断力」(25.8%)、「将来に対する洞察力」(24.1%)、「実行力」(22.9%)、「経営理念を承継できること」(18.0%)、「コミュニケーション能力」および「問題解決力」が共に15.8%を占めている。(数値は特に重要と思われる事項を三つまで選択)以上の分析結果から、後継者には教育が必要であり、その教育で習得すべき内容は、「リーダーシップ」「営業力」「判断力」「実行力」「経営理念を承継できること」「コミュニケーション能力」および「問題解決力」でこれらはISO9001及びISO/TS16949で要求されており、これらを確実に実施することで承継する能力が備わって来ると考えている。
ただ、ISO9001やISO/TS16949を取得したISO事務局から「ムダが多く、不要な管理工数が増える」「本当にこの品質マネジメントシステムで品質が向上し、利益が上がるのか」と多くの方々から疑問視している事を聞く。
また、筆者が企業を訪問して感じる事はISO9001及びISO/TS16949と品質管理は別と考え、「ダブルスタンダード」と言われている。これはISO9001及びISO/TS16949の管理内容と品質管理の内容が別で、2種類の規定が存在している事を意味している。
これでは、せっかくの品質マネジメントシステムが足かせとなり、ISOへの不信が増大していく。対策のポイントは①どの部門がクレーム対応をするかなど各部門間の責任分担を明確にした品質保証体系の構築であり②自社が抱える改善すべき事項や利益・売上向上にどのような目標を設定し、管理を行うか具体的活動内容を明確にすることだ。(平成26年11月6日 日刊工業新聞掲載)

中華圏の女性経営者は学ぶ意欲が旺盛

都内企業・店舗精力的に視察/日本も女性海外研修必要

   上野延城(埼玉支部)

上海交通大学海外教育学院総裁コースの社会人受講生で流通産業及び不動産開発産業の企業家メンバー(中国26名、台湾4名)が日本(関東地区)の新業態と小売業の販路研修団として、8月25日-29日に来日した。
研修団に対してのセミナーおよび企業見学先への案内依頼を受け、初日、東京・新宿のNSビルでの講演会では、不動産業も流通産業へのシフトが加速するとして「近未来の流通業界を占う」をテーマに、消費者から生活者への変化、次世代の小売業モデルなどについて、通訳を通し講話した。
企業見学では、要望のあった高架下に誕生した秋葉原-御徒町間に生まれた「ものづくりの街、2K540」を視察した。見学後、出店者の経営者から誕生の経緯や現在の状況を解説頂いたが、参加者から出店の条件や家賃などの質問が多くあり、それに対して説明者から具体的な数値を示した解説があり参加者の理解度が高まった。
もう一カ所の見学企業は、中国でもペットブームのためペットショップの要望があり、六本木ヒルズにあるDOG&CATのペットショップ「ジョーカー」を視察した。シャンプーやトリミングで犬が気持ちよさそうにいている姿を見学し、店長から企業の事業紹介や社員の研修について解説があり、中国でも教育研修が可能かどうかなどペットビジネスに対する質問が多くあった。
また滞在期間には、東京近郊のショッセングセンターや地下商店街の考察を精力的に実施した。講演で話して店舗などをインターネットで検索し現場の見学する姿勢に感心した。
研修団には夫婦での参加者も多く、また女性の参加者が全体の3分の1だった。女性経営者は最新の日本の状況、知識を学ぶのに余念がなかった。
安倍首相の成長戦略の中核に挙げる「女性の活躍」。だが先進国では最低レベルだ。世界の企業のおける女性のシニア・マネジネントの(CEO)割合はトップは中国の51%、続いてポーランド40%、日本は7%と低い。
女性の力が世界経済を引っ張っているとも言われており、企業のグローバル化が進む中で、日本も女性を含めた海外研修を積極的に企画することが必要な時代である。(平成26年11月13日 日刊工業新聞掲載)

ASEANでの事業展開を考える(上) 

経済発展で市場拡大/競争力強化の視点で商機探る

   長谷川正博(東京支部)

政府は2013年6月14日に「日本再興戦略」を策定し、中小企業・小規模事業者の海外展開をより積極的に進め、5年間で新たに1万社の海外展開の実現を目指す、とし各種の支援策を用意・実践している。しかし、現在までの実績はせいぜい半分強程度に過ぎない。 この戦略の背景には、言うまでもなく、少子高齢化・人口減少による日本経済の将来性を踏まえ、今後も企業が成長していくためには、積極的に海外の需要を取り込んでいく必要があるためだ。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(2014年1月時点の推計)によると、現在約1億2700万人の日本の人口が、2020年1億2400万人、2030年1億1670万人と推移し、2050年には1億人を割り9700万人に減少するとみている。当然世帯数の減少も伴うわけで、国内市場の縮小化が現実化しており、これまで以上に、新興国の成長力を取り込むことを念頭に企業経営を行っていくことが肝要になる。
大手企業は1990年以降、海外進出を積極的に進めてきており、今後はFTA網などを考慮した生産拠点の見直しや再編成段階に入っていると考えられるが、中小企業の現状は、11年度で海外に子会社を持つ企業の割合は、製造業のみでは18.9%、中小企業全体では13.4%だという(中小企業白書2014年版より)。
グローバル化の加速による競争の激化、納入先の海外移転等に伴い、中小企業の経営環境は一段と厳しさを増しており、自社の事業継続・発展のため、経営者は海外に目を向け、グローバルな視点で競争力の強化を図り、ビジネスを創出・拡大させていくことが一段と求められている。ただ、中小企業が主として担ってきた部品・中間財の輸出は、アジア企業の生産能力向上による販売力への課題、アッセンブラ―である大手企業の海外生産拠点の拡大などにより、日本国内のみでは大きな伸長は期待し難い状況になっている。
従って、新興国、特にアジアの経済発展による市場の拡大に呼応して現地に根を下ろし、現地の需要を取り込んでいくという視点がより重要となっている。国際化の手法には輸出・企業進出だけではなく、輸入、技術提携や委託生産など選択肢は多々あり、自社が目指す方向に応じて、かつ自社の競争力強化の視点から探っていく必要がある。(平成26年11月20日 日刊工業新聞掲載)

ASEANでの事業展開を考える(中)

現地サプライチェーン構築/経営リスク分散が最善策

   長谷川正博(東京支部)

日本企業は、2012年までは人口大国である中国への進出に力を注いできた。13年の日本からの対外直接投資額は東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国向けが中国を上回り、さらに14年1~6月の日本から中国への直接投資額は、前年同期に比べ48.8%も減り、24億ドル(約2600億円)だった。
日本企業の間では、中国への依存を減らして、成長するASEAN諸国に進出する動きも目立ってきた。
中小企業白書によると、今後輸出先及び直接投資先として重視している国・地域では、中国は大きく減少している一方、タイ、ベトナム、インドネシアといったASEAN諸国で増加しており、ASEANを有望視している企業が多いことが分かる。
周知の通り、中国国内での反日感情の悪化や人件費の高騰など社会・経済・政治面からの「中国リスク」が表面化してきている。とはいえ、所得格差の拡大という事実はあるにせよ、13億人を超える膨大な人口の存在を考えた場合、日本企業が中国市場から完全に撤退するという経営判断は事実上難しいだろう。
この場合、企業として念頭に置くべき事は、自己資産運用と同様、「分散投資」による経営リスクの分散を図ることである。
例えば、米国におけるメキシコのマキラドーラのように、中国市場への参入障壁や関税が低い国で作り、中国で売ることができれば有力な選択肢となり得るわけだ。
企業がとるべき最善の選択は、「中国に経営リスクを集中させないこと」であり、その点からも中国とFTA(ACFTA)を結んでいるASEAN諸国への進出を積極化し、経営リスクの分散を図ることが重要となる。
高額な機械設備や不動産を中国国内に持つことなく、ある意味では身軽な販売拠点のみに絞り、中国市場への浸透を図ることも検討する価値があろう。その意味からもASEANに拠点を置き、サプライチェーンを構築していくことも意義があろう。
ASEAN諸国は若者の人口が相対的に多く、一部の国を除けば、労働者の賃金水準は安く、労働力も豊富にあるのでこの地域が新たな生産拠点となる可能性は高い。
かつ、国連の「長期人口予測」によると、ASEANの域内人口は30年には7億3517万人に達するとみられており、中間層の拡大により消費市場としての魅力も強まって行くと期待されている。さらに、15年末にはAFTA(ASEAN自由貿易協定)が成立する可能性も忘れてはならない。(平成26年11月27日 日刊工業新聞掲載)

ASEANでの事業展開を考える(下) 

目標・戦略・計画・評価/4段階十分検討「意思決定」

   長谷川正博(東京支部)

企業が海外事業展開を計画する際には、次に述べるステップを踏んで、慎重にかつやると決断した場合は一気呵成に進めることだ。まず第1ステップは、「目的の確認」である。目的を明確にし、その考えられるリスクを明らかに上回るメリットがなければ海外ビジネスを行う意味がない、という点をまず十分認識すべきである。
売り上げの拡大・利益の増加、既存事業の行き詰まり脱却を図る、高度な人材確保のためなど、複数の目的があろうがこの確認を行った後に「目標の設定」をすることである。この目標設定に当っては、自社が有する競争力と、今後の市場動向を予測し、その市場の中での自社の位置付けを明確にする必要もある。次に、「海外戦略の策定」である。
海外展開にあたり、目的に沿って定められた目標を達成するためのものが海外戦略であり、自社の持つ経営資源を最大限に活用することにより、企業として費用対効果が最大となり、長期的な利益につなげるようにするためのもので、自社の目的・目標を実現させ得るシナリオとして作成するものである。
第3のステップは、「事業計画の立案」で、短期・中長期の目標設定、進出先の検討、進出形態の検討、撤退時の想定、活動スケジュール作成などを行い、ある意味では並行して、FS(事業可能性調査)を実行することとなる。これは非常に重要な調査であり、十分な時間と費用をかけて行うことが肝要で、国内での予備調査(前提条件の検証)、現地調査(生の情報から前提条件を検証)を通して第3ステップで設定した事業計画を見直し、確定することとなる。
そして第4ステップとしては、「事業計画の評価」となる。これは、FSの結果を事業計画に織り込み、目標達成や問題点の有無を評価し、結果として事業をやるメリットなどがなければ海外戦略を修正し、それに合わせて事業計画書を見直す。十分検討した結果問題なしとなれば、最後のステップである「意思決定」をすることとなる。
初めて海外展開を行おうとする企業は、まず始めに「輸出」段階から実行し、現地情報収集・マーケティング活動などを担当する駐在員事務所設置から始める方法もある。もし、単独では海外進出が困難であれば、同業他社などと共同で現地情報の収集や販路開拓を行う拠点を現地に設立する方法も考えられる。(平成26年12月4日 日刊工業新聞掲載)

“前門の虎、後門の狼”に挟まれて日本農業は消滅の危機!

当たり前の産業へ/政官財農協の岩盤構造にくさび打て

   松尾 實(東京支部)

米国オバマ大統領が安倍首相に環太平洋連携協定(TPP)での交渉合意を強く求めてきたものの、わが国農業には聖域がありTPP交渉は暗礁に乗り上げている。日本市場は草刈り場と狙われているが、我々は日本農業の実態を案外知らない。

◆風雲急を告げる日本農業
今TPPで合意したら酪農も農業も直ちに消滅するのではないか。さりとて、現状継続しても早晩消滅する、と言われており、「前門の虎、後門の狼」が風雲急を告げている。
長年のコメ余りで減反政策や戸別所得補償も導入されたが、農家年収は140万円程度に下降、子女が承継せず平均年齢66歳は年々高齢化。全国耕地面積は、609ヘクタールから455ヘクタールへ25%減少し、関東3県に相当する耕作地が放棄され食料自給率は低下。農業技術は衰退し里山の荒廃が進んでいる。
◆日本農業は何を守ってきたのか
農業協同組合は職員21万人(2011年度)で日本郵便を上回り、売上高4兆8000億円は大手商社の中で第4位、預貯金89兆円は金融機関の中で第4位、総資産51兆円は国内企業第2位、農業従事者205万人(2010年センサス)は年々減少しているが組合員数は969万人と年々巨大化している。
農業純生産額は3兆2000億円(農水省)、補助金4兆5000億円(経済協力開発機構〈OECD推計〉で、農業国内総生産(GDP)はマイナスの産業である。巨額補助金、高関税(コメ778%)、金融・保険などの特権を有する農協に守られた農家がなぜ耕作放棄するのだろうか。「農地解放」された小規模農家と政官財農協が岩盤構造を守ってきたが、一方で、法人化と大規模化を進めた外国農業とは圧倒的な競争力格差となった。
  
◆構造改革させる方法は国政選挙だけ
生産性高いオランダでは多くの農業コンサルタントが経営支援しているが、日本農業においては、「経営無用、IT不要、法人参入禁止、農地売買禁止、会計帳簿不要、消費者とは無縁、生産者値付け無用、相続外の農地取得不可、賃貸借規制、不在地主不可、外部参入規制など」だった。平成の農地改革がやっと始まったが未だ制約が多い。農業が当たり前の産業となるためには構造改革は必須である。
民主主義国で業界構造にくさびを打ち込む唯一の方法は国政選挙。国民の意志を表明することが重要だ。

(平成26年12月11日 日刊工業新聞掲載) 

会議の心得、経営に不可欠な会議の運営法

「ペンティング事項管理表」活用/議事録作成効率的に

   永井 守(東京支部)

皆様は会議を開催し、以下のような経験はないでしょうか。
① 議事録がない②会議を開催したが、結論が出ない③会議中会議内容から急きょ他のメンバーを出席依頼するが、外出④議論が堂々めぐりをする⑤皆の意見が出ない⑥議事録は発行されたが、a.誰がその業務を解決するのかb.何時までに完了しなければならないかc.何を解決するかd.完了期限が過ぎたがフォローが行われない。そこで、会議の実施内容について考えてみた。
打ち合せテーマは明確かどうかについて、会議の主催者は開催前に以下の内容を検討する。できれば、会議開催通知書に以下の事項を記載する。①目的を明確に、②問題点の分析を行い何が問題か明確にしておく、複雑なテーマは「連関図(風が吹けば桶屋が儲かる)」、「KJ法」、「親和図」などを活用、③対策案の検討テーマ解決策の案を検討する、できれば1案、2案、3案を考えておく④予想時間を設定⑤司会者出席者の意見を取りまとめるため、メディアボードの準備、⑥必要な資料を事前配布し、参加者が意見を出せるようにしておく。
次に会議での注意事項は①会議の進行責任者は、会議進行に手慣れて人の意見を取り上げる人を選定する。②会議の堂々巡り防止に、メディアボードに参加者の意見を体系的に明記(この明記する技能は連関図を経験した人が望ましい)する③会議の議事録は誰かが、何を言ったかでは無く、「ペンディング事項管理表」の活用を推奨する。
ここで、「ペンディング事項管理表」の概要を紹介する。①項目№、②宿題事項のタイトル、③宿題事項の詳細、解決する内容を明記、④問題解決担当者、⑤解決の完了予定月日、⑥解決完了月日、⑦「ペンディング事項管理表」の改版数(会議開催の都度、完了・未完了を確認し、完了事項は削除し、未完了事項を残す)、⑧会議で新たに発生した宿題事項は「ペンディング事項管理表」に追記する。この「ペンディング事項管理表」を活用した実績は30年以上になり、厄介な議事録を作成する手間は削除され、メディアボードに「ペンディング事項管理表」の書式を表示し、決定事項を記入・印刷すれば即時に議事録になる。(平成26年12月18日 日刊工業新聞掲載)

企業存続の要、人事評価を考える

「目標管理シート」で評価/各自の能力見える化

   永井 守(東京支部)

多くの読者の方は、仕事をあんなにこなす人が平社員で、全く仕事の成果が上がらない人が何故部長なのと日頃感じておりませんでしょうか。筆者も全く同感で20歳代のころから感じていた。
毎月、品質改善会議が開催され、前回決定された問題点の解決期日に間に合う人と間に合わない人がいた。問題の大きさにより完了期日は差があるが、期日に間に合わない人は決まっていた。その人はそれでも立派な役職を持っている人だ。片や納期内に完了する若手は平社員だった。このような人事評価はおかしいと若いころから感じていた。
そんな時期に故石川馨先生が「日本的品質管理」や「TQC」に関する本を出版され、「方針管理」の考え方も世の中に知られるようになった。石川先生の言われる品質管理は社長を先頭に全社員が一つの目標に向かって改善活動を行うことだった。
特に筆者が強く感じたのは「方針管理」で、社長方針がある部の方針になり、課・係の方針となり、最後は一担当者の目標管理に展開される。各担当者は上司の方針と整合した自分の目標を設定し、目標を達成したかどうか、毎月確認会議にて確認される。
ここで、ある課は全ての担当者が目標を達成しているのに対し、ある課は目標を達成している担当者もいれば、全く目標に達成してない担当者がいる。
この状況を読者の方々はどのように感じるだろうか。①すべての担当者が目標を達成している課長は、課長の責任を全うし管理・指導する能力があると評価すべきだ②一担当者がずば抜けて実績を上げている担当者はその能力を他の社員に指導する立場の職責に抜擢することがその企業が繁栄する事になる―。
この能力を評価する方法として「目標管理シート」で目標の達成状況を評価する事が可能となる。この「目標管理シート」は管理の基本である、プラン(P)、ドー(D)、チェック(C)、アクション(A)の内容を記載する書式になっている。
したがって、この「目標管理シート」の状況で各自の能力を見える化でき、人事評価に役立つことが可能となる。各自の能力を評価し、人事に反映させる事が重要と考えている。(平成27年1月8日 日刊工業新聞掲載)

商社の購買戦略

利益拡大へ品質保証体制構築/良きベンダー選定重要

   永井 守(東京支部)

「商社が品質保証をする」―。この体制を確保している商社は日本・世界で何社存在するでしょうか。
筆者は大手電気メーカに勤務していたころ、ハードディスク駆動装置(HDD)媒体の品質管理を担当していた。HDD媒体のアルミ基板はその当時日本製はなく、米国から購入。購入先は商社、その商社は米国から基板を調達し、筆者が勤務していた企業に納入していたが、機械的特性不良が多発し、納入の都度ロット不合格となり米国に返却、米国に品質改善依頼のために頻繁に出張していた。
このような状態では、その商社の利益は、このロット不合格の処理費に充てることとなり、利益はなく、商社の社長はよくこぼしていた。筆者はその基盤の納入品質を向上するため、機械的特性の検査方法を米国企業に改善要求を行い続けた。その結果、納入品質が改善され、全ての納入ロットがロット合格となり、その商社は納入伝票に数量を記入するだけの女子事務員を雇用し、社長は他業務の拡大を図り、会社を拡大していった。
筆者の企業は他の製品もその商社経由で購入する事となり、その商社は更に拡大していった。商社は良い顧客を確保し、いや確保されるように品質保証体制を構築することで、利益拡大は可能となる。商社は、品質(Q)、価格(C)、納期(D)の3条件を満足させると、注文増大・利益拡大は約束されるが、どうすれば「Q・C・D」を満足させることが可能となるでしょうか。
商社は製品を製造しておりません。そのため良きベンダーの条件を以下に記載する。経営者の品質認識は重要で、経営者の認識不足の企業を選定し大失敗した苦い経験がある。また、設備に品質管理能力を持ち、寸法精度が優れている設備を持っている企業は安心して購入できる。相互の利益を目的に基本契約を取り交わす企業。生産中止時・4M変更の事前届、クレームの期限内回答、工程監査の受諾、品質改善会議への参加、その他両者合意事項の締結が重要になる。
さらに設計、生産技術、品質保証、製造・検査部課長の勤続年数が長期にわたって勤務しているか。以上の実施事項を確保する事により、利益があり、企業の存続につながることになる。(平成27年1月15日 日刊工業新聞掲載)

経営戦略としてのブランディング

社員への意識の醸成不可欠/BSC経営の手法有効

   近藤 肇(中部支部)

ブランド構築は企業にとって重要な課題だ。それはブランドが確立されれば、その効果が多岐に亘って浸透するからである。
① 消費者に対してはブランドイメージを具体的に伝えることができ、購買時の意思決定を容易にすることができる。
② 企業にとっては、価格決定権を得ることができ、法的な保護を受けること、自社内の意思統一を図り社員のモチベーションの向上に役立つなど、さまざまな利益が得られる。
ブランドは、ヒト、モノ、カネ、情報に次いで“第五の経営資源”とも言われている。
マーケティング戦略の専門家イドリス・ムーテイによれば、「10年先を計画すればブランドを育成できる」といわれる。それは人の育成と同様に重要だ。
そのためには、インナー・ブランデイングの構築が不可欠だ。インナー・ブランデイングとは、社員へのブランド意識の醸成を図る流れを言う。アウター・ブランディングに対する概念として位置づけられる。
価格、品質、サービスなどお客様に関わる全ての部署が対象になる。そしてブランド構築のために有効な経営戦略として、BSC経営(バランススコアカード経営)が挙げられる。
BSC経営とは、貸借対照表上の有形資産に止まらず、社内の知的資本を最大化するために知的競争力や成長力の源泉として人材や企業の“ブランド力”をも総合的に評価する経営管理手法だ。
目標展開をするために、①顧客の視点から視た指標②内部プロセスから視た指標
③ 学習と成長から視た指標を作成する。
    それらを5年~10年後をゴールとする戦略マップとして作成する。そのプロセスの中で、ブランド構築の指標をマネジメントサイクル(P~D~C~A)として定着化することだ。
    インナー・ブランデイング構築の過程では、以下に掲げる人事制度や各種イベントが効果的だ。
① ブランド構築への貢献度を評価基準とする。
② 自分は何をなすべきか?何ならできるのかを明確にする。
③ 管理職、リーダーはブランド構築のために品質管理などを徹底して社員の採用に対するアピールをする。
④ 創業祭、周年行事などを通じて全員参加型の社風を創り求心力を高める。とりわけモチベーションを高める効果を発揮する。(平成27年1月22日 日刊工業新聞掲載)

中小会計・金融における金融機関の説明責任

概算CFと独自FCF複線化/有用性企業に指導を  

   岡部勝成(九州支部)

わが国における負債総額1,000万円以上の企業倒産件数は2011年度1万2707件、12年度1万1719件、13年度1万536件と減少基調をたどっている。14年度の月別平均(4月~11月)で見ても731件と年間では1万件を下回ることが予想できる。
また、11月の有効求人倍率も1.12倍と22年ぶりの水準に戻り、景気の回復感が出つつある。
中小企業庁は、14年10月2日から10月10日までに、全国の商工会などを通して中小・小規模企業の1,414社にアンケート調査を行い、同年11月21日に「ここ1年の中小・小規模企業の経営状況の変化について」を公表した。
これによると,1年前と比較した売上高の状況は、「増加した」が49.9%、「減少した」が34.5%、経常利益の状況は、「増加した」が38.8%,「減少した」が47.6%だった。
経常利益が増加した要因としては、「売上高の増加」が76.0%と最も多く、「経常利益の減少」をあげる要因としては、「原材料・エネルギーの変化」が62.9%と最も多く、次いで「売上高の変化」が54.0%となっていた。業種で見ると、卸売業や製造業では「為替の変化」を挙げる企業も一定割合あった。
このような状況の中、金融庁が公表した14年から1年間の金融機関に対する監督・検査方針によると、「デフレ脱却と『好循環』の実現」、「金融仲介機能発揮の前提としての金融システム・金融機関の健全性の維持」としている。
また、重点課題には「人口減少への備え」が盛り込まれた。つまり、収益性が低く、人口減少率が高い地銀は金融再編を進めることを意図していると思われる。具体的には,肥後銀行と鹿児島銀行の経営統合などが挙げられる。
中小企業にとっての最大のステークホルダーは、金融機関(銀行・信用金庫等)である。その金融機関は、中小企業に対する与信判断を中小企業会計基準(企業会計基準、中小会計指針、中小会計要領など)を通して間接金融を中心とした貸出金を提供することで、金融システムの円滑化を図り金融機能の維持・発展に努めている。
しかし、金融機関は実務において中小企業会計基準(財務諸表)に信頼性の保証があるのか懐疑的であり、金融庁の金融検査マニュアルが認めている概算キャッシュ・フロー(当期純利益+減価償却費の2期平均)と金融機関が独自で作成しているキャッシュ・フロー計算書のFCF(フリー・キャッシュ・フロー)の複線化における実態や役割は明らかにされていない。
金融機関はそれらの有用性を中小企業に対して教育・指導すべきであり、歴史的背景から勘案しても中小会計要領の資金繰表へのバイアスは危険である。
また米国では、金融機関が中小企業に対してキャッシュ・フロー計算書の提出の義務化と、その企業実態に合致した修正キャッシュ・フロー計算書の作成によるFCFで与信判断を行っている。
つまり、日米間の中小企業会計と中小企業金融の関連性において乖離現象が発生している。
今後、わが国における金融機関の説明責任を果たすことは肝要であると考えられる。(平成27年1月29日 日刊工業新聞掲載)

品質保証を確実にするQC工程図の作成方法

工程図と工程表を区分/改版簡単 最新工程表を現場に

   永井 守(東京支部)

QC工程図の作成・運用に苦労をしておりませんか?ISO/TS16949でも、統計的手法を活用した分析結果を基にQC工程図を作成するように求められている。
1975(昭50)年ころ、当時電電公社(現NTT)と言われた大きな国家企業があった。NTTにコンピュータを納入していた企業はH・F・O・Nであり、品質指導はこの巨大企業が「工場調査」と言って各企業の品質管理体制の改善指導を行っていた。
ある時その巨大企業が筆者の会社に工場調査にやって来た。それは、それは、厳しいチェックで事業部長・各部門の部長は大変緊張して工場調査を受けていた。その工場調査で提出する資料に、QC工程図があり、その記載内容を徹底的に質問攻めに合った。このような経験から、QC工程図には大変刺激的な想い出があるのと同時に管理内容や記載内容について勉強させて頂いた。
当初のQC工程図は、フローチャートと工程表が一体になっているため、見やすいものの、素早い改版ができないため、工程変更が多発する製品には不向きだった。
ハードディスク駆動装置(HDD)媒体は高度な技術を要求されるため、品質管理の内容も高度な管理を要求され管理する要因が数多くあった。当初電電公社で指導を得た旧QC工程図を作成し管理していたが、頻繁に変更される管理内容をフォローするためにQC工程図の改版に間に合わない。
そこで、やむなくQC工程図を改版せず、「作業変更指示書」に変更内容を記載し現場に変更指示を出すようになった。
「作業変更指示書」を受け取った現場はQC工程図と両方を見ながら作業をする事になるが、すぐまた作業変更指示書が発行され、複数の作業変更指示書とQC工程図を見ながら作業をしなければならなくなる。
なぜ「作業変更指示書」で指示すると改版が必要になるかと言うと、QC工程図のような重要か管理ポイントを明記する書式になっていない事による。1作業に複数の「作業変更指示書」が存在すると、製造ミスが多発する。そこで、QC工程図とQC工程表を区分し簡単にQC工程表が改版できるようにした。その後は改版した最新のQC工程表を作業現場に配付した。(平成27年2月5日 日刊工業新聞掲載)

ファブレス企業を生かす道とは

「先行製品品質計画書」作成/技術・運用人材確保を

   永井 守(東京支部)

ファブレス企業は生産工場を持たないため、管理経費のみが購入製品に付加されることで、安価で製品を供給することが可能だ。また、自社ではヒット商品を頻繁に開発することはかなり難しいが、完成したまたは商品化が近々完了するヒット商品を探すことはそれほど困難なことではない。
次々とヒット商品を探し出し、販売チャンネルに載せれば企業の繁栄は間違いない。ただ、ファブレス企業の弱いところは、開発技術部門・製造技術部門・品質管理部門・製造部門が無いためこれらの技術者が不在ということだ。
しかし、これらの技術部門が無くても十分商品の販売を行える。それはヒット商品を決定後ISO/TS16949で要求している「先行製品品質計画書」を立案できる技術者が、商品を供給する企業と共同で作成し運用・管理すれば良い事になる。「先行製品品質計画書」を作成するためには、設計審査・法規制への対応・試作評価・量産評価・QC工程図の作成及び審査・製造企業への工程監査・出荷検査体制の構築・クレーム対応技術を処理可能な技術者がいれば問題ない。
新商品では次々と新しい技術が導入されるが、その技術は「先行製品品質計画書」の作成要領に追加して行けば次の商品に対応可能だ。
そこで、ファブレス企業に必要なのは、「先行製品品質計画書」を作成する技術者の確保だ。「先行製品品質計画書」を作成するには、設計時にFMEAにて要因管理すべき事項を見極める技術、製造条件と製品特性の関係を分析できる技術、QC工程図・QC工程表を作成し審査できる技術、統計的手法を活用する技術、検査手法の熟知、購入先の管理技術、購入先と一心同体で品質保証体制を確立し、運用する能力が求められる。
これらの技術はGHQが日本に品質管理を教えた時代から変わっていない、今後も不変と信じる。筆者がファブレス企業の利点を重視したのは外注管理で高品質で、ある程度の利益を上げたことが起源で、外注管理の延長にファブレス企業が見えて来たからだ。外注管理もファブレス企業も製造元に丸投げで無く自社のやるべき事項を実行する事が重要だ。(平成27年2月19日 日刊工業新聞掲載)

ISOは経営そのもの

品質向上・利益拡大に全力/業務分担明確化実効性高める

   永井 守(東京支部)

時々、ISOを取得するだけで当社は満足していると言われる方がいる。ある業界ではISOを取得しているだけで請負単価が上がると言う人もいる。またISOの管理体制とモノづくりの品質管理システムは別で、二つの規定で運用していると言う方もいる。
筆者は1970年ころから品質管理を担当し、そのころ日本の品質管理の父と言われた石川馨先生がTQC、TQMを唱え現存する「日本品質管理賞」が品質マネジメントシステムの実行を表彰している。
読者の皆様がご存知のデミング賞は51年に設立。そのデミング賞を手本に米国で87年マルコム・ボルドリッジ賞を設立。その後94年ISO9001が設立され、米国ビッグスリー共通の要求事項のQS-9000と集合され、ISO/TS16949が設立された。
マルコムボルドリッジ賞は、レ-ガン政権が日本の高品質で売り上げが落ち、それに対応するため設立した。この流れからマルコムボルドリッジ賞やISO/TS16949、ISO9001は品質を向上させ、売上・利益を上げるための品質マネジメントシステムだった。
ところが、冒頭のように形式のみの管理に徹している企業がある。ISO事務局員を置き、目標管理・内部監査・マネジメントレビュー・文書管理等管理工数を発生させているが、品質を向上させる活動を実施せず、利益を上げるための活動になっていない企業だ。
それではどのようにしたらこのムダを失くすことができるのか。ISOの取得有無にかかわらず読者の社内で、業務分担が不明確で問題解決が進まない経験をお持ちではないだろうか。ISO取得に関係なくこの業務分担を明確にすることが業務を遂行する上で必須事項だ。
この業務分担を明確することで、問題は解決し、利益も上がりISOも取得可能となる。業務分担が明確になると、顧客要求仕様を設計部門が図面を作成し、作成された図面を製造部がデザインレビューを実施、量産評価分析を品質管理部は実施する等部門間の情報処理内容を明確した品質保証体系図を作成する。
これが品質マネジメントシステムの全容で、企業の利益拡大・会社存続するために何が必要で、何を実行するか、それにはどのような組織を構築するか、至極当たり前の作業がISOだ。(平成27年2月26日 日刊工業新聞掲載)

21世紀の経営として生まれた「超・図解経営」上

図解で「難しい経営」がカンタンになった
理論・実践・実務三位一体/経営の基本を図解・体系化

   山本英夫(南関東支部)

安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」もいよいよ正念場を迎え、消費税再増税問題も抱えながら、景気立て直し策として、中小企業政策と起業・創業支援に乗り出した。
そこで改めて課題となるのが、経営の原理原則と基本の啓蒙普及と、その在り方・進め方だ。日本には、『エッセンシャル版マネジメント』(ドラッカー著)のような経営の教科書的ものが少ない。あったとしても、中小企業の経営者や従業員のみなさんには分りにくいものとなっていることが多い。
また、基本的な用語解説やマーケティングやセールスの本、会計経理の本、経営・事業計画の立て方や目標管理の本などが多く、原理原則的・体系的に書かれていて、分りやすく実践実務的なものは少ない。
とりわけ、中小・小規模企業は、「人・物・金」において、ないないづくしなのが現実だ。そこを何とか、キッカケをつくって成長の善循環に入ってほしいと切に願う。今までよりも少ない時間で学べる、または教えられる、原理原則的かつ体系的に構築された、分りやすくて実行しやすい内容のものが求められている。そして、次の学びにつながっていくような、広さ・深さ・高さのある内容であることが望まれる。
シンプルでわかりやすくて、人生にも生活にも、仕事にも役立って、実践に移しやすいプログラムが今ほど求められている時はない。「進化した、新しい経営」への模索が始まっている。荒削りでいいから、一石を投じる「新しい経営」が必要だと思う。
そのようなニーズの中で、一つの試みとして構築したのが「超・図解経営」だ。○と△と□のたった3つの基本的な図形を基にして、経営の基本を図解し、その上で難しい経営の内容や手法についても補助線や補助図を用いながら、短時間でわかるような体系と内容となっている。
さらに、それらと連動したメモの書き方、アイデアの出し方、企画・計画の立て方などの技術とツールまで含めた理論と実践と実務が三位一体となった体系となっており、実践的な体系として構築された「新しい経営」の世界が広がっている。(平成27年3月5日 日刊工業新聞掲載)

21世紀の経営として生まれた「超・図解経営」㊥

○△□で視点で、「難しい経営」がオールイン・ワン
シンプル経営実践→成果/「基本」「目標」「行動」で定義・構築

   山本英夫(南関東支部)

「見える経営・わかる経営・できる経営」。それが「超・図解経営」の3大方針。そして、基本テーマは「世界一シンプルな経営の実践で成果を上げる」ということ。「世界一シンプルであるためには、どうあればいいか」、「実践的にあるためにはどうあればいいか」、「成果につなげるにはどうすればいいか」。
そして、「三つの言葉で経営を定義することができれば世界一シンプル」という仮説からスタートした。「基本」「目標」「行動」という誰でも知っている三つの言葉を選び出し、それらを用いて仕事にも経営にも人生にも当てはまる経営の定義を行った。「経営とは、基本を徹底して、目標を明らかにして、行動すること」。
これをさらに分かりやすく、一目で見てわかるように図形化している。基本は□、目標は○、行動は△というように。その上で、○△□の3つ図形を用いて、基本的な二つの経営図解を試みた。一つは「○△□のおでんの図」、一つは「○△□の経営ピラミッドの図」。前者は、○△□の三つの図形をおでんのように串刺しにしたもの。後者は、○△□の三つの図形を一つずつずらして重ね合わせてピラミッドのようにレイアウトした。
体系的な「図解経営」を構築するためには「○△□の経営ピラミッド」の方が具合がよく、それをベースにして六つの経営基本項目を図解。①基本経営図②ライフワークバランス経営図③CS経営図④目標管理経営図⑤SWOT分析経営図⑥理念経営図である。さらに、会計の基本がわかる図解や、ドラッカーが分かる図解も用意している。
次に、「生きて、動いて、変化する経営」を表現するにはどうしたらよいか、と考え、将棋にヒントを得て、カード化した。カードにすれば、動かしながら説明ができる。さらに、実践的であらんとして○△□の積み木を用いた経営の世界にもチャレンジしている。
また、成果につなげるため、交流分析やポジティブ心理学、選択理論心理学や感性論哲学なども研究してきている。
さらに、○△□で経営を図解で分かりやすく説明するために、いろいろ調査研究して分かってきたことは、それが禅の世界(「仙厓和尚の○△□乃書」)や現代アート(フランスの芸術家ピカビアの「支える」という作品)にも通じる世界があり、思っていた以上に広がりや深みがあるということだった。経営は、芸術であり、人間学でもある。(平成27年3月12日 日刊工業新聞掲載)

21世紀の経営として生まれた「超・図解経営」㊦

図解を超えて、広がる新しい経営の世界
カード・積み木使い分かりやすく/20時間「経営学習の革命」

   山本 英夫(南関東支部)

「超図解・・・」と言うタイトルの本がパソコンや経営の分野でたくさん見受けられるが、今回紹介している「超・図解経営」は、その類とは一線を画する内容となっている。単なる図解を超えて、新しい経営の体系を構築した画期的なものだからだ。
一つ目は、図解を超えて、カードという平面的なツールを用いて複雑な経営を分りやすく解説しているということ。アイコンを付して「見える化」したカード化することで、生きて、動いて、変化している経営を表現している。
二つ目は、図解を超えて、積み木という立体的なツールを用いて複雑な経営を分りやすく解説している。○△□の積み木を用いて、「触れる化」して、人間関係の在り方や概念的な経営理念の世界や人間存在の世界について身体でわかる加速学習理論(五感学習)も採り入れてつくられている。
また、経営シミュレーションゲームともリンクしており、経営のタイミングやバランスを体感できるプログラムも用意されている。
三つ目は、図解を超えて、日々の現場実務に使えるメモやノートという知的生産ツール類とその技術も含めた実践的なトータルな経営体系となっていることだ。
その教育学習体系は、「感性論哲学」という哲学と「加速学習理論」をベースとして、その上に交流分析などの心理学分野の学問的世界、さらにその上に「超・図解経営」の世界が展開されている。グレード構成になっており、「超・図解経営4級(4講座から構成)」「同 3級基本(4講座)」「同 3級実務(4講座)」「同 2級(4講座)」「同 1級(4講座)」「同 特別講座(13講座)」「同 インストラクター講座」という具合になっている。
 たった一つの「○△□の経営ピラミッド」の図を起点に、経営の基本と原理原則をベストシンプルに学ぶことができるようになっており、今まで学んだ経営理論や経営手法の総括もでき、それらを活かして使えるように配慮されている。
すべての企業にとって必要な経営の基本と原理原則と実践実務を支援できるものとなっている。しかも、従来200時間はかかっていた内容を10分の1の20時間ほどで学ぶことができる実践的なものだ。ここから「経営学習の革命」が始まろうとしている。(平成27年3月19日 日刊建設工業新聞掲載)

日本の今後「海外進出の条件」

ベトナム進出経験に基づく/日本式海外進出条件の提案

   佐藤富夫(南関東支部)

毎年、年初に「世界的、日本的な政治・経済・気候変動」が発生している。2014年からの世界経済のデフレ化の中で、回復基調を探し求めた日本経済のデフレ時代の方針転換として、国内回帰が始まっている。「止まって居られない、為替・金融」時代に円安・法人税軽減・脱石油(新エネルギー水素)経済・隣国(中国・韓国)の内外不安・中東・ウクライナの政変ととどまらない。世界政治経済に新たなチャンスを求めた選択が「国内回帰」だけで、グローバル企業として、世界で信頼され、世界で必要な企業となりうるのであろうか。
グローバル企業は国内の0.2%しか存在していないと言われる。この企業だけに視点を当てることに99.8%人的経済の影響に余り効果のないことを「アベノミクス」が昨年証明できたはずで、真のグローバル、国際化は数十億~2000億円企業の日本文化を発展させる経済行為を海外で実践することではないかと考えさせられる。
大企業が海外に出ることは日本経済・世界経済にも、大きな影響が出ず、マスコミの扱いやすさだけが紙面を賑わせる、玉虫色の扱いのためであることは多くの納税者は理解している。
中小・中堅企業が大企業を目指す中で不足するもの(市場・人材・資金・資源)を活用する場が「グローバル」であり、日本に本社があり、海外に営業・生産部門があり、都合の良い参入を「グローバル」という時代が終焉したと感じる。
日本生まれ、ベトナム育ち、アメリカ・EUで大勢する企業が地方の田舎で「スタート」することが日本の価値でありたい。(平成27年3月26日 日刊工業新聞掲載)

風土改革は上杉鷹山に学べ

失敗を糧に立て直し/TQC=TQMの思想に通ず

   永井 守(東京支部)

近年「風土改革をしたい」、「制度を変革したい」と良く聞くし、インターネットでもそのワードを探す事は容易だ。風土改革を望む企業はどのような自社内の雰囲気・状況を想定しているのだろうか。筆者はこの風土改革ですぐ浮かんでくるのが、童門冬二さん著書の「上杉鷹山」だ。上杉鷹山は、九州・日向の秋月家(3万石)から17歳で米沢藩に婿養子に入る。
米沢藩は武田信玄と川中島で戦った上杉謙信が起こし、2代目の景勝の時に豊臣秀吉から120万石を賜る。関が原の合戦では、石田三成に味方したため、30万石に減らされ、さらに4代目藩主が急死したため、5万石に減らされる。上杉鷹山が婿養子に入ったとき、藩は火の車で、藩を返上することも考えていた。
鷹山は、藩主でありながら一汁三菜、木綿の着物を着、知能障害のある奥方と側室も取らずに、一生を過ごした。その中で鷹山は改革を行うが以下の原因で失敗する。①改革の目的が不明確、全員に趣旨が不徹底②改革の推進者が一部の人間③一方的おしつけ、改革される側の痛みに深い理解と同情を欠く。そこで、鷹山は④民を富ませる(心、金銭面、厚生)⑤改革が楽しいものと実感させる⑥士農工商が身分を忘れて一体となる⑦若き人材を登用する、を実行し見事に財政を立て直した。
以上から読者の方はピンと思いつく事がないですか。日本の品質管理の父を言われる石川馨先生著書「TQCのはなし」だ。この小冊子には鷹山が行った事項の現代版がある。①の「改革の目的が不明確、全員に趣旨が不徹底」は方針管理・目標管理になる③の「一方的おしつけ」は全社員が自主的に現状の問題点を分析し、改善活動を行う④⑤は改善に対する公平な報酬を与え全員社員のやる気を出させ⑥は当に全員参加のTQCだ⑦は人事管理を重要視し、人材登用を実施することだ。
昨今ISO品質マネジメントシステムの形骸化が叫ばれ、ISO取得企業に有益でないと言われる方があるが、ISO品質マネジメントシステムの要求事項はTQC=TQMの思想で作られたシステムである事を強調する。( 平成27年4月2日 日刊工業新聞掲載 )

五つのコアツールの必要性

ISO規定に「品質計画書」/保証・経営士も重要と痛感

   永井 守(東京支部)

読者の方々がご存じのISO/TS16949(自動車生産及び関連サービス部品の品質マネジメントシステム)で要求されている五つのコアツールは形式ではなく、品質保証上更に経営上必要である事を痛感しましたのでご紹介する。
ある企業に勤務していたころ海外から部品を購入することになった。製品・部品を購入する場合は、ISO9001品質マネジメントシステムの規定により、品質保証部門がISO/TS16949で要求されている五つのコアツールで「品質計画書」を発行することになっていた。購買先を選定する部門がその規定を無視し、購入を始めた。
購入開始にあたって購入する企業が同行して購入先の工程監査を実施し品質管理上では問題ないステップを踏んでいたが、問題が発生した。購入する企業も日本では名の知れた一流企業だったが、購入先の工程監査を実施とともに、筆者が勤務していた企業の「品質計画書」の有無を確認していなかった。購買先を選定する部門は「品質計画書」を作成せず購入を進めてしまった。
ここで、「品質計画書」の内容を説明しておこう。「品質計画書」は製品を実現するために実施すべき事項をチェックシートのように記載した書式で、この「品質計画書」を発行し、「品質計画書」の記載事項を確実に実施する事で大きな品質問題の発生を防止する事が可能となる。
例えば購入開始には、①購入仕様の取り交わし、②試作評価の実施、③試作評価データを元に統計的手法を活用し、品質保証するためにQC工程図・QC工程表を作成、④QC工程図・QC工程表の審査、⑤工程監査の実施、⑥外観良否限度見本の設定、⑦、⑧・・・などだ。
この時大きな問題となったのが「外観良否限度見本の設定」作業を怠り製造元は良品と判断した部品を大量に製造してしまった。
一方購入側は不良判定で、商品として出荷できないために大量の不良在庫を抱え出荷がストップしてしまった。こうなると、不良発生分を当初の納入計画に間に合うように工程を再構築しますが、間に合わない。「品質計画書」を作成せず運用したために、新製品の市場出荷は大幅に遅れることになった。(平成27年4月9日 日刊工業新聞掲載)

品質と生産連携管理で利益を出す

良品率の把握が第一歩/工程ごとの条件正確に記録

   永井 守(東京支部)

1.生産管理と品質管理を連携した管理システムの必要性
 一つのエピソードを紹介します。数十年前職場巡回をしていた時、生産管理の担当者が必至の形相でケーブルの圧着作業をしていました。その人に「何故、ケーブルの圧着をしているのか?」と尋ねると、自分の生産管理業務のミスによりケーブルの納期が間に合わず、そのリカバリー作業を製造部に断られたと言う。
圧着作業には技能認定が必要であり、未認定者では圧着不良を発生させます。結局、そのケーブルは納期には間に合ったが、納入後不良が多発しました。結果的にそのクレーム対応で自社の生産工程は大混乱し、顧客からは損害請求の要求を受けました。
しっかりとした生産管理を行っていれば、このようなことにはならなかったはずです。生産管理で人的ミスを極力発生させないシステムが存在すれば、先ほどの問題を防止できたに違いない。また、立派な生産管理システムを持っていても、歩留まりが予定を下回ると生産計画は計画倒れとなり、納期遅延が発生したり、納期確保のバッファー用に造り貯めをしたり、結局、利益が減少する方向に進んでしまいます。
2.品質(歩留まり)が悪ければ、生産計画は絵に描いた餅!
2-1.各工程の良品率を把握する
ひと言で「品質管理」と言ってもその範疇は幅広く、拡大して行くと経営までつながっていくことになります。
品質管理の第一歩は、何はともあれ良品率の把握、不良発生分析から始まる。筆者も入社した当時は、良品率の把握で10工程もある工程毎の良品率を、どのようにして正確なデータとして集めるかに頭を悩ませていました。
熟考に熟考を重ねた末に考案したのが「トラベルシート」で、このシートによって各工程の良品率と発生不良項目を正確に把握することに成功しました。
このトラベルシートに工程毎の「製造条件」を記録しておくと、製造条件と良品率との関係を分析する事が出来き、製造条件の変化値と良品率の関係を創刊分析すれば、品質改善することが可能となります。

管理する限界値をオーバしそうになったら、製造条件を管理限界内に引き戻すと目標とする良品率を確保する事が出来ます。

(日本経営士会、永井守、0422・53・2979) 

品質管理の歴史

全部門が不良発生予防/利益上げる目標管理で企業繁栄

   永井 守(東京支部)

筆者が昭和44(1969)年に大手電気会社に入社、磁気ドラム(HDD開発以前の記録装置)の検査部門に配属された。磁気ドラムは、直径が60センチメートル位の銅パイプに磁性メッキしたものだ。
1. 全数検査時代
磁気ドラム装置の検査で、電源ケーブルを接続し電源を入れると、みごとにヒューズが飛んだ。別のケーブルでもヒューズが飛んでしまった。
この時代、納入先の品質が悪く、受入検査で全数検査を実施後後工程に供給する考えが主流だった。
2. 工程管理重点時代
磁気ドラム検査部門を経験後、ハードディスク駆動装置(HDD)に搭載される磁気媒体の品質管理を担当することになり、最初の業務はNTT(当時日本電信電話公社)の工場調査を受けるための準備だった。NTTの工場調査で最も重要なのが、QC(品質管理)工程図の審査だ。
QC工程図は製造工程で管理を十分することで、不良を失くし出荷品質を向上させる目的で活用するものだ。このころになると、完成品を全数検査にて不良を除去するのではなく、工程を管理することで、不良を作らないとの考え方だった。
3. 設計品質の要求が高まる
QC工程図を作成し、不良削減・不良撲滅が進んだが、良品率が向上しない。この原因は、設計が不十分だったことによる。当初HDDは磁性体を塗料状にしてアルミニウムの円盤に塗装し、電気炉で焼付をしていた。塗装室のダスト管理値や湿度管理値が重要だが、その当時これらの管理規格が設計されていなかった。ISOの要求事項に設計審査が詳細に記載されているのは、設計が重要である事が明確に示されている。
4. 品質マネジメント・システムの必要性
87年、米国レーガン政権は、日本の高品質におされ、米国企業の競争力が低下したこと憂い、マルコムボルドリッジ賞を設立した。同賞は品質不良を発生させる部門は設計や製造・検査部門のみではなく、社長以下全社員が品質向上活動を実施する必要があることをうたっている。これが石川馨先生が唱えたTQC=TQMだった。筆者は、ISO9001:1994年第2版以前に既に品質マネジメント・システムは存在していたことを強調する。全部門が不良発生を予防し、利益を上げる目標管理を実施する事が企業の繁栄につながる。(平成27年4月23日 日刊工業新聞掲載) 

中東ビジネスと安全リスク管理(上)

有望市場と裏腹/テロ・紛争で怖い地域の感覚広がる

   長谷川正博 (東京支部)

 BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)やVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)と並ぶ有望市場として捉えられているMENA(中東北アフリカ)市場。中東地域は、言語・宗教・文化の面で同質性が高いため、一つの大きな市場として捉える事ができよう。
一般的に、ある市場が有望かどうかを検討する際、①市場規模②日本製品を購入できる層が存在するか③競合状況はどうか④日本製品の位置付けや評価、などが判断基準となる。
ちなみに市場規模を表す一つの指標である人口数は、イラン、トルコ、イスラエルの非アラブ諸国を除き、GCC(湾岸協力会議)加盟諸国が約5000万人、これ以外の中東アラブ諸国で約1億人の約1億5000万人(2014年時点、IMF〈国際通貨基金〉データによる)であり、1人当りGDP(国内総生産)は最高のカタール(9万4264ドル)から最低位のイエメン(1,594ドル。共に15年時点値)まで幅があるが、一般的にはGCC諸国など「金持ちの国」との認識がある。
同地域の特徴としては、人口増加率が高く若年層が多い、一定の富裕層が存在し今後中間層の増加が見込まれる、日本製品の評価が高い、などがあり、将来的にも日本企業にとっての有望市場であると言えよう。
市場としての魅力とは裏腹に、従来、中東は仕事がやり難い地域という見方が強かったものの、近年では中東諸国がよくなってきたとの評価が高まる傾向にある。世界銀行と国際金融公社が「仕事のしやすさ」という指標を発表しており、10年版では中東諸国の「仕事のしやすさ」指標の順位は、GCC諸国の中ではサウジアラビアが世界全体で13位にあり、バーレーン20位、UAE33位、カタール39位と続く。
世界の国数は184カ国であるから、この4カ国は上位2割(約40カ国)に入っている。また、経済自由度(日本22位)はバーレーンが12位を獲得、カタール25位、UAE35位、オマーン47位、クウェート71位、サウジアラビア74位と上位クラスにランク付けしている。
ただ、残念ながら、このような評価に水を差すような、昨今の武装集団によるテロの頻発、スンニ派大国サウジアラビアとシーア派の盟主イランの「代理戦争」の様相を呈しているイエメン情勢などのため、「危険で怖い地域」との感覚が広がりつつあり、同地域に拠点を有している企業や、進出を計画している企業に深刻な影響を与えている。(平成27年5月14日 日刊工業新聞掲載) 

中東ビジネスと安全リスク管理(中)

危機管理方針・対応を明確化/正確な情報取集網構築

  長谷川正博 (東京支部) 

 せっかくの有望な市場性を有している国・地域にもかかわらず、「危険が怖いから近寄らない」、「君子危うきに近寄らず」との立場をとり、当該市場を放棄することはビジネスの可能性を潰すことにもなり、その危険度を十分認識した上で、企業としての危機管理体制の整備、個人の危機に対する自覚と自己の安全管理を徹底することにより、ビジネス展開を図ることが望まれる。
海外における危機には二つあると言われる。まず「自分が招く危機」。これは自分の方から危機的状況を誘致しているもので、本来、避けることができるものや、予防的行動をとれば防げるものである。
例えば、治安の危ない時に危険な場所に行ったり(典型的な例としては、2004年4月「渡航延期勧告」が出されていたイラクに入国し人質となった男女3名の事件)、現金や貴重品を不注意に身に付けるなどである。
故意によるものとしては、現地の人達の敵意や反感を招くような態度や言動をとることである。二つ目は、向こうからやってくるもの、避けることができない「招かざる危機」(例;本年3月にチェニジアで起きた博物館襲撃テロ事件)。このような危機に対しては、それによるマイナスの影響をできるだけ少なくするノウハウや、サバイバルスキルを身に付けておく事が必要である。
 危機管理への対応は企業側が行うべきものと、個人が自覚し、実践すべきものとがある。企業は自社の海外駐在員や出張者に対して「安全配慮義務」を負っており、適切な危機管理を実行する責務があり、現地側の勤務状況やリスク環境を適切に把握し、必要な安全対策を実施しなければならない。
企業が整備しておかねばならない体制としては、危機管理に対する方針の明確化、危機対応体制の構築・維持及び適宜な見直し、情報収集・分析及び通知、関連マニュアルやガイドラインの策定と整備・通達、危機管理教育の徹底等であり、特に大前提となるのが正確な情報の収集と客観的な分析及びその通達・勧告の実施である。
情報の収集にあたっての情報源には次のようなものがある。「情報は量より質である」ことも銘記すべきである。
① 部(地域担当管理者、現地拠点責任者、本社スタッフ)、②取引先(取引銀行や取引先企業)、③専門家(海外の会計事務所、弁護士)④公的機関(業界団体、大使館・商工会議所・JETRO(日本貿易振興機構)など公的機関、IMF・世銀など国際機関)、⑤一般の情報源(新聞・テレビ、研究者等)などであるが、日本本社と現地側とでそれぞれの特性に応じたネットワーク構築が望まれよう。(平成27年5月21日 日刊工業新聞掲載) 

中東ビジネスと安全リスク管理(下)

「セルフ・ディフェンス」が基本/私生活面でも留意を

   長谷川正博 (東京支部) 

危機対策の基本は、危険を遠ざけ、遭わないようにすることだが、そのためにも個人一人ひとりが危機意識を持ち、「(日本も最近は危険性は高いが)海外は日本より何倍も危険だ」ということをしっかり認識することである。業務上だけでなく私生活面でも、滞在国や地域の文化、法令、宗教、価値観等を正しく理解し、現地の人達に接する努力を怠ってはならない。海外では自分の身は自分で守ることが安全対策の基本(あくまでも「自己責任」という認識が必要)だ。
滞在・出張先国の政情や、地域の治安状態に通じておく事も必要である。的確な情報収集は個人的なトラブルを未然に防ぐことにもつながる。欧米での安全保障や危機管理の専門家の間では、”Think unthinkable”(考えられないことを考えろ)、とか”Never say NEVER”(決して起こらないとは決して言うな)が合言葉になっているという。
 海外赴任や出張する場合、個人として留意すべき事項としては、①「セルフ・ディフェンス」に徹する②日本にいるのと同じ安全感覚を持たない③現地の人・スタッフなどとの信頼関係を築く、反感をそそるような言動は避ける④現地では、目立たない、行動を予知されない、注意を怠らない、を常に念頭において行動する⑤現地の治安状態に通じ、どこが危険か、何が危険かを知り、何を予防したらよいかを学ぶ、また、⑥現地の治安状況や犯罪対策に通じておくことも大切である。
なお、テロに巻き込まれない予防策の1つとして、現地の政府・軍・警察関係施設、欧米諸国(特に米国)の在外公館、宗教関連施設、公共交通機関施設や多くの人が集まる場所などにはなるべく近づかないように注意すべきであろう。
 前述したように、企業側、個人側双方の体制整備・自己認識をベースとし、有望市場である中東市場を開拓・拡大しながら、自社製品・サービスの拡販を図っていくことが必要であろう。現在中東地域に居住している日本人は、外務省「海外在留邦人数統計(14年度)」によると、GCC(湾岸協力会議)6カ国で5,900人、これ以外の中東アラブ諸国で460人であるという。
居住国ではUAE(アラブ首長国連邦)が最多。これから当該市場開拓を行う計画があり、拠点設置を模索している企業は、日本人としての生活のしやすさ、外国企業への規制の少なさ、賃金レベルや生活コスト面、比較的自由な国柄であること、インフラ面、サウジアラビア東部とコ-ズウェイで結ばれているなどの利点を持つバーレーン(中東のシンガポールの位置付け)が適切ではないだろうか。(平成27年5月28日 日刊工業新聞掲載)  

障がい者雇用で人材不足解消

グローバル企業の独自理念/障がい者雇用率だけには縛られない

佐藤 仙務(中部支部)

消費税増税時にメディアは盛大にその話題を取り上げた。しかし、二年前に障がい者の法定雇用率が上がったことはほとんど報道されなかった。
現在、障がい者雇用率は民間企業で約2%。50人に一人は障がい者を雇わなければいけない。しかし、多くの日本の企業は、この目標数値を達成できていない状況だ。なぜなら「障がい者を出来るだけ雇いたくはない」と考えるのが企業の本音だからだ。
しかし、安倍政権の経済政策「アベノミクス」や東京オリンピック・パラリンピック誘致の決定によって、建設業を中心に仕事量は回復傾向にある。だが、少子高齢化なども含め、人材不足を焦り出す企業が続々と増えてきた。そこで、日本の企業や政府が考えたのが「外国人雇用」だ。
現在、外国人の優秀な若い人材を積極的に採用する企業が増えてきている。もちろん、それは決して間違いではない。なぜ、企業は「日本内部」から人材を探そうとしないのか。そこで今回、私がご紹介したいのがグローバル企業「ネスレ」の障がい者雇用への取り組みだ。ネスレ日本では、主に下記の2点を軸に「障がい者雇用」への施策を独自に編み出している。
1 ダイバーシティ(多様性)と障がい者雇用
さまざまな違いをもつ社員が集まった組織こそ新しい発想やイノベーションが生まれやすいと考え、意欲ある社員には性別、国籍、年齢、障がいの有無を問わずに成長の機会を提供したいと考えている。また、法定で定められた障がい者雇用率だけに縛られるのではなく、障がい者の個人個人の意欲や能力を発揮できる場を提供したいと考え、具体例を挙げると、「ネスカフェ アンバサダー」(オフィスでマシンを無料で使用できるサービス)で、自ら進んで開拓し、成約させた社員もいるという。

2 柔軟な勤務体制と個人業績を重視した評価システム
誰もが働きやすい環境を整えるべく、在宅勤務や時短勤務などの柔軟な勤務体制と、個人の業績を重視した評価システムを導入。
「障がい者雇用」は法律によって縛られて渋々やるものではない。グローバル企業「ネスレ」が気付き始めたように、企業側に「メリット」があるからこそ積極的に行うものなのだ。そうやって、障がい者雇用が増えれば、仕事に困っている多くの障がい者が救われる。
人材不足で「外国人雇用」ばかりに目を向けていた日本企業も救われる。ウィンウィンの関係になるのではないだろうか。

(平成27年6月4日 日刊工業新聞掲載) 

インターナルブランデイングの運用

戦略マップで部門役割明確化/PDCA,人事考課にも反映

   近藤 肇(中部支部)

 経営戦略としてのブランデイングは極めて重要なファクターであり、企業内にブランデイングの構築を図ることは、BSC(バランススコアカード)経営の管理手法である社内プロセスの視点及びイノベーションの視点から具体化を図る上にも重要だ。
これを、インターナルブランデイングと言う。(ちなみにインナーブランデイングとは同義語である)
例えば、大学のブランド化を目指すプロジェクトについて、目標展開の枠組みとして、
BSC(バランススコアカード経営)を活用する。すなわち、目標展開を全学レベルで導入し、○年後をゴールとする戦略マップを作成して各部門の役割を明確にして具体化を図っていく。
① 就職センター、入学センターなど…顧客の視点として指標を作成する。
② 学内事務センター…内部プロセスとして学内事務の効率化を図り、顧客からのクレーム、要望に応答することを目標とする。また改革、改善に関する提案を指標化する。
③ 研究開発部門…社会、消費者のニーズに対応した研究テーマが「真の役割」である
 (例)TLO(大学の技術移転)…大学が産と学の「仲介役」を果たす組織として重視されている。
④ 経営管理部門…財務諸表に基づいた経営管理をする。
⑤ IT部門…情報共有の実現~生産性、情報の共有化等全体最適を目指す。
それらの各指標体系の構築はまさにインターナルブランデイングの重要なプロジェクトである。そしてマネジメントサイクルに則って、P(プラン)~D(ドゥ)~C(チェック)~A(アクション)の一環として人事考課システムにも反映する必要がある。
人事考課規定及び人事考課表に具体化しますが、一般的には以下のような考課項目に従って実施する。
① 業績考課…経営課題に対する成果を検討する。幹部、管理職は数値目標が中心となるが重点課題としてブランデイングを考課項目に取り入れる。
② プロセス考課…目標管理にブランデイングを考課要素とする。
   部下育成、組織管理、職務基準等にインターナルブランデイングの浸透度を評価する。
③ 能力考課…ブランデイングの習熟度、トレーナーとしての自己啓発が評価の対象になる。(平成27年6月11日 日刊工業新聞掲載) 

情報漏洩の原因と対策

危険性を徹底分析/品質管理同様組織で漏洩防止を

  永井守(東京支部)

2005年1月―14年11月の間にウィキペディアで集計した情報漏洩は87件にも上る。各企業の多くは既にISMSすなわちISO/IEC 27001を取得し情報漏洩防止対策は取られているはず。それが何故情報漏洩するのか。
ISO 14001では「環境要素抽出表」なるものが存在し、企業活動(R&D、商品開発、設計、量産評価、QC工程表の作成、工程監査、量産開始、受注、梱包、輸送、設置、保守、廃棄処理など)の各活動で環境に悪影響を与える要因を「環境要素抽出表」で抽出し、環境に悪影響を及ぼさないように管理をしている。ISMSでもこのような考え方の分析表を作成し、運用すれば情報漏洩は防止できる。
新聞・テレビで報道された退職社員が中国企業に情報漏洩を行った事件は、社員出勤時に情報を持ち出す危険性を徹底的分析し、漏洩防止対策を怠っていたものと推測している。
例えば、社員が社外に持ち出すことのできないように、複写可能な媒体持ち込み・持ち出しを防御できる体制でなかったと言える。
また、退職後過去使用していたパスワードで社内システムに入り込むことができないようになってなかった事も考えられる。
他の事件で、業務委託先の社員が情報を持ち出した事件もあった。これは委託先への管理規定が不十分であった事が考えられる。社内で情報漏洩防止対策を講じているのなら、同じシステムを委託先に適用すれば良い。
筆者の過去経験で、製品の生産が不足しているために生産管理部門が独自の判断で下請け企業に生産を依頼したことがあった。生産を委託する場合、工場・作業員・設備・工具の確保は生産管理部門が確保可能だが、不良発生防止や情報漏洩の防止を委託先に義務付け・管理徹底する指導力はない。
生産管理部門は生産委託をする際、関係部門に事前通知し、不良発生防止や情報漏洩の防止の構築依頼を行うことが重要だ。
組織で業務を行う事が重要で、これらの一連の体制作りが品質マネジメントシステム。
ISMSも同様なシステムを構築していけば情報漏洩は発生しない。
管理体制の構築はISO9001の品質マネジメントシステムの考え方を導入することが重要と考えている。(平成27年6月18日 日刊工業新聞掲載)

革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)公募について

イノベーション創出支援/独自技術持つ中小にチャンス

   市木 圭介(南関東支部)

独自技術を保有する「中小企業」のオーナー社長に、注目していただきたい。内閣府が公募した「ImPACTプログラム・マネージャー」(http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/about-kakushin.html)だ。
公募は終了したが、「実現すれば産業や社会のあり方に大きな変革をもたらし、わが国はもとより世界を驚かせるような革新的なイノベーションの創出を目指すもの」であり、「PM 採用数は、3―4名程度を上限とし、PM1人あたりの研究開発プログラムの金額規模は総額10 億円程度から15 億円程度を目安とする」(公募要領)。
Q&Aを通読すると大学の研究者を念頭にした項目も多いが、本件プログラムは、むしろ独自技術を保有している中小企業に適していると思われる。「自社の独自技術を活用し、大がかりに資金投入して、(これこれ)夢のある開発に取組みたいが、小さい会社ゆえに資金調達できない」。私のコンサルティング経験のなかで、中小企業オーナー社長がこのように語られたことは一度限りでない。
PMの雇用形態を見てみよう。科学技術振興機構とPMは雇用契約を結び、勤務地は同機構(東京)、任期は研究開発プログラム終了時まで(最長平成31年3月31 日)、給与は年俸制(約2000万円)を基準。なお、「PMのエフォートは、企業が100%、大学が90%」とある。「エフォート率」は、一般のビジネスパーソンにはなじみがないが、国の競争的研究資金に応募する際求められる指標。研究者1年間の仕事時間100%とする時、応募研究にどの位時間をあてるか示すものだ。中小企業では当然に、有能な技術者研究者を出向させ、研究開発に専念させることができよう。
また、研究会やワークショップにかかる費用のうち、会場借料など必要経費を除き、基金の性質上支出できない使途もあり、出向元(中小企業)がある程度資金サポート可能であろう。
本稿まとめるにあたり、補助金・助成金については、経営士のノウハウを活用し、合わせて行政書士として事業者申請サポートに積極的に取り組んで参りたい。(平成27年6月25日 日刊工業新聞掲載)

中小・小規模企業にとっての「環境経営」

コンパクトエコシステム推奨/理念掲げPDCA回す

   福井 浩(南関東支部)

 最近のニュースには、「環境経営」という言葉が、目につくかと思う。経済産業省の関東ブロック機関であります関東経済産業局でもこの言葉を使い企業に啓蒙している。例えば環境経営セミナーの開催、環境経営テキスト・事例集の発行等を行っている。環境経営を実践する方法には環境マネジメントシステム導入が近道であると考えられる。
大企業は既に環境マネジメントシステムの導入(例えばISO14001の導入)などで先行しているが、中小・小規模企業は環境マネジメントシステムの導入は余計なものと考えられがちだ。しかし環境マネジメントシステムの導入を経営改善に役立てている企業も多数ある。
また環境問題への対応は企業の存続を左右するとも言われている。そこで日本経営士会では中小・小規模企業向けの環境マネジメントシステム(EMS)の構築をしている。  
このEMSの名前はコンパクトエコシステム(CES)®と言います。コンパクトエコシステムは他のEMSと同様、環境理念を構築「プラン(計画)、ドウ(実行)、チェック(評価)、アクション(改善)」のPDCAサイクルを回すことにより目標を達成、経営上の課題解決にも活用可能なシステムだ。
企業の理念を作りPDCAを回し全社で取り組むなどして環境目標など達成すれば体質改善につながる。似た例では経営革新計画を作りPDCAを回している企業は通常企業の黒字割合が33%に対して78%が黒字化達成をしている。この様に企業には理念を作りPDCAを回す習慣付けが如何に重要かが分る。体質改善の切り口としてコンパクトエコシステム導入が有効な手段かと考える。
CESのガイドラインは分りやすくするために20ページ足らずにまとめている。CSR(企業の社会貢献)にも取り組めるように編集してありる。費用は登録料5万円、更新料は2年ごと3万円、支援料は1時間1万円でリーズナブルだ。
  中小・小規模企業にとっての「環境経営」をこれから実践しようとお考えの方は全国に「環境経営士®」がいますが、日本経営士会に連絡されれば地域の「環境経営士®」を紹介することになっている。(平成27年7月2日 日刊工業新聞掲載)  

「環境経営士」の活躍

中小向けシステム普及/環境保全・社会貢献など支援

   福井浩(南関東支部)

 最近「環境経営」という言葉が定着してきた。この言葉の語源を見てみると、1992(平成4)年ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された「地球サミット」において21世紀に向けての国家と個人の行動原則である「環境と開発に関するリオ宣言」採択された。
これに伴い、設立された国連環境計画(UNEP)がISO(国際標準化機構)に対して環境に関する国際標準化への取り組みを要請した。96(平成8)年9月に世界初の環境マネジメントシステムの国際規格であるIS014001が発行された。
この時から環境マネジメントシステム(EMS)の言葉が長く使われていたが、日本経営士会はいち早くこれからの企業にとっては環境面を考えない企業は存続できないであろうと考え、「環境経営士®」という資格を作り、従来の経営に環境面を加えた環境経営士を養成することとした。
この環境経営士の資格は、環境の全般的な事についての知識、すなわちエコ検定合格程度の知識(ベーシックコース)と従来の経営管理に環境面を付け加えた知識(アドバンストコース)を体得できる様、養成している。アドバンストコースの具体的内容は企業経営の中での環境保全の取組、環境関連法規制、LCA分析と活用、経営マネジメントと環境保全、環境マネジメントシステム、環境報告書の作成、SR〈社会的責任〉、企業における環境教育などだ。
「環境経営士®」は全国に約150名おり、企業を環境経営面から支援をしている。また中小・小規模企業でも取り組み易い環境マネジメントシステム:コンパクトエコシステム®の普及活動を行っている。
実際にコンパクトエコシステムを導入された企業は省エネをしCO2を削減、事業系ごみを分別しリサイクルに回し、最終的に廃棄物をゼロにするゼロエミッション活動に挑戦するとか、工場周りの清掃をして社会貢献活動をしている企業も多くでてきた。
このような活動をしている「環境経営士®」の養成は「環境経営士養成講座」を日本経営士会が東京で2カ月に1回開催、地方でも随時開催しているので「環境経営士」で検索をしてほしい。(平成27年7月9日 日刊工業新聞掲載) 

イノシシと地方創生

対策、先ず山林の手入れから/ブナ科木材で6次産業化

   永井 守(東京支部)

最近各地にイノシシや熊そしてサルが人里に出没し、住民を悩ませているニュースをテレビで目にする。筆者が小学生のころこのような現象はなかったと思う。
小中学生のころ、風呂や釜戸の燃料は薪で、小中学生は学校が休みになると山間地でありながら1時間以上かけて薪集めに行くのが常だった。
なぜ1時間以上かけて薪集めに行くかと言えば、近くの山には枯れ木集めがされ、枯れ木がないためだ。
薪で最も母親に喜ばれたのは、火力が強いナラの木だった。ナラの木、これは熊・イノシシが好んで食べるドングリの実をつける。
そして、老木になるとナラの木は立ち枯れとなり、それを見つけて薪にする。
なぜ、ナラの木が立ち枯れになるか、その原因「カシノナガキクイムシ」が羽化しやすい高齢のナラの木に病原菌を植え付け枯れ木にして、ナラの木を巣にして幼虫を増やす。
 (ナラの木はブナ科でシイ、ブナ、カシ、クヌギ、コナラ、ミズナラなどを指す)
 子供のころ、山のあちこちに炭焼き小屋があり、ナラの木を切って炭を焼いていた。暮らしそのものが、熊・イノシシのえさである、ドングリがよく実る環境にしていた。
 わが家のテーブルはブナ科の合板を使用し、なかなか高級感があり満足している。また「カシノナガキクイムシ」が幼虫を飼育するために開けた穴は板に製材した場合、居酒屋などの壁に貼ると風情がある。
 残りの枝は炭に加工する(炭の製造業)か、バイオコークス(工場)を製造する事により新しい産業が発生する。得られた燃料はビニールハウスの暖房になり季節外れの野菜や果物の栽培(近代農業)が可能となる。
これらのイノシシ対策が、第6次産業に変化し、山林の手入れにより河川が富み魚介類が豊富となり、漁業が盛んになり、魚介類の加工・販売・観光に発展していく。
このように、ブナ科の木々を老木になる前に伐採する(林業)ことから始まり、製材業・合板製造業・家具製造業・家具販売業・漁業・魚介類加工業・近代農業・野菜や果物の加工業・販売業・観光に発展する。
これらの産業は日本各地で対応可能で、地方創生に役立つと考えている。(平成27年7月23日 日刊工業新聞掲載) 

中国の若手女性経営者はチャレンジ精神が旺盛

チェーン店戦略・複合店経営/業態開発へ熱いまなざし

   上野延城 (埼玉支部)

2014年の夏に日本への研修で来日した上海交通大学、海外教育学院生総裁コース2回目の研修が3月4日から10日まで、計7日開催された。
テーマは「チェーン店戦略・複合店経営」である。前回同様に研修団への講演と企業訪問・見学への依頼を受けた。参加者の業種は生活雑貨用品や婦人・子供衣料品等の流通業とショッピングセンター・デベロッパーの不動産業の経営者だ。
研修団は男性19人、女性12人で女性が4割で年齢構成も30―40代が中心だ。
1回目のセミナーは「次世代型チェーンストアの経営戦略」で筆者が講演をした。2回目は月刊「商業界」編集長である笹井清範氏による「日本の小売業の変遷とこれからの業態開発」の講演を開いた。
企業視察の一番目は東京・合羽橋で100年以上料理道具を営んでいる「釜浅商店」。
職人向けの専門店から、一般消費者へと対象顧客をかえ、さまざまな大型店に出店している企業。経営者からは会社の方針である、良い道具には、良い理由があります“良理道具”には料理をおいしくするかたちがありますとのコンセプトの解説を頂いた。店内視察では包丁の正しい選び方と使い方を担当者から説明を頂き、参加者は熱心に聞き入っていた。
2番目は生活提案型ライフスタイルショップとして日本全国に展開、業績を伸ばしている「アクタス」の業態開発店舗で東京・天王洲アイルにある「スローハウス」。インテリアショップからライフスタイルショップに業態開発した企業で「ひとの力を信じ真に豊かな人生を創造する」というミッションを全員の合言葉にしている。
担当者から業態開発の手順と解説。質問にも丁寧な回答を頂き参加者は満足していた。
今回の参加者は若手の女性経営者が多く、中国での業態開発の参考にしたいと意欲的であった。同時通訳者も20代の女性であり、企業訪問した会社の経営者からは若いのに素晴らしいとお褒めの言葉を頂いた。
中国の若手女性経営者が海外での研修を積極的に進めている。わが国でも女性の力を引き出すために企業の対応が急がれており、中国の若手女性研修プログラムは参考になる。(平成27年7月23日 日刊工業新聞掲載) 

プロコンサルタントの養成(上)

   森田 喜芳(東京支部)

最近、われわれ経営士のコンサルタント業務が多様化してきている。従来は企業内に所属している経営士のコンサルタントが主力であったが、最近の傾向として、中小企業も外部のコンサルタントを活用する動きが出始めており、経営士もこれらの対応に努めている。
経営士会は、3年前から新しくプロのコンサルタント(経営士)の養成プログラムをスタートさせており、最近ようやくその成果が実を結んできている。
現在、経営士会のプロコンサルタント育成のステップは①経営士補養成校座②経営士養成講座③プロコンサルタント育成講座④プロコン・アドバンスコースの四つの講座を設けて実施している。
具体的には①と②は座学による経営士の養成講座であり、③のプロコンサルタント育成講座は特定企業と契約を結び、座学ではなく、企業の実態を現場の視察し、経営士会及び企業の監督者からの聞き取り調査、また、従業員へのインタビューなどを行いながら具体的な3年間の「中期計画」を作成、その結果をまとめて企業に提案している。
その後われわれの「中期計画」の提案が企業側で賛同いただいた場合は、次のステップの④プロコン・アドバンスコースでの人材育成を図っており、既にこのステップに入って2年目のプレス、溶接業種の企業と今年からスタートした機械加工業種の企業でそれぞれ1社の合計2社との3年間の個別契約により、われわれが③でご提案申し上げた「中期計画」の実現に向けて毎回企業を訪問して受講生&講師が一丸となって取り組んでいる。
なお、①、②、③の講座はそれぞれの日程は多少異なるものの土日を基本の短期集中講座で実施している。④については3年間のプログラムで、基本的には1ヶ月1回くらいのペースで進めて3年間で成果を達成するような計画だ。現在の2社からのわれわれの実施段階の評価は大変好評で、今後の成果に大いに期待している。
以上のように、われわれ経営士会のプロコンサルタント育成のプログラムにより、多様化している企業のニーズに具体的により現地、現場、現物、主義にて実際に「やってみて、してみて!」プロコンサルタンとの育成に取り組んでいる。なお、④の修了生にはその成果として今後1本立ちして開業しコンサルタント業務が出来るような指導も併せて行っている。
なお、更なる詳細は「経営士養成講座」を検索してほしい。(平成27年7月30日 日刊工業新聞掲載 )

プロコンサルタントの養成(下)

   永井 守(東京支部)

最近の経営士養成講座での修了生の傾向は①30―40代の企業に入リ経験を積んできた人達②60歳前後の人達、の2つの段階に分かれている。①のケースは企業で仕事を覚えて、今後自分たちが勉強&飛躍する将来のためのステップとして受講。②のケースは定年を目前に控えて、次の自分の人生設計をどのようにしていくか。自分の今までの経験を生かしての仕事の選択肢としてコンサルタントを一つの候補として勉強し「経営士」の資格を得る、など二つの別の目的を持った人達が受講しているのが特徴だ。
そのため、受講生も最近の3年間では、北海道、東北、北陸、中部、関西、九州など首都圏以外の人達の受講生が圧倒的に多く全国区からの受講生だ。受講期間の毎週の土、日、を遠方から飛行機で来て、ホテルに1泊し、東京の講座会場まで通って頂いている。
講師としては大変有り難く、その熱心さに頭が下がり、身の引き締まる思いだ。従って、経営士会と講師陣も最大の成果を上げるべく、熱心な指導と緊張感に包まれて講義している。修了生は同期会を作り、お互いの近況や勉強会など、定期的に集合して活動している。いわば「全国区 同期会」での展開だ。
その結果、われわれとしては、修了生には①プロコンサルタントとして1本立ち②継続した企業のコンサルタント③新規客先の開拓などいかに展開していくかといった懸案項目の解消がポイントだと考えている。
その解決の前に、経営士会がやらなければならないこととして、現在単独で実施している他の講座(a)MPP講座、(b)経営支援アドバイザー養成講座、(c)各種セミナーなどとの連携したプログラムの構築と教育システムを一気通貫したものに仕上げていかなければならない。
今後の経営士会は、それらの各プログラムが緊密につながり、有機的に機能するように展開を行い組織的に成果の上げ、会員のリクエストに応える行動をMUSTとして目指している。なお、「経営士会」および「経営士養成講座」の詳細は検索、もしくは「日本経営士会」に連絡すれば案内することになっている。(平成27年8月6日 日刊工業新聞掲載) 

地方創生における地域金融機関の役割

創業・事業承継・再生支援/中小融資の手法・指導開示を

   岡部 勝成(九州支部)

黒田・日銀総裁は,「日本経済は長期デフレから脱却しつつある。しかし、持続的成長を実現していくには克服すべき課題も多く、金融機関の役割は大きい。」と述べている。さらに、「①大手行は世界経済に貢献を②地方創生を後押しするのが地域銀行の役割③経営統合検討は望ましいと指摘。その上で『世界や日本経済の構造変化をいかに金融ビジネスに取り込めるか』と提言した。」とも述べている(日本金融通信社、2015年7月3日)。とりわけ、②の地方創生を後押しするのが地域銀行の役割にフォーカスすると、地域は高齢化、人口減少、事業承継等いった問題が山積しており、これらを放置したり、先送りすると金融ビジネスへの影響は大きいと考えられている。
そのため各地域においては、地域の特性を活かしたビジネスマッチング、創業支援、事業承継支援、企業再生支援などの産学官金の連携を強化した取り組みが行われている。
こうした中にあって、わが国企業数の97・7%は中小企業であり、中小企業の発展なくして、地域の発展もないことは言うまでもない。
東京商工リサーチによると企業倒産件数は、14年度9543件、月平均795件、15年度4月748件、5月724件、月平均736件と減少基調が続いている。
また、5月は完全失業率3.・3%、有効求人倍率1.・19倍となっているものの、地域へのタイムラグがあるため、その実感は中小企業にとってデータとは必ずしも一致していない状況は、今も昔も変わっていない。
中小企業の資金(金融)支援は融資の間接金融、ファンドによる直接金融など多様化してきているものの、前者が圧倒的な割合で占められ、後者はわずかだ。
そこで、金融機関が融資の際に、与信判断の1つである回収可能性をみる手法を紹介する。
長期資金(融資)では、1年間に返済する元金(利息は除く)と2期分の(当期純利益+減価償却費)÷2の返済源資とを比較し、与信判断材料としている。
例えば、元金返済が毎月10万円だと、年間返済は120万円となる。一方、返済源資は前々期の当期純利益100万円+減価償却費30万円=130万円、前期の当期純利益110万円+減価償却費30万円=140万円だと(130万円+140万円)÷2=135万円で、120万円より135万円が大きいため、返済は可能とされる。
逆に、返済源資の方が不足した場合には、返済は不可能と判断されるが、社長の役員給与が700万円以上ある場合には、それを超過する役員給与を返済原資に含めて計算することもある。
このような手法は地域銀行のみならず信金・信組等の金融機関は活用しているため、中小企業への教育指導という観点から開示説明し、支援することが地方創生へとつながるのではないだろうか。(平成27年8月13日 日刊工業新聞掲載)

身近な経営的教え

植木の病自ら摘み取る/企業経営も自ら確認・判断を

   鈴木勇(北関東支部)

約330平方メートルの屋敷に松の木、モチノキなど植木がある。約50年前にボーナスから捻出して購入したためか、眺めていると愛着が感じられる。そのモチノキがスス病で枯れそうになった。数年前から元気が無くなり、毎年来てくれる植木屋に相談したところ、スス病にかかっているので消毒が必要となり、2度消毒してもらった。
しかし、植木に元気がなく、木の頂上までススで真っ黒に覆われてしまった。枯れ寸前だ。そこで原因を自分で調べることにした。足場を組み上げて見ると、小枝から葉まで真っ黒にススで覆われ、ススを取り除くと大きさ数ミリのカイガラムシが木の皮に無数にこびり付いていた。
カイガラムシは終生、樹上生活をする。雄は繁殖期に羽が生えて移動するが、雌はのろりと樹木を移動する。樹液を吸い、その排せつ液にスス病菌がついてススが発生する。雌は子孫を残すため、新芽が出る枝先から枝先へと移動する。小枝直径5ミリメートル、長さ10センチメートルの範囲に約30匹、少なく見積もっても数十万匹がモモチノキに吸い付いている。
薬剤散布を徹底することも考えられるが、飛散防止を完全にできそうもない。隣宅の生活環境に悪影響を与えることも問題。そこで、命綱を着け、グーグルで目を養生し、指でカイガラムシを剥ぎ取ることにした。3か月程かけて剥ぎ取った。今年はモチノ木も生気を取り戻している。
カイガラムシが何時から住み着いたのか、鳥あるいは木の葉に付着して風で運ばれて来て住み着いたのかは謎だ。植木屋任せにしていては、愛着のあったモチノ木も枯れてしまっただろう。
 重要な判断は人任せにせず、自分の目で確かめることの大切さをカイガラムシから教えられた。会社生活で良く先輩から自分の目で確認することの大切さを教わった。企業経営についても同じような局面があるような気がする。カイガラムシ退治し、スス病対策が終わったと考えるのはまだ甘い。何匹かは生き延びているはずである。昔は木の根元にはアサリなどの貝殻を撒いて、カイガラムシが嫌う環境を作り、追っ払っていたらしい。植木に限らず、企業にとっても、生きて行く為の望ましい環境が必要である。「免震偽装」などの悪の芽を摘み取る企業風土、体質が今こそ求められている。 (平成27年8月20日 日刊工業新聞掲載) 

ISOダブルスタンダードで苦悩する企業

情報処理ルート体系図化/目標管理明確化で利益創出を

    永井守(東京支部)

ISOについて、①ダブルスタンダード、ISO向けと社内用の規定が存在②ISOは実務で役立たない③ISOは面倒くさく実用的ではない④ISOは利益を生まないといった声を良く耳にする。
ISOの認証を取得していることで、企業のネームバリューが向上し顧客から受注を受けやすいとの安易な発想でしかISO取得価値はないのだろうか。
ISOの要求事項を企業が運用管理することで、出荷商品を品質保証することが可能となる。管理体制の拡充でムダ・ムラが無くなり、管理工数の低減により製造原価が改善され、市場競争力の強化により、受注競争に勝ち、利益の向上が達成できる。
このように、ISOを適正に運用管理することで利益の獲得が図れる。こうしたことがなぜ起こるのか分析してみよう。
① ブルスタンダード発生原因。構築された品質マネジメントシステムが取得した企業の現実とかけ離れしまっていることが上げられる。なぜ現実とかけ離れてしまうのか。それは、ある企業向けに構築した品質マネジメントシステムをそのまま他の企業の品質マネジメントシステムに適用することにある。
企業の規模・組織および業務分担は全ての企業で異なる。これに共通の品質マネジメントシステムを導入すること自体に誤りがある。取得する企業の品質マネジメントシステムを構築する場合、品質マネジメントシステムの体制を示す品質保証体系図を各社各様にトップマネジメントと各部門の責任者が業務責任分担を取り決め、情報処理ルート(受け付け・分析・決定・承認・指示・実行・報告)を体系図化する必要がある。
② ISOは実務で役立たない
③ ISOは面倒くさいだけで実践的では無い原因。これは、先ほど述べた品質保証体系図が現実と合致してないことに起因する。例えば客先からクレームが寄せられた時、受け付け・原因分析・クレーム発生部門への改善指示・文書の改訂や治工具の設置そして客先への回答説明をどの部門が実施するか決定されていることが必要だ。
④ I SOは利益を生まない理由。これはISOの要求事項にある目標管理方法を明確に実施する規定がないことで、目標管理シートの活用を薦める。(平成27年8月27日 日刊工業新聞掲載) 

日航機事故30年、品質管理の視点から分析

イレギュラー工事に原因/「設計・開発変更管理」明確に

    永井 守(東京支部)

今年で早30年。日航機事故が新たに取り上げられ発生原因は、「後部圧力隔壁」の修理ミスでこの修理内容を「品質管理」の観点から分析してみる。
修理は破損した新たな外壁を取り付ける際、「スプライスプレート」と呼ばれる1枚の補強板でリベット接続をさせるが、事故機は1枚の補強板を切断し2枚の補強板にして補強を行った。この切断により、接続する外壁と接続する補強板2枚で補強するところ、1枚の補強板で圧力を耐える事になり、その部分から破断が発生したと当局は分析している。
1枚の補強板を接続する設計部門からの指示に対して、何故2枚に接続した補強板をわざわざ使用して取り付けしまったのか。報告では、横方向にリベットを3カ所打つ事になっており、新たに接続する隔壁・補強板・従来の隔壁3枚を、2本のリベットで接続される指示になっている。
 ところが、事故品は補強板が2枚に切断されているため、一見3枚の板を2本のリベットで接続しているように見えるが、補強板1枚で強度を確保した状態になっている。修理性から見ても、2枚の補強板を接続するより、1枚の補強板を接続する方が作業性は優れていることは誰もが考えることである。
 それがなぜ2枚の補強板を取り付けることになったのか、ここで補強板作成時点にミスがあったことが考えられる。隔壁接続のリベット穴間隔は既に初期設計当時から設定されており、修理の為に作成された補強板のリベット穴間隔が少し短いと仮定すると、補強板を取り付けすることは不可能となり、1枚の補強板を接続・分離することで容易に補強板を取り付けすることが可能となる。推測だが、補強板のリベット穴間隔寸法を間違えて穴あけしてしまい、補強板を取り付ける前の工程で誰かが補強板を切断した事が考えられる。
筆者は大手電気企業に勤務していた時、設計ミスによる改造指示は正式図面を添付が無く、指示内容が不明確のため改造製品の不良が多発した。
 日航機事故もこのイレギュラーな工事によるものと考える。ISO Q 9100では「設計・開発の変更管理」で明確に規定されている。(平成27年9月3日 日刊工業新聞掲載) 

日本版CCRCと地方創生

高齢者ケア・支援多様化/実行には多くのコンサル必要

    佐藤富夫(南関東支部)

日本経営士会も日本国内の高齢化対策の一環として、10年前から東京都や神奈川県で、介護健康情報公表制度調査員として活躍されている会員先生が多くいる。
私も調査員として東京都内を3年間担当した。
2年前に地域産業支援代表として活動中、日本政府も2014年9月に日本版CCRCを発表しました。
日本創生会議の提言は、一言で言うと東京圏より、地方に、高齢者と介護人材が集まり、人口流入に拍車が掛るという危機感が強く、全国的に認識とご理解のPRと考えて頂くこと。国家的対応が必要と同時に大変幅の広い仕事のため、経営士会員の協力の場が多くなると考える。
CCRCとは、コンパクトに軽度から重度まで複数の介護施設を集中して設けるシステム。高齢者が健康状態に応じたサービスを受けられる環境づくりを目標としている。米国では、23年前よりスタートし大変多くの実績があり、また、日本でもミニ版としてスタートしている地方都市がある。
長野県佐久市の成田山薬師寺にピンピンコロ地蔵という地蔵様があり、コロッと死ねる「ご利益」を追い求め年間5万人の参拝客がやってくる。昨年私も拝見させてもらったが、参道にはピンコロ団子、ピンコロTシャツなどなど大変な賑わいだった。
奈良県の吉田寺というお寺は、「ぽっくり往生の寺」として高齢者の間では、ご利益がある有難いお寺とのこと。私達も今後の人生は増々高齢化を見ながら、ピンピンコロリ、ネンネンコロリを支援したく考えている。
実行には多くのコンサル業務が要求されます。
多くの方々の御成信のおありの方の、お言葉をお待ちしております。
日本の現状を少々お知らせいたしますと、同居している介護者の介護時間は、要介護5の人は、ほとんど終日、80%程度の時間を取られているとのこと。平均寿命と健康寿命の差は、男性で9・13年、女性で12・68年(平成22年厚生労働省完全生命表)だ。
今後増々高齢者の対応に応じたさまざまなアプローチが必要だ。(平成27年9月10日 日刊工業新聞掲載) 

ゲームで楽しみながら環境経営を学ぶ

学生の就活前企業研究に一役/事業活動の現実を知る

    河上晃(近畿支部)

2015年度の学生の求人状況は大きく回復し、明るい見通しである。就活の最大の目的は、
学生が就職した企業で充実した職業人生活を送れる環境とめぐり逢うことといえるが、入社3年以内の離職率30%強の厳しい現実もある。
最近のニュースでは、「環境経営」という言葉がよく目につく。日本経営士会は、愛知県中部大学の伊藤佳世准教授のご指導のもとESDエコマネーチームによって開発された「環境ゲーム:もし社長だったら」(ゲームで楽しみながら環境経営を学ぶ講座)を伊藤佳世准教授の許可を得て、普及のために日本経営士会中部支部において制作した「環境ゲーム」がある。
その環境ゲームを、大阪府内の某大学で就活中の学生3名と弊会(日本経営士会)会員2
名とで行った。学生の環境への意識は高いものがあり、特に就職希望企業の環境活動には強い興味を示した。就活前の学生の企業研究の一環として環境ゲームを行えば、就活の深掘りになると考えられる。
ただ、環境経営を討議するには、それなりの基礎知識が必須であり、その面では商工会議所で実施しているECO検定(環境社会検定試験)が、環境関連の基礎知識を習得するのには最適と考える。
そこで、大学内のエクステンション講座などでECO検定対策セミナーを実施して、E
CO検定の受験から環境ゲームへと進めると、就職希望企業の立場に立った企業研究がで
きることになる。  
「環境方針」や「環境側面」など、就職希望企業のリアルな事業活動を研究することができ、その企業で働くことの現実を能動的に理解できる。
企業にとってはCSR(顧客満足度)活動の発揮になり、学生にとっては企業活動を深く理解できてエントリーシート作成や面接試験への大きな自信にもなる。さらに雇用のミスマッチの課題解消にもなるだろう。
企業の目立つ部分のみでなく、本当の事業活動の現実をどう伝えるのか。
このリアルの部分に真剣に取り組むことは、学生が就職した企業で充実した職業人生活を送るための企業や大学からの大きな支援になると考える。
日本経営士会は環境経営について主に初心者向けに環境ゲームの普及を図ると同時に、
より専門的には「環境経営士®」の資格を作り養成を行っている。 ( 平成27年9月17日 日刊工業新聞掲載 ) 

優良企業になる7大要素

商品開発の計画万全に/社員全員前向きにQCD向上

    永井守(東京支部)

筆者は、優良企業になる七つの要素があると考え、以下にその内容を紹介する。
第1に、商品開発計画、筆者がある企業に勤務していた時、新製品の出荷が迫り量産生産を開始したが、不良が多発し設計変更を余儀された。
 設計部門は設計変更による評価を十分せず、生産を再開したが、再び不良が多発した。(設計変更→不良多発→設計変更の繰り返し)。このことにより、出荷が大幅に遅れ市場のシェアを獲得する事ができなかった。
この原因は、完璧な開発計画が作成されてなく、設計評価・QC工程図の作成・量産評価・出荷審査など一連の実施計画を設定せず、量産を開始した事に起因する。
 第2に、製造しやすく・高い良品率を達成する設計か、デザインレビューを実施する事だ。
 設計不良により、組立後の精度が悪い・組立工数がかかり過ぎ等排除すべきだ。
 第3に、安定した生産ラインを構築しているか。QC工程図の完成。
QC工程図の作成において、点検頻度や管理値を過去の経験で設定するのではなく、統計的手法で変化やバラツキを分析し設定する事が重要。
第4に、社員全員が会社の目標・目的に向かって活動しているか。QCサークル・5S・改善・提案などの活動を実施しているか。
 社員全員がQCDの向上を前向きに活動する会社風土を作り上げることだ。
 第5に、会社の全ての社員が目標達成のために、目標管理活動を実施しているか。目標管理を実施する場合、「目標管理シート」を活用して行うことだ。
第6に、品質・納期・価格が適切な購入品を仕入れるために、購買管理の戦略を持っているか。
 QCDが悪く、クレーム対応が遅い購入先とつい合う事は避けるべき。また、納入日程が決定した時点で、購入先が倒産すると客先に大迷惑をお掛けする事になり、次の受注はあり得ない。
第7に、将来も経営が安定し、適切な価格(C)・品質(Q)および納期(D)を要求する顧客取得で、過度なQCDを要求する企業は避ける。
 大口受注を受けても、納入先が倒産する事は避け、将来性あるか評価する必要がある。
以上、優良企業を維持するには、上記事項を厳守する事が重要になる。( 平成27年9月24日 日刊工業新聞掲載 ) 

優良企業になるための1つ目の条件・・・商品開発

他社に先行シェア確保/社会環境からニーズ読み取る

    永井守(東京支部)

ソニーは「音楽を携帯し気軽に楽しむ」というコンセプトで「ウォークマン」を発売、当時ラジカセ時代にラジオなし・カッセットテープで良質の音楽を聴く商品は爆発的にヒットした。
 このコンセプトは「ラジオ機能なし」で音楽を聴くと言う普通考えられない商品だった。このコンセプトでの開発は競合他社が開発を全く考えなかったもので、思いもよらぬ商品だった。
シェア確保は、競合他社が思いもよらぬ商品を開発したり、他社より先行した技術力により商品開発を行うことにより、独占的に市場を獲得可能となる。
このように、商品開発力が高い企業は競合する商品がないために、思い通りの価格設定を行え、利益率の高い販売活動が行える。
では、商品開発はどのような手法を活用するか、紹介する。
① 会環境から顧客が欲する商品開発
 ソニーの開発手法を想定するに、おそらく「連関図」を活用したものと思われる。
連関図法は字の如く、物事を関連付けて理論展開する方法で、読者がご存知の「風が吹けば桶屋が儲かる」的理論展開を進めて行く。
 例えば、ソニーのウォークマンについて想像で展開してみる。
ラジカセ人気がピークを迎えつつあり、新たに新商品を開発し他社が思いもよらぬ商品を開発し、市場を独占する→そこで、発想を展開し、「散歩の時に良好な音楽だけを聴き快適にしたい」と結論する→軽く・薄く・良質な音響→この内容を「品質機能展開」により、製品規格値(寸法・重さ・音響発生の周波数帯など)を設定(設計)する。
 設計できれば、製品実現計画に従い生産し、販売する。 
②先端技術開発を予測し、活用した商品開発環境に優しい、ハイブリッドカーについて考えてみよう。
ハイブリッドカーのアイデアや技術は1970年代からあったが、ハイブリッドカーに必要な大容量のバッテリーが未開発だった。
最近、大容量のバッテリーを利用することができ、ハイブリッドカーが量産されている。
同様に、高齢化で足腰が弱まった老人向けの「ロボットスーツ」は過去から必要とされてきたはずですが、関連の技術が開発された事で実現している。( 平成27年10月1日 日刊工業新聞掲載 )

プロコンサルタントの育成①

受講期間中3回企業訪問/三現主義で事業計画作成

    森田喜芳(東京支部)

最近われわれの仲間である経営士の育成を、座学だけでなく、実際の企業に行って診断する必要性が出てきた。最近新しく入会してくる経営士の中からの要求も出てきており、そのリクエストに応えるべき新しい経営士の講座「プロコンサルタント育成講座」を開設している。この講座は、既に「経営士養成講座」などを修了している「経営士」が主に受講。企業診断をした企業には更に3年間勉強する「アドバンスコース」の講座も設けている。
現在の「経営士養成講座」は短期集中講座で土、日、の11日間コースは本部で、年に2回、また他の13支部で開催をしており、本部で本年度は「第41回経営士養成講座」を9月5日よりスタートして10月10日に修了予定だ。
 次のコースである「「プロコンサルタント育成講座」は、既に第5回を迎え、次回は11月7日より12月5日までの12日間を経営士会本部にて開催する。この「講座」も年間2回の予定である。この講座は現場での学習を含み受講期間中に3回企業訪問して現場視察~経営士&監督者との打ち合わせにより最終的には3年間の経営計画(中期計画)を受講生が主体となって作成してまとめ、企業側に報告している。
この講座はいままでのコンサルタント育成講座では、他に類がない中小企業の現場に行き、三現主義(現地、現場、現実)を確認しながら、企業の経営者&監督者との面談により改善項目の抽出を行い、3年間の中期事業計画を作成する講座だ。
現在までの過去4回では、受講生より大変な人気で企業からもご好評をいただいている講座。その後、受託企業には経営士会の全国大会で「特別賞」などの表彰もしており、日本経営士会、受講生、受託企業の三位一体となって実施している大変ユニークな講座として好評である。
なお、「経営士会」及び「プロコンサルタント育成講座」の詳細はHP検索もしくは「日本経営士会」に連絡すれば案内することになっている。( 平成27年10月8日 日刊工業新聞掲載 )

プロコンサルタントの育成②

「道場」で師範と学ぶ/最初の工場見学「目からうろこ」

    森田 喜芳(東京支部)

新しいプロコンサルタントの誕生する育成課程は、初めてのプロコンの卵の人達をいかに効果的で効率よく育成して、一本立ちさせていくかの育成業務でかなりの熟練者と教育プログラムが大変重要だ。
これらの育成業務は、経験豊かな現役コンサルタント業の講師の指導により、企業の協力を得て、コンサルタントの仕事の仕方からご提案、最後に実際のコンサルタンティングまでを実施する。現実の仕事の仕方を現実の企業を診断して、経営者や監督者とのヒヤリング、また講座の開始前には従業員に事前のアンケートや面談などを実施して現状把握してから講座をスタートする。
これらの実態の講座を受講するメンバーには、オリエンテーションとして講座実施のプロセス、事前の確認事項、機密保持契約などを結び、企業の決算状況なども理解してもらっている。
原則として講座は土、日の短期集中だが、3日間の企業訪問を金曜日に企業が操業している時に訪問し工場視察して経営者&監督者との打ち合わせで実態の把握と今後の計画などを確認し、12日間の講座修了時にはまとめとして企業の経営者にご報告し、ご評価を頂いている。これらの業務を通じてプロコンサルタントとは何かの「実務編」を学ぶ機会を持っている。
この育成講座は今後のプロコンサルタントを目指す人達の修行の場で大変良い機会であり、いわゆる「道場」で師範と一緒に学ぶチューター(Tutor)制度と言っても良い。
これまで過去4回の受講生は、皆さん座学での修業を積んできているものの、現場や企業訪問、経営者、監督者との打ち合わせ、質問の仕方から問題点や改善点を抽出などは現地、現場にて修行をしてもらっている。
中には工場見学などは初めての受講生には、「工場見学の仕方」の講義をして現場を訪問している。それらの受講生は最初の工場見学は「目からうろこ」の連続であり、驚きと現実のコンサルタント業を学ぶ講座では当会が唯一の講座である。
なお、さらなる詳細は日本経営士会の「プロコンサルタント育成講座」を検索してほしい。( 平成27年10月15日 日刊工業新聞掲載 ) 

プロコンサルタントの育成講座③

専門性実務でさらに磨く/中小支援ノウハウを蓄積

    森田 喜芳(東京支部)

 経営士会での「プロコンサルタント育成講座」の最終報告で、今後3年間の中期経営計画を企業側に提案して、企業側が受け入れられれば、その中期計画を3年間で実現する講座「アドバンス・コース」というコースを受講生に提供している。
このアドバンス・コースは3年間にわたり企業と一緒になり、コンサルタント業務を現実に経営士会の専門講師と毎月1回の割合で企業訪問してその進捗状況の確認と次のステップの事前打ち合わせを行っている。
最終的には、この講座の目的は実際の企業からコンサルタントの実務を学び、「独立プロコンサルタント開業」に向けての修行の場である。これらは受講生の今までの経験や知識、スキルの違う全国からの受講生がそれぞれの専門性を更に磨きをかけて、お互いに切磋琢磨して中小企業の支援をしていき、ノウハウの蓄積と独立開業のネットワークの構築に大いに役に立つことであると考えている。
 現在、「アドバンス・コース」は既に二つの東京都内の企業と協力して実施している。1期生&2期生の受講生は全国から広範囲にわたり、九州地区、東海地区、関東地区からの人達の集まりで毎回積極的な活動を展開している。1カ月に1度の企業訪問では、各人の専門分野の事前の準備と企業訪問後の翌日には次回の進め方などの打ち合わせを行っている。
 毎回の企業訪問に際し、受講生の自主的な申し合わせで自前の作業服に着替えて、現場視察を行っている。この学習姿勢は企業側の工場従業員の皆様には受講生を受け入れて頂き、緊密な関係の中で仕事が進められている。
この講座は3年間の受講の中で、受講生自身の専門分野をテーマにした企業での学習と現場での知識を習得して独立開業する大変良い受講生同士の出会いと同期会などの横のつながりは生涯の友となり有形、無形の財産となり今後の人生に大いに役立つ出会いであると考えている。
なお、このアドバンス・コースは「プロコンサルタント育成講座」の修了生を対象に提供している限定したプログラムである。
詳細は日本経営士会のホームページ(HP)を検索していただき、事務局に連絡すれば案内することになっている。(平成27年10月22日  日刊工業新聞掲載) 

プロコンタントの育成④

実践舞台、企業診断で腕磨く/真の強み無形資産探す

    青樹道弘(東京支部)

一般社団法人日本経営士会が特長のある養成講座を開講していることは、8日の森田喜芳氏の原稿で説明があった。第5回プロコンサル育成講座が2016年4月9日から始まる。既に4回を実施している他に類を見ない講座だ。
弊会では、経営士養成講座を修了すると「経営士」の資格が付与される。経営コンサルタントを目指すうえでは必要な資格だと考える。しかし、「資格」だけはあるものの、実践舞台がなく、活動の一歩を踏み出せない人も中には居る。そのためのフォローアップ講座がまさにこれだ。
実際の企業に出向き、経営者・経営幹部へのヒアリングポイントを的確に掴む技を磨いている。その協力してもらう企業からは決算申告書ベースの財務諸表3期分を提出してもらい、資料上の分析を行う。日本経営士会は企業と機密保持契約を取り交わし、同時に講師・受講生にも誓約書の取り交わしが義務付けられている。
この講座は13年6月から始めている。第1回目の企業は金属切削加工業、第2回目の企業は精密板金加工業、3回目は業務用冷凍スイーツ加工業、4回目は精密金属(難削材)切削加工業に診断を受けてもらった。
企業診断では、どの企業も数点の課題が挙げられた。実際の訪問日は企業が稼働している金曜日を診断日に充てている。診断後土・日曜日でヒアリングや工場診断の結果から抽出された問題に対してグループ討議をし、次なる詳細なヒアリング内容を決める作業となる。これを2週実施後、企業の保有する「真の強みとなる無形資産」を探す。
分析方法は中小企業経営革新等認定支援機関に基づく手法やSWOT、PEST、3C、5FORCEなどフレームワークを使って2チーム(1チーム5名以内)で討議を進める。受講できる人数を10名以内としているのはそれ以上になると診断企業訪問上からも、収容スペースなど制約があり難しい事が現実にあるためだ。
実践的なヒアリング内容はまず経営者の考え方(経営理念・経営方針・将来への抱負)だ。ヒアリング項目を決める際には、この企業の業界、位置づけ、外部から入手できる情報、など事前調査をチームで実施しておく事が前提となる。
なお更なる詳細は「プロコンサルタント育成講座」を検索してほしい。( 平成27年10月29日 日刊工業新聞掲載 ) 

プロコンタントの育成⑤

幹部ヒアリング最大の山場/経営提案後の講評経て修了

    青樹道弘(東京支部)

経営者から話を伺う時はヒアリングのマナーなども講義している。もちろん工場診断の視点やメモの取り方も講義する。製造現場では、モノづくりの部品や製品に目がいってしまいがちだが、工場の説明を受けながら、いかにメモを取るかが重要だ。
撮影の許可は事前に確認しておくので、それに応じた診断が必要になる。金曜日の午後から診断を開始し、3時間ぐらいで終了する。この日は現地で解散だがどのチーも、目の前で知り得た情報などを近くの喫茶店などでまとめて、翌日からのグループ討議に備えているようだ。
翌週の金曜日は経営幹部にも加わってもらい、九つの切り口に関するヒアリングが実施される。ヒアリングの内容については、2チームから抽出された課題を組み合わせて内容を決める。この作業はなかなか工夫が必要だ。
企業を訪問し、切り口ごとに担当者している受講生からヒアリングを始める。この週の土・日曜日がこの講座の最大の山場だ。
講座進捗によって終了予定時間の17時が19時まで延長されることが多々ある。
クロスSWOT分析後、ポートフォリオ作成、アクションプログラム立案までこの後の2週の講座でまとめる。1週あけた後の金曜日に企業を訪問し、「経営向上のご提案」として、受講生から企業にプレゼンテーションを実施する。このレポートは企業側に提出され、経営者から講評を受ける。
ここまで12日間の短時間だが、とても内容の濃い講座で一緒に討議した受講生はその後も良い仲間となって同期会を開催し、横のつながりを作っていることも事実だ。
最終日には「修了式」が行われる。
修了式からその後の懇親会に診断企業の経営者にも出席をしてもらい、12日間の苦労話や今後のそれぞれの進む道に対して話が弾む。
このプロコンサル育成講座で立案した計画はその後の更なる3年間のフォローアップのためのアドバンス講座につながる仕組みができている。これから受講を目指す経営者はプロの経営コンサルの視点で自社を診ることができ、将来プロの経営コンサルタントを目指す者にとっては実践を経験する事で自信が付くと言う非常に価値のある講座だと胸を張って言える。
なお「日本経営士会」「プロコンサルタント育成講座」の詳細は検索もしくは「日本経営士会」に直接電話にて問い合わせをしてほしい。( 平成27年11月5日 日刊工業新聞掲載 )

経営士養成講座―①

    森田喜芳(東京支部)

 最近、浜松地区にある自動車用部品のT-1サプライヤーの金属加工メーカーを訪問する機会に恵まれた。自動車会社と取引先の関係について現状を教えてもらうために訪問した。当日、応対してもらった取締役営業部長さんとの話の中で、海外展開について日本の大手自動車メーカーさんの対応の仕方を聞かせてもらった。
世界のトップメーカーは、日本人以外の従業員がいる場合は全て「英語」による取引の話を徹底しているとのことだった。別の大手の自動車会社でも、同じように英語を主体に商談しているものの100%英語に徹しているのはさすが、トップメーカーだとのことだ。
小生も某自動車会社購買担当を経験していたが、現在はそこまで徹底されているとは知らず、時代の変化に一瞬驚きの話だった。
営業部長さんの話では、これからは海外展開が企業の生き残り戦略がMUSTであり、そのコミュニケーション・ツールとしては、言語を現地語又は英語が必須の条件で、自社でも実施しているとのことだった。
 日本経営士会本部は、「経営士養成講座」を年間2回開いている。最近では10月度に開催して修了したが、その中で常に変化に対応すべき時間の調整時にはいくつかのテーマを予備に準備しているが、今回もその機会が訪れた。
約1時間半の時間帯を英語によるワンポイント・レッスンをアシスタントの女性にお願いして実施したら、その講義時間が大いに受けて、受講生&講師から今後はこの養成講座の正規の講座のプログラムとして組み込んだらどうか。と皆さんからリクエストされて、「瓢箪から駒」の現象だった。
我々の「経営士養成講座」は「海外展開に必要な基礎と実践手法」の講座を設けており、毎回アンコールが出るほどの人気講座だが、経営士コンサルタントとしてのMUST項目のコミュニケーションについては迂闊にもあまり重視していないきらいがあった。
今後はこの教訓を生かして次回以降の養成講座に英会話を取り入れていこうと考えている。
なお、「経営士会」および「経営士養成講座」の詳細は検索、もしくは「日本経営士会」に連絡すればご案内することになっている。( 平成27年11月12日 日刊工業新聞掲載 ) 

経営士養成講座-②

    森田喜芳(東京支部)

経営士会の「経営士養成講座」を修了した「経営士」にコンサルタントへのステップとして「プロコンサルタント育成講座」を開設している。この講座は、既に「経営士養成講座」などを修了している「経営士」が主にプロコンサルタントを目指して受講していることは以前にご紹介したとおりであるが、同時にセミナーや講演会などに講師としての活躍する出番のリクエストも出始めてきている。それらの講師としての育成も別の機会を見つけて育成の場を提供している。経営士養成講座を修了したメンバーが中心となって「オーシャンズ」という勉強会を定期的に開催している。

オーシャンズの定例会は現在のまで15回開催している。当初は第36期「経営士養成講座」を修了した「同期会」からスタートして3か月に1度定例会を行っており、現在は多くの経営士やその友人や仲間たちで毎回30人のメンバーにて開催している。そのオーシャンズの定例会では「道場」という新しい経営士になられた人達を対象に「講師」への登竜門として門戸を開き、毎回2名が挑戦しており、道場主、師範代、よりの評価コメントを頂き、「講師」としての1本立ちする道を設けている。現在までに既に8名の挑戦者が「講師」として巣立っている。

最近、ある大手の企業を退社した人が現在再就職を目指して企業訪問し面接をおこなっていた。自分の過去の仕事での経験をPRして、就職活動を行っているが、ご自身の長年の経験した仕事のPRには企業側では、ほとんど興味を示さなかった。しかしながら、自分の経験を生かした「講師」として「経営士養成講座」などで講話を実施している講演資料や講演会の写真などを見せて説明すると、企業の面接官は途端に興味を示して身を乗り出して話を聞き質問するようになってきて、面接での話が大きく前進してきたとの事であった。これはオーシャンズでの「道場」の挑戦が大きく役立ったとの話を聞いた。

我々、経営士会では「経営士養成講座」の修了者には「道場」の提供と「講師」への登用を行っている。是非とも多くの経営士養成講座を修了して講師などで活躍していただける事を期待している。

尚、「経営士会」及び「経営士養成講座」の詳細は検索、もしくは「日本経営士会」に連絡すればご案内することになっている。

( 日本経営士会:森田喜芳 042・946 ・1443 ) 

経営士養成講座③

60年以上の伝統と実績/「一杯飲んだつもりで自己研鑽」

    釜澤 直美(南南東支部)

64年の伝統と実績を誇る日本経営士会は、1951年(昭和26年)、日本の産業復興に向け、企業経営を担う人材の育成並びに企業経営のノウハウを支援する組織として、当時の通商産業省(現在経済産業省)と経済安定本部から推奨され、誕生した。その役割は現在も設立時に目指した三つのミッションを粛々と真摯に遂行している。
本紙面では三つのミッションの内の一つ「経営コンサルタントの育成と研鑽支援活動」についてご紹介したい。このミッションの主な活動に「経営士・補養成講座」がある。この講座は、経営コンサルタント並びに戦略的経営を目指す経営幹部・後継者向けへの講座として経営士会は38年にわたり、800人を超える経営コンサルタントや企業経営のビジネスリーダーを排出している伝統ある講座だ。
昨今、日本を取り巻く経済環境は経済連携協定(TPP)に見るように域内の国家間で自由な貿易環境が確立され、一段とグローバル化が進展する事が予想される。これらのグローバル時代を迎え、経営コンサルタントに求められる能力として、国際感覚、特に海外に進出される企業等に的確な戦略的経営指導、各企業ニーズに対応した人材の育成支援能力等が強く求められてくる。
こうした中、この「経営士・補養成講座」を担当する講師は、大手製造業並びに商社、外資系企業の経験者、更には国家資格を持ち活躍中のコンサルタント諸氏が行なうのでグローバル化時代に即応した実践的な講義が受けられると好評である。さらにこのコースは、土・日中心の講義のため、現役ビジネスパーソンも無理なく自己研鑽に挑戦ができるのも人気の秘密だ。
この経営士養成コースには、経営士会総合研究所が主に実施する「経営士養成講座」、各支部が主に実施する「経営士補養成講座」、経営士資格筆記試験等があるので、自身の素養に合わせて挑戦することを推奨したい。
最近、ある雑誌に「一杯飲んだつもりで自己研鑽」の記事が載った。自分が本当にやりたい事に就きたいが、素養が足りないと悩む諸氏、グローバル化時代に即応した経営コンサルタントを目指す諸氏、一杯飲んだつもりで、日本経営士会が誇る伝統あるこれらの講座に挑戦されてはどうだろう。2016年1月開講予定の「第42期経営士養成講座」受講生募集中。( 平成27年11月26日 日刊工業新聞掲載 )

経営士養成講座④

企業とは…目的は・誰のもの/自分が信じる企業観確率を

    石倉 憲治(東京支部)

 年明け早々にスタートする「第42期 経営士養成講座」の受講生を現在募集中だ。受講者には各分野ごとの専門知識、能力を身につけてほしいと願っている。講座全体を通して、是非『自分が信じる企業観』を確立されることを期待している。
 経営学において、昔から企業とは何か。 企業の目的は。 企業は誰のもの。などの論議が行われてきた。企業観と呼ばれる論議だ。
 現在の企業観において素朴な疑問は、「企業とは、企業経営に日々汗水流して活動している経営者やその従業員のものではなく、投資の対象としてリターンに血道をあげている投資家・株主のものである」とされることだと思う。
この疑問に対し、「株主が企業に投資をすることで、企業は事業活動の生命線である行うべき研究開発投資ができる。また、株主は企業のリスクを負担している。もし、事業活動の結果、決算で欠損が発生したとしても経営者と従業員の生活および仕事は、当面支えられるし、事業活動は続けて行えるであろう。だから株主が持つ取締役選任・解任権、定款変更等の決議権はそのリスク負担に対する株主自身の負担軽減のために付与された権限だ。  企業が株主のものであるから経営者と従業員は安心して働けるのである。企業は株主のものである」と説明するのだろう。
 企業観は各国により異なる。分類すると二つに大別される。一つは米国、英国で定着した考え方のアングロサクソン型と呼ばれる“株主用具観”で、前述の疑問に対する回答の思想だ。
もう一つはドイツなどのヨーロッパで定着した考え方で、ライン型と呼ばれる“多元的用具観”だ。会社は多様な利害関係集団の共通の用具(利益を生み出すもの)と考える思想だ。従来、日本はライン型の“多元的用具観”の思想が支配的だったが、バブル崩壊後、2005年に新しく会社法が制定されて以来、アングラサクソン型の“株主用具観”が強く支持されるようになった。 受講を通じて、このあたりのオジリナルな考え方の確立も期待している。
 なお、経営士養成講座の詳細はHPで検索されるか、もしくは「日本経営士会」に直接お問合せいただければご案内している。(平成27年12月3日 日刊工業新聞掲載) 

優良企業になるための条件㊤

設計品質、チェックシート活用/品質計画書で設計不良防ぐ

    永井守(東京支部)

設計品質を語る上で品質管理の歴史を振り返って確認しよう。
1970年代のころ、筆者が品質管理担当者として購入先の工程監査(受入検査部門)を行った際、何故か受入検査部門の社員が全数検査を行っていた。理由を聞くと不良率が高いため、全数検査を実施し、不良は購入先に良品と交換するようにしているとの回答だった。
受入検査の抜き取り検査で不合格となったロットは全数返却をするように変更した。
 購入先に対しては、不良を作らない工程管理を実施するように指導したが、設計不良により、工程管理では不良を撲滅することはできなかった。
 設計不良の発生原因は、①仕様項目や図面寸法の記入漏れ②試作又は量産評価の未実施③予期せぬ仕様項目を規格化しないための不良発生で、これらの設計不良を撲滅する手法は、「①仕様項目や図面寸法の記入漏れ」は、確認漏れ防止方法を確立すれば良いことで、チェックシートを活用すれば解決できる。
 仕様書および図面を作成する担当者がセルフチェック段階でチェックシートを活用する方法や設計審査でチェックシートを活用する方法もあり、また仕様書においては決まった仕様書書式に規格値を記入する方法を使えば良いことになる。
「②試作又は量産評価の未実施」は、ISO/TS 16949で要求しているように、「品質計画書」に実施する日程・内容を記載し、「品質計画書」に従って実施すれば問題ない。
「③よきせぬ仕様項目を規格化しない」は、少し苦労するが、やはりISO/TS 16949で要求している「FMEA」(Failure Mode and Effect Analysis=故障モード影響解析)
を活用すれば良いことになる。
 不良が発生しそうな項目を予測して、事前に不良予測発生項目を規格化すれば良いことだ。
例えば、「爪切り」で深爪を防止するために、深爪防止ストッパー(できるかどうか分かりませんが)を付加すれば良いことによる。
「故障モード影響解析」は、特性要因図や連関図で解析することが可能だ。
このように設計不良の防止で、工程内の不良防止による原価低減や出荷後のリコール防止で莫大な設計不良コストを皆無にすることができる。(平成27年12月10日 日刊工業新聞掲載)

優良企業になるための条件㊦

工程設計と工程管理品質/各項目設定、一連の作業で不良防止

    永井 守(東京支部)

 企業の生産活動においてしっかりとした商品開発後、設計審査を完了すると、次はQC工程図(製品が完成するまでのフローチャート)・QC工程表(管理する内容記載した表)を作成する工程設計になる。
 このQC工程図・QC工程表に従い作業を実施すると、不良を作成しない製造方法となり、以下に内容を紹介する。
 まず第一に検討することは、管理する項目を決定することで、分かりやすくラーメンを作る例で考えてみる。
ラーメンをゆでる際、お湯の温度とゆでる時間を決定しなければならない。ラーメンだから簡単に温度と時間を管理しなければならないことはすぐに思いつくが、工業製品の製造ではこんなに簡単に探し出すことはできず、「FMEA」・「特性要因図」・「連関図」などの手法を活用する。
管理する項目が決定すると、品質特性を決定することになり、ラーメンでは「食感」とか「歯触り」が上げられる。
 食感とか歯触りは「官能」ですので、これを科学的な数値に置き換えることが必要になり、ゆでる(温度・時間)と麺の(硬度・伸び率)を決定しなければならない。
 この温度及び時間を割り出すために統計的手法を活用し、管理する数値を決定する。
ゆでる温度を100度Cとし、ゆでる時間と麺の硬度または伸び率を相関分析すれば、ゆでる(温度・時間)が得られる(ここではゆで時間を3分と設定)。
 QC工程表に管理する項目として、ゆでる温度が100度Cであることをお湯の温度を棒状温度計にて確認し、温度が100度Cであったか確認結果をチェックシートに記載する。麺を鍋に入れ、時間が3分経つとタイマーがゆであがりを知らせる。
麺がゆであがると、お湯切り→どんぶりに汁と麺を入れる→なると・卵・のりなどの盛り付けを一連の作業手順書に従い完成させる。
 このように、QC工程図・QC工程表を作成するには、管理すべき項目を「FMEA」、「特性要因図」、「連関図」などにより設定し、管理する数値は統計的手法で割り出し、
管理する内容はQC工程表に記載し、「管理結果=証拠」はチェックシートや管理図に記録を保管する。
 この一連の作業から不良を作ることを防止する。(平成27年12月17日 日刊工業新聞掲載)

優良企業の条件①

競合社に優位なPR資料作成/購買決定者に積極コンタクト

    永井 守(東京支部)

営業戦略
 販売までに実施した、商品開発・設計審査・QC工程図・QC工程表の作成、この内容を確実に実施できるよう技能訓練を行い、QC工程図・QC工程表に従い実施されているか内部監査体制を構築、これ以後の領域は営業部門の業務に入ってくる。
 営業部門は、上記の魅力ある商品かつ品質保証された商品を販売するにあたり営業戦略を策定する必要がある。営業戦略を二つの観点から考えてみる。                  
一つ目は、競合他社に対する強みと弱みを分析し、競合他社に打ち勝つ販売商品のキャッチフレーズを考案することだ。考案する手法は、品質機能展開を活用し、徹底的に競合他社に優位な商品を開発し、営業用PR資料として作成する。
 二つ目は、販売先を定め、どのようにして営業を進めて行くか営業戦略を策定する必要がある。営業戦略を策定する手法は、連関図・アローダイヤグラムがある。
1、連関図の活用方法は、自社の営業環境(ターゲットとする顧客とのパイプの太さ、競合他社の価格・サービスの競争力、立地条件、営業社員の素質等)を分析し、営業活動内容=営業戦略を策定し、営業戦術を立案する。
 例えば、顧客の購買決定者を情報収集により探り出し(企業によっては、担当者が購買決定権を持っていることも考慮)、購買決定者に積極的にコンタクトし、顧客が購入する条件を聞き出し、顧客要求条件を満足する体制構築内容を明確にする。
 大きな営業戦術が決定したら、アローダイヤグラムに実施事項と実施予定日を営業戦術順に記入、そのアローダイヤグラムの実施計画に従い活動を行う。
2、また以下に記載した営業活動事項をターゲットとする顧客に合わせて実施事項を抽出し、アローダイヤグラムに記載して営業戦術を作成する。
 「顧客のニーズ調査」、「提案アイテムの検討」、「プレゼンの実施」、「訪問回数」、「他社から購入している理由調査」、「交渉計画書作成」、「アプローチ方法の選定」、「他社と
優位点調査」、「前回の逸注原因」、「顧客情報入手経路調査」、「ターゲット価格の設定」、「競合他社との差別化」、「客先購買決定者との信頼関係確保」(平成27年12月24日 日刊工業新聞掲載) 

優良企業の条件②

両社繁栄の精神で体制づくり/購買先調査・監査など入念に

    永井守(東京支部)

購買戦略
 企業が競合他社と品質(Q)、価格(C)、納期(D)、クレーム対応力(R:レスポンス)で一歩先んじる事で、受注量の増加及び次期新製品の納入が約束される事は間違いない。
 このQ・C・D・Rを優れたものにするには、自社の他部材の購入先の品質マネジメントシステムも重要になる。優れた購入先を選定し、売買で良い関係を持ち続ける方法はどのようにして実現すべきだろうか。
 第一に、信じ難いと思われるが、自社の体制づくりだ。
 1、購入先からの購入仕様書・図面でより安く、より安全にするために仕様書および図面の改善要求を受け入れる心構えが必要になる。
 2、購入価格の値引きは慎重にすべきで、あまり購入価格を下げ過ぎると購入先が品質保証をする工程(製造方法、購入部材、部材の購入先)を最悪にし、品質トラブルや納期トラブルが多発する。
 3、妥当な要求品質の設定が必要で、1個の不良でも対策書を要求する企業があるが、1個の再発防止対策は至難の要求で、特に価格設定が終わった後の要求は購入先に大きな精神的・物理的ストレスを与え長い売買関係は続かない。
 4、以上、要求仕様+購入価格+要求品質を合わせて購入価格を設定すべきだ。
 5、1から4項までの基本精神は、購入先特に外注先とは上から目線ではなく、同志として対応することが重要で、この精神を守ると両社が繁栄すると、強く主張する。
 さて以上購入側の体制を述べたが、次に購入先への要求内容を以下に述べる。
1、購入先候補が決定した後、購入先の販売先・帝国データバンクなどによる購入先の経営状態を調査し、発注後購入先の倒産や合併を避ける。
2、購入先の品質保証体制が確実かチェックシート(65項目、説明は省略)を基に工程監査を実施する。
特にQC工程図の審査を厳重に実施し、不十分な点は改善指導を行う。購入先に決定すると、工程変更・技能者変更等4M(人・機械・材料・方法)+1V(購入先)変更の事前届け出を基本契約に盛り込み、品質管理状況報告も義務付ける。
購入先への要求は多々あるが、紙面の関係から省略する。(平成28年1月7日 日刊工業新聞掲載) 

優良企業の条件③

目標管理シート使い能力評価/モラル向上で全体レベルアップ

    永井 守(東京支部)

購買戦略

「企業は人なり」と良く言われるが、長年品質管理を担当し、つくづくそう感じている。
 ISO9001やISO/TS 16949の品質マネジメントシステムを構築しても、各人が行う業務を理解し、質の高い業務を行ってこそ企業の利益が得られる。
 筆者が大手電気メーカに勤務していた時、事業部長がこの「企業は人なり」を各部長席の壁に貼り付けたことも懐かしく思い出される。
 多くの読者の方は、仕事ができる人が平社員で、全く成果が上がらない人がなぜ部長なのと日頃感じていないでしょうか。
毎月改善会議が開催されているのに、全く解決できない人が立派な役職を持っている。このような人事評価はおかしいと、若いころから感じていた。
故石川馨先生の「TQM」は「方針管理」で、社長方針がある部の方針になり、課・係の方針となり、最後は一担当者の目標管理に展開される。
各担当者は、上司の方針と整合した自分の目標を設定し、毎月目標を達成したか確認会議で発表される。
この達成度を評価するには「目標管理シート」を使用し、目標を達成するための活動内容を明確(プラン:P)にし、「目標管理シート」の内容に従い実施(ドゥー:D)し、目標未達成の場合(チェック:C)、活動内容を変更(アクション:A)する。
この「目標管理シート」の達成の為の活動内容、達成成果度及び達成スピードで各自の能力を見る事が可能となる。この評価結果を基に人事評価を行い年功序列・学歴に関係無く人材登用を行えばよいことになります。
一方、社員全体のレベルアップとTQMにつながる団結力を考慮しなければならない。
社員全体のレベルアップでは、モラルの向上が必要で、このことを行った人が大河ドラマで活躍した黒田官兵衛だ。
官兵衛は藩政を協議する会の名称を「異見会」別名を「腹立たずの会」とし、どんな意見でも腹を立てないとの掟を作った。これは、出席者の身分は問わず何を言ってもよく、これで、士気が上がったと考えられる。
この考え方は海外でも発生した「ブレインストーミング」につながり、奇抜なアイデアを尊重し、アイデアを結合して新たなアイデアを生み出すことを奨励している。

(平成28年1月14日 日刊工業新聞掲載) 

中小企業・小規模事業者の人材教育と人財育成㊤

自己研鑽に励み能力アップ/継続してやり遂げることで相乗効果

    長谷川正博 (東京支部)

 中小企業・小規模事業者(以下「中小企業」という)の多くが「人材不足」「社員の定着率」「幹部社員・番頭格の人材不在」ひいては「後継者不在」の「ヒト」の問題を抱えているケースが多い。
周知のように、「企業は人なり」と言われる。社員個人個人が自己の持っている能力のレベルアップを図り、自己研鑽に励むことにより、社員の質の向上を通じて会社全体のレベルが上がることになる。
「ジンザイ」には4種類あると言われている。「人罪」「人在」「人材」「人財」である。これらは読んで字のごとくで、あえて説明する必要はないだろう。人罪を排除し、人在を人材にさせ、人材を人財に格上げしていくことが肝要であり、まずは「鯛の頭」である社長自ら(および幹部クラスも)が人財となるべく自己研鑽などにより最大限の努力をする必要がある。
 社員教育の3本柱は「OJT」、「Off JT」そして「自己啓発」があることは周知の通りだ。中小企業の社員教育はOJTが主となっているようだが、幹部クラス社員や役員らは外部セミナーなどへの参加によるOff JTとともに、自己啓発により能力向上を図りながら、人財になるべく努力すべきであり、また会社としても時間・費用面での支援を用意すべきだ。    自己啓発は、あくまでも、自分に必要な知識、技能、教養等を自分から意欲的に取り組んで勉強することであり、部下を教育・指導する立場にある部課長など管理職も自己啓発により自分の能力向上を図ることが求められよう。
東京都下のある企業は、本社事務所内に「図書館」を設け、社長が推薦する書籍を月1冊以上読み読書感想文を出させ、提出ごとに「はんこ」をおし、年度末の表彰対象としたり、また、新聞の経済・政治面を読み、毎日の朝礼時にその感想を順番に発表(これも「はんこ」がおされる)させるという事を数年間続けているという。
当然、部下の発表のみならずその上司(管理職)も勉強していることは言を待たない。読書や新聞記事を読み、まとめ、発表するという単純な方法かもしれないが、一つの事を継続してやり遂げることを通じて自分の業務遂行を完遂する気持ちを醸成したり、社員の基礎・一般知識の向上も図りながら、モチベーション向上につながる効果があるのではないだろうか。(平成28年1月21日 日刊工業新聞) 

中小企業・小規模事業者の人材教育と人財育成㊥

管理職者は「T字型」になる努力を/外部講習など教育投資重要

    長谷川正博 (東京支部)

 中小企業は、自社が現有する社員でまかないきれない″人材不足″を補うために「キャリア人材の採用」、いわゆる中途採用者を活用するケースが多い。中途採用者は「即戦力化」能力が求められ、中間管理職として採用されるケースも多いだけに、入社時の教育が一般社員に比べ重要になる。
中途採用者は多くの場合、他企業での職務経験を持ち、さまざまな考え方と態度を身に付けているだけに、自社の経営理念や方針に馴染ませるためにも、入社時に十分な教育を行う必要がある。
彼・彼女らへの教育には、自社の企業理念・体質、経営方針、管理制度や職制等機構、中途採用者の心構えなどに重点を置き、早期に自社に馴染めるよう、社長責任の一環として実行すべきであろう。また、本人も配属先の部下となる社員の性格や仕事への意向などにも耳を傾け、自分の管理方法・方針を前もって立てることも必要であろう。
管理・監督職である中間管理者の教育は、企業にとって最も重要である。彼・彼女らは1つの職場(部門)の長として、部下を指導統率しながら、職場(部門)の業務を管理・遂行する立場にある。管理職者への教育は、一般に管理・監督能力の向上と自分の業務分野に関連する専門的な知識・技能の高度化を目的として行われる。
しかしそれだけでなく、変化に対応できる応用能力や、視野を広げるために業務とは関連の無い一般知識についても教育する必要があろう。管理職者はいわゆる「T字型人間」になるよう努力をしなければならないと思う。
「T」の縦棒は、自分の業務の専門知識や自己の持つ技能に関する深い知識を、横棒は経営・経済・政治・業界等自己の業務や企業に関連する幅広い知識の習得を表している。
彼・彼女らへの教育方法としては、「Off JT」をベースとした外部セミナー参加や、ここで習得した知識を部課長会等の機会に社内で発表、参加者による討議による相互研鑽や、社長を囲んだ「一泊研修」の機会を作り、ノミニケ-ションも図りながら自社の経営課題や将来の姿の自由討議、経営戦略の検討を通した中長期経営計画の土台作りなど、「経営幹部の一人」としての自覚を植え付け、経営への参画意識を向上させることも有意義なものとなろう。
費用はかかるものの、会社として「会社の将来への投資費用」として予算化をし、制度化させることが重要であろう。(平成28年1月28日 日刊工業新聞) 

中小企業・小規模事業者の人材教育と人財育成㊦ 

事業承継も経営計画の一部/後継者育成経営者の大きな責務

    長谷川正博 (東京支部)

 本稿の最後の課題として「事業承継」問題に触れてみたい。中小企業庁編「小規模企業白書2015年版」によると、経営者の平均引退年齢は中規模企業の場合1990年では66.1歳、2000年67.5歳、10年67.7歳と推移しており、また小規模事業者のそれは、それぞれ68.1歳、69.8歳、70.5歳との事である(同書、P.55)。
ただ、筆者が見聞している限り70歳半ばを過ぎても、まだ頑張っておられる社長さんは大勢おられる。70代後半になって会長職に退いて、長男に後継社長職を譲ったものの、「まだ頼りない」として完全承継されていないケースや、適格な親族がおらず、また社員の中にも適格者(と思われる人材)がおらず、5年後、10年後はこの会社はどうなるのか、と他人事ながら心配されるようなケースも結構見受けられる。
いずれにせよ、事業承継自体も「事業承継計画」を作り、中長期経営計画の一部として位置付け、企業の存続、成長、発展を目指して策定する経営計画の中で、どう上手に後継者にバトンタッチするかを考え、計画に落とし込み、これに従って必要な手順を踏み進めることが、経営者としての重要な責務であろう。後継者を育成する責任は経営者にあると共に計画的に進めるべきである事を忘れてはならない。
 筆者の国内外4企業、十数年の会社経営を通して得た自分なりの結論は、古今東西を問わず、やはり「企業は人」ということだ。会社の業績は勿論大事な要素ではあるが、数字のみを良い悪いと論じてみても、それだけでは基本的な経営の強化にはならないと思う。  やはり、社員の一人ひとりの状態、つまり部下の状況をよく把握し、的確な認識の下に指導がなされなければ、良い仕事はできないし、優秀でやる気のある社員(=人財)に育てていくことはできないであろう。経営は人に尽きる。
経営陣の能力と、管理職者の職場の牽引力と、それに続く社員の素質、気持ちの持ち方に尽きるのではないだろうか。社員一人一人の能力を向上させ、会社全体のレベルアップを図ることが経営者の重要な役割であることを再認識し実行していくことが重要だ。
昔何かの本に書いてあったが、「努力というものは、あらゆる可能性を考えて成し遂げようとする執念にある。そこに人間の素晴らしさがある」。この努力をしようという気持ちを引き出すことが経営者・経営幹部の1つの大きな責務ではないだろうか。(平成28年2月4日 日刊工業新聞)

ISO9001.2015は、利益を上げる要求事項満載

マネジメントレビュー最重要/実施手順・情報、文書で明確に

    永井 守(東京支部)

ISO9001:1994年版の要求文書から大幅に表現が洗練され、企業がISO9001を実施すれば、確実に利益を上げる要求事項が随所に記載されている。
その主だった事項は、4.1項に「外部の情報を監視」とあり、企業環境の分析を意味しており、企業環境を分析することで将来開発すべき商品計画を立てることで、企業の存続が可能となる事を要求している。企業環境分析は、将来予測される商品開発手法を以前から紹介している「連関図」による商品開発だ。
重厚長大産業の衰退、パソコン周辺機器のフロッピーデスク(FD)装置の衰退、そして近年の携帯電話産業の衰退に見られる事実だ。
企業は現状商品の維持では数年後は必ず売り上げを下げていく。ISO9001はこの事を強く要求しているものと考えている。
4.4.1項には、「品質マネジメントシステムを確立」とあり、ISO9001の根幹をなす考え方で、製品開発、設計及び設計審査、QC工程図の作成、内部監査、目標管理、マネジメントレビュー、トップマネジメントからの目標設定、これらをPDCAのサークルで回すことだ。
そしてこれら運用するには、トップマネジメントのリーダーシップが不可欠であることが、5項に記載されている。
企業が利益を上げ、発展するには顧客の評価が不可欠であり、5.1.2項には顧客重視がうたわれており、顧客からのクレーム対応を確実する事が8.5.5項に記載されている。
顧客が要求している製品を検証する為に検査機器が適正であるか、7.1.5.1項にその要求が記載され、これらの品質マネジメントシステムを運用するに当たり必要となる事が、全社員への教育の実施で、7.2項で力量の確保を要求している。
以上述べてきた事項を実施するには、手順書が必となり、7.5項では文書化して情報を明確する事が記載されている。
ISO9001の最も重要な実施事項はマネジメントレビューで、特に①顧客の反響、②目標の達成状況、③品質マネジメントシステムの成果、④不具合の再発防止策内容、⑤品質推移、⑥内部監査での指摘事項、⑦購入品の品質状況、⑧リスクの発生防止、⑨改善すべき事項 等を検討し、企業体制の向上を図る。
以上、このようにISO9001は企業が実施すべき事項と再認識したい。(平成28年2月11日 日刊工業新聞掲載)

本社と海外拠点の情報体系が決め手

拠点の独自判断はトラブルに/本社承認の品質保証体系図が重要

    永井 守(東京支部)

筆者が大手電気メーカに勤務していた頃、その企業がフィリピンに組立工場を設立した。そのフィリピン工業に向けて東南アジア製の部品を調達するために、香港に調達拠点を設立する事になった。
筆者が担当したのは、香港で東南アジアの購入品を品質保証し、フィリピン工場へ供給する業務だ。
香港に転勤する前に地方工場を設立、製品の出荷責任は本社、地方工場は本社の指示に従わなければならない。
ある時、地方工場は独自判断で製品を出荷し、品質トラブルを発生させてしまった。この経験から、本社の承認機能・香港の部品調達機能・フィリピン工場の製造機能を踏まえて業務権限範囲を決定しないと大きな問題が発生する事を懸念していた。
大きな問題とは、本社には設計機能、香港は購入先工場の認定と品質保証機能、フィリピン工場は製造機能がありどのように連結して運用するか不明で、これらの機能が分離したままで運用すると、当然トラブルが発生する。
例えば、香港が新部品の調達先を選定した場合、装置として問題なく機能するかどうかを本社の承認なしで製品に搭載し、出荷した場合、品質トラブルが発生する。
また、フィリピン工場で工程数低減のために、新管理方法を開発し、この管理方法が適正かどうかに関する技術評価を本社で確認せず、製品を出荷した場合も当然品質トラブルを発生させる。
これを防止するために、独自で処理できる業務、必ず本社の承認を受ける業務を品質保証体系図に表し、規定を作成することが重要だ。
品質保証体系図の例として、
①新規図面を本社が発行し、香港が受付台帳に登録後フィリピン工場へ送付。
②香港で新規購入部品の調達が可能となった場合、フィリピン工場で装置搭載評価を実施し、本社が承認後承認結果を香港が受け取り、海外部品の購入を開始する。
③フィリピン工場で工数短縮のために、管理方法を改善、その改善方法と改善評価結果を香港に報告、香港は受付台帳に登録後本社に変更願いを行い、本社の承認結果を香港がフィリピン工場に連絡し、改善作業を開始。
是非、海外進出をする場合においては、事前に品質保証体系図を作成し、問題無く情報が処理される体制を確認の上、海外進出をすることをお勧めする。(平成28年2月18日 日刊工業新聞掲載) 

寛容の風土は落とし穴

企業の不正・ルール違反駆逐へ/行動基準繰り返し教育・訓練

    鈴木 勇(北関東支部)

ゴルフを始めて40年近くになる。スコアの方は、齢とともに、百を切るのに四苦八苦している。始めた頃は、練習にも力が入り、特にコンペでホールインワンを達成した時の喜びは消えることがない。ただ、出費が嵩んだので、ホールイン保険に入ったのは良いが、次回こそと意気込むが勝利の女神からはすっかり見放されてしまったようだ。
ゴルフをしながら、気になっていることがある。“フェアウエイ・6インチ”OK,“グリーン・ワングリップ”OKである。
始めた時の先輩はゴルフが上手で、英国紳士と言われるだけあって、ルールに厳しい方であった。始めた頃のゴルフ場は、造成ラッシュも続き、フェアウエイの芝の管理も決して良い状態とは言えなかった。キャッデイから救済処置が認められるとホットしたものである。
正式競技では当然のことながら、OKボールは許されない。つまり、アマチュアゴルフゆえに仲間に限って“寛容の風土”が許される。OKボールが許されるのは、プレーの進行時間の短縮上のことであり、良いスコアが出て満足しても、プレーヤーの実力(技量)向上には全く役に立たないのである。ボールの位置がどうであれ、クラブフェースをボールに正確に当てれば、狙い通りに飛んでいくはずだ。それが出来なくて苦労しており、奥の深い、魅力あるスポーツにしている。
さて、2015年も企業不祥事が目についた。どうして企業不祥事が発生するのだろうか。発生の都度、企業責任者が出てきて、ステークホルダーへのお詫びや、対策が種々述べられている。気になるのは、不祥事が発生するに至った真の原因が説明されていないことである。
消費者が長年にわたって拠り所としてきたブランド名が株式欄の片隅に追いやられているのは情けない。不正経理の対策として、社外取締役を入れるとか、監査法人への業務改善命令など…種々言われている。
しかし、ほとんどの企業では、既にCRS体制は確立されていると思う。企業の行動基準に“適正な会計”を行うと明記されておりながら“不正な会計”が現実に発生していれば、経理処理時点での判断行動として、明らかにルール違反である。企業が対面している状況がどうであれ、それぞれの業務判断行動において、正しい判断行為がなされる企業風土が必要だ。
アマチュアゴルフでいう“寛容の風土”は企業の将来にとってマイナスになるだけであろう。“寛容の風土”は業務処理時の判断行動を邪魔しているといえる。
企業の行動基準を繰返し教育・訓練を積み重ねて、職位に関係なく“寛容の風土”を駆逐し、企業人の日々の修練、向上を積み重ねマンネリから脱却する努力が大切である。(平成28年2月25日 日刊工業新聞掲載) 

“AEC”の活用と生産拠点の見直し・再構築を! ㊤

分厚い中間層消費市場拡大/コスト減・事業拡大絶好のチャンス

    長谷川正博 (東京支部)

昨年12月31日、ASEAN経済共同体(AEC)が正式に発足し、総人口6億2000万人、域内名目GDP2.5兆ドル(約284兆円)の一大経済圏が誕生しました。この人口規模は、経済共同体の中では、欧州連合(EU)の約5億人、北米自由貿易協定(NAFTA)の約4.6億人、メルコスール(南米南部共同市場)の約2.8億人などと比べて最大であり、さらに、EUやNAFTAはそれぞれ先進国を中心にした共同体なので、今後人口が増える(=消費市場規模の拡大)ことは、日本同様、期待しにくいと言える。
一方、ASEANは平均年齢が若く、今後も人口増加が見込まれ、また、加盟各国の経済発展につれて、先発6カ国を中心に中間層(世帯年間可処分所得が5,000ドル以上35,000ドル未満)や富裕層(同3万5,000ドル以上)の割合が増えていくことが期待されている。例えば、独立行政法人国際協力機構(JICA)が2014年6月にまとめたASEANの25年の予測によると、13年から25年の年平均成長率は全体で5.9%、総人口は25年に約6億9400万人に達し、所得水準の上昇に伴い、10年から25年にかけて中間所得層及び富裕層の合計比率が56.4%から76.5%に増加。また、これによりASEANの消費市場は10年から25年にかけて3.96倍に拡大するとしている。さらに最近では、この中間所得層が”アッパーミドル”、”ローワ―ミドル”と上下に広がりをみせ、分厚い中間層を形成してきており、消費意識や消費性向も「価格重視型」から「高品質な製品及びサービス」へ、という変化も見られるようになっており、消費市場としての魅力がますます高まっている。
 また、この共同体発足により、ヒト・モノ・カネの流れもより活発になり、域内での関税撤廃(ちなみに、関税については、発足時点で、ASEAN10カ国全体で9万9,434品目中9万5,463品目(96.0%)の品目の撤廃が完了)により、生産拠点の最適化や生産ネットワーク網の再構築などによりコスト削減や事業規模の拡大も期待されることになる。AECを活用することによって、生産適性が有利な国に生産を集約させ効率的な生産体制の構築を行うなど、ASEAN経済統合のこのタイミングは、東南アジアでの事業展開を考える絶好のチャンスであると言える。(平成28年6月9日 日刊工業新聞掲載) 

“AEC”の活用と生産拠点の見直し・再構築を! ㊦

“広域アジア”の戦略立案/イスラム市場への製品供給も視野に

    長谷川正博 (東京支部)

東南アジア諸国連合(ASEAN)は、中国、インドという2大人口大国=消費市場に隣接しているという地理的優位性もあり、この両巨大市場向けの輸出生産基地としてのASEAN拠点の見直しも必要になろう。またこの地域は、AECに加えASEANや加盟国が締結している自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)や環太平洋連携協定(TPP)等広域での経済連携と組み合わせることで、点から線へのより広域での経営戦略が可能となることも有利性と言える。   例えば、ASEANと中国の間では、2010年1月にASEAN・中国自由貿易協定(ACFTA)に基づき、中国・先発ASEAN6カ国の間で約9割の品目の関税が撤廃され平均関税は12.8%から0.6%に下がったと言われている。
中国向け輸出としてASEANで何が生産できるかを検討してみるのも企業経営上重要な戦略となるだろう。
日本からの中国輸出、および中国リスク回避の観点から中国内での生産を、ASEANからの輸出に切り替える事を検討する良いタイミングと言える。また、インドとASEANとの間のFTAは10年1月1日に発効しており、関税率の引き下げ幅や例外品目が多く残っているという面では若干見劣りはするものの、一般的に関税率の高いインド市場を狙う上で、ASEANは有利な地位を獲得したことと言える。
ただし、本FTAを使ったASEANから中国・インドへの輸出は、いまだに若干の通関手続き上(原産地証明などの面で)の課題は残っている様だが、この面での注意も払うことにより、ASEAN諸国に生産拠点を持つ日本企業は、これを積極的に活用できるというものです。
 またASEANの有利性の他例としては、加工食品産業や女性用化粧品等は、マレーシアやインドネシアでのビジネスを通して、「イスラムマーケット(ハラール市場)でのノウハウの蓄積」や「ハラール認証の取得」をしながら中東諸国や北アフリカなどのイスラム諸国(いわゆる”MENA”市場)へのマーケティング活動を展開することも考えられ、販売市場拡大の一助としても検討に値するのではないか。
これからの対アジア戦略を考える時、アジア各国を縦割りにして経営する方式から広域に捉えた経営体制を構築することが必要だろう。アジア統括本社的な機能を持ち、個別の国や地域だけに精通しているのではなく、アジアを広域に見ることのできる人材を育成しながらそのような体制を敷くことも検討に値するのではないだろうか。(平成28年6月16日 日刊工業新聞掲載) 

内なる経済 江戸時代を食から考える 

新田開発、コメ増産人口急増/栄養失調・伝染病、寿命・身長は最低

    矢島 英夫(東京支部)

室町幕府が崩壊し戦国時代になると各地の武将が競い合った。その基盤は経済力にあった。経済力は、コメの生産力である。その増産は、河川の治水工事で新田開発。新田開発の過程で赤米のインディカ米が作付された。日本最初の農業技術書「清良記」(17世紀)によると、新田開発された水田は開墾してもすぐ収穫できない。そこで野生の強靭さをもつ赤米が、開墾後の水田の主役となり、新田開発の第一段階において「稲作のパイオニア」となった。16~17世紀は、新田開発に次いで人口革命の時期だった。戦国大名の規模の大きな領内開発、小農民の自立に伴う「皆婚社会」化による出生率増などが主たる要因である。
 人工は江戸時代初期1600年代1200万人が、享保期(1716~1735年)には、3000万人に。この人口増は、新田開発によるコメの増産。また、江戸時代の日本は鎖国をしていた。つまり、食糧自給率が100%だった。

江戸時代の人口とコメ消費

 

  人口(万人) 耕地(千町) 実石高(万石) 1人分/年(石) 1人分/日(合)
1600年 1,200 2,065 1,973 1.64 4.49
1730年 3,208 2,971 3,273 1.2 3.28
1850年 3,228 3,170 4,116 1.75 4.79
(速水融・宮本又郎「概説173,170-18世紀」)

 

 平本嘉助「骨からみた日本人の身長の移り」1981年によると栄養失調や伝染病が多く江戸時代の成人の平均身長は、155cm、女は、145 cm。歴史上の全時代で最も小柄であった。江戸期の食事は、1食あたり一汁一菜か二菜であり、極めて質素で、肉等の蛋白質が少ない食事で栄養状態が悪かったうえ伝染病が度々流行し乳幼児も子供も簡単に死んだので、平均年齢も下がった。
立川昭二の「江戸病草紙」1998)によると、速水融が信州諏訪地方の宗門改めの人別帳をもとに、2才児の平均余命を求める。寛文11(1671)年~享保10(1725)年のそれは男36.8才、女39.0才、享保11(1726)年~安永4(1775)年になると、男42.7才、女44.0才であった。因みに最高権力者たる将軍で15代の平均は、51歳。12代将軍の家慶は、27人の子がいたが成人に達したのは、13代将軍家定の1人のみ。また、寿命と共に身長も有史以来最も低いのが特徴。5代将軍綱吉は、124cmと小柄である。他の将軍は、8歳で死亡した7代の家継の除き150-160 cmであった。

(平成28年6月23日 日刊工業新聞掲載) 

中小企業のESのすすめ㊤

職場のモチベーション知る経営指標/意識調査で問題浮き彫りに

    吉岡 聰(南関東支部)

1.なぜ、昨今従業員意識調査が注目されているか? まず、社会的な背景から説明したい。

 

① M&A(合併・買収)や組織再編、分社化等、組織が劇的に変化するケースが増加している。こうしたケースでは、新体制を円滑に軌道に乗せるために新しい経営方針や体制の浸透度や社員のコミットメント度合を把握し対応していくことが極めて重要になっている。 ② 成果主義の浸透に伴い、多くの職場で社員に疲弊感やモチベーションの低下で職場が不活性化し、品質や生産性の低下などの重大問題に発展しているケースが増えてきている。こうした問題の根本的な解決には、社員の疲弊感の原因やモチベーション向上の要因を正しく把握し対処することが不可欠となった。③企業の問題解決や成長発展のためには、「社員の認識や価値観、動機づけ要因、満足度などの把握が重要である」という認識が広まり、それを可能にする意識調査が一層注目されてきた―ことなどがある。
次に企業の内部的事情として、④近年、従業員満足度を従業員のモチベーションや意欲を図るための経営指標の一つとして位置づける。⑤働く人や働き方の多様化に伴い、届きにくくなる“社員の声”をしっかりと把握し、業績の向上につなげる必要が出てきた。⑥ESは顧客満足度(CS)に非常に関連が強く、ESが高い企業はおのずとCSも高くなる傾向がある。
以上のような事情は、企業規模の大小にかかわらず抱えるようになってきた。筆者がアドバイスをしている中小規模の食品加工会社でも調査活動に取り組み始めた。


2.意識調査を実施することでどんな効果が見込まれるか?

 

①新しい経営方針やビジョン、大幅な組織変更、新人事制度導入など経営者が打ち出した施策の現場への浸透状況が確認でき、今後の対策立案上の参考情報が得られる。 ②組織や各職場、社員の状況を属性別で定量的に把握できるため、問題や課題が浮き彫りにでき、的を絞った対応策を立てることができる。 ③調査結果に対するフィードバックや問題点への対処を迅速に実施していくことにより、社員から経営・組織に対する信頼感が醸成され、組織へのロイヤリティーが高まる。④意識調査を継続的に実施して行くことで状況の推移をモニタリングができ、組織力向上に確実に結びつけることができる―などの効果が挙げられる。

(平成28年6月30日 日刊工業新聞掲載)

中小企業のESのすすめ㊦

職場の活性化、主体的取り組み大事/人材育成・組織改革に効果

    吉岡 聰(南関東支部)

3.なぜ、従業員満足度(ES)調査を組織改善の手段となるか?

 

 昨今も変わらず、企業が共通して抱える問題の主な項目としては次のようなものが挙げられる。ビジョンなど方針・方向性に関するものとして、①ビジョンや方針の抽象的・分かり難さ②会社の方針が社員の理解されないこと。戦略や戦術的なものとして、経営計画を作っても十分に実行されないこと。
業務の流れや仕組みの関するものとして、①仕組みルールを取り入れても形骸化してしまう②社内システムが機能しない、効果が上がらない③無駄に思える会議やミーティングが多いこと。組織体制に関するものとして、①経営層と現場層に壁のようなものがある②部署間が協力し合わず対立することがあること。評価の仕組み人材育成制度などに関するものとして、①人事評価制度の運用がうまくいっていない②研修に参加しても業務の役に立っていないこと。
コミュニケーションや人間関係に関するものとして、①提案や意見が中々出てない、②社員に自立心や主体性がないこと。

 

4.どうすれば、ES向上活動を継続させられるか? 

 

①経営・管理層主導のES調査では、経営者の都合の良い回答を得たい意識が働き、誘導的な質問項目になる可能性がある。そこは覚悟が大事で、経営者はこれに取り組むためには一線を超えるような意見が出ようとも耐える覚悟が必要で、まず信頼関係を築くのが最も重要なポイント。②外部に調査を依頼した場合通り一遍になりがち、従業員が職場の問題解決プロジェクトとして主体的に取り組む環境づくりが大事。③個人や職場の問題・課題は、職場単位で改善活動を促進させる。会社全体の問題・課題は、経営層に改善・改革の提案をする等、提案制度との連携や事業提言などの環境づくりも視野に入れる。④プロジェクトが野合集団にならないためにも、活動目的、目標設定、取組み活動計画を作成するルール・枠組みや調査で得られた個人情報の取り扱いのルールも明確にしたい。⑤ESプロジェクトチームでの取り組みは幹部候補育成の手段として幹部への登用の実績例も見られる。これは人材育成や組織改革への動機づけとして大事なことといえる。

(平成28年7月7日 日刊工業新聞掲載)

「顧客が伝道者になる共創マーケティング」

BツーCツーC型で企業成長/潜在顧客獲得、「口コミ」効果に期待

    上野延城(埼玉支部)

「コトラーのマーケティング3.0」でフィリップ・コトラーは、新たなマーケティング活動の基盤に共創、コミュニティ化、キャラクターの構築の3つを挙げている。
共創マーケティングという言葉には、消費者の意見を聞き、商品開発やサービスの改善を行うイメージがある。
共に創ると書いて「共創」。すなわち、企業と顧客が関係を築き新しい価値を生み出すことである。
共創マーケティングのベースになるのは共創コミュニティである。共創コミュニティとは、企業と消費者、あるいは消費者同士が交流する場のことである。
今日、企業が注力すべきは「エンゲージメント」である。
エンゲージメントとは、一言で言えば企業の存在や成長を応援してくれる行動を顧客が取ってくれることである。
商品を積極的に再購入し、また友人や知人に熱心に奨めると言った実際の行動がエンゲージメントである。こうした顧客が多ければ多いほど、企業にとっては安定的・持続的な利益をもたらしてくれる。
多くの欧米企業が顧客エンゲージメントの向上を最優先課題の一つとして挙げている。
顧客と共にブランドを育てていくための中長期的かつ双方向のつながりを持ち続けるためには良好なエンゲージメントは欠かせない。
エンゲージメントが築けると自分だけでなく、家族や友人・知人に積極的にブランドを推奨してきくれる「伝道者」になってくれる。伝道者とは、キリスト教で未信者にキリスト教の教旨を伝え、入信を促す働きを職業としている人のこと。
マーケティングでは、企業のメッセージを中立の立場で効果を広く伝える人のこと。
どの企業も自社のブランドを買い続けてくれる支持者を増やしたいと考えてきたにも関わらず、支持者を育成するための具体的な対策を推進する企業は少ない。
顧客が顧客を呼ぶBtoCtoC型のマーケティングが伝道者を増やす要素になる。
伝道者になった顧客は、企業の代わりに潜在顧客にコミュニケーションをしてくれる。
しかも、広告よりも数倍効果がある「口コミ」という強力なメディアである。
顧客を自社の伝道者にできるように顧客との共創コミュニティを深めることが、今後のマーティングではなくてはならない存在になる。(平成28年7月14日 日刊工業新聞掲載)

コモディティ化回避の方策を探る

経営戦略に新しい競争次元必要/原点に立ち返り価値提案を軸に

    上野 延城 (埼玉支部)

コモディティ化とは、製品カテゴリーにおいて、品質、機能、形状などの競争における差別化特性が無くなり、顧客からすると製品に違いを見出すことのできない、どの製品を買っても同じという状態のこと。
コモディティ化は、標準化の進展、技術の発展、ライフサイクルの成熟化などの理由によって、製品やサービスにおける本質的部分で差別化が困難となることで起こる。
今日、コモディティ化はあらゆる産業において無視できない最重要課題となっている。
STPと言われている「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」を中心とする伝統的なマーケティング論理はコモディティ化した市場においては有効性を失いつつある。
驚異的なイノベーションもいつか必ずコモディティ化されると観念している経営者も多い。コモディティ化を回避するための企業、戦略としては、付加価値の付与による多機能化が一般的であるが、顧客の求めている以上の性能をつけていることが多く、消費者にとっては購買決定に至らないのである。
回避するための経営戦略には新しい競争次元を創造していく必要がある。
小売業にとってのコモディティ化とは、商品目線でモノを売ろうとする姿勢にある。安売りを強調したチラシはこれを象徴するものである。
「顧客は本当に値引きを要求しているのか」を問い直すべきである。「顧客は何を求めているのか」「私たちの顧客は誰なのか」という商売の原点に立ち戻るべきである。
「何を売るか」という商品目線でなく、「どのような価値を提供するか」という顧客目線で望めば、値下げはそれほど意味を持たないことがわかる。
地方のあるスーパーは、安売りでなく、料理相談コーナーの設置や健康レシピの商品を提供するなど、顧客への価値提案を軸にした事業戦略で業績を伸ばしている。
すなわち、売り方の差別化でできる可能性もある。コモディティ化した成熟市場でも技術革新は生まれ、差別化が実現することはある。
成長段階と成熟段階では、有効となるマーケティングは異なるはずである。
回避するためには、従来の思考回路からの脱却に他ならない。(平成28年7月21日 日刊工業新聞掲載) 

歴史人口学から現代を考察する㊤

人口の増減と社会変化つぶさに考察/江戸期は飢饉で人工停滞

    矢島 英夫(東京支部)

一.人口学は確実な未来予見を行える。「歴史人口学」は、地域に残る人口史料を分析し、人口の推移や庶民の生活を明らかにする学問。日本を代表する歴史人口学者の速水融氏は、近世を中心に、明治時代以前の人々の膨大な史料を読み込み、人口の増減によって社会がどう変化するかをつぶさに観察する人口動態予測の一つには、合計特殊出生率(TFR)がある。これは1人の女性が生涯で産む子供の平均数。 
TFRが2.07人を切ると、20~30年以内にその地域の人口が減る。古代の日本の人口は、戦前の数学者の沢田吾一が奈良朝時代の戸籍を使って、当時の人口は560万人という推定をしている(『奈良朝時代民政経済の数的研究』)。
二.享保6(1721)年に8代将軍吉宗が始めた全国の国別人口調査。1721年から定期的に、全国を地方別に人口調査した。享保6年の調査では、大体2600万人と算出。算出人数は、武士と子供を除いていたので、そこに武士と子供を加えると大体3200万。
三.560万(奈良時代)から900年を要して1200万(江戸初期)に2倍に。そこから100年足らずで新田開発による食料生産の増加により17世紀に人口が3200万(江戸中期)と倍増した。全国国別人口調査が行われた享保6(1721)年から弘化3(1846)年の間に、日本には3回の人口危機、大きな飢饉、凶作、もしくは疫病の流行があった。最初は享保の飢饉で、享保17、18年。この飢饉の原因は、中国で大発生したウンカが、東シナ海を越えて、主に西日本に拡がり、西日本が凶作になった。そして人口も減った。更に出生率が低下とも重なり、西日本の人口は減った。更に人口転換による少産少死の近代社会への転換により18世紀は、人口は、停滞。
四.速水氏は言う、鎖国令が出てキリスト教が禁止された裏に、日本は、室町時代まではよき中華世界秩序の一員で、足利将軍は明の皇帝から日本国主にするといって任命されている。
 この鎖国令は、ヨーロッパ或はキリスト教を拒否することを楯にしながら、実は、中華世界秩序から抜け出して独立することを意味した。鎖国を中華支配からの隔絶と、日本から金が大量流出防止のために行われた。(平成28年7月28日 日刊工業新聞掲載)

歴史人口学から現代を考察する㊦

人口急減社会制度面から対処/合計特殊出生率上げる対策急務

   矢島 英夫(東京支部)

人口が減少又は停滞している時期には、文化が成熟し花開く。人口減少社会では生産量を増す必要がなく、人口が減ることで1人当たりの所有物が増す。社会が成熟し、人は余暇を楽しむようになり、経済は停滞する。代わりに芸術・文化にカネが回る。人口減少をきっかけに拡大一辺倒から価値観を転換し、文化を成熟させる方向に社会やカネの回し方を変えて行くことが必要。
日本では速水融氏から始まる歴史人口学は、鬼頭宏氏に継承され発展した。縄文後半、鎌倉、江戸後半に人口減退期を迎えた日本は、21世紀の現在4度目の減退期に直面した。現在の人口減少は、近代経済成長の限界、日本独自の家族制度等が要因である。人口減少化において、東京・大阪などの大都会の一極集中が進み、地方がますます疲弊する。
これは、江戸期の18世紀の人口停滞期と同一である。人口が減少・減退した理由として、これまで主に気候変動が挙げられるが、過去縄文後期に寒冷化が進み東日本の人口が急減、鎌倉期は、逆に温暖化による作物の減少、江戸期は、寒冷化により飢えが頻発し、食糧が不足によって人口増加が制限される。
いわるる、人口支持力低下である。技術発展のおかげで食糧生産量が増え、人口支持力が上がり人口が増える。人口支持力が限界を迎えると人口停滞期が来る。そこに飢えが起きると人口減少が起こる。
江戸期17世紀は、新田開発により多産となり、経済水準を上げたが18世紀になると当時の環境・技術では、経済を増大できず、人口支持力が限界となった。また、晩婚化と少産少死が進み現在の日本と同様となった。江戸期の人口停滞は、現在の人口減少に日本はどのような社会を目指すのか社会の構造変化のソフトランデイングに向けて基本的な経済をどのように変えて行くのがいいか、現在のマイナス金利政策を進めて行くのが良いのか。基本的に考える必要がある。
人口変動は社会体制、生活様式、政治制度などのシステムに影を落とす。少子化、人口停滞を江戸18世紀の時代を考え現在の日本に生かし人口急減社会への対応をシステムで考えなければならない。1974年の人口白書で2010年に日本の総人口がピークを迎え、その後は減少することを予測していた。42年前に分かっていた人口減少の対策を取らなかった。合計特殊出生率を上げることが急務と考える。 (平成28年8月4日 日刊工業新聞掲載) 

シェアリングエコノミーの時代

「所有」から「利用」へ/新しいサービスで世界市場年平均29%成長

    上野 延城(埼玉支部)

最近、シェアリングエコノミーが注目されている。「シェリングエコノミー」とは欧米を中心に広がりつつある新しい概念で、ソーシャルメディアの発達により可能になったモノ、お金、サービス等の交換・共有により成り立つ経済のしくみのことを指す。
典型的には個人が保有する遊休資産の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。
貸し借りが成立するためには、信頼関係の担保が必要である。そのためにソーシュアルメディアの特性である情報交換に基づく穏やかなコミュニティーの機能を活用することができる。
近年、カーシェアリングに代表されるシェァ型サービスは、車以外にも衣料品や家、など幅広い分野に広がっている。
シェア型サービスは、国内よりも一足先に海外で話題となった。世界各国に広がるシェァ型サービスの中で、特に大きな成功を収めているのは、米国を中心にカーシェァリングサービスを展開する「Zipcar(ジップカー)」である。
ICカードで手軽にシェァできることが受け、2015年6月時点で90万人以上の登録会員がいる。日本でもカーシェァ市場はまだまだ伸びると予測されている。カーシェァは「所有」から「利用」へという経済全体の大きなトレンドに沿ったサービスである。
今後、世界各国で新しいシェアリングサービスが生まれ、経済的生産性が期待できる。
矢野経済研究所「シェアリングエコノミー市場に関する調査結果」(15年9月)によると、日本国内におけるシェァリングサービスの市場規模は、14年度時点で233億円と推計され、18年度に約2倍の462億円に達すると予測されている。(年平均成長率:18.7%)
また、世界におけるシェァリングサービスの市場規模は、13年時点で150億ドルと推計され、25年には約22倍の3,350億ドルに達し、既存のレンタルサービスと同等の市場規模になると予測されている(年平均成長率:29.5%)。
シェァの魅力は、モノの貸し借りという行為を通じて、人とつながる楽しさ、同じ価値観を共有する喜びなどを味わえるところにある。(平成28年8月11日 日刊工業新聞掲載) 

中小企業がコピペ体質に陥らないために㊤

ネット検索・情報依存で自己責任低下/全体・個の意 常に確認

    吉岡 聰(南関東支部)

5つのゲンで自律的にPDCAを回す経営を
筆者は最近、身近なビジネスの場でも結果や情報のみを求める傾向が目立ってきたと感じている。一つの体験は、会議でネット検索をしながら単なる情報紹介をするだけで自ら意思を反映させない幹部社員が増えてきたこと。もう一つは、あるセミナーで、講師(筆者)に配布テキストの原本をデジタルファイルでの提供を要求してくる受講者、また資料収集目的で話しの輪に加わらずに帰ってしまう上級管理者クラスの受講者。これでは社員の思考力はもちろん、会議までもがロボットに置き換えられる時もそう遠くないことを想像したくなる。
あらゆる事象や情報・通信の技術化(ICT)で自分の意思決定権を指一本に委ねてしまいかねない時代、日常の業務においても「情報を検索し、情報を提供する」だけの感覚が支配することになる。脳や手作業の低下、ひいては自己責任感の低下に至る。SNSよるもっともらしい情報が独り歩きして社内の“総意”に拡大していきかねない。取得した情報にだれも責任を取らず“無責任な総意”に進展してしまう危険性がある。
そうならないためには真の理念・目的を一里塚としながら全体の意、個の意を常に確認し合うことにある。アナログな意思疎通には、いったん自分の考えるプロセスが必然的に発生する。
多様・多量な情報から得られた経営スタイルや手法は短兵急に模倣できる。しかし、それは自社の組織文化の中から創出したものではない、コピー経営である。近未来は、中小企業経営といえども「ビッグデータの情報収集と分析はAI、その判断と独自性思考は生身の人間」と役割の棲み分けできる自律型経営を意識していかなければならない。
組織がICTコピペ化経営に陥らないための意思決定には、「情報検索⇒情報を読み取る倫理・智を展開する⇒情報を咀嚼する⇒自分の言葉にアレンジする=情報をブレンドする」の手順を意識したい。さらに、泥臭くも現場で根強く唱えられている「3ゲン(現)+2ゲン(原)」主義を思い起こしてほしい。「現場」で、「現物(現象)」、「現実」を確認し、結果に至る原因メカニズムの「原理」を知り、期待される課題を把握し、果たすべき機能の「原則」を考えつつPDCAを回していきたい。(平成28年8月18日 日刊工業新聞掲載) 

中小企業がコピペ体質に陥らないために㊦

経営者は現場の実態見る努力を/自立・自律心で人間の判断脳磨け

    吉岡 聰(南関東支部)

組織のコピペ仕事にだまされない三つの眼
一つは経営者の眼。部下は誰しも上司の不機嫌な顔を見たくない、不都合な情報を伏せたがるものだ。事態を好転させてから話そうという思いもあるだろう。ある企業の幹部から聞いたエピソードがある。創業者社長にある報告する時、煮詰まっていない案件を外して用意した。社長はただ聞くだけで、報告は何事もなく終わると思われた。その瞬間「あれはどうした」と、省いた案件を突いてきたそうだ。
創業者だけに、事業の勘所を熟知しており勘も鋭い。いろいろなところから情報を集めるパイプも持っている。自社の古い体質の踏襲(コピー体質)、社員の前年目標の上乗せ計画など社員のコピペ仕事、そして安易な外部のコピペ情報にだまされないためには現場や冷厳な事実を知る強い意志が要る。経営者は自ら現場に降りて冷静な目で実態を見る努力をしなければ情報が偏る恐れがある。
二つは職場の客観的な眼。情報が氾濫しそれが簡単に入手できる時代、どこかの会社で実施されていた内容をそのまま提案される社員の改善案等、内容を咀嚼していないので実行のコツは分からない。あとはあなた任せ・成り行き任せ。こういう状況が、企業に共通する情報過多時代の職場風景ではないだろうか。しかし、コピペへの誘惑から逃れて自分の言葉だけで表現することは至難な時代である。職場ではグループ議論を習慣づけながらコピペ情報の是非を客観的に判断する社員の分析力・問題解決力の向上に努めたい。
三つは自社を見つめる眼。他社のマネジメントシステムや手法の事例が簡単に入手できる。モデルをコピペして自社に取り入れた企業の経営者は間もなく、何の効果も出ないじゃないかと後悔とも恨みともつかないたま息をつく。ズルズル形骸化したシステムの維持にコストをかけ続ける。始めは拙くもエキスを理解し咀嚼しながら自社流に開発するのが正解といえる。筆者の知る少し突っ張ってへそ曲がりなところがある若い社長は時間をかけながら自社流の人事管理システムやリスクマネジメントシステムを作り上げた。真の自社のしくみ(仏)は自社の自立・自律心(魂)からしか作れない。総てがAI(人工知能)活用や外部依存が可能な時代を迎え、人間の判断脳をさらに磨かなければならない。(平成28年8月25日 日刊工業新聞掲載)

生産性の視点

まちづくり、5指標を管理・改善/繁栄へ思い切った対策必要

盛重 芳文(中国支部)

わが町、山口県宇部市と商工会議所がまちづくり会社「にぎわい宇部」を設立し、タウンマネージャを募集している。
廃墟と化した商店街をいかに再生するか、空き店舗、地権者対策、まちづくり企画と再生推進を狙いとしている。私はこれに応募したいと考えている。
全国の市町村の大部分が不成功に終わっているプロジェクトの再現である。まちづくり、商店街を一つの会社グループと見た時に欠落しているものは①生産性向上②品質向上③コスト低減④サービス品質の向上⑤製品・商品・品揃えの革新が全国いずれの街も欠落していることに気付かず、小手先の思い付きの積み重ねを継続して失敗していることに気付いていない。
創業、経営革新、女性起業、若者起業などをもてはやすが隣接に見える機械製造工場、化学プラント工場の生産性に追いつくことは到底不可能である。この暗黙の承認が衰退の言葉表現となる。追随並ぶことは不可能にしても昨年よりは今年と向上、低減、進歩、革新の指標が何か明確にあるだろうか。
大企業が進展し、小規模企業、中小企業が呻吟し、いつも中小企業をしている差はこの5点の指標管理改善に尽きる。
これに着目した小規模企業、中小企業が突然変異のように成功した事例が各地に発生すると、商工会議所、経済産業局、日銀支店はもてはやす。しかし最近の地域銀行は金融視点からこれらを冷静に見ている。容易にもてはやしに乗ることはない。
地域別商店街、市別商店街、県別商店街、同じく小規模事業、中小企業を年度別、5ケ年計画的指標の進歩向上改革改善が観察遂行されない限り、全国の組織が賽の河原である。
アベノミクスと日銀は、明確な指標管理を目指す点が過去と違っている。
原油等々国際情勢変化で意の侭にならず切歯扼腕であろう。小規模事業、中小企業、創業、経営革新も急速な高齢化弱体化と少子化人口減でローカル大部分はアベノミクスに反して急速に弱体化していく。
この指標対策管理は、地域街区毎のM&Aと事業連携契約数だ。パソコン設置数、売上高、納税高である。空き店舗、空き家の死に筋退治数だ。
悪貨は良貨を駆逐する。事業、店舗の繁栄はまず不採算、死に筋野撤去からである。思い切ったこの対策着手無くして改善も向上も無く失敗だ。これを推進する約束で応募したい。(平成28年9月1日 日刊工業新聞掲載)

創造的適応のマーケティング

消費者ニーズそのものを創りだす/新しい価値の提案が重要

上野 延城(埼玉支部)

マーケティングを特徴付ける有名な言葉に「創造的適応」がある。創造的適応とは、市場にただ適応するだけではなく、創造的に適応するという意味である。
顧客が大事だという発想はしばしば適応型マーケティングにつながるが、それだけでは不十分である。
顧客が大事であれば新しい価値を提供することも重要なマーケティング活動である。
マーケティングとは、単に消費者ニーズを聞いてそれにふさわしい企画して発売するという適応的な活動だけでなく、そうした適応の基盤となる消費者ニーズそのものを創りだす活動である。
市場に創造的に適応することがマーケティングにおいては成功の決め手である。
そのためには消費者の持つその製品についての本音を探ることが欠かせない。
日清食品が「カップ麺」をあまり食べない女性層に向けて新商品を開発した記事が新聞に掲載されていたので、創造的適応の事例として記してみたい。
開発にあたっては、約30%の女性がカップ麺を敬遠する理由を深く調査したところ、多くの女性はカップ麺自体が嫌いなわけでないことが確認され、課題は大きく二つに絞り込まれた。
一つは“他人の目”。職場の昼食でカップ麺を食べていると、どうしても他人の目が気になり、食べたいけど食べられなくなってしまう。
もう一つの課題は“自分の目”である。自己管理の意識が高ければ高いほど、健康やダイエツトが気になってカップ麺を食べることがためらわれる。
そこで自分の目の開発では、女性が食事の際に重視するのはカロリーだけでなく、野菜であることに気づき、野菜をたくさん盛り込み、パッケージでそのことが一目で分かるように工夫した。 
また、他人の目の課題解決では人気俳優の口から「いい、食べっぷりだ」のプロモーション活動を積極的に実施した。
いい食べっぷりとは、男性であろうと女性であろうと褒められることであり、何ら一目を気にすることではないというわけである。
女性のカップ麺に対するニーズに適応し、世間や社会に向けて新しい価値の提案をして価値の創造を目指した。
新商品の売れ行きは上々のようである。これこそ、創造的適応を目指したマーケティングである。
(平成28年9月8日 日刊工業新聞掲載)

成熟市場におけるイノベーション

競合の優位性減らす「中立化」戦略を/市場投入期間の短縮が重要

上野 延城(埼玉支部)

今日、市場の多くは成熟し、限られたパイを巡って激しい競争が展開されている。製品のライフサイルルが成長期から成熟期に入り、成長が鈍化した。
需要は買替えか買増しが中心となり、わが国の市場は成熟市場となった。
成熟市場とは、ビジネスの周期的変動の影響を除いた成長率が典型的には、10%以下の段階のこと。
「ライフサイクルイノベーヨン成熟市場+コモディ化に効く14のイノベーション」(ジェフリー・ムーア著)にはイノベーションの効果として「差別化」「生産性向上」「中立化」の三つを上げている。
このなかで「中立化」という考え方は大変参考になった。
イノベーションの望ましい結果のひとつに中立化がある。これは、競合他社の優位性に追いつき、自社の欠点を克服することで、他社の差別化要素を無効化する戦略であると述べている。
中立化の例としてSUV(スポーツ多目的車)が自動車市場に最初に登場したときに、フォードをはじめとする数社が先行者として差別化要素を有していたが、その後、中立化を目標として他のすべての自動車メーカーが自社のSUVを提供しはじめた。
中立化は変化する競合環境に対する重要な対応策である。中立化のためにはイノベーションが必要と述べている。
中立化を目指すイノベーションの目標設定には差別化を目指す場合と異なるアプローチが必要である。
「クラス最上級」を求めるのでなく「必要にして十分」な目標を追求する必要がある。
その理由は、クラス最上級の製品は、それが市場で最初の製品でない限り、投資に見合うだけの高い利益をもたらさない。また、中立化においては機能の豊富さよりも市場投入までの期間短縮の方が重要であるということ。
中立化とはイノベーションによりターゲット市場における競合他社の優位性を減少または消滅させることができた状態である。
これまは、イノベーションの効果はターゲット市場において競合他社を十分に引き離すことができる差別化戦略が主体であったが、成熟市場におけるイノベーションには他社に抜きんでるということではなく、競合の差別化要素を弱体化、また無くす目的とする中立化という戦略も大いに効果がある。(平成28年9月15日 日刊工業新聞掲載)

文具業界の勝ち残り戦略に学ぶ

日本の家電メーカーの失敗教訓に/独創的商品・新市場に挑む

上野 延城 (埼玉支部)

ヒット商品が相次ぐ文具業界が元気である。2015年の国内文具市場は前年比9%増えた。
“のぞいてみよう!ちょっと気になる文具の世界”のキャッチコピーで第12回「書く・貼る・捺す・デジる」展が8月23・24日に都内で開催された。ビジネスユーザーを中心に来場者で会場はあふれていた。
文具業界では最高益を更新する企業も多い。その要因は「日本の家電メーカーの失敗に学んだ」とある大手メーカーの幹部は述べている。
日本の家電はコモディティ化のワナに陥り、製品の機能や品質でライバルと区別できなくなり価格競争に巻き込まれた。文具も製造技術や部品はコモディティ-化が急速に進んだ。そこで自社で製品を開発・生産し、過剰品質にならず消費者が求める独創性のある商品開発に注力した。
新市場にも挑んでおり、展示会であるメーカーは防災商品に取り組み、災害時などのいざというときに着る布団&エアーマットを開発した。歩ける寝袋で靴を履いたまま着られ、ゆったりサイスで前面ファスナーの、すぐに着られて、すぐ脱げるものである。
しかも収納はA4ファイルサイズなので書棚や机の引き出しなど効率的な保管が可能である。
また、新設の「子育て家族に役立つ文具」コーナーでは筆記具メーカーとテープメーカの共同開発した書いた文字が貼れる商品は専用ペンで筆記台に文字を書いて、その上からテープを貼ると、文字をテープに写し取れる。食品容器やコップにお名前シールが貼れるので便利である。この商品は手芸用品やベビー用品などの新たな販路開拓につながっている。
文具売場には芯が太らないシャープペンシル、きれいに消せるボールペン、針のいらないステープラや女性向けのおしゃれな封筒など、ちょっと前には見ることがなかった新しい商品が多く陳列されている。こうした新機能をもつ文具が開発され書店やドラックストアーなどでも文具を扱う店が増えている。
また、付加価値の高い製品は国内はもとより海外においても人気を得ており、各社は海外市場への販路を見出している。文具業界の踏ん張りは日本企業の勝ち残りの道を示しており学ぶ点が多くある。

(平成28年9月23日 日刊工業新聞掲載)

拡大するスポーツ産業マーケット

五輪追い風、政府目標25年に15兆円市場/新ビジネス創出の好機

上野 延城(埼玉支部)

中小企業庁は2016年7月に「中小企業等経営強化法」を施行した。これは,「経営力向上計画」で稼ぐ力を強化するチャンスであるとしている。また,2016年8月19日『ニッキン』によると,中小企業庁は信用保証制度見直しのため,有識者の作業部会を設置してから約1年が経過した。15年12月に中間論点の整理をとりまとめ,16年4月から議論を再開した。現在では中間論点に沿って有識者から意見を聴取している段階であり,具体的な方向性は固まっていない状況にある。その中の議論の一環として,中小企業の経営改善や事業再生に関する意見を聴取し、複数の委員から指針作成の2案が出されている。
一つ目が「経営に関する健康診断指針」の策定である。これは、深刻な経営難に陥る前の健康診断ツールの必要性を主張する意見である。二つ目が、「中小企業と金融機関の信頼関係構築を促す指針」の策定である。これは、金融機関のコンサルティング機能に注目し、平時から良好な関係構築を図り経営悪化を未然に防ぐ狙いがある。作業部会は16年度末までに最終報告書をまとめる予定であり、この二つの指針策定が最終報告書に盛り込まれるのか焦点になりそうである。
一方、16年8月17日『日本経済新聞』によると、金融庁は地域経済の縮小を防ぐには、地域金融機関による企業支援が不可欠であるとしている。かつて銀行は「天気がよい時には傘を貸し雨が降ると傘を貸さない」と言われた。現在、地銀各行は「現場力強化」を掲げ,担保に依存せず融資する事業性評価のノウハウ確立を急いでいる。
雨の日も取引先企業と「二人三脚」で乗り越えることが地域金融機関が地域経済に果たすべき役割や使命であり、それは今まで以上に大きくなる。また、昨今の金利低下が経営者の投資マインドにプラスに働いていると言われている。低金利で金融機関の事業環境は厳しさを増しており,2017年3月期の収益環境は厳しく利益も減少する金融機関が多いと見込まれる。その中で,地域金融機関には事業性評価への取り組みを推進してほしい旨金融庁は要望している。
貸出先企業の成長性を見極めて適切なアドバイス・提案を促し、貸出先が成長することで金融機関自身も成長するという共存共栄のビジネスモデルを構築することが重要である。つまりコンサルティングサービス等、金利面や条件面ではない付加価値を求められている。金融庁は、15年9月―12月に取引先企業が金融機関についてどうみているかヒアリング調査を実施した。今後はその調査で得た情報を基に,各金融機関に対し事業性評価の方法や成功事例等の情報を提供していくとしている。
中小企業と金融機関との対話を深め、事業性評価推進がどこまで浸透しいくか地域創生のカギを握ると考えられるため今後進捗状況を注視していきたい。(平成28年10月6日 日刊工業新聞掲載)

環境経営士の提言

業務効率化でコスト減・省エネ/経営者の具体的行動を積極支援

多賀吉令(中部支部)

環境経営とは、企業と社会が持続可能な発展をしていくために、地球環境と調和した企業経営を行なうという考えである。
環境関連規制の対応だけでなく、幅広い環境活動が求められている。中小企業の方々には多くの悩みをお持ちだと思う。
例をあげると①整理整頓ができず、工場、事務所内が乱雑②仕事の遅い人と早い人との差が大きい③ミスが多い、事故が多い、不良品がよく出る④在庫が多い、材料が余る、廃棄物がたくさん出る⑤一生懸命働いているのに利益が上がらない⑥同じ失敗を繰り返す― など。このような問題を解決するためには、経営改善が必要だ。
経営改善のポイントはムダを省いて業務の効率化を図ること。
原材料の使用量を少なくしてコストを削減し、作業効率を高めて時間を短縮する。これらの改善は、環境負荷を減らすことにもなる。ムダに捨てていた原材料を効率よく使用することは資源の節約やゴミの節減につながり、作業時間を短縮させることは節電など省エネルギーにつながるからだ。
環境経営は経営改善に環境の視点を加えたものだが、収益を犠牲にしてまでも、地球環境や地域の環境を良くしようというものではない。環境経営が環境改善につながるということは収益を上げるために効果的な面があるということだ。
収益が上がる、効率が良くなり無駄が省ける、不良が削減されクレームがなくなる。このような取り組みが結果的に環境も良くする一石二鳥となる。
環境経営士には、「企業内環境経営士」と「外部からの支援環境経営士」がある。役割は基本的に今まで述べた「経営と環境の両立」への気付きから始まる。環境経営士は顧客にセミナーや訪問で「気づいていただく」ことだ。
具体的な行動とは①環境負荷の低減(省エネルギーによるコストダウンの取り組み・資源の有効利用・廃棄物を出さないゼロミッションの経営)②生物多様性への取組み③企業の体制づくり(環境行動宣言・EMSの構築)④従業員および家族等の環境意識の向上(eco検定取得のための研修・地域社会でのボランティア活動の推奨等)その他日本経営士会の支部活動としての地域内連携活動がある。
特に日本経営士会環境社会創出委員会では、企業体制づくりとして、中小企業向けのコンパクトエコシステム(CES)の普及活動を行なっている。
私は同中部支部所属で、経営士・環境経営士として活躍しているが、別に日本ボイラー協会岐阜支部でボイラー実技の講師もしている。ボイラーシステムでの省エネルギー対策などを説いている。
今後、個別に経営士や環境経営士の立場から話が進められることを期待している。
そのためには地元の経営士や環境経営士がその足となり手となり積極的に動くことが肝要だと考えている。(平成28年10月13日 日刊工業新聞掲載)

人の印象は戦略的に創る㊤

販売戦略的な感じの良さ、訓練で習得/接客品質今一度見直しを

柳沼 佐千子(北関東支部)

マナーだけでは売上につながらないことをご存じだろうか?
ビジネスマナーとは、ビジネス上の一般常識のことである。マナーは必要であるが、常識
を学べば、売上向上の数値結果を得られるかというと、必ずしもそうとは言えない。
過去出向いた企業のほぼ100%が、社内で既に「お客様には、明るい対応をするよう
に」と育成指導している。しかしながら、誰一人として「明るい対応とは何か?」を、具
体的に答えることができないのだ。曖昧な指導をしている現状は、大企業も中小企業も同
じである。
企業では、契約率、再来率など売り上げ向上という数値結果を接客・営業社員に求める。数値結果が欲しいなら、常識レベルとは別に、人の好感度を戦略的に作り出す「印象力向上」に視点を変える必要がある。
 例えば、観光で訪れた魚市場の接客の雰囲気をイメージしてもらいたい。おそらく活気
がある・元気がいいなどが浮かぶのではないだろうか。では、高級ホテルのフロントスタッフの接客はいかがだろうか。洗練された・丁寧・上品などにキーワードが変化するであろう。
どちらも観光関連業種であるが、接客のスタイルには違いがある。
社員スタッフの好印象対応は、各企業が目指す姿やお客様の傾向から割り出し、変化さ
せなければならないのである。
これこそが、一般的なマナーとは狙いが異なる、販売戦略型の「印象力」なのである。
 スタッフ社員の印象を販売戦略として取り入れた企業では、最短では一か月後から、数
値向上の結果を目の当たりにするところもある。結果を得て大喜びした企業の中には、リ
ピーター率が約10%増、契約率が前年比約150%。交通機関でのサービス調査で約30%増等もある。
お客様が感じる一見、曖昧な「スタッフの感じの良さ」は、具体的に訓練することにより習得できる。商品や値段、店舗内装などは現状のままで、売上向上を実現することが可能なのである。
 バラバラになっている接客品質をいま一度、見直してみてはいかがだろうか。嫌いな人の話は聞きたくない、好ましい人と会うのは楽しい。人間の本能的な感情に「具体化」させたアプローチをしていないのは、実にもったいない話である。(平成28年10月20日 日刊工業新聞掲載)

人の印象は戦略的に創る㊥

顧客の感情揺さぶる戦略必要/接客・営業、「脳」から組み立て 

柳沼 佐千子(北関東支部)

「担当を変えてくれ!」思わず言いたくなったこともあるだろう。
好きな人とは話したいが、嫌いな人とは会いたくない。これが営業成績にダイレクトに響
く「人の印象」である。
脳から捉えると、人の印象は右脳のパートである。右脳は楽しい・嬉しい・好き・嫌いなどの感情を担当する。そして左脳は、値段・割引率・材料・技術・比較などの理性である。
お客様が購入の有無を決めるまでには流れがある。①右脳→②左脳→③行動の順である。
出会いから購入を決めるまでの流れを、人の印象(右脳)、商品説明(左脳)、購入の有無(行動)として考えてみる。
例えば、ここに誰もが認める品質の良いシャンプーがあるとする(②商品説明)。好きな人と嫌いな人とどちらに説明されたときに、買う確率が高いだろうか(①人の印象)。企業研修中に質問すると、ほとんどの人が好きな人からの話は素直に聴くが、嫌いな人から説明されたら買いたくないと答える。品質や成分が全く同じものなのに、購入の有無を変えてしまうのだ(③お客様の購入)。
イメージしてもらいたい。心の中にピンクと黒の2種類のサングラスがある。私たちは
人に出会った瞬間に、どちらかのサングラスをかけるのだ。明るい、さわやか、話しやすそうなど、好ましく感じたときはピンクをかけ、心が開いた状態になる。
その逆で、暗そう、怖そうなど悪いイメージを持つと黒のサングラスをかけ、心を閉ざす。出会った後は、そのピンクと黒のフィルターを通して、相手の話を聴くのである。ピンクのサングラスをかけた人が説明した商品は、ピンク色に見える。黒のサングラスをかけた人がいうことは、薄黒く見えるのだ。要するに、商品そのものの購入判断の前に、「人の印象」というフィルターがかかるのだ。
過去伺った企業は、社内教育が左脳のパートに偏っている。他社との比較や割引率などの説得説明の教育に時間を割いている。
売上向上を目的とするなら、社員の印象を向上させ、出会いのファーストステップとなるお客様の右脳を揺さぶる戦略が必要だ。人の印象と商品説明の右左両輪を強化するのである。
あなたの会社では接客や営業を「脳」から組み立てているだろうか。(平成28年10月27日 日刊工業新聞掲載)

人の印象は戦略的に創る㊦ 

[笑顔]「会話の向上」全員研修/リーダーは社内練習継続に集中

柳沼佐千子(北関東支部)

「さまざまな研修をしてきましたが、効果を実感できないのです」―初めて企業を訪れたとき、このセリフを何度聞いたことか。このセリフがでてくる企業には、共通点がある。それは、リーダーに代表で研修を受けさせ、社員全員に浸透させようという点だ。
例えば、10店舗で1,000人のスタッフが働いている企業があるとする。各店舗の店長
10人を一度に集めて研修を実施し、各店舗のスタッフ100人ずつを育成しなさい、と
いう構図だ。このやり方は、一見効率がいいように感じるが、逆にうまくいっていない。   
筆者の専門である印象力を向上させるスキルを社内に浸透させることを例に挙げよう。①本人のスキル、②教える能力、③継続する力、この三つが結果を出すためには必要だ。
しかし、一つ目の本人のスキルとなる「感じの良い対応」は、曖昧なままで具体的手法がわかっていない。リーダーも初めて学ぶ内容なのに、初心者がいきなり教える役割を求められるのだ。二つ目は、自分ができることと、教えることはまた別だ。スポーツの世界でも名プレーヤーが名監督とは限らない。
三つ目は、学んだスキルを社内全員で継続させるノウハウを持っていない。これらが主な問題点である。
初めて学んだことを部下に教えると、的確には伝わらない。まるで伝言ゲームのようになる。当初目標達成のためだったはずの研修の内容が、ゆがんでしまい、薄まるのだ。その状況で浸透させ、売り上げ結果を出せと指示されるリーダーは、生きた心地がしないだろう。
上記の理由から、全員が研修を受講することを最初に提案する。人の印象の要素である「笑顔」や「会話の向上」等は、身体で再現し訓練する必要がある。スキル、知識、翌日から即実行できる練習プログラム等を全員が共有している状態を整える。
そしてリーダーを「継続させる役割」にするのである。全員が知っているという土台があれば、リーダーは、号令ひとつで社内練習を即実行し、継続することだけに集中できるのである。
研修結果に効果があったと感じるのは、社員が継続して実行できているときだ。効率的
に効果を出すはずの選択が、一番遠回りになっているのである。(平成28年11月3日 日刊工業新聞掲載)

小規模を強みに変える力

際立つ独自性・強み生かしマーケティング/顧客に「心地よさ」提供

上野 延城(埼玉支部)

中小企業の数は約381万社で、日本の全企業数の99%を占めている。また、日本の
従業員の約7割が中小企業で雇用されている。
規模の大きさが強さに直結しない時代がきている。一般的には、中小企業は大企業に比べて経営資源の脆弱性を語られることが多い。
しかしながら、現実には大企業が必ずしも中小企業より優れているわけでなく、規模が小さい企業には小さいことの強みがある。
逆に、経済の成熟化、需要の多様化、人口減少といった時代は、小さな企業にとって追い風となり得る。
しかし、多くの小規模企業が時代の追い風を生かしきれていなのが現実である。小さくとも強い企業が共通して持つのは、際立った独自性である。
独自性とは、他とは違うことでうまれた個性、つまり自社の強みのことである。
消費者にも大規模量販店での買い物が好きな人もいれば、小さな店での買い物に魅力を感じている人もいる。
小規模の強みを生かしたマーケティングでは、小さな店に惹かれる人々をターゲットにすりほうが効果的である。
客層の特性は、こだわり、個性、専門性を重視する消費者であり、店員のアドバイス、店員とのコミュニケーション志向、気に入った店は長く利用したいという関係性志向である。
すなわち、顧客の期待に応えるためには「本物志向の非価格志向」「関係性志向のきずな力」「人的コミュニケーション力」の三つがポインである。
値段が同じなら鮮度の良いいアドバイスを的確にすることで、お客の満足度は高まる。
町の魚屋さんが、「奥さん、煮つけならメバル、塩焼きなら、今日はアジがいいよ」と、的確に生の声の情報提供は大型店にはできない。
小さな企業には大企業にはできない小規模の強みを生かしたマーケティングがある。ご用聞き、配達、量り売り、店内加工、旬の説明、適度な会話などである。
このほうが買い手にとって心地よいからである。消費者は、こういう心地良さを明らかにした店に集まり、人気が高いのである。
小売の将来を予想するのはなかなか難しいが、ヒューマン・タッチの昔風を大事にしている老舗商店が生き残っている現状から学ぶことが多くあると感じる。(平成28年11月10日 日刊工業新聞掲載)

「パリ協定」批准の中で

温暖化対策と経済発展の両立を基軸/地域分散型再生エネで地方創生

宮川 晃(近畿支部)

 2016年度版環境白書によると、温暖化は確実に進行し世界平均で、0.85℃上昇1880~2012年)、海面水位も19cm上昇(1901~2010年)、これからの気温上昇の予測は最大で4.8℃上昇(2081~2100年)、海面水位は最大82cm(同)の上昇と予測されている。このまま推移すると地球の環境変化による生物の生命の存続が危ぶまれる。現在の日本でも、異常気象・災害の多発、熱中症・感染症の増加、生態系の変化など深刻な現状だ。
 昨年11月30日~12月13日に、フランス・パリで、気候変動枠組み条約COP21におけるパリ協定の採決がされた。
パリ協定は、①目的は、世界共通の長期目標として、産業革命前からの地球の平均気温の上昇を2℃以下に、1.5℃をめざす努力②目標は今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収のバランス(実質ゼロ)を達成できるよう、最新の科学に従って急激に削減③各国は、削減目標を作成・提出・維持し、5年ごとに提出・更新し前進を示す④長期戦略では、全ての国が長期の温室効果ガス低排出開発戦力を作成・提出するように努める➄協定の目的・長期目標のため5年毎に全体の進捗を評価するため、協定の実施を定期的に確認する―などが決められた。
 日本は、中期目標を30年度に26%削減をめざすとしている。ヨーロッパの約半分の消極的な目標だ。
 パリ協定の批准は、温室効果ガス排出量の約40%を占める第1位の中国(28.0%)と、第2位の米国(15.9%)が、温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」を批准した。このことで、第6位の日本(3.8%)’いずれも2013年排出量)の批准なしでも「パリ協定」が発効する状況だ。
 日本は世界でもまれな、太陽光・水力・風力・バイオマス・地熱・波力などの再生可能な自然エネルギーの豊富な国だ。地域でのエネルギー自立を目指し、地域分散型の再生可能な自然エネルギーの活用・開発を優先的に進めれば、世界で最も早く温暖化対策が前進するとともに、中規模・小規模の発電所づくりで新たな産業と雇用が創出される。
同時に、エネルギーを外国から輸入にたよる前にあった地方から食料とエネルギー、都市から商品の国内での地域循環も再生し、過疎対策で悩む地方創生に役立と考える。こうすることで、世界の地震の約2割が発生、活火山の約1割が存在する日本の地理的条件に合わない原発からの脱却も目指せる。(平成28年11月17日 日刊工業新聞掲載)

雑談力をビジネスに活かす

間の取り方を身につける/「言葉の炎」で化学反応活発に起こす

上野 延城(埼玉支部)

雑談はビジネスの潤滑油といわれ最近のビジネス雑誌には特集が多く組まれている。書店にも雑談をテーマとした書籍がビジネスコーナに大量に陳列されている。
雑談を時間を無意味に過ごす「ムダ話」と考えている人もいる。仕事中の雑談は仕事とは関係ない話しのように見えるが、後から仕事に役立つことは多くある。
雑談には相手の心をほぐし、自分を強く印象づける効果もある。今、雑談力が見直されている。かっては無駄話、時間つぶしのようなネガティブなイメージを持つ人が多かったが、ビジネスの成功につながる重要なスキルとして見直されているのはなぜか。
雑談には場をなごませ、相手との距離を縮めるコミュニケーションの基礎となる重要な機能があるからである。
昨今、メールや会員制交流サイト(SNS)などコミュニケーションツールが発達し、人と人が直接会話する機会が減ったことで、気軽に話ができない悩みを抱く方々が増えている。そのために仕事に役立つ通信講座や研修会が開催されている。
相手が気持ちよく話せて、自分に親しみを感じてもらえる。そんな心地いい雑談のカギを握るのが、相づち、間の取り方といわれている。
間の取り方とは、話すテンポやスピード、心の距離のこと。雑談の目的は、気持ちよく言葉をやり取りして、リラックスした雰囲気を作ること。それだけに、話の内容以上に間の取り方が重要になる。
雑談が苦手な人は、話を一方的に続けてしまう人が多い。間の取り方を身につけることで、自然なキャッチボールができるようになる。
アサヒグループホールデイングスの泉谷直木会長は、「雑談力は重要なビジネススキルの一つだ」と言う。
雑談の「雑」には混ぜるという意味がある。「談」は「言」と「炎」という字からできている。混ぜ合わせされた何かを言葉の炎で加熱して、新しいものを生み出していく。
雑談というのは、本来そういう力強いものなのである。混ぜるものが増えれば増えるほど化学反応は活発になり、思いもよらないものがそこから立ち上がってくる。
雑談とは「言葉の炎」で化学反応を起こすこと。いい会社は必ず「雑談」を大切にしている。と話している。(平成28年11月24日 日刊工業新聞掲載)

モノよりコト消費が拡大

消費者は心の豊かさを重視/商品・サービスに意味的価値も提供

上野延城(埼玉支部)

コト消費とは、一般的にはモノを所有したり、モノの機能を消費するのでなく、商品・サービスを購入することで得られる体験・時間などを楽しむ消費とされる。
友人や家族と時間や体験を共有するための消費、習い事など自分の経験値を高める消費などである。
モノが売れない時代、消費者の心をつかむためには、コト消費の視点が欠かせないといわれている。コト消費が広がっているのは、消費者が物質的な豊かさよりも心の豊かさを重視する傾向にシフトしているからである。
コト消費では同じ商品・サービスでも消費者がさまざまな目的で消費を楽しむ。
心の豊かさを重視する人の割合は年々増加傾向にある。新しい生活ニーズをかなえるのは、モノよりコトであることからコトが支持されている。
コト消費にマッチする商品・サービスを提供するには、コトづくりの視点がポイントになる。コトづくりとは、商品・サービスの価値を生み出す仕組みやプロセスをつくり上げることである。
企業が消費者に商品・サービスを販売する際、モノの機能的価値以外に意味的価値を提供することである。意味的価値とはモノと一体化しているデザインやブランド、ソリューションである。すなわち、モノとサービスを別物として考えるのでなく、一体的に提供する商品づくり、ユーザーの使用情報に基づく付加価値づくりである。
小売業では来店動機を増やすために、コトを売るスーパーやコンビニエンスストアが盛況である。買った食べ物を店内の客席で飲食できるイートインコーナーを設けているスーパーでは、イートインコーナーを活用して体操教室や工作教室を開催している。
買い物だけでないコト機能を店につけ、競合店との差別化を図っている。
百貨店各社が2017年の初売りで販売する福袋の内容も「コト消費」関連の企画が多い。
手軽にキャンピングカーを利用できる商品や五輪輩出チームと練習できるもので、購入者が自ら体験できる福袋である。
企業側がコトづくりを発信することに加えて、消費者がコトづくりに積極的に関与できるような仕掛けや仕組みを用意することで、より消費者に受け入れられる商品・サービスを提供できると考えられる。(平成28年12月1日 日刊工業新聞掲載)

口コミ効果は信頼革命

影響力ある消費者情報源/シェアリングエコノミーの成長支える

上野延城(埼玉支部)

有効活用していない自宅や別荘、空き部屋を他人に短期間で貸し、使用料などを受け取るシェアリングビジネが広がっている。
総務省統計局によると2013年10月1日時点における全国の住宅数は6063万戸と、5年前に比べ、305万戸増加、一方、空き家は820万戸で空き家数は、5年前に比べ、63万戸(8.3%)増加、空き家率は13.5%と、過去最高を更新し続けている。
空き家が増えておりシェアハウスへの活用が今後注目されている。
日本自動車工業会の調査では2015年の乗用車の月間走行距離は350キロで13年に比べると80キロも減っている。
複数の人が同じ自動車を使うカーシェアリングは、企業による利用が増えている。レンタカーなどより使い勝手が良く、収益の向上に貢献している。
不稼働資産の有効活用策、ITの進展で個人主体の新たなビジネスとしてシアリングが盛況である。
見ず知らずの人同士なのに抵抗や問題を解決しているのは「口コミ」の力なのである。
インターネットの普及で商品やサービスに関する情報は、豊富に手に入るようになった。しかし、かえって消費者は良い商品やサービスを理解し、適切な選択ができにくくなっている。
口コミによる情報は既存メデイアより信頼性が高い。世界的なマーケティングリサーチ会社のニールセンが、2013年に行った調査結果によると、商品やサービスに関する情報発信を行うさまざま媒体の中で、消費者の84%が友人・家族などによる口コミが、信頼でき影響力があると答えている。
慶応義塾大学の調査によると、企業が提供する商品やサービスに関する情報に関して、消費者の90.5%が何らかの不満をもっており、消費者は、企業が都合のいい情報しか提供していないと半数以上が感じている。
口コミは、消費者が求める情報を的確にストレートに表現することから、消費者とっては利用しやすい情報源になっている。
互いの信頼関係がシェアリングエコノミーの成長を支える原動力である。相互に相手のことを信頼し合っている関係、信頼することができるような関係をつくる信頼革命の時代が将来やってくと予測する。(平成28年12月8日 日刊工業新聞掲載)

新市場を創る親孝行商品の開発

高齢者向けアイテムに注目/感謝を込めた贈り物ヒット商品に

上野延城(埼玉支部)

総務省が敬老の日を前に発表した人口推計によると、女性の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は30.1%となり、初めて3割を超えた。男性は24.3%。男女を合わせると前年から0.6%増の27.3%である。65歳以上の人口は73万人増の3461万人で、割合、人数とも過去最高を更新した。
今年の65歳以上は、女性が前年より38万人増えて1962万人、男性は35万人増の499万人である。厚生労働省は認知症の人が2025年に700万人に達するとの推計値を明らかにした。65歳以上の高齢者の5人に1人に当たる計算である。
警察庁生活安全局によると14年に認知症が原因で行方不明になったとして家族から警察に届かられたのは1万783人。2年連続で1万人を超えている。
また、事故に巻き込まれるケースが問題になっている。厚生労働省も全国の自治体を通じて実態調査を始めており、同省担当者は「行方不明者が見つかった際、所持品は身元特定の大きな手がかりになっている」と説明する。
私事になるが、このような、高齢者対策として、ある宝飾メーカーに新市場の開発ステップをコンセプトに「ID(身分証明)付きペンダント」を提案、商品化した。
金属製の小型タグに氏名や住所、連絡先、血液型、持病などを彫り込んだペンダントである。
予想外の緊急事態の際にも連絡先を本人に代わって第三者に伝えることができる。
顧客からは「徘徊で困っている」「認知症を患っている家族が心配」「親に持病があるので万一の時に」などの理由で贈答用に求める人が多くいた。
この商品は高齢者の認知症対策だけでなく、中高年者の登山やアウトドア向けの商品として、また海外旅行のお供として家族からの贈り物としても人気がある。
父の日、母の日、両親の誕生日のギフトとして最適なアイテムである。ある宝飾店では両親に感謝をこめた親孝行力をアップするギフト商品として品揃えしたところ口コミで広がり売上げの拡大につながった。
親孝行の手段は幅広く多くあるのでそれに対応した商品開発をすることにより、新しい市場を創ることが可能と予測する。(平成28年12月15日 日刊工業新聞掲載)

経済を数学で考える 

「メビウスの輪」との連想から/経営・仕事一捻りして良い結果に 

矢島英夫(東京支部)

1、大円を小円が滑らずに転がると転がった距離と中心が動いた距離が同じになる。例えば自転車が動いたとき、タイヤが進んだ距離と自転車の進んだ距離が同じである。
すなわち、外側を回る時、小円の中心の動く軌道は、大円の半径Rと小円の半径rを足した半径(R+r)の円周となり、円周は、半径に比例するので大円(例えば半径2)の円周より小円(例えば半径1)の円周一周分多く小円は回転(2+1=3回転)し同様に大円の内側を小円が回るとき小円の中心は、大円の円周から小円の円周を引いた円周を動き、大円の円周から小円の円周一周分少なく、小円は、回転(2-1=1回転)する。これは、観覧車の動きと同じである。
2、上記1を経済に例えると外回りの経済は、発展する。外回りは、技術革新又は、人口増の場合であってこの時は、文化は停滞する。内回りは、経済は現状維持又は減速状態となる。内回りは、経済は縮小するが文化は、繁栄する。正に観覧車は、現状維持の例である。
3、経済は、好不況が交互にやってくる。仮想と現実を行き来するメビウスの輪の考えを取り入れて考えてみる。そこで、経済を仮想空間上にあると考えると、経済は、国の領域を超えて飛んで行くが、政治の現実は国の領域内に留まる。また経済は、現実面に現れるのは、結果が生じて現出する。途中の経過は、目に見えないところにある。仮想を現実と交互に変化することにより、経済の景気、不景気は繰り返す。
経済も景気だけを追うのでなく不景気という現実も必要である。無駄という考え方にメビウスの輪にある。ここにいう無駄とはメビウスの輪の特徴である一捻りしたところである。経済そのものは、仮想なもので、結果は、後になって現れる。結果を良くする悪くするのも方法次第である。考え方を一捻する処に良い結果が現出する。永年続く老舗企業の考え方は現実的である。世の中の変化に合う様に経営や仕事のやり方を柔軟に変えて行く処にある。(平成28年12月22日 日刊工業新聞掲載)

「リセールバリューの買い物スタイル」

買値より高く売却狙う/リユース市場での評価・相場で商品選び

上野延城(埼玉支部)

今日の若者は“リセールバリュー”を考えて買い物をしている。
リセールバリューとは、一度購入したものを販売する際の、再販価値のこと。
中古車販売などの際に使われることが多い。乗用車などを使用後、中古車販売店や新車購入時の下取りとして、販売するときの価値のことである。
若い人に高額の時計が売れているのは、売ったらいくらになるかを考えて買い物をしている人が多くいるからである。
物は古くなれば安くなるというが常識であったが、中古品を扱う仕組みができたことで、買値よりも高く売却できることが可能になった。
ワインや日本酒、焼酎なども個人がネットで簡単に転売できるようになり、人気の銘柄は何倍もの高値で売られている。
中古品・リユース業界の専門誌「リサイクル通信」によると2014年の国内中古品市場規模は、前年比7%増の1兆5966億円で市場拡大は5年連続となった。
このうち35.6%をネット販売は占めた。同調査では、今後もリユース市場は拡大し、25年には2兆円の規模に拡大すると予測。
中古品を売買する経験者の人口は、25年に日本の人口の約半数を占める約6200万人に達すると見込んでいる。
新商品を購入する際には、リセールバリューを意識した選択の仕方が浸透し、リユース市場での評価や相場が新商品選びの一つの指標になり得るとしている。
不動産の世界もリセールバリューの考え方が浸透すれば、新築偏重という傾向は改まるかもしれない。
そのためには、新築の段階で価値が下がらない建物を建てること、常に建物のメンテナンスを続けることが必要である。
環境省「リユース業者の環境意識高度化事業消費者へのアンケート調査」によると、リユース品を購入したことがある、38%。不要品を売却したことがない、62%。使わなくなったブランド品が自宅にある、54%。昔は中古品に抵抗があったが、今はなくなった、64%。である。
手軽に中古品を売買できる仕組みが市場に出てきたことで、将来的には売ることを前提にして買い物をするという消費傾向が広がっていく可能性は十分あると予測する。(平成28年12月29日 日刊工業新聞掲載)

脳科学でマーケティングは進化する

消費者の心理や行動把握/製品開発から広告・販売まで応用可能

上野延城(埼玉支部)

 消費者は潜在意識で何を求めているか、何を買いがっているか、脳波を測定して本当のニーズを解明する―そんな脳科学の手法を、製品開発からパッケージ、広告展開まで一連のマーケティングに応用する「ニューロマーケティング」という画期的な手法が今、
 確立されつつある。
  ニューロマーケティングとは、神経科学と市場調査を組み合わせ脳の反応を計測することで、消費者の心理や行動を把握しようという試みである。
「消費者の“買いたい!”を作りだす実践脳科学」の著者、A・Kブラディブ博士によると、脳の情報処理の最大95%は潜在意識が行っている。商品を売るためには、その95%に働きかけなければならない。と語っている。
  ニューロマーケティングを取り入れることで企業は5つの分野で活用できる。と述べている。1番目は「ブランドイメージ」である。ブランドが消費者の深層心理でどんな意味を持つのか、その感情を会話ではかるのは不可能だ、それを科学的に計測することができる。
  2番目に「製品開発」である。ニューロマーケティングによって、脳が新製品のどんな部分を楽しみ、どんな部分を楽しくないと感じているか。それを計測して製品デザインに応用できる。
  3番目は「パッケージ」である。どんなパッケージが消費者の目を引くのか、それを理解することが企業の売上げ、収益に直接的に結びつく。
  4番目は「店舗環境」である。店内には写真、ディスプレイー、POPなどさまざまなものがある。消費者は無数の情報にさらされている。そのうち何が効果的で何が効果的でないのか、継続的に脳波を計測していけば、何が消費者の購買行動を決定付けたか知ることできる。
  最後には「広告」である。テレビ、ラジオ、インターネット、フェイスブックなどすべての広告を分析して何が効果的かを計測する。このように製品開発から広告、販売まですべての過程でニューロマーケティングを応用することができる。
  人間の脳を理解すれば、よりよい製品やサービスを開発し、より効率的なマーケティングを展開して売り上げを伸ばすことが可能になる。
  市場の変化が激しい現代には重要な要素となっていくと予測する。(平成29年1月5日 日刊工業新聞掲載)

一人身世帯が社会を変える

独自のモノ・コト消費行動を研究/新たな商品・サービスに注目

上野延城(埼玉支部)

晩婚化や高齢化、社会認識の変化に伴い、一人身世帯が増え、今や3軒に1軒はひとり暮らしである。
厚生労働省の2015年版となる「国民生活基礎調査の概況」によると、お年寄りがいる家のうち1/4強・552万世帯は「一人きり」である。
今世紀に入ってからのみの動きを見ても、単独世帯は250万世帯強・核家族は300万世帯ほど増え、3世代世帯(祖父母、夫婦、子供)は100万世帯以上減っている。この50年近くの間に3世代家族の比率は10ポイント以上減少し、その分単独世帯や核家族世帯が増加している。構成比で見ると核家族世帯よりも単独世帯の増加率が大きく、未婚の人が増加しているようすが容易に想像できる。
ひとりを楽しみ、謳歌する人が増えている。16年シチズン時計の20代以上の独身男女への調査では、休日の過ごし方は「ひとり」で過ごすことが多いが「80%」、人とあうことが多いが「20%」となっている。
じゃらん宿泊旅行調査では、宿泊旅行に占める「ひとり旅」の割合は06年度、11.2%、15年度、17.5%。宿泊旅行を同行者別にみると、この10年で「友人と」「恋人と」が減少する一方、最も伸び率が大きかったのが一人旅である。特に男性が多く、属性別でみると20―34歳男性は約29%、35―49歳は25%を占める。
全国の20―30代の未婚男女に結婚願望を聞いたところ、生涯未婚率(50歳時点の未婚率)は男性で4人に1人、女性で7人に1人に上る。
13年レジャー白書によると、ジョキング・マラソンやトレーニングなどひとりでできスポーツが人気である。
好奇心旺盛で、何事にも前向きな一人身世帯、ある程度自由になる資金もあり、価値があると認めたモノ・コトには消費を惜しまない。
ひとりで生きる人たちはライフスタイルや消費行動も独自であり、その行動を研究することが必要で、企業も社会もそれに合わせて変わっていくことにより、新たな商品・サービスが生まれてくるものであり、ひいては企業にも大きな利益をもたらしてくれる。
一人身世帯はこれからの社会を変える巨大な力になると予測される。(平成29年1月19日 日刊工業新聞掲載)

価格競争でない価値創造型販売促進

書費社の深層心理科学的に調査/情緒的・自己表現価値引き出す

上野延城(埼玉支部)

終わりなき低価格競争から抜け出すためには、消費者の深層心理を研究した価値創造型の販売促進が必要である。
深層心理とは、人間の心の深層、すなわち無意識を研究し、意識現象や行動を説明しようとする心理学である。一方、価値創造型販売促進とは、消費者の深層心理から、商品のもつ価値を探り、それをもとに開発された販売促進である。
商品の価値には「基本的価値」「機能的価値」「情緒的価値」「自己表現価値」がある。
基本的価値は、商品における明細事項的な価値を表す。機能的価値は基本的価値を踏まえ、他社製品に差別化が図れる機能面における価値を表す。
情緒的価値は、その商品を使ってみて感じる感覚的なことである。自己表現価値は、商品を顧客が所有・使用することで完結する価値ではなく、他人に対して自分を表現できることで生じる価値である。これら4つの価値のうち基本的価値や機能的価値は各メーカーで常に研究開発されており、これだけを訴求しているだけでは、他社との差別化が難しい。
今後、特に重要なのは情緒的価値や自己表現価値を消費者の深層心理から引き出すことである。そのためには、モチベーション・リサーチが有効である。
モチベーション・リサーチとは、消費者がどのような動機で商品を買ったかを科学的に調査することである。調査方法の代表的なものとしては、深層面接法、集団面接法、投影法などがある。
消費者はある特定の商品は購入するが、他のメーカーなどの同程度の商品は購入しない等の購買・受容行動がなぜ起こるのか調査する手法である。動機をできるだけ確実につかむことにより、販売促進の効果をあげることができる。
安いから買うという消費者は、もっと安いものがあればそちらに流れてしまう。低価格を訴求しない価値創造型の販売促進では、商品やブランドの潜在的に秘めていた価値を消費者に伝えることにより、そのものの評価を押し上げることが期待できる。
マーケティングの新しい切り口を立ち上げる際の成功確率を高めるためには、消費者にどのように価値を伝えれば効果的なのかの、価値創造型の販売促進を研究することが重要である。(平成29年1月12日 日刊工業新聞掲載)

海外進出事例(日刊工業新聞掲載)

「経営士の提言」原稿募集

日刊工業新聞社のご厚意により、日刊工業新聞の紙面に経営士からの提言・提案、また持論や研究成果などを発表する場として「経営士の提言」欄を設けていただいています。
日刊工業新聞は、経済界・産業界をはじめ各企業・事業所において広く読まれている専門紙です。この読者を通じて、経営士としての考え方や活動の実態を知っていただく良い機会となります。また、このコラムに投稿することにより個人の活動領域を広げる手段にもなり、日本経営士会の知名度向上にも役立ちます。
投稿要領は下記のとおりです。皆様の投稿をお待ちしております。

-  記  -

テーマ: 自由
原 稿: ワード原稿 横書き、3回まで連載可能
文字数: 約900文字(69行x13文字)
掲載決定: 編集・掲載の決定は日刊工業新聞社編集部
紙上掲載: 日刊工業新聞(毎週水曜日)
原稿募集はこちら

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